恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2008年01月

DATE

  • 2008.01.01(火)
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*HELLO
 ├ READ ME / このブログについて。注意書きです。ご一読ください。
 ├ contents / このページ。各作品目次です。
 ├ note / バトンやら雑記やら。お知らせも。
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*(恋愛感情) メイン3カプ。甘エロベースの短編長編。
 ├ 拓海×悠也 / 大学生×フリーター / ツンデレ / 年下攻め /
 ├ 遥斗×真琴 / モデル×大学生 / 甘々 /
 ├ 智紀×慶太 / 大学生 / 先輩×後輩 / ウブ /
 └ 質問+小ネタ / 100の質問やら1の質問やら脳内解析やら。

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 ├ 君といる十二か月 / ファーストシーズン。何でこんなに好きなのか、自分にだって分からない。
 ├ 恋するカレンダー12題 / セカンドシーズン。大嫌いなのに、そこから実る恋なんてあるの?
 └ Baby Baby Baby Love / シリーズ番外編。いろんな愛の形。

*センセイ、教えて。
 └ 高校生男子 / 学校では教えてくれないこと。エロ。

*読み切り
 ├ 掌編 / 小話寄せ集め集
 ├ 小編 / 5話以内完結お話集
 ├ 中編 / 20話くらい完結お話集
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 ├ ジキタリス / これは利害の一致。恋心なんかじゃない。
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 ├ 映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) / これが運命の出会いだって、信じてる。
 └ 暴君王子のおっしゃることには! / 出会った相手は、天下無敵の吸血鬼様!

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拓海×悠也 INDEX


 これまで、違うカテゴリのインデックスが表示されておりました。
 「拓海×悠也 INDEX」は、改めて構築させていただきますので、ご不便をおかけしますが、しばらくお待ちくださいますよう、お願い申し上げます。


平成26年4月12日 如月久美子





 それにしても、いつの間にそういうことになってたんだろ…。
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カテゴリー:拓海×悠也

01. 朝起きれば見慣れぬ天井


 …………えーっと…。

 確か昨日、八尾とメシ食いに行ったよなー……。
 俺、お酒飲んじゃったのかなー。
 何か頭痛い。これが二日酔いってヤツ? あー…もう、こんなになる前に止めてくれればいいのに、八尾のバカー。

 頭痛い。ダルイ。何か喉渇いた。バイト行きたくない。あ、今日休みだ、ラッキー。

 それにしても、喉渇いたなー。水飲みたい。水ー。
 …………でも起きるの面倒臭い。
 でも水飲みたい。
 でも起きるのめんどいし。
 でも飲みたい、水。
 でも動きたくない、起きたくない。
 でも水……。

 ……………………。

 あ、ヤベ、またウトウトしちゃった。もう一眠りしようかなー。どうせ今日、何の予定も入ってないし。うん、そうしよ。決めた。


 あー…それにしても、俺の部屋の天井って、あんなだったっけかなー……。




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也
テーマ:BL小説  ジャンル:小説・文学

02. もしもし寝る場所間違えてますよ


 今、何時かなー…………ケータイ、ケータイ。
 …………あれ? こんな目覚まし、俺、持ってたっけ? あ、8時40分。朝のだよね? 外明るいし。って、あれ? カーテンの色が、何か違う……。

 …………え?

 え?
 は? はぁっ!?
 どこ!? ここ、どこ!? 何これ!!

 半分以上眠っていた脳細胞が一気に覚醒して、俺はガバッと飛び起き―――

「……っつー…」

 アタタ…頭が……。
 ってか!!

「ここ、俺んちじゃないじゃん……」

 ………………。

 あ、そっか、八尾んちかー。
 昨日、俺が潰れちゃったから、自分ちに連れてきてくれたんだー。
 さすが八尾。いいとこあるよねー。

 で、八尾、どうしちゃったんだろ。もう起きたのかな?
 何か喉も渇いてるし、俺も起きようかな。

「……って! 床で寝てんじゃん!!」

 何やってんだよ、八尾! 何床に落ちてんだよ! って、もしかして俺が落としたとか? ヤベェ。

「もしもーし、八尾くーん。寝る場所間違えてますよー」

 それにしても八尾、何かいつもよりガタイがいい気がすんだけど…………服脱いでるせい? ってか、何で裸?

「八尾? ねぇ、や…」
「……ん…」

 ゴロン。
 床の八尾が寝返りを打って、俺のほうを向いた―――その姿は八尾なんかじゃなくて。




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

03. あなたは一体誰ですか


 …………えっとー……。

 えーっと……。

 えー…………。


「…………誰?」



 床で寝ているのは、八尾なんかじゃなくて、見知らぬ男。同じ年くらいかなー。俺より上かな?
 ってか、よく見たら、ここ、八尾んちじゃないし。ってことは、この人の家か。

 で。
 だから、誰なんだって、この人。

 もしかして、八尾の友達かな?
 俺が潰れちゃったから、八尾と一緒にこの人んちに泊めてもらったのかも。ありがとうございます。
 じゃあ、八尾はもう起きてんのか。俺も起きようかなー………………って、何で俺も裸?

 えーっと、うーんと。
 確か俺、昨日、Yシャツっぽいの着てたから、シワにならないように脱がせてくれたのかな。色々ご面倒をお掛けしまして。
 でもそれにしたって、何で全裸なの? パンツは?
 いくら何でも、人の家を全裸でウロウロするのはヤダな。でも何か俺のパンツ、見当たらないっぽいし。

 …………この人、起こしちゃっていいかな。
 まぁいっか、起こしちゃお。

「あのー……」
「……ぅん…」

 ……何か、寝起き悪そうな感じ…。俺も人のこと言えないけど。

「あのーもしもし…」
「んー……、……え…?」
「あの……おはようございます」
「……おはよう……あ、起きた?」

 もそもそと、その人は頭を掻きながら、目をこじ開けて俺を見た。

「はぁ……、あの、すみません…」
「ううん、いいって、いいって」

 まだ眠いのかな、ちょっとだけ寝惚けたような顔で起き上がったその人は、自分が寝ているのが床だって気が付いたみたいで、俺の顔とベッドと、自分の包まってたブランケットに順番に目をやって苦笑した。

「あ、すいません。もしかして、俺が落としちゃったとか?」
「かもね。俺も寝るときはベッドの上にいたはずだから。よく眠れた?」
「はぁ……おかげさまで」

 ってか、この人、結構鍛えてるね。腕の筋肉とか。八尾に見習わせてやりたい。あ、そういえば、

「八尾は?」
「は?」

 俺の言葉に、この人、すっげぇキョトンとした顔になった。
 何で? 俺別に変なこと聞いてないよね? 八尾は? って言っただけだよね?
 なのにこの人、ますます不思議そうに

「八尾って?」

 なんて言ってくる。

「え? 友達……じゃないの?」
「俺の? 俺の友達にそういう名前の人、いないけど?」
「は?」

 だってあんたが八尾の友達だから、昨日潰れちゃった俺も一緒にここに連れてきてくれたんじゃないの?
 ねぇ!

 心臓が、バクバクすごい速さになってきてる。

 だって。
 だって、ねぇ……


「じゃあ、一体あなたは誰ですか?」




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

04. 目玉焼きと憂鬱な朝


 すのはら、たくみ。

 それが、この人の名前、らしい。
 俺が「しのはら?」て聞き返したら、すかさず「すのはら!」て訂正された。よく間違われるらしい。
 で、「春原」って書いて「すのはら」って読むんだとか。
 あと、"かいたく"の「たく」に、「海」で、たくみ。

「"かいたく"の『たく』って、どんな字?」
「…手偏にね、『石』って書くヤツ」
「………………。あぁ! なるほど」

 春原拓海。

 目の前にいる、この男。

「……で、えっと……俺、」
「橘悠也くんでしょ?」
「あれ? 知ってる?」
「昨日、自己紹介されちゃったし」

 そっかー。俺、酔っ払ってたから、全然覚えてないやー。

「ねぇねぇ、春原さん」
「何?」
「俺ね、喉渇いてるんだけど。お水ちょうだい」
「―――プッ!」

 正直にそう言ったら、春原さんがなぜか噴き出しちゃった。何で?

「おもしろい! 悠ちゃん、おもしろい!!」

 そう?
 ってか、悠ちゃんて。

「水もそうだけどさ。お腹空いてない? ご飯作るよ?」
「食べる!」

 あぁ、何て優しい人なんだろう。
 見ず知らずの酔っ払いを家まで連れて帰って介抱してくれて、おまけに朝ご飯まで作ってくれるなんて。

「あ、それと……俺の服は? 何か見当たらない……」
「ん? あ、俺の貸してやるよ。今出すからちょっと待って」

 あぁ、一体どこまでいい人なんだろう。



 ちょっとだけサイズの大きい春原さんの服を着て(パンツは新品をくれた。感動…)、俺は言われたとおりにキッチンに向かった。
 1人暮らしにしては、ちょっと大きいかなって感じの部屋。もしかして、彼女と一緒に住んでるのかな? 見た目、ちょっと遊んでそうな感じだしね。

「目玉焼きとかでいい?」
「うん。何でもいいよ。俺、ししゃも以外なら食べれるし」
「ブハッ! いくら何でも、朝っぱらからししゃもなんか出さねぇよ! はい、水」

 冷蔵庫の中のミネラルウォーター、小さいサイズのペットボトルを1本渡される。

「ありがとう。ねぇねぇ、春原さん」
「ん?」
「色々聞いてもいい?」
「どうぞ。あ、ねぇ、俺のこと、拓海って呼んでよ」
「え? 呼び捨て?」
「いいじゃん、悠ちゃんのほうが年上なんだし」
「そうなの!?」
「昨日言ってたじゃん。俺のほうが1つ下だし。ってか、『悠ちゃん』って、昨日呼んでいいって言ったから、そう呼んでたんだけど、ヤだった?」
「いや……別にいいけど…。あ、それでね、」
「うん」
「ここ、すのは……っと、拓海、の……家?」
「そう」
「1人暮らし?」
「うん」
「いいなぁ。でさ、ホントに八尾って、知り合いじゃないの?」
「じゃないって。聞いたことない、そんな名前」
「じゃあさ、何で俺はここにいるの?」
「はぁ? 何その問い。あ、ゴメン、ちょっとお皿出して」
「うん。これでいい?」
「サンキュ。あ、さっきの質問の答えだけど、悠ちゃんが俺んちに行きたいって言ったから、連れてきたんだよ?」
「ふぇ? 俺が?」
「うん。お家帰ろうって言ったんだけど、俺んちじゃなきゃヤダって言うから」
「マジで!? 俺が?」
「うん。ま、俺としても、悠ちゃんみたいな子だったら、まぁいっかなーとか思って」
「まぁいっかって?」
「ぅん? あれ? マジで全然覚えてない? じゃあ、言わないほうがいいのかな?」
「え? 言えないようなことしたの?」
「んー……その八尾って人、悠ちゃんの恋人か何か?」
「八尾が? 何で? 八尾って男だよ?」
「あ、そう? 違うの? あ、ご飯できたから、そこ座って?」
「うん。で、何? 何があったの、夕べ」
「え? 何って……やっちゃったじゃん」
「え? やっちゃったって……」
「ん? セックス」
「セッ……」




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

05. 一切記憶にございません


「ホントに覚えてないの? 昨日はあんなに俺のこと求めてたのに。拓海くん、さみしー」
「もとっ…!?」

 何? 何言ってんの、この人!
 人が覚えてないのをいいことに、適当なことを…!

