2008.08.28 (Thu)
23. ねぇ。ちゃんと聞いて! 俺の話を! (Please hear me!) (前編)
何でもなかったことになんか、出来るのかな?
***
哲也が出ていくって言い出してからも、別に俺らの状況は何も変わらなくて。
朝一緒に家を出て、仕事が終わって帰って来たらメシ食う。
哲也は服のデザインをがんばってるし、俺は時々持ち帰りで残業したり、そうじゃないときは邪魔にならないようにテレビを見たり。
俺もそうだけど、哲也自身も、自分がここを出てくって話題には触れないようにしてて、だから表面的には今までと何も変わってない。
別に哲也が荷物を纏めてる風もなくて、何だか本当に、哲也はここを出ていこうとしてるのかな、とか思えてくる。
でも時々哲也は遅く帰って来て、こんなとき、その哲也のことを好きだと言ったヤツと一緒なのかな、なんて思う。
こうやってるうちに、哲也の気持ちはどんどんソイツのほうに傾いてくのかなぁ…。
「貴久、さぁ」
「ん?」
いつもみたくテーブルに紙を広げてるけど、今日は全然手が動いてない。煮詰まってんのかなぁ、なんて思ってたら、哲也が声を掛けてきた。
「どうした?」
「俺、ここ出てくって言ったとき、貴久、俺の好きにすればいい、みたいなこと言ったじゃん?」
「…………うん」
「もう……前みたいには、止めてくれないんだね」
「え?」
哲也を見れば、けれど下を向いたまま、真っ白な紙を見つめてる。
「哲也?」
「もし貴久が止めてくれたら、断ろうと思ってたんけど………………明日、出てくな?」
「……え…」
―――――…………
頭ん中、真っ白になって。
何が何だか、わけ分かんない。
ただ、哲也が明日にはここからいなくなってしまう、そうしようとしてることだけは、事実で。
「お前が……自分を好きでいてくれるヤツの側にいたいって言ったんだぞ」
バクバクと、心臓がうるさく鳴ってて。
頭ん中、グチャグチャで、わけ分かんなくなってんのに。
なぜか口からは、やけに冷静に言葉を吐き出してる。
「…ッ、そりゃそうだよ。好きとも嫌いとも思われてない相手と一緒にいるより、そのほうがいいに決まってんじゃんっ!」
「、それ、俺のこと言ってんのか?」
「他に誰がいんだよ! この鈍感!」
「何だと!?」
思わずテーブルを拳で殴る。
売り言葉に買い言葉。
お前に鈍感なんて言われたくないわ! って、頭に血が上った。
「鈍感だから鈍感だって言ってんだよ! 俺の気持ちなんか全然知らないくせに!!」
「なら―――――……お前は、俺の何知ってんだよ!」
好きとも嫌いとも思ってない?
そんなどうでもいいような感情で、ずっと一緒にいたと思ってんのか?
***
哲也が出ていくって言い出してからも、別に俺らの状況は何も変わらなくて。
朝一緒に家を出て、仕事が終わって帰って来たらメシ食う。
哲也は服のデザインをがんばってるし、俺は時々持ち帰りで残業したり、そうじゃないときは邪魔にならないようにテレビを見たり。
俺もそうだけど、哲也自身も、自分がここを出てくって話題には触れないようにしてて、だから表面的には今までと何も変わってない。
別に哲也が荷物を纏めてる風もなくて、何だか本当に、哲也はここを出ていこうとしてるのかな、とか思えてくる。
でも時々哲也は遅く帰って来て、こんなとき、その哲也のことを好きだと言ったヤツと一緒なのかな、なんて思う。
こうやってるうちに、哲也の気持ちはどんどんソイツのほうに傾いてくのかなぁ…。
「貴久、さぁ」
「ん?」
いつもみたくテーブルに紙を広げてるけど、今日は全然手が動いてない。煮詰まってんのかなぁ、なんて思ってたら、哲也が声を掛けてきた。
「どうした?」
「俺、ここ出てくって言ったとき、貴久、俺の好きにすればいい、みたいなこと言ったじゃん?」
「…………うん」
「もう……前みたいには、止めてくれないんだね」
「え?」
哲也を見れば、けれど下を向いたまま、真っ白な紙を見つめてる。
「哲也?」
「もし貴久が止めてくれたら、断ろうと思ってたんけど………………明日、出てくな?」
「……え…」
―――――…………
頭ん中、真っ白になって。
何が何だか、わけ分かんない。
ただ、哲也が明日にはここからいなくなってしまう、そうしようとしてることだけは、事実で。
「お前が……自分を好きでいてくれるヤツの側にいたいって言ったんだぞ」
バクバクと、心臓がうるさく鳴ってて。
頭ん中、グチャグチャで、わけ分かんなくなってんのに。
なぜか口からは、やけに冷静に言葉を吐き出してる。
「…ッ、そりゃそうだよ。好きとも嫌いとも思われてない相手と一緒にいるより、そのほうがいいに決まってんじゃんっ!」
「、それ、俺のこと言ってんのか?」
「他に誰がいんだよ! この鈍感!」
「何だと!?」
思わずテーブルを拳で殴る。
売り言葉に買い言葉。
お前に鈍感なんて言われたくないわ! って、頭に血が上った。
「鈍感だから鈍感だって言ってんだよ! 俺の気持ちなんか全然知らないくせに!!」
「なら―――――……お前は、俺の何知ってんだよ!」
好きとも嫌いとも思ってない?
