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2008.07.04 (Fri)

8. 結局、ただの、(あるものねだりだ。) (中編)

 それから、適当にメシ作ってテーブルに並べたところで、肩にタオルを掛けた哲也が戻ってきた。

「貴久、ちゃんと自炊すんだ、すごいなぁ」
「しょうがないじゃん、お前と違って、他に作ってくれる人いないし」
「俺だって、ちゃんと料理とかしたよ!」

 家事は俺の仕事だったんだって言い張るのはいいんだけど、まぁ別に信じますけど、えっと、それって、この間別れた(いや、捨てられた)元カノとの話だよな?

 彼女のために、家事とかみんなやってやってたんだ。
 こんな尽くしてくれる彼氏、何で捨ての、もったいな!
  逆に、私がやってあげたいのに、何で全部やっちゃうの!? とか思われたとか?

「あーーーー!!」

 勝手に哲也と元カノの想像をしてたら、哲也が素っ頓狂な声を張り上げた。

「何だよ!」
「納豆! 納豆があるー!!」
「そりゃあるよ。何?」
「俺、納豆嫌い! 大っ嫌い!!」

 力いっぱい力説する哲也。
 ホント、子供か。

「お前さっき何でもいいって言ったじゃん」
「何でもいいけど、納豆はダメなの! そんなん人間の食いもんじゃない!」
「俺は好物だ」

 答えれば、哲也は、『信じられない!』って顔で固まった。

「だったら納豆以外を食えよ。俺、腹減ってんだよ。早く、メシにしよ」
「絶対に納豆は食わん!」

 そう言い張って、哲也はテーブルに着いた。





「いただきま〜す」

 なんて、手を合わせて箸を取ったかと思うと、哲也はいきなり「あ!」とか言って、携帯電話を取り出した。

「メシ食ってる最中に何してんだよ」
「だって、今からいろいろ連絡しとかないと、間に合わないもん」
「何が?」
「今日泊まるとこ。ホントは昨日の家にメールしよーと思ってたのに、忘れてたの」

 …あぁ、コイツ、ホントは宿なしなんだもんな。
 どんな文面なら相手が泊めてくれるのかと、必死に頭を悩ませているのか、眉間にぐっとシワが寄ってる。

「なぁ、哲也」
「なーに?」
「とりあえず、ケータイ置けよ」
「うー?」
「まずメシ食え」

 落ち着いてメシが食われへんのは、何か嫌だ。
 ただ、それだけのこと………………だと思う。

「今日泊まるとこ見つからなかったら、また俺んち来たらいいじゃん」
「うぇ!?」
「何? 嫌か?」

 そりゃそうか。
 ソファで寝かせて、しかも朝になったら、固い床の上に転がってんだもんな。

「嫌とかじゃないけど…」
「じゃあ、何?」
「貴久、迷惑じゃないの?」
「お前、自分の友達には、迷惑省みずこんな時間からメール送ろうとしとんのに、何で俺にはそんなに遠慮してんの?」
「貴久こそ、何で俺にそんなに良くしてくれるの?」
「何が?」

 俺、哲也に何かしてやったっけ?
 人がメシ食ってるときに、目の前でかちゃかちゃメール弄ってんのが、鬱陶しかっただけなんだけど。



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