「悠ちゃん、大丈夫?」

 目の前を拓海の手がヒラヒラ。いや、大丈夫なことは大丈夫なんだけど…。

「あの……冗談、ですよね…?」
「冗談て、ひどいなぁ。本当に覚えてないんだ?」
「一切記憶にございません」

 だって。
 だってさ、男じゃん。俺も、拓海も。
 しかも話じゃ、俺が拓海に抱かれたっぽいし。
 あ り え な い !
 マジあり得ない!

「んー……確かにかなり酔っ払ってたみたいだったしねぇ…。でも、そこまできれいさっぱり忘れられてると、」
「だって! だってそんなの! って、わっ!?」

 グイッ。
 いきなり腕を引っ張られて、すでに椅子に座ってた拓海の胸に思いっ切り飛び込んでしまう。

「った……何すんだよっ!」

 わっ!?
 顔を上げたら、思いのほか近くに拓海の顔があって、ちょっとビビった。
 ってか、男の俺から見ても、いい男だと思う(悔しいけど)。絶対、女に超もてると思う。なのに。
 何で俺なの?

「忘れてるかもしれないから言っとくけど、先に誘ったのは悠ちゃんのほうだからね?」
「ッッッ!!!」

 俺が!? 俺が男を誘ったの!? この俺が!?
 酔っ払ってたからって、そんなのってっ!!
 ってか、

「……何で断わらなかったわけ?」

 100歩譲って、俺が酔った勢いで拓海を誘ったとするじゃん? でもさ、そんなの断わればいいじゃん! てか、断われよ! 見ず知らずの人間じゃん! そこら辺に見捨てて帰れよ! そのほうが寧ろまだマシだったよ!

「だって……断わる理由がなくない? そんな据え膳を……」
「俺は男だ!」
「俺だって男だよ?」

 だーーー!! 何当たり前に返してんだよ! お前が男なことは、分かりすぎるくらい分かってるっつーの!

「あ、言うの忘れてたかもだけど、俺さぁ、女の子より男のほうがいいタイプなんだよねー」



 …………暗転。




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

06. サプライズはコンビニで



*****


「てかさぁ、八尾、何でおととい先に帰ったわけ?」

 コンビニのスタッフ控え室。隣で制服に着替えてる八尾に、早速不満をぶつける。
 ちなみに八尾は正職員だけど、俺はバイト君。同い年なのに、悲しい現実。

 ってか、それにしたって!
 あのとき八尾が先に帰んなきゃ、俺があんな目に遭うこともなかったのに!!

 結局、あの後、朝飯をごちそうになって、洗濯してもらった服に着替えて、パンツは貰って、駅まで送ってもらって…………でも、ケータイの番号だけは、しつこく聞かれたけど、教えなかった。
 俺ってひどいヤツかな? でも貞操の危機は守らなきゃだし!

 つーか、八尾だよ、八尾! お前のせいで、こっちは男のクセに貞操の危機に晒されたんだぞ!
 なのに八尾ってば、「はぁ?」とか言いながら、キョトンとした顔してる。

「だからー、おととい! 何で先に帰ったの?」
「先に帰ったって……そりゃお前のほうだろ?」
「へ?」
「俺がトイレ行って戻ったら、もうお前いなかったじゃん。どっかフラフラしてんのかと思って探したけどいないし、携帯も繋がんないし」
「ウソ」
「ホント。お前、携帯電源切ってただろ?」
「分かんない……ってか、マジ?」
「マジだって。あ、途中で知り合いに会って話したけど……でも5分とかそんなだぜ?」
「5分……」

 そんな短時間で俺、お持ち帰りされちゃったわけ?
 信じらんない……ってか、記憶のない自分が恨めしい……。

「お前、ちゃんと家に着いたの?」
「ちゃんと……っていうか、」

 着いたのは自分の家じゃないけど。
 人んちのベッドで、家主を落として寝てたけど。
 つーか、覚えてないけど、その人に抱かれちゃってたみたいだけど。
 誰か悪い夢だって言ってくれっ!!

「橘? おい、大丈夫か?」
「大丈夫…………だと思う」

 こうなったら、仕事に集中して、こんなことは一刻も早く忘れよう。
 だいいち、一番肝心の、最悪な部分は記憶がないわけだし、それにあの春原拓海ってヤツにだって、もう会うことはないだろうし。
 よし!

「八尾!」
「んあ?」
「仕事、がんばろうな!!」
「え? あ、うん……え? どうした? 急に…」




 慣れた作業、バーコードを読み取って、お金を受け取って。
 そうそう、こうやって仕事に集中してりゃあいいんだ。そうすれば、すぐに忘れちまうんだ。

「何か……今日の橘、やる気がみなぎってねぇ?」

 混雑が一段落したところで、八尾がボソッと声を掛けてきた。

「何言ってんだよ、俺はいつだってやる気満々」
「どこが。いつもダルそうじゃん――――ぁ、いらっしゃいませ」

 呆れたように言いながらも、カウンターに置かれた商品に気付いた八尾が、すぐにそれに反応した。俺もすぐにバーコードリーダーを手に取る。缶コーヒーとパンと雑誌。

「いらっしゃいま……」

 顔を上げる。

「やぁ」

 目の前の。

「―――…………え……」

 春原拓海。




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

07. 引き攣った笑顔と不自然な挨拶


 なん……何で?
 何これ?
 は? はぁ!?

「おいっ」

 意味分かんないし。
 何で?
 何でここに拓海がいるの?

「おい、橘!」

 は? 何?
 何なわけ?
 わけ分かんない。
 えぇ?

「橘、レジ! レジ!」
「…………え……?」

 バッ! って八尾にバーコードリーダーを奪い取られて、やっと俺は我に返った。
 仕事中だ。
 慌てて俺は、八尾がバーコードを読み込んだ商品を袋に詰める。
 でも焦ってるせいで缶コーヒーに手が当って、引っ繰り返してしまった。しかも運の悪いことに、コロコロと転がっていったそれは、俺が手を伸ばすよりも先に、カウンターの向こうに落っこちてしまって。

「すみません!」

 俺より先に八尾が謝った。

「あ、すみませ……」
「いいえ」

 拓海は別に怒りもせず、寧ろニコニコしながら、落ちた缶コーヒーを拾ってカウンターに上げた。
 落ち着けー、落ち着け俺。

「350円のお返しです」

 八尾からお釣りを受け取った拓海は、チラッと俺を見て、何も言わずに出ていった。
 俺は八尾の言葉につられて、思い切り作り笑顔で「ありがとうございました」って、その背中に言う。

 ……何で?
 何でアイツ、ここのコンビニに来たわけ?
 偶然? それとも俺がここでバイトしてるって知っててきたわけ? ストーカーか?

「八尾……」
「ん?」
「ゴメン、ちょっとレジ頼む」
「へ!?」

 慌てる八尾をよそに、俺は急いで店を出て、拓海を……

「あ…」

 追おうと思ったら、店を出てすぐのところに拓海はいた。

「なん…で、いるの?」
「いや、追ってくるかなぁーって思って」
「……何で、ここに来たの?」
「買い物―――って、そんな顔しないでよ。あ! 今悠ちゃんが考えてること、当てたげようか?」
「…………」
「まさか俺の居場所を探し出したとか? ストーカーかコイツ? ね、正解じゃね? ってか、大学が近くだからさ、たまたま寄っただけだよ、マジで。あー、でも悠ちゃんがいるんなら、俺、通いつめちゃうかも」
「やめてよ!」
「冗談じゃん。でもいい常連さんになるよー、俺」

 冗談だって、そんなの想像もしたくない。っていうか、コイツが言うと、何かマジっぽく聞こえて怖い。

「通いつめるってのはウソだけど、学校近いしさ、必要があれば来ることにはなるだろうけど。そのときは、あんま冷たくあしらわないでね」
「別に、」
「あ、ホラ、そろそろ戻んないと。八尾くん、心配してるよ」
「え?」
「一緒にレジしてたの、八尾くんじゃないの? 例の」
「何で名前……」
「だって、名札に書いてあんじゃん、八尾って」

 これ、って俺の着けてる名札に、指が触れる。一瞬、身構えてしまった自分が、何か悔しい。

「じゃ、またね」
「あ……うん、また……」

 って、「また」じゃねぇし!




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

08. 嫌いなタイプ(じゃないけれど)


 男に抱かれた…………かもしれないのに、俺が意外と普通でいられるのは、"そのときのこと"を覚えてないからかもしれない。

 もしあの朝、拓海からそんなこと聞かなかったら、すげぇいい人…ってだけで、終わってたかもしれないのに。
 なのに何でアイツ、わざわざそんなこと俺に話したんだろ。酔った勢いで簡単に男に抱かれちゃうようなヤツ……女の子より男のほうが好きなんだろうって思っちゃったのかな。

 だいたい、変だよ、アイツ。いくら女より男のほうがいいって言ったって、初対面の酔っ払いを抱くか!? そんなの普通じゃないよ。うん、普通じゃない。
 あれから何度も店にはやって来るし。
 ……でも別に俺に何するでもないし、特に話し掛けてくるような感じでもない。
 俺のことなんて、どうでも良くなったのかな…。単に学校が近いから、寄ってるだけなのかな。
 …ってか、別にそれでいいんだよね。
 俺だってそうなることを望んでたんだから。別にアイツとどうこうなりたいわけじゃないし。そうだよ、これでいいんだ…。

 ……なのに。
 なのに何で…………ずっと頭から離れないの…?




*****


「橘ぁ、今日メシ食って帰んね?」

 バイトが終わると、八尾がそう言ってきた。

「奢りならね」
「……奢らせていただきます」

 相変わらずだなぁ、とか言いながら、八尾がポンポンって頭を撫でてくる。年の差なんて、たった1か月なのに、いつだって八尾は大人だし、俺は子供。

「そういえばさ、」
「ん?」
「俺がこんなこと聞くの、変な話かも…だけど、こないだ、何があったわけ?」
「え? こないだって……」
「バイト中、急に出てったじゃん。あの後から、何か元気ないみたいだし」
「元気、ないかな?」
「ないっていうか……ないかと思ったら、急にテンションが高くなったりするから、ちょっと心配になって…」

 ……きっと、拓海のことを思い出さないように、仕事に集中しようとして、無理やりテンションを上げたときだ。やっぱ、変だったかな、俺。

「何か……自分でもよく分かんないの。すっごいヤなことがあってね、でも自分じゃそのこと覚えてなくて。で、そいつのことも大っ嫌いなはずなのに、顔見ると超キョドっちゃって、どうしていいか分かんなくなるのね」
「どんなヤなことがあった?」
「それは…………あ、」

 八尾に打ち明けようかどうか迷っていると、前方から見覚えのある姿。1人じゃない。拓海の横には、俺の知らない誰か。向こうはまだ、俺に気付いてない。

「橘?」

 どんどん距離が近くなる。あと数メートルってとこで、目が合う。拓海が俺に気が付いた。

「たち…」
「―――八尾、早く行こうぜ!」
「え? おい、何だよ、急に」

 八尾の手を取って、走り出す。拓海が声を掛けて来ようとしたのが、分かったから。
 だから気付かない振りして。拓海がいたこと自体に気付かない振りして、逃げるように走り去る。

 怖くなった。急に。隣にいるのは、誰? 一緒に楽しそうに笑っているのは。
 そんなことを思う自分がいて。
 何これ。バカ。恋する乙女か。相手は初対面の男を抱いちゃうような変態だぞ。

 なのに、何でこんな気持ちになってんの? 俺、ホモじゃないし。別にアイツのことなんか、どうでもいいし。

「橘、橘!」

 八尾に手を振り解かれて、俺はようやく足を止めた。

「何だよ、どうしたんだよ、急に!」
「……ゴメン」
「別にいいけど……何? 情緒不安定?」
「分かんない…」

 もう、自分で自分が分かんない。何がしたいんだろ。

「……なぁ、橘。さっきのヤツって、こないだコンビニに来た…」
「覚えてたんだ」
「まぁ…何となく。もしかしてお前が変なのって、そいつのせい?」
「…………」
「いや、言いたくないならいいんだけど……あの、アイツ、追い掛けてきてるけど…」
「えっ!?」

 八尾に言われて、来たほうを振り返ると、拓海がこっちに向かってダッシュしてきてる! しかもその後を、一緒に歩いてたヤツが、『どうしたんだ!?』って顔で追い掛けてきてるし。
 何この図。
 夕方、仕事帰りのサラリーマンとかOLさんで溢れた繁華街に、どうしたって不釣合いな光景。

「や…ど、ど…しよ…」
「どうしようって……」
「逃げよう!」
「へっ!?」

 驚いてる八尾の手を掴んで、俺もダッシュ。悪いけど、俺だって足には自信がある。ある…………けど。

「八尾、もっと早く走れって!」

 ダメだ、コイツと一緒じゃ。マジで、どうしよう。
 拓海の声が聞こえる。

 八尾の手を放してでも逃げようとした瞬間、

「逃げんなっ!!」

 拓海の大きな声に、思わず足が止まった。勢いのつきすぎていた八尾が、俺の背中にぶつかった。

「はぁ……はぁ、橘…」

 相当参ってるらしい八尾は、膝に両手を突いて項垂れている。息を整えながら、でも俺は後ろを振り返らない。

「何で逃げたんだよっ!」

 息を切らしてる拓海が、俺の肩を掴んで、無理やり振り向かせた。
 何でって……お前こそ何でここまでして俺のこと追い掛けて来るんだよ…。

「拓海、何なんだよ、急に!」

 拓海と一緒に歩いてた男もようやく追いついて、苛立たしげに声を上げた。

「拓海?」
「真琴、悪ぃ、先帰って」
「はぁ!? おま……人をここまで走らせといて……」

 連れの男の文句を気にするふうもなく、拓海は、今度は八尾に、「ちょっと彼のこと借りてきますけど、ご心配なく」 とか言ってる。
 八尾もちょっとは何か言ってやればいいのに、脳に酸素が行き届いてないせいか、「はぁ…」とか間抜けな返事をしてるし。

 そして俺は、わけの分からぬまま、拓海に腕を引かれて。
 何これ。 意味分かんないよ。何なんだよ。こんな自分勝手なの。
 ばか。お前みたいなヤツ、嫌いだよ。
 大っ嫌い。人の気持ちを引っ掻き回して。


 大っ嫌いだよ。




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

09. 思い出させてあげようか


 ネオンが輝き出した雑踏。人ごみ。俺は拓海に手を引かれて歩いてる。どこに向かってるのか、全然分かんない。

「ねぇ……どこ行く気? つーか手、放してよ」

 聞いてない。いや、聞こえてるだろうけど。

「ねぇってば!」

 方向的には俺んちのほうでもないし(俺んちの住所は知らないはずだから、向かえるはずもない)、前に行った拓海の家のほうでもない。駅とも逆方向だし。

「拓海……ねぇ…」

 何で何も言わないわけ? 何か言いたいことがあったから、わざわざ追い掛けてきたんでしょ? 手を引っ張ってんでしょ?

「ねぇっ!!」

 何も言わない拓海にイライラして、その手を振り解いた。

「何なんだよ、急に! もうわけ分かんないっ!」
「悠ちゃ……」
「気安く呼ぶなよっ! 何だよ、もう! どうしたいんだよ!! 俺に構うなよっ! お前のことなんか知らないよ! もう俺のことなんかほっといてよ!!」

 感情が爆発して、一気にそれをぶちまける。自分でも何言ってるか、分かんない。感情が昂り過ぎてて、涙が溢れてくる。
 通り過ぎてく人たちが変な目で俺らのことを見てるのが分かったけど、もう抑えられなくて。

「泣くなよ…」
「泣かすなよ、バカ……もぉ…」

 ダメだ。涙が止まらない。助けて。

「……ゴメン」

 相変わらず俺は泣きじゃくってて。拓海は謝りながら、通りの隅のほうへ俺を引っ張って行ってくれる。

「……さっきさ、擦れ違うとき、俺の顔見て急に逃げてったじゃん? あのホラ、八尾くんだっけ? 彼と。追っかけてるうちに何か気が昂っちゃって……。ごめんなさい」

 腰を90度に折って頭を下げてくるバカ。ホント、変なヤツ。

「お前さぁ……こんなとこまで俺の手引っ張ってきて、一体どこ行くつもりだったの?」
「……いや、それは…」

 その情けない顔を見てたら、何かもうおかしくなっちゃって。さっきまで泣いてたくせに、バカだな、俺も。

「もう……こんな顔じゃ、八尾心配させるだけだから、戻れないよ。何とかして」
「何とかって…」
「お前のせいで、八尾が心配してて。心配のし過ぎでアイツがハゲちゃったら、どうすんの?」
「え? それって俺のせいなの?」

 焦る拓海がおかしくて、俺は「そうだよ」って言ってやる。

「参ったな…。このまま悠ちゃんのことお持ち帰りしようと思ったのに、彼の髪の毛を心配したら、それも出来ないや」
「またお持ち帰りする気だったんだ?」
「あのときのこと、思い出させてあげようかなー、なんて」
「思い出させて…………どうすんの?」
「だってさ、忘れちゃってるわけでしょ。あのとき俺が…………」




「見知らぬあなたとの10のお題」

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カテゴリー:拓海×悠也

10. そして再び (前編)


 2度目の、彼の部屋。
 あの日、痛い頭を抱えて起きたベッド。拓海は床に落ちてたけど。今度はその彼に押し倒されてて。

「ちょっ…あの…」

 この体勢は…。
 やっぱ、あの、アレですよね? そういうことですよね?
 え、思い出させるって、やっぱそういうことなの? 言っても思い出せないなら、体で思い出せって?
 もっと抵抗したほうがいいのかな? だってこのままじゃ、完全に拓海のこと、信用しちゃったみたいじゃん。

「悠ちゃん、何考えてる?」
「……お前のこと」
「マジで? 嬉しいな」
「お前がバカで、悪い男かもしれないって」
「……あんまり嬉しくないな。バカかもしれないけど、優しいよ?」
「他に、誰にそんなこと言ってんの?」

 そう言えば、拓海の顔が少し曇る。
 だってさ、疑ったってしょうがなくない? 初対面の酔っ払いを抱いちゃった男だよ?
 普段からそんなことしてるんだなって、こんなこと言っていろんな人を誘ってるのかもって、そりゃ思っちゃうじゃん。
 でも、こんなとこにノコノコ付いて来て、まんまと押し倒されちゃってる、俺も俺だけど。

「悠ちゃんだけだよ?」
「…信用できない」
「何で?」
「だって、」

 嫌な沈黙。
 顔の距離が、すごく近い。

「思い出させてやるって、言ったでしょ?」
「思い出さなかったら?」
「どうしよう」
「…、」

 ねぇ、俺はホントにあの夜、お前に抱かれたの?
 今日またこうやってセックスすれば、そのこと、思い出す?
 思い出せば、そのときのことを思い出せば、お前のことを信用できるようになるの?

 どうせいろんな人にそんなこと言ってんだろ? て疑う気持ちと、俺だけだって言う拓海の言葉を信じたい気持ち。

 どうしたらいいんだろう。
 俺は、どうしたいんだろう。

 きっとここで拒絶したら、拓海は俺のことを解放してくれるだろうけど、でも、きっと、それきりだ。
 もう会うこともないだろうし、今日みたいに街で偶然会ったって、追い掛けては来てくれない。

 俺は、どうなることを望んでる?




「見知らぬあなたとの10のお題」



長いので分断しました…。次回で終わります。
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10. そして再び (後編) R18


*R18です。いきなりそれっぽい感じで始まりますんで、苦手な方はご注意ください。



「悠ちゃん?」

 ………………。

「いいよ。思い出させろよ」
「…ん、分かった。ね、キスしていい?」
「聞くな、そんなの」

 ……ねぇ、あの夜も、こんなふうに聞いたの?

「……ん…」

 女とするのとは、全然違うキス。舌を入れられて、口の中を蹂躙される。こんな、攻められるみたいなの、知らないよ。

「ゃ…ちょ…」

 キスしながら、拓海の手がシャツの裾から入ってきて、ビックリして体を捩るけど、うまくいかない。

「や…ヤダって…」
「大丈夫だから……」

 それだけ言って、また深く口付けられる。拓海の手は、俺の胸をいやらしい手付きで撫で回して。

「ぅん…、はぁっ……」
「悠ちゃ……悠也」

 離れた唇が、耳元で俺の名前を呼ぶ。ゾクッ…と、背中を快感が駆け抜ける。コイツに名前、呼ばれただけで感じちゃうの? 俺って…。

「…ッ、」

 拓海の手が俺のジーンズの前に触れた。自分でも分かる。キスだけで感じてるの。もう熱くなってて。直に触らなくなって、きっと拓海も気付いてる。

「続き……するよ?」
「…………」

 答えられない。続きって? まったく分かんないわけじゃないけど、でも未知の世界。なのに体はどんどん熱くなるし。

「ちょっ……」

 ジーンズの前を広げられて、脱がされる瞬間はちょっと抵抗したけど、ムダだった。服を全部脱がされて、拓海も自分のシャツを脱ぎ捨てる。
 俺、コイツに抱かれるんだ……。
 ボンヤリ思ってると、身を屈めた拓海がいきなり俺のを口に咥えた。

「ちょっ、やっ……待って…あぁっ……」

 ビックリして拓海を引き剥がそうとしたけど、ダメだった。俺だって鍛えてるけど、拓海のほうが力があって、その体を退かせられない。

「ヤダ……お願い、やめて…」
「何で? 気持ち良くない?」
「はぅっ…」

 丁寧にそこを愛撫されて、段々と頭の中が白んでくる。抵抗したい気持ちと、このままこの快感に流されたい気持ち。クラクラする。

「あ、あぁ……もぉ…」
「イッていいよ。気持ちいいでしょ? ね、イッて?」
「ひぁっ……あぁっ!」

 ドクリ。抵抗し切れない俺は、拓海の口の中で達してしまう。それでも拓海は口を離してくれなくて。ゴクッ……と、拓海の喉が鳴るのが分かった。まさか…。
 ゆっくりと拓海が離れてく。その姿を視線だけで追う。拓海の、白く汚れた唇。赤い舌が舐め取って。汚れた手もキレイにしていく。

「ん?」
「……飲んだ?」
「んー……うん。ヤダった?」
「バッカ、AVじゃないんだから! そんなことすんなよ!」
「いいじゃん、俺が飲みたかっただけだし」

 平然とそんなこと言って、拓海はガサガサとベッドサイドの棚を漁り出して、取り出したのは小さなビン。何かピンク色した液体が入ってる。

「……それ、何?」
「これ? ローション。だって、慣らさなきゃでしょ?」

 …………慣らす? え? もしかして、

「ちょ…やっぱヤ……」
「ダーメ。途中棄権は認めません」
「だって、こわ…」
「大丈夫……痛くしないから」

 優しい顔で笑い掛け、ホッペとか耳元にキスしてくれる。唇にしないのは、きっとさっきフェラしたせいだから。拓海はてのひらにピンクのローションを垂らして、指先に絡ませてる。

「拓海……あっ…」

 軽々と片足を持ち上げられる。怖い。恥ずかしい。俺、この前はこんなの普通にしてたの?

「悠ちゃん…」

 ヤダ…そんな優しい声で名前呼ばれたら……ほだされるっ…!

「ホントに嫌? 無理ならやめ……」
「恥ずかしいんだから、さっさとしろ!!」
「イテッ」

 この恰好がすごく恥ずかしくて、まともに拓海の顔なんか見れなくて、ギュッと目を瞑ったまま、抱えられたほうの足の踵で、拓海の背中を蹴っ飛ばした。

「……もう、嫌って言ったって、止めないよ?」
「いいから! そのかわり、痛くしたら承知しないからなっ!」
「最高に気持ち良くしてあげるよ」

 何だよ、その自信。バカじゃねぇの。女抱くときも、こんななわけ? あ、いや、ホモだから、女は抱かないのか。女相手じゃ勃たないのかなー…………て、あれ? こんなこと、この間も思ったよな、俺。あれ?

「ギャッ!」

 脳内で、ぼんやりと何かを掴みかけていたのに。
 突然、おしりの、いや、その……ちょっと人には言いたくないような部分に、濡れた感触がして。
 ビックリして、反射的に目を開けて体を起こしたら、とてもじゃないが見れたもんじゃない光景がそこにはあって、俺は再び目を閉じた。
 もう、途中でやめるつもりはないから。
 たとえ拓海が、ローションで濡れたその指先を、俺のおしりの間に這わせてたとしても。

「平気?」
「へい、き…」

 ……じゃ、ないけど。
 でも。

「うぅ~…」

 指が…指が中に入ってきてるっ…!

「我慢して。慣らさないとツライから、ね?」

 子供をあやすような言い方。
 前も、こんなふうに言われた。何のとき? 言ったのは…………拓海?

「あ、ぁ、やぁ……ヤダぁ…」

 何とも言えない異物感に、思わず泣き声になる。
 もう何か泣き出したい。
 痛いのか、苦しいのかよく分かんないけど、とにかくこの時間が、早く終わってくれたらと思う。

「ひ、ぁっ…」

 目を閉じたまま、ずっと下半身にだけ意識を飛ばしてたら、いきなり腹筋を撫で上げられて、乳首をつままれた。
 自分でも、体がビクッてなったのが分かる。
 何、俺、こんなトコいじられて感じてんのかな。うぅん…感じてんのかどうかなんて、よく分かんない。何かムズムズする…。

「いじられんの、好きだよね、ここ」
「んぅー…」
「乳首。さっきより俺の指、飲み込むようになったよ?」
「は…ぅ、ん…」
「ね、もう1本、入れていい?」
「入んな…」
「入るよ。この前も、入れたでしょ?」

 この前も?
 あぁ…この前も、無理だって言ってんのに、何本も指入れてきた……コイツ…。

「はぁっ…!!」
「ホラ、3本入った…」
「ん、ぁ…あぁ…、な…もぉ…」

 俺の中を、拓海の指がグチャグチャに動いてる。
 も、ヤなのに、乳首はずっといじられてるし。
 全身の感覚が、もうおかしい。

「悠ちゃん…………いい?」
「……ぇ…?」
「入れて、いい…?」

 真剣みを帯びた拓海の声に、うっすらと目を開ければ、思いのほか近くに拓海の顔のアップ。
 何て答えたらいいのか分からなくて、目を逸らした。

「沈黙は、肯定とみなします」
「…………」
「……いいの?」

 何回も聞くなって、バカ!
 最初にいいっつったじゃんか!

「…んっ、」

 ズルリ。
 まさにそんな感じで、拓海の指が中から出てった。
 やっと異物感から解放されて、ホッと息をついたのも束の間。

「あぁーーーっっ!!」

 今度は、さっきとは比べもんになんないくらいの質量が、俺の中に再び入ってこようとして。

「あ、や、無理ぃっ…」
「クッ…力抜いて…」
「ヤ、ヤ…無理、む…」

 無理、無理、無理、無理!! もう無理!!
 だって、こんなのっ…!

「悠ちゃ…悠、ふぅーって、息して…?」
「ふ、うぅ…」

 苦しそうな拓海の声に、何とか俺も従おうとするんだけど、息なんてそんなの、全然出来ない。
 今までどうやって呼吸してたのか、全然分かんない。

「うわっ…あっ、あんっ…」

 拓海の手が、あまりの痛みに萎えかけていた俺の前へと伸びて、何の前触れもなくそれを扱き始めたから。
 痛みと苦しさに集中したほうがいいのか、その中でかすかに芽生え始めた快感に意識を持っていったほうがいいのか分からなくて、頭が混乱してくる。

「ぁ…あ、ぅん…」
「悠、悠…」
「ん…ぁ…」
「目、開けて? 俺のこと、見て…?」
「あ…?」

 拓海…。

「動くよ?」
「…ん、あぁっ…」

 両足を抱えられて、腰をガクガク揺さぶられる。
 うぅー……痛いけど、痛くないけど、早い動きに、意識が付いていかない。

「悠……好き、好きだよ…」

 何度も囁かれて。

 あぁ…そうだ。
 女相手じゃ勃たないのかなー…て思った相手も。
 子供をあやすように宥めてきたのも。
 無理だっつってんのに、やめようとしなかったのも。

 …………って、言ってきたのも…。

「たく、み…」
「…ん? 何…?」

 酔ってたけど、酔ってたせいじゃなくて。

「はぁ…ぁ、ん……好、き…」

 結局、だから。
 そういうことなんだよ。
 俺はコイツのこと、好きになってて。

「……俺もだよ…、俺も悠のこと、好き…」

 あのとき、何度もそう言ってくれたから。
 好きだって、言ってたの。
 ゴメンね、忘れちゃってて…。

「ん、や…イク、イキそ…」
「……ん」





『あのときのこと、思い出させてあげようかなー、なんて』
『思い出させて…………どうすんの?』
『だってさ、忘れちゃってるわけでしょ。あのとき俺が…………』

 ―――――好き、て言ったこと…。




「悠、好き…。もう忘れないでよね…」



 青臭いキスで唇を奪われた後、閉じた瞼の裏が、白く染まった。





*END*




「見知らぬあなたとの10のお題」



 果たして人は、こんなに簡単にホモになれるものなのか。
 うぅん…ホントは悠ちゃん、もっとかわいくなるはずだったのに。結局体で思い出してしまいました…。

 ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
 拍手やコメントをくださったみなさん、ランキングクリックしてくれたみなさん、励みになりました。本当にありがとうございました。



 ところでブログ拍手、何かお礼が書けるようになってましたね。
 前からなってました? 私が気付かなかっただけ?
 今まで返事を書こうにも、どうしたらいいのか分からなくて、何のお礼も出来ずにいましたこと、この場を借りてお詫びします。
 でも全部大切に読ませていただきました。
 これからは「公開」設定になっているものについて、きちんとお返事していきますね。
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遥斗×真琴 INDEX


↑OLD ↓NEW

おまけの話 *拓海×悠也「見知らぬあなたとの10のお題」からの続きです。

■「襲い受10のお題」 (tittle:Neptuneさま)
 01. つれない返事
 02. しつこい。
 03. 怒ってる?
 04. 心を広く持て
 05. いつもこっちから、なんて
 06. たまにはね、たまには。
 07. ものたりなーい!
 08. 温度差
 09. もう知らないんだから
 10. はいはい、俺の負け。

やわらかな夜

■Heavenly Kiss (前編) (中編) (後編) *0214 happy VD

みんなみんな愛のせい *会話SS

したい? それともしたくない? (tittle:セリフ100さま) *会話SS

■君がいないだけでこんなにも腑抜けてしまう僕を早く助けてマイハニー!
 (1) (2) (3) (4) (5) (tittle:夜風にまたがるニルバーナさま)

■愛のドーパミン漬け (tittle:少年の唄。さま)
 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

■sugar in honey (前編) (後編)

■pray (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)

old days ~真琴、初恋編~ *会話SS

old days ~真琴、カミングアウト編~ *会話SS

愛情ぎゅっ。

兄弟に15の質問 (くじらのゆりかごさま) *会話SS

Boy's life ~藤崎家編~ *会話SS

■DELIGHT (1) (2) (3) (4)

■5コール (君の声に会いたい) (tittle:約30の嘘さま)
 (1) (2) (3) *0214 happy VD

■そのキスは涙の味がした (前編) (後編) (tittle:1204さま)
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カテゴリー:遥斗×真琴

おまけの話 (遥斗×真琴)


*以下は、拓海×悠也「見知らぬあなたとの10のお題」のその後(?)のお話です。そちらを読んでからでないと、ちょっと分かりづらいかも…。



「ちょーもぉ! はーちゃん、聞いてよっ!!」

 ちょっと甲高いヒステリック気味の藤崎真琴(ふじさきまこと)の声に、向かいに座っていた小沢遥斗(おざわはると)は、モデルという職業に似合った甘いマスクを若干引き攣らせつつ、苦笑いを浮かべた。

 ちなみに「はーちゃん」とは、名前の「遥斗」に由来するあだ名である。
 すでに20歳を超えた成人男子に対して使うものではない気がしないでもないが、昔からのことなので、遥斗自身も気にしてはいなかった。

「ねぇ! ちょっと! 聞いてんの!?」
「聞いてる、聞いてるから、マコ、もうちょっと小さい声でっ…!」

 さすがに遥斗も、周囲の視線が気になったのか、興奮気味の真琴に宥めるようにそう言う。
 ここが2人きりの空間なら、多少我慢をして真琴の愚痴に付き合えるのだが、何しろここは、最近出来たばかりの、流行りのオープンカフェだ。
 たいていはカップルか、女の子同士という組み合わせのところに、男の2人連れ。ただでさえ目立つところに来て、真琴の大声だ。
 周囲の視線を(決していい意味でなく)集めまくっていて。

「だからぁー、拓海ってば、マジでひどいんだよ!? 人のこと散々走らせといて、結局帰れとか言っちゃってさぁ」

 まだ興奮冷めやらぬ調子で真琴が訴えるのは、先日の、拓海との一件だ。
 買い物帰り、何かに気が付いた拓海が、いきなり荷物をみんな真琴に押し付けて走り出したのだ。
 訳の分からない真琴は、両手いっぱいに荷物を抱えたまま真琴を追い掛けたのだが、追い付いた途端、拓海に「先に帰ってくれ」と言われてしまったのだ。

「で、結局拓海は何を追い掛けたわけ?」

 マジあり得ねぇ! を繰り返す真琴に、遥斗は困りながらも聞き返した。

「変な子」
「は?」
「何か知らない変な子が走ってたと思ったら、その子を追い掛けて、拓海が走り出したわけ。で、結局その子連れて、帰ってっちゃったの!」
「お持ち帰りしたってこと? 何、そんなに変な子だったの?」
「…………ちょっと、かわいかったけど」

 でも、俺には負けるけどね! と、負けず嫌いの真琴は、しっかりそう付け加えた。

「あれ、それってもしかして、こないだ拓海が言ってた、新しい恋人のことかな? 出会いのいきさつまでは聞かなかったけど…」
「かもね! で、ムカついたから、拓海が預けてった買い物のヤツ、まだ返してない」
「返しなよ…」

 どうせ音楽の趣味だって合わないし、服だってサイズが違い過ぎて着れないんだから…。

「あーもう! 話したら、思い出して、何かまたイライラしてきた!」
「えぇっ!?」

 普通そういうのって、話してスッキリするんじゃないの!?
 ていうか、今、散々愚痴を聞かされた、俺の立場はっ!?

 唖然と固まる遥斗の気持ちなど知る由もない真琴は、やけ食いでもするつもりか、カフェ・オ・レのおかわりと、サラダとパスタとサンドイッチを注文している。

「ちょっ…マコ!」

 遥斗が我に返ったときには、すでに注文を聞き終えた店員が去っていってしまって。
 注文したものの、元が小食の真琴が、そんなに頼んで全部食べ切れるわけがない。とすれば、当然残りは遥斗のほうへと回ってくるわけで…。

「はぁ~…」

 溜め息をつく遥斗に、真琴はキョトンとしている。

「マコ、そんなに頼んで、全部食べ切れるの?」
「んん? でも、はーちゃんも食べるでしょ?」
「………………」

 ここに来る前に、昼食をとったばっかりですが!
 けれどしかし、ここまで当然のように言われると、反論する気も起きない。

「こんなに食べさせて、俺のこと太らす気? まぁマコは痩せ過ぎだから、もうちょっと食べたほうがいいだろうけど」
「えー? じゃあ、食べ終わったらちょっと運動しよっか」
「運動? 何? 歩く?」
「ううん。ホテルでエッチなこと」
「…………、マコッ!!」


 周囲のお客が一斉に2人のテーブルを見たのは、真琴の爆弾発言のせいなのか、遥斗の大声のせいなのか、それは謎である。


*END*




 何かいきなり……誰これ!? て感じですけど。
 マコちゃんのほうは、ちょろっと出てきましたよね、本編に。
 えっどこに!? てくらいの出演ですけど。
 一瞬だけ名前を呼ばれて、二言三言、話しただけですけど。

 まぁ…今後、この2人も書いていきたいなぁ、という紹介でした。


 それにしても、はーちゃんは、予想以上にヘタレな子になってしまった…。
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カテゴリー:遥斗×真琴

01. つれない返事


side:真琴

 ねぇ、みなさんの恋人って、何歳ですか?
 俺の恋人はね、俺より3つ年上です。
 3つも上なんて、オッサンじゃん! って思うかもしんないけど、俺まだ20歳だから、相手は23歳。若いでしょ?

 あ、オバサンじゃなくてオッサンなの? って思った?
 そうなんです。
 俺の恋人、男なんです。
 ちなみに名前は小沢遥斗。雑誌とかのモデルをやってます。

 で、今日は久々にオフが貰えて、昼間からお家でゆっくりしてるんだけど……。

「ねぇ~はーちゃ~ん」

 とびっきりの甘い声で呼んだのに。

「んー?」

 はーちゃんは雑誌から顔も上げないで、適当な返事を返してくる。
 むぅ~。
 はーちゃんの側にずり寄ってって、シャツの裾を掴んで揺らす。

「ねぇってばぁ~」
「だから、何?」
「こっち見てよぉ~」

 見て見てぇ! って、かわいくアピールしてんのに、はーちゃんってば、チラッとこっちを見て、「何?」って言った後、またすぐに雑誌を見始めた。

 何でぇ~~~!!??

 だってさ、久々に2人きりで1日中、一緒にいられるんだよ!? いや、ゆっくりまったりするのもいいけど、これってちょっと、まったりし過ぎじゃない!?
 何でそんなにつれない返事しかしてくんないの?

「はーちゃんてばぁ~…」




「襲い受10のお題」

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02. しつこい。


 …………みなさんの恋人は、何歳ですか?
 俺の恋人、俺より3つ年上です。でも俺まだ20歳だから、相手は23歳。
 何だ若いじゃん、って思った?
 そりゃそうだよね。23歳って言ったら、普通、まだまだ若いよね。
 俺もずっとそう思ってたんだけどね、この小沢遥斗だけはそうじゃなかったみたい!!

「はーちゃん、こっち見て」
「はいはい」

 飛び切りの甘い声と、超スペシャルな笑顔ではーちゃんのことを呼んでも、チラッとしかこっち見てくんないから、はーちゃんの両頬を挟んで、無理やりこっちを向けさせた。

「何? マコ」

 ムカッ。
 何でそんな顔!? 俺のほう見るの、嫌なのっ!?
 でもここで怒っちゃダメだ。ケンカなんかしたくないしね。

「ねぇ、いつまで本読んでんの? 俺、つまんない」
「そう? なら、どっか出掛ける?」
「……出掛けない」
「だってつまんないんだろ?」

 そうじゃねぇって!
 お出掛けしたいんじゃなくて、部屋でもっとまったりしたいの!
 あー、だからこんなふうなまったりの仕方じゃなくて、2人でもっと、ベタベタ、イチャイチャしたいわけ!!

「じゃあ、何?」
「はーちゃん、チューしよ?」

 シャツの裾掴んだまま、上目遣いで言ってやる。
 どんな男だって、一発で落ちちゃう、とびっきりのヤツ。これで落ちなきゃ、男じゃないね!!

 …………でも。

「は? 何急に」

 遥斗、お前は男じゃない。
 恋人がここまで誘ってんのに、何で全然普通なわけ!?
 普通、チューくらいするっしょ!? そんでもって、その続きだって…………だって今日、1日一緒にいられるんでしょ、俺たち!!

「ねーえー、チュウ~。チューしよっ?」
「何なんだよ、急に」
「いいじゃん、チュウくらい。減るもんじゃねぇんだからぁ。ね!?」
「チュウ"くらい"って…………その程度だったら、チュウ"くらい"我慢しなさい」

 ウッソー!!
 断わられた! チュー断わられた、俺!!
 ショック!!

「はーちゃ~ん」

 ユサユサ。
 懲りずにはーちゃんのシャツを揺さ振ってたら、

「…………マコ、しつこい」

 ガーン!!




「襲い受10のお題」

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03. 怒ってる?


 再び雑誌に視線を向けてしまったはーちゃん。
 そっと顔を覗くと、心なしか眉間にシワが寄ってるような…。

「…………怒ってる?」

 尋ねれば、「別に」って返事。でも全然こっち見てくんない。
 ヤバイ、マジで怒らせちゃった? 俺、そんなにしつこかったかな? ……だって、はーちゃんが全然構ってくんねぇんだもん。
 でもこれ以上こじらせたくないから、ちょっと大人しくする。

「……………………」

 ……つまんねぇ。
 テレビも見たいのないし、ゲームは飽きちゃったし、DVDもみんな見た。することない!
 あー、つまんねぇ、つまんねぇ、つまんねぇ!!

 ポスッてはーちゃんの肩に顎を乗っけて、はーちゃんが読んでる雑誌を覗き込む。何か宇宙関連の雑誌っぽい。こんなのの何がおもしろいの? 眠くなるだけじゃん。

「はーちゃん、本……おもしろい?」
「うん」
「あ、そう」

 チェッ。
 何だよ、俺がいるのに、それより本を選ぶのかよ。
 バカバカバーカ、ハーゲ。
 でも離れたくないから、顎を乗っけたまま、後ろからはーちゃんにギュってしがみ付く。

「…………」

 ちょうど目の前にあるはーちゃんの耳を見てたら、何となく悪戯心が沸き上がってくる。

「んふ」

 俺は自分の唇をペロッて舐めてから、はーちゃんの耳を、はむ、って、唇で食んだ。

「―――ッ!!」

 予想外の行動だったのか、はーちゃんの背中がビクンってなって、パッと俺のほうを見た。

「マコ!」
「ね、構って?」
「…………」




「襲い受10のお題」

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04. 心を広く持て


side:遥斗

「…………藤崎くん。何でこんなことしたのか、言ってみなさい」

 背中に張り付いたまま、"してやったり"みたいな顔をしてるマコに、少しウンザリしながら尋ねた。
 久々の1日まるまるのオフ。
 マコにはもちろん会いたかったから、こうやって会いに来てくれたの、すごく嬉しいんだけど…………出来ればもうちょっと、のんびりまったりしていたい。
 ずっと読みたかったこの雑誌も、やっと読めるって思ってたのに。

 けれどマコはどうやらそうじゃなかったらしく、さっきから何かとちょっかいを出してくるわけで。
 いや、マコが何をしたいかなんて分かってるけど……。
 ―――まだ真っ昼間なんですが。

「マコ、」
「フーンだ」

 ツーンと、そっぽを向いちゃったマコ。でも相変わらず背中にへばり付いたままなんですが。
 やれやれ。
 しょうがない。ここは心を広く持って。

「マーコちゃん。何でこんなことしたの?」
「…………だって、はーちゃんに構ってほしいんだもん」

 "だもん"って……すっかり甘えん坊になっちゃってるなぁ。かわいい。

「何だよ、何笑ってんだよ! バーカ、バーカ!」

 ありゃりゃ、とうとう機嫌、損ねちゃったかな?
 マコは俺の背中から離れて、もそもそとベッドに上がってしまった。
 う~ん、マコをご機嫌斜めにすると、後が厄介だしなぁ…。

「マコちゃん、ゴメンね。許して?」
「ヤ」
「許してよ、ねぇ」
「ヤーダ」
「どうしたら、許してくれる?」

 ヤダヤダ言いながら首を振っていたマコが、俺の最後の一言に、ピタッと動きを止めた。
 まぁきっと善からぬことを考えてるんだろうけど……。




「襲い受10のお題」

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05. いつもこっちから、なんて


「誘って?」
「は?」

 クルッと振り返ったマコが、満面の笑みでそう言った。

「誘ってよ、俺のこと」
「誘うって…」

 えーっと……まぁ、今までの話の流れからして、"そういう"意味での『誘う』だとは思うけど…。

「だってさ、エッチするとき、いっつも俺から誘ってんじゃん。だから、ね? はーちゃんから誘ってよぉ」

 …………やっぱり。
 って、マコの『誘ってよぉ』って、その言葉と仕草が、十分誘ってるけどね。
 それに、今まさにヤル気満々のマコを、今さらどうやって誘う必要があるんでしょうか…。

「……マコ、外見てごらん? まだ明るいでしょ?」
「だから何?」
「そういうのは暗くなってから……」
「ダメー!! ダメダメダメ! 今! じゃなきゃ、許してやんない!」

 フンッ、と顔を背けるマコ。
 どうあっても、今この場でマコのことを誘わなきゃ、許してくれないみたい。
 はぁ…。
 この興奮気味のマコを宥めるのと、今さら誘うのと、一体どっちが簡単なんだろう。




「襲い受10のお題」

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カテゴリー:遥斗×真琴

06. たまにはね、たまには。


 ……てか、マコって、昼間っからこんなに発情してる子だっけ? 普段から、テンションは高めだけど。
 ってことは、それだけ溜まってるってこと?
 俺、そんなに相手してなかったっけ?
 う~ん、そんなにご無沙汰とも思えないんだけど。

「…………」

 まぁ、それこそせっかく休みなんだし、マコにここまで言われてんだし、たまには…………いっか。

「マコちゃん、こっちおいで?」
「…何で? 用があるなら、はーちゃんがこっちくれば?」

 ぶずくれた顔。
 ずいぶん斜めってるみたい。って、俺のせいか。
 じゃあしょうがない、動くとするか。

「……真琴、ゴメン」

 ベッドの縁に腰掛けて、そっぽを向いてるマコの体を後ろから抱き寄せる。

「イヤ、もう許さない」

 頬を膨らませてるマコの耳元に、唇を寄せる。

「機嫌直せよ」

 少し声のトーンを落として、耳に口付けたまま囁く。ピクンと、マコの背筋が震えたのが分かった。でもわざと気付かないふりで、マコの耳たぶをしゃぶって、舌を耳の中に入れる。

「ッ……ヤ…」

 前に回した腕を、マコがキュッと掴んだ。

「真琴……感じてんの? これだけで?」
「かん…じてなんか……ないっ!」

 ホント、こういうとこ、意地っ張りなんだから。
 まぁいいや。
 マコがそう言うんだったら、もっと本気出して誘わないとね。




「襲い受10のお題」

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カテゴリー:遥斗×真琴

07. ものたりなーい!


side:真琴

 …………ヤバイ。
 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
 はーちゃんの低い声、ゾクッとくる。
 でもこんなんで感じちゃってたら、誘われちゃったら、すぐにはーちゃんのこと許してやんなきゃいけなくなる。そんなに簡単に許してやるつもりないし。
 だって俺、すごい怒ってんだから!!

「んっ…」

 やっと耳から離れたはーちゃんの舌が、ツーッて首筋を辿ってく。

「真琴、キスしていい?」
「ヤダッ…」

 精一杯の拒絶。
 ホントは超したい。はーちゃんとキスしたい。

「真琴とキスしたい……キスして真琴の口ん中、舌入れたい」
「バ、カ…」
「だって真琴の口の中、すごい甘いから。で、舌はすごい柔らかいの……真琴、知ってる?」
「知らなっ…、はぁっ……」

 吐き出した息が、思ったよりも熱くて、甘くて。
 もう、無理。

「はーちゃん!」

 俺は体の向きを変えて、正面からギュッとはーちゃんに抱き付いた。

「キス……してよぉ…」

 懇願すると、はーちゃんが笑みを深くして、唇を重ねてきた。柔らかい唇。触れ合うだけのキスがもどかしくて、唇を開いて誘うけど、はーちゃんは上唇を挟むだけ。
 イヤイヤ。こんなんじゃ、足んないの。
 はーちゃんの唇を舐めて、その口内に舌を入れる。そしたら、はーちゃんの舌が逃げるみたいに動くから、俺は必死にそれを追い掛ける。

「ん、ふっ…」

 まずい……酸素足んない。
 でも、まだキスしてたい。はーちゃんの口の中…………

「ふぁっ…!!」

 唐突に唇を離されて、俺は大きく息を吸い込んだ。

「やぁん、はーちゃん」

 まだキスしたい~~~。
 なのにはーちゃんは、俺の顎を伝った唾液を舐め取ったかと思うと、

「誘われた?」

 なんて言ってくる。

 は? 何のこと?

「誘えって言ったの、マコだよ?」

 さっきまでの色っぽい顔じゃなくて、いつものほのぼのしたはーちゃんの顔。
 にしても、誘えって…………

「あっ、」

 そうだ! さっき、はーちゃんのほうから誘ってくんなきゃ許してやんないって言ったんだ!
 …ってことは……。

「どう? お望みどおり誘ってみたけど、許してくれる?」

 あーーー!! 普通に戻ってる!!
 何でぇ何でぇ!? さっきまでの雰囲気はぁ!? ねぇねぇ、これからでしょ!?
 こんなの全然物足りなーい!!




「襲い受10のお題」

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カテゴリー:遥斗×真琴

08. 温度差


 何で? 何で? 何で?
 何ではーちゃんはそんなに冷静なわけ?
 何なの、この温度差。
 俺1人で盛ってるみたいで、超恥ずかしい。

「はーちゃ~ん、続きはぁ?」
「後でね」
「やだぁー。今じゃなきゃヤダ! ねぇ~」

 俺がこんなにおねだりしてんのに、何で全然誘われないわけ?
 ハッ!
 もしかして俺って、全然魅力ない? 色気ない!?

 ―――ガーン……。

 そっか、だから今までこんなに誘ってんのに、はーちゃんは全然その気になれなかったんだ…。
 ど、どうしよう!? どんなふうにしたらいいかな? はーちゃんって、どんなのがいいんだろう。
 えっと……確か前、雑誌のインタビューで答えてたのは、"清楚な子"だよね。
 …………でも、清楚な子って、誘ったりすんのかな??

 ??????

「―――あ、そっか!」

 清楚な子は、誘ったりしないんだ!!
 なのに俺は、必死になってはーちゃんのこと誘おうとしてたから、ダメだったんだ! 逆効果だったんだ!!
 よし、分かった、これからは清楚だ!

 えっと、えーっと……じゃあ、どうしたらいいんだろ?
 あ、こんなふうに足崩して座ってたらダメだよね。ちゃんと座って……それから、それから…。




「襲い受10のお題」

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カテゴリー:遥斗×真琴

09. もう知らないんだから


 俺が一生懸命、清楚な感じでやろうって思ってがんばってたら、はーちゃんがきょとんとした顔で俺のことを見てた。

「……マコ、何やってんの?」
「え?」
「さっきから何モゾモゾしてんの? 足、痺れた?」
「違う!!」

 バカ、そうじゃねぇだろ。
 清楚だっつーの!

「ねぇ…?」

 下から顔を覗き込んでみるけど…………反応なし。
 あれ?
 こんな感じじゃ、ダメ?

「はーちゃーん」
「ん? 何? さっきのキスだけじゃ、足んなかった?」
「ッッ!! たっ……そんなこと、ない」

 ホントは全然足んないけど。
 でもきっと、清楚で上品な子は、そんなこと言わない……と思う。

「はーちゃん…」

 うぅ……何かホントに足痺れてきちゃった。だって正座……苦手。
 何ではーちゃん、全然反応しないのかなぁ?
 もしかして俺、"清楚"の意味、履き違えてる?

「ねぇ、マコ」
「何?」
「何で正座してんの?」

 あ、やっと正座に気付いてくれた。
 でも、清楚を目指してます、とか言っちゃったら全部台無しだから、それは言わない。

「足、痛くないの?」
「い……たくない、」
「ホント?」
「ホント!」
「ふーん」

 そう言ってはーちゃんが視線を逸らしたから、ちょっと足を崩そうと思ったら、

「r@ガdjx;slkhツ;lkjv!!!!!」

 俺は声にならない声を上げて、その場を飛び退いた。

「なっなっ何すんだよ!!」

 はーちゃんが!!
 はーちゃんが俺の足を、ツンッて。
 足痺れてんのに、ツンッてすんだよ!?

「痺れてんじゃん」
「ッッッ…!!! はーちゃんのバカ!! もう知らない!!」

 そう言って部屋を飛び出していければいいのに、何しろ足がめちゃくちゃ痺れてる真っ最中。まともに立ち上がることも出来なくて。
 プイッて、体ごとはーちゃんから背けた。
 もう絶対ぜったいぜーったい許してやんないんだから!




「襲い受10のお題」

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カテゴリー:遥斗×真琴

10. はいはい、俺の負け。


「マコ、こっち向いてよ」

 ヤなこった。絶対向いてやるもんか。
 だいたい、せっかく2人でいるのに、何ではーちゃんは1人の世界を作ろうとするわけ? 意味分かんない。昼間からエッチはともかくとして、一緒にくっ付いてたいって思う俺が変なの!?
 何だよ、大人ぶっちゃって。
 もうはーちゃんがしたいって言ったって、絶対させてやんないもん! そんで俺がどんな思いでいたか、思い知ればいいんだ!!

「マコってば」

 後ろから抱き締められる。

「ヤッ」

 もう、足痺れてんだから、やめてよっ!

「離してよ、バカ!」
「何で? こうしたかったんでしょ?」
「したくない。つーか、したくなくなった」

 そしたら、耳元にはーちゃんの溜め息。
 擽ったいし……って、何ではーちゃんが溜め息なわけ!? 溜め息つきたいの、俺のほうじゃん!!

「ゴメン、からかいすぎた」

 何だよ、今さら。
 そんなこと言ったって、許してやんないよ。

「マコ、」
「知らないよ、もう離して!!」
「ヤダ」

 グルって体を回されて、はーちゃんのほうを向かされる。

「何だよ、せっかく2人でいるのにさ、1人で本ばっか読んじゃって。俺がいる意味、全然ないじゃん! もう帰るし!」
「あー……」

 何だよ、あーって。
 今さら何かに気が付いたみたいな顔して。

「いる意味がないだなんて……それは絶対ない。だって俺も、マコと一緒にいたかったし」
「嘘ばっか。じゃあ何で本ばっか読んで、俺のほう見なかったんだよ」
「それはゴメン。でもマコの側にいたかったのは、ホントだから」
「そんな調子のいいこと信じない。だって俺があんだけ誘ったのに、全部無視したじゃん」

 チューも断わられたんだそ、俺!

「いや……だってマコ、ものすごい目がギラついてたし。さすがにあの感じで、昼間っからやってたら、持たないから」
「ギラ……別にギラついてなんかないし! それに持たないって……それって、おじいちゃんじゃん!」

 俺、そこまで溜まってないよ!!
 何だよ、何か俺、すごい性欲の固まりみたいじゃん。

「おじいちゃんだよ、俺は。マコだって、よくそう言うじゃん」
「グ…。で、でも! 俺がそんなギラついてたなら……それってはーちゃんのせいでしょ?」
「何で?」
「はーちゃんが毎日ちゃんとお相手してくれれば、そんなことないもん!」

 最近、ただでさえあんまり会えないでいたのに、せっかく会えても、3回に1回は、明日早いからとか言って断わられてたし!

「だから今日はその責任をしっかり取りなさい!!」
「わっ!?」

 俺ははーちゃんの肩をグイッて押して、その場に押し倒した。

「ちょっ、ちょっと待っ…」
「待たない」

 今まで、何となく余裕のある顔をしてたはーちゃんが、ちょっと焦ったみたいになってる。
 今日はもう何があったって、絶対最後までやらせてやるんだから!

「マコ……まだ、2時過ぎたばっか…」
「だから? んー……1回1時間として……何回出来るかな? 新記録、挑戦しちゃう?」
「…………う゛……」
「んふふ」

 俺はご満悦ではーちゃんのお腹に跨り、その唇を奪う。

「はーちゃん……好き…」

 とっておきの甘い声。上目遣い。
 いくらはーちゃんがおじいちゃんだからって、これで落ちなきゃ、嘘だね。

「マコ……分かった、俺の負けです…」
「満足させてくれなきゃ、許してやんない♪」

 にんまり笑って、もっかいはーちゃんの唇を奪った。


 やっぱりお休みの日は、2人で、ね?





*END*




「襲い受10のお題」



 話が進めば進むほど、マコちゃんのテンションが崩壊していく…。一応彼、20歳なんですけどね。20歳にしちゃ、ちょっと…(苦笑)
 それでも気に入った! という方は、ポチってしていただけると、励みになりますv →にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

 ここまでお付き合いありがとうございました。
 拍手やコメントをくださったみなさん、ランキングクリックしてくれたみなさん、励みになりました。
 バカ話ですが、彼らのシリーズはまだ続きます。というか、もう1組出す予定です。
 これからも、よろしくお願いします。
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カテゴリー:遥斗×真琴

愛してるなんて死んでも言ってやるもんか!


「ねぇ悠ちゃん、好きだって言って?」
「……拓海、寝タバコ危ないから、やめて」
「好きだって言え」
「何でそんなに偉そうなんだよ」

 情事の後の気怠い体。悠也は独り占めした柔らかな枕を抱き締めながら、隣でタバコをふかしている拓海を一瞥した。

「ねぇー悠ちゃーん」
「……全然かわいくないけど」
「言ってよー、好きって」
「何なの、急に」
「だってあんま言ってくれたことないじゃん、恥ずかしがってさぁ。俺はいつでも言ってっけど」

 タバコを灰皿に押し付け、拓海は最後の紫煙を吐き出した。

「お前はいつでもどこでも言いすぎ。外とか、余計なとこで言わなくてもいいから」
「余計なって……オープンなだけでしょ、俺は」
「少しは羞恥心を持ちなさい」
「だっていつでも言いたいんだもん。だから悠ちゃんも言って? もっとこう……包み隠さずさぁ」
「…………ふぁ~……、もう眠くなっちゃった」
「おいっ! せめて好きって言ってから寝ろ!」

 トロトロと微睡み始めている悠也を、拓海は必死に起こそうとするが、それもどうやらむだな努力に終わりそうな気配。悠也の瞬きは次第に速度を落としていく。

「悠也ぁ~」
「んー……」
「あ~あ、寝ちゃった…」
「……ん…、好、き……」
「―――へっ!?」

 慌てて悠也を見ても、彼はかわいらしく寝息を立てているだけで。

「…………寝、ごと…?」

 これが無意識なんだとしたら。

「……………………すっごい小悪魔なんですけど…………」




*END*



 拓海さん、大学では学生会の役員とかやってて、結構真面目な人なんですよ。なのに悠ちゃんの前では、こんな…。
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カテゴリー:拓海×悠也
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

智紀×慶太 INDEX


↑OLD ↓NEW

■ろくな愛をしらない (tittle:afaikさま)
 01 / 02 / 03 / 04 / 05 / 06 / 07 / 08 / 09 / 10
 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16

お陰様で清らかな生活を送らせていただいてますよ。 (tittle:セリフ100さま)
 *会話SS


■ドルチェ (前編) (中編) (後編) *0214 happy VD

■Sugar Baby! (前編) (中編) (後編) *初エチまでの道のり編

■Sugar Baby! 2 (前編) (後編) *初エチまでのドキドキ編

■Sugar baby! 3
 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) *初エチ編

慶タンの、初体験ご報告編 *会話SS

■バランス (前編) (後編)

もう行かないと、不審に思われますよ。 (tittle:セリフ100さま) *会話SS

他の人のコトなんて考えちゃダメ。 (tittle:セリフ100さま) *会話SS

■響かせてよメロウラヴ (前編) (後編)
 (tittle:夜風にまたがるニルバーナさま)

■毒か蜜かも分からない (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
 (tittle:約30の嘘さま)

■好奇心は猫をも殺す (前編) (後編)

砂糖漬けのくちびる (tittle:約30の嘘さま)

それでも好きなんだよ (tittle:約30の嘘さま)

■forever you (1) (2) (3) (4)

■愛が致死量 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
 (tittle:サディスティックアップルさま) *0214 happy VD
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カテゴリー:智紀×慶太

ろくな愛をしらない 01


【久住慶太】

 友人の松下歩(まつしたあゆむ)は、大学の同級生だが、1つ年上だ。
 それは彼が1年浪人してから大学に入ったからで、聞きもしないのに歩は「俺、高3のとき、全然受験勉強しなかったんだよねー」と、あっさり打ち明けてきた。
 それも入学式、たまたま隣になった俺に。
 結局、そのまま仲良くなって、2年生になった今も一緒にいるんだけど。

 そして俺は、歩の策略で学生会とやらに入らされて、結構忙しい大学生活を送ってる。
 学生会ってのは、高校とかの生徒会みたいなもんで、各委員会やらサークル・同好会なんかを取り仕切ってる組織のこと。
 2年の俺は結構中途半端な立場だけど、もともと人の上に立つような性質じゃないから、1年生に交じって雑用をこなすのが、主な仕事だ。

 ちなみに、俺よりずっとチャラチャラとだらしない性格の歩が学生会に入ったのは、テンション高めの同級生、藤崎真琴に誘われたからで、真琴は、友だちの春原拓海さんがいるから入ったらしい(友だちって言っても、春原さんのほうが1つ先輩で、でも昔からの知り合いらしくて、全然、先輩後輩の雰囲気じゃない)。

 それに、役員でもないのに、春原さんの友だちの相川智紀(あいかわともき)さんがしょっちゅう顔を出すせいで、意味もなく女の子の出入りが多い。
 春原さんもそうだけど、とくに彼はキラキラオーラが強いから。

 俺には無縁の世界だなぁーて思う。
 だって、相川さんには彼女が3人いるだとか、いや4人だとか、金髪のハーフとホテルに入るトコを見かけただとか、とにかく女関係の噂の絶えない人だから。

 そういう下世話な話題にはあんまり興味ないけど、自分とは世界が違うんだって、思う。
 まぁ、この容姿だもんね。
 最初から土俵が違うし。

 でもそんな人を(しかも役員でもないのに)学生会室に入り浸らせて、関係ない女の子が好き勝手に出入りして、仮にも学生を代表する組織が、こんなことでいいのかな、とは思うけど。



 ……でも。
 そんな無縁の世界にいるはずの人が、俺の隣で焼き肉食ってるんだよなぁ…。

 俺の前には歩がいて、歩の横には春原さんがいて、その向かい、つまり俺の横には相川さんが座ってる。誠に変な組み合わせ。

 歩とメシを食いに行く話をしていたところに春原さんが混じって、3人で店に行ってみれば、そこには腹を空かした相川さんがいたという。

「拓海、遅ぇんだよ。俺マジで腹減ってんだけど!」

 挨拶もそこそこに、不満をぶつけてくる相川さんに驚いてるのはどうやら俺だけらしく、春原さんは「ゴメンゴメン」なんて言いながら席に着くし、元から物事を深く考えないたちの歩は、別に気にするふうもなく、春原さんの隣に座った。
 そうなると必然的に俺は相川さんの横に。

 今さら人見知りするほどの間柄ではないけれど、何となく緊張する。
 今までそれほど話したことがあるわけでもないから、共通の話題もなくて、俺は歩と話すばかり。
 春原さんと相川さんはもともと親友だから、話題が尽きなくて、結局4人でいるとは言っても、はっきりと2対2に分かれている状態。
 まぁ、それはそれで別に良かったんだけれど。



 なのに。
 会計を済ませて店を出たところで、事態は一変した。
 歩が、約束があるからって、先に帰ると言い出したのだ。俺もそれに乗っかって一緒に帰ろうとしたら、

「じゃあ、慶太、一緒にトモのウチ行こー」

 春原さんにガシッと肩を組まれて。
 トモって誰!? て思ったら、相川智紀の「トモ」らしい。いや、それは別にいんだけど。そうじゃなくて、何で俺を誘うの!?
 ビックリして相川さんを見れば、「あぁ、いいよ」なんて簡単に了承するし、歩は助けるどころかあっさりと、「じゃあね~」なんて言いながら、帰っていった。


 結局俺は断り切れなくて、春原さんと一緒に相川さんのお宅へ。
 2人とも、別にただの大学生なのに、外見はまるでモデルのようだから、キラキラオーラ全開。
 そんな2人に挟まれて…………何か居た堪れない。
俺もこんな顔だったら、なんて贅沢は言わないけど、でもやっぱり男としては憧れる。女の子がキャーキャー言うのも、無理ないよね。

「……なぁ、俺の顔、何か付いてる?」
「へ!?」

 春原さんが携帯を持って部屋を出てから少しして、相川さんに急に声を掛けられて、俺はビクッと肩を跳ね上げた。

「な、にが…?」
「さっきから俺のこと、ずっと見てない?」
「そんなこと…」

 ……ないわけがない。
 確かにずっと見てたけれど、まさか気付かれているとは思ってなかった。
 でもずっと見てたなんて知られたら恥ずかしいし、とにかく俺は必死にごまかすための言葉を探した。

「違うの? 何か俺、すげぇ自意識過剰な奴みたいじゃん」

 煙草を片手にそう苦笑する相川さんは、その仕草の1つ1つが様になってる。何て言うか、ドラマのワンシーンのような。

「お前さぁ、その顔、わざと?」
「は? 顔? 何がですか?」

 俺、変な顔してたかな?
 っていうか、アンタらの顔のせいで軽く落ち込んでるってのに、そんなこと言われたくないんですが。
 ペタペタと両手で頬の辺りを触ってたら、相川さんがいきなり吹き出した。ベッドの上で腹抱えて……あの、タバコ危ないんですが。
 ってか、この人こういうキャラなの?

「どうした? トモの声、外までだだ漏れだけど」

 電話を終えた春原さんが、呆れ顔で戻ってきた。
 とりあえず相川さんと2人きりって状況を抜け出せてホッとしたのも束の間、なぜか春原さんが帰り支度を始めて。

「拓海、どこ行くの?」
「帰るー。悠ちゃんからお呼び出し。バイト終わったって」
「あぁ、恋人さん?」
「そ」

 ニヤッと口の端を上げて、春原さんが携帯をチラつかせる。あぁー…この人も日常の仕草がドラマだー…。
 …って、そうじゃなくて!

「あ、じゃあ俺も…」

 帰る、と続けるより先、

「じゃあ久住ー、2人で何するー?」
「はい!?」

 思わず声に出してしまいましたよ。
 だってそりゃそうでしょ? 何で相川さんが俺を引き止めるわけ?

「何だよ、嫌なのかよ」

 イヤイヤイヤイヤ、あのですね、嫌だとか嫌じゃないとか、そういう問題じゃなくてですね。何でなのか、って話ですよ。

「トモー、慶太がめっちゃ驚いてる」

 思考回路がパニック寸前の俺に、春原さんが助け船。でも顔が笑ってるんですが…。

「ま、とりあえず俺は帰るから」
「へ!?」

 春原さん! 何で帰っちゃうんすか!?

「じゃーねー」

 ヒラヒラと手を振って、春原さんが帰っていって……部屋には俺と相川さんの2人きり。
 何なの!? この組み合わせ!
 いや、親しくなるにはいいチャンスだけど、でも、でも!!

「はっはっ! お前、ホントおもしれぇヤツ! 俺と2人きりなの、そんなに嫌?」
「嫌とか、別にそういうわけじゃないですけど……相川さんこそ、俺なんかと一緒でおもしろいっすか?」

 慣れた仕草でタバコを灰皿に押し付けて、相川さんが近付いてくる。隣に腰を下ろされて、距離が……近い。
 相川さんて、何となくクールそうなイメージがあるから、こんな破顔したの、間近で見るなんて……そんなことを思ってたら、相川さんの眉間にしわが寄った。

「俺さぁ、さっきも聞いたよな?」
「え?」

 溜め息混じりにそう問われても、よく分からない。
 俺、相川さんの機嫌を損ねるようなこと、したっけ? だってほんの数秒前まで笑ってたんだよ、この人。

「その顔、わざとやってんのかって」
「か、顔って……何? そんな変な顔してます?」
「そうじゃなくて…」

 もう1度、今度はもっと深い溜め息。
 それからグイと、顔が急接近してきて。

「あ…相川さん??」

 顔が…………近いっ!!
 いくら男前の顔だって言ったって、ここまで近づけられれば、戸惑うし、逃げたくもなる。
 自然と俺の背中は反って、相川さんの顔との距離を離そうとするけれど、ジワジワと近づいてくるその顔に、距離は遠くなるどころか、俺の背中のほうが先に限界を迎えた。

「ッ…、」

 もうこれ以上反らせないってとこで、相川さんの両手が、俺の頭をガシッと掴んだ。

「な…な、に…?」

 唇に感じる、相川さんの吐息。
 じっと見据えられて。

「そんな顔でジッと見られてると、誘われちゃうんだけど」
「さそ…!? なっ…」

 そんな顔ってどんな顔!? じゃなくて、誘われるって! 誘ってないし!
 てか、何で!? あんた男でしょ!?

「ふはっ、分かりやす! 思ってること、みんな顔に出ちゃってる。かわいー」

 イヤイヤ、だって!
 俺だってポーカーフェイスくらい出来ますけど、こんな状況でそんなこと出来るわけないでしょう!?
 それより、かわいいって!?

「あの、離し…」
「ね、キスしていい?」
「はい!?」

 ビックリしすぎて、声が裏返った。
 えっと、俺の聞き間違いじゃないですよね!? いや、むしろ聞き間違いであってくれたほうがいい!

「ダメ?」
「ダメて、あの、ちょっ……ん、」

 俺がイイもダメも言う前に、相川さんは俺との距離をゼロにした。

「―――――…………」

 唇が触れ合った瞬間、その近すぎる距離、俺は思わず目を閉じた。
 いくら相川さんのほうが体格がよくて力があるって言ったって、俺だって男だし、本気で抵抗すれば逃れられないこともないはずなのに。
 俺は相川さんからのキスを受け入れていて。

「……ッ…」

 舌がっ…!
 唇を割って入り込んで来た相川さんの舌に驚いて、俺は押し返そうと相川さんの胸に突っ張っていた手で、そのシャツを掴んだ。

 逃げたいけれど、相川さんの手が許してくれない。
 徐々に俺のほうに圧し掛かって来て、さっきまでにもう反らし切れないくらい背中を反らしていた俺は、そのまま床へと倒れ込んでしまった。
 幸いにも柔らかなラグマットの上、頭はクッションに助けられ、体は痛くないけれど。

「あいか……んっ…」

 首を捩って何とかキスから逃れて、喋ろうとしても、けれどすぐにまた塞がれる。
 もう、冗談なんかで済まされるようなキスじゃなくて。

 何で? 何で? 何で?

「ッ!?」

 頭を押さえていた手が離れて、逃げようとしたけれど、それより先、脇腹を撫で上げる感触に体が震えた。

「なっ…」

 驚いて目を開ければ、まだ吐息を感じるほどの距離に相川さんの顔があって。その口元がニヤリと歪んで。

「ちょっ、やっ…」

 シャツの裾から相川さんの手が入ってくる。
 その体を押しのけようとするのに、相手は利き手じゃない左手で俺の肩を押さえているだけなのに、少しも動かせなくて。

「相川さん!」

 何なんだ? 酔ってるのか、この人は。俺は男だぞ。いや、酒なんか1滴も飲んでないはず。なのに何だって……

「ヤダッ…」

 目の前がぼやける。

「…………久住……」

 痛いほど力強く押さえ付けられていた肩への力がふと抜けて、その手が俺の眼尻に触れる。

 ……俺、泣いてる…。

 こめかみのほうへと伝う涙を拭われて、ようやく気が付いた。

「あいか…」

 肩で息をしながら呆然としていると、相川さんは俺のことバカにしたように笑って、乱れた前髪を掻き上げた。
 相川さんの突然の行動に恐怖と驚きを覚えながらも、頭の片隅にどこか冷静な自分がいて、あぁ、どこまでも様になる人だ……なんて、今さらながらに思ってしまう俺はバカか?

 相川さんが親指が、俺の濡れた唇を拭う。
 熱い指の感触。
 獣のような目だ。

「何で…」
「冗談だよ、バーカ」
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カテゴリー:智紀×慶太
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

ろくな愛をしらない 02


 翌日、授業を終えて、さっさと帰ろうと思ったのに、もうすぐ大事な会議があるから、その打ち合わせと資料作りがあるとかで、真琴に学生会室に連行された。

 まだ全員が揃わない室内は、けれど相変わらずの騒がしさで、真琴はいつもどおりハイテンションだし、歩はそれ見て笑ってるし、春原さんも、この学生会の中では1番偉いポストの高遠さんも注意しないし、俺は寝不足で頭が痛いのに。

 …………春原さん、笑ってる場合じゃないよ。俺、昨日アンタの親友に、冗談で襲われ掛けたんだよ。
 相川さんが、女の子相手に(あんな乱暴じゃないにしても)そういうことをよくしてる人なんだとして、でも何で俺なの?
 普通、冗談でも、しらふで男相手にキスなんてする? しかもあんな…。

 真琴、うるせぇよ、少し黙れよ。
 イライラする。周り、全部。
 何で笑ってんの? 高遠さんも、春原さんも、歩も。何がおかしいんだよ。
 頭痛ぇ。
 何だって相川さんは俺にキスなんかしたんだ? だから冗談だって、バーカ。本気にすんなよ。いや、してねぇし。俺、男だし。キモイよ、変態。

 あーイライラする。だから、うるせぇんだって。歌ってんじゃねぇよ。
 俺は昨日、男にキスされたんだぜ。しかもディープなヤツ。それも春原さんの親友に。オーマイガッ、今時の大学生はこんなでいいの?
 のんきに歌ってる場合じゃねぇんだって。うるせぇよ、マジうるせぇ。うるせぇって、

「―――うるせぇんだよ! 真琴!!」

 思わず叫んでいた。
 乱暴に立ち上がったせいで椅子が引っ繰り返って、テーブルを殴った音が学生会室に響いて。拳が痛い。
 シンと静まり返った室内。

「慶太、」

「……ぁ…」

 隣にいた歩に腕を引かれて、急に頭に上っていた血が冷めていった。我に返れば、みんなが驚いたような、キョトンとした顔で俺を見てる。
 困ったような、泣きそうにも見える真琴の瞳と視線がぶつかって、こんなのただの八つ当たりだ、真琴が悪いわけじゃないのに。

「……ゴメ…」

 どうしていいか分からなくて、俺は歩に掴まれていた腕を解いて、学生会室を飛び出した。
 行く宛てなんかない。
 とにかく学生会室を離れたくて、みんなから離れたくて、1人になりたくて。

 駆け込んだのは、学生会室からうんと離れた自販機コーナー。
 幸いにも誰もいなくて、俺は端のソファに腰を掛けた。

 何やってんだ、俺は。
 真琴に怒鳴ってどうする。あいつが悪いわけじゃない。悪いのは俺だ。いや、俺か? 俺は被害者だぞ。だって昨日…。でもだからって、真琴に当たってもしょうがないのに。

 もう嫌だ、頭が痛い、誰か助けてくれ…。





 カタン…。

 不意に、自分以外が立てた音が響いて、ハッと顔を上げた。

「あ…」

 どうせ歩あたりが様子を見に来たんだろうと思ったそこには、厳しいような、けれど心配げな顔をした春原さんがいた。

「慶太…」
「―――……あ…あぁ…、もう始まりますよね、今行きます」

 春原さんが、時間になるからって俺を呼びに来たわけじゃないってこと、分かってるけど、何も追及されたくなくて、春原さんに何か言われる前に早口でそう言って、ソファを立った。

「慶太、」

 なるべく春原さんと目を合わさないように、さっさと横をすり抜けようとしたら、通り過ぎ際、春原さんに手首を掴まれた。

「何すか? もう行かないと…、……真琴にも謝んなきゃ、」

 解こうとした手は、けれど春原さんのほうが力があって、うまくいかなくて。

「春原さ……離し」
「昨日、俺が帰った後、トモと何かあった?」
「―――……何がですか?」

 俺だって"ごまかす"くらいの演技は出来る。
 何かあったかだって? あったに決まってる。でも、何もなかったふりをするしかない。あんたに何が分かるの? それとももう、相川さんから何か聞いてんの? 知っててそんな顔してるの?

「いや、俺、昨日途中で帰っちゃったから…」
「別に、何もないですよ」

 もうこれ以上は答えたくないという気持ちを暗に込めてそう言うと、俺は隙を突いて春原さんの手を解く。

「ホントに何もないんで……だから、もう戻りましょう」

 まだ何か言いたそうな春原さんに背を向けて、先に歩き出す。少し後ろに、春原さんの気配を感じる。今は何も話したい気分じゃなかった。





 学生会室に戻ると、真琴が泣きそうな顔で抱き付いてきた。みんなが心配そうに俺らのほうを見てる。

「うぅ~ゴメンー、慶太ー」
「……いや、俺のほうこそゴメン」

 かわいいな、真琴。同い年なのに。
 ……かわいいって、そういえば昨日、相川さんもそう言ってたっけ。
 俺のどこ見てそんなこと言うんだろ。大体、男相手にかわいいとかあるかよ……って、あぁ、今俺もそう思ったか。
 でも俺と真琴じゃ、全然違う。本質的に違う。
 もし男にかわいいって使うのなら、それは真琴みたいなのに使うんだ。俺じゃない。
 なのにどういうわけか、俺に向かってそんなことを言った相川さん。

 …………どうせ冗談なんだろうけど。
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カテゴリー:智紀×慶太
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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