そんなどうでもいいような感情で、ずっと一緒にいたと思ってんのか?
2008.08.27 (Wed)
22. 塗り潰してしまって。 (後編)
「貴久、お前、死にそうな顔してるけど」
翌朝、会社で顔を合わせた啓ちゃんが、挨拶もそこそこに、開口一番そんなことを言ってくる。
「もう死んでしまいたい…」
死にそうなくらいひどい顔してんのは、自分が一番よく分かってる。朝、鏡を見たとき、ホントにひどいって思ったもん。
だって、昨日は一睡も出来なかった。
出ていくって言った哲也を、今度こそ、引き止められなかった。
別にもう、行く当てのない、ホームレス寸前の哲也じゃない。自分のことを好きでいてくれるヤツのところに行くんだって。
そんなの、引き止められるわけないじゃん。
「なぁ貴久。お前、ホントにそれでいいの?」
「…………え?」
主語のない啓ちゃんの言葉に、一瞬何のことか分からずキョトンとなったけど、すぐに昨日のことと結び付く。
「啓ちゃん、何か知ってんの?」
「ん? お前がテツを他の男に取られたくらいしか」
「取らっ……取られてない! 何それ!」
「バッ……声デカイっ…」
ここが会社やってことも忘れて声を大きくした俺を、啓ちゃんが思いっ切りど突いた。
「取られたも同然だろ? テツが出てくんだから」
「もう、哲也から聞いたの?」
「うん。一緒に住もうって言ってくれる人がいるのは、前にちょっと聞いたけど…………お前に話したら賛成してくれたって、昨日メール来た。賛成したんだ?」
「………………あぁ」
賛成?
あぁ、確かに反対なんかしなかった。
だって、答えは最初から、それしかなかった。
「ホント不器用だな、お前ら2人」
翌朝、会社で顔を合わせた啓ちゃんが、挨拶もそこそこに、開口一番そんなことを言ってくる。
「もう死んでしまいたい…」
死にそうなくらいひどい顔してんのは、自分が一番よく分かってる。朝、鏡を見たとき、ホントにひどいって思ったもん。
だって、昨日は一睡も出来なかった。
出ていくって言った哲也を、今度こそ、引き止められなかった。
別にもう、行く当てのない、ホームレス寸前の哲也じゃない。自分のことを好きでいてくれるヤツのところに行くんだって。
そんなの、引き止められるわけないじゃん。
「なぁ貴久。お前、ホントにそれでいいの?」
「…………え?」
主語のない啓ちゃんの言葉に、一瞬何のことか分からずキョトンとなったけど、すぐに昨日のことと結び付く。
「啓ちゃん、何か知ってんの?」
「ん? お前がテツを他の男に取られたくらいしか」
「取らっ……取られてない! 何それ!」
「バッ……声デカイっ…」
ここが会社やってことも忘れて声を大きくした俺を、啓ちゃんが思いっ切りど突いた。
「取られたも同然だろ? テツが出てくんだから」
「もう、哲也から聞いたの?」
「うん。一緒に住もうって言ってくれる人がいるのは、前にちょっと聞いたけど…………お前に話したら賛成してくれたって、昨日メール来た。賛成したんだ?」
「………………あぁ」
賛成?
あぁ、確かに反対なんかしなかった。
だって、答えは最初から、それしかなかった。
「ホント不器用だな、お前ら2人」
2008.08.26 (Tue)
22. 塗り潰してしまって。 (中編)
*****
あんなに暑かった夏が、嘘のようにおだやんだ、秋。
「なぁ貴久ぁ」
テレビから哲也に視線を移せば、声を掛けてきたにもかかわらず、哲也はまだ下を向いたままデザイン用紙を見てる。
相変わらずな関係の、俺と哲也。
そりゃそうだ。
そうなるように、俺はずっと"普通"に振る舞ってきたんだから。
なのに。
「俺、そろそろ……ここ、出ていこうと思って」
いつもみたいに、テレビを見ながらたあいのない話をして。
哲也はテーブルいっぱいにデザイン用の紙やらペンやらを広げてるし、俺はもう1本缶ビールに口を付けてて。
別にいつもどおり。
何も変わったことなんかない、そんな状況で。
哲也はおもむろに、そう言った。
「は…? 何て?」
いや、聞き取れてはいたんだけど。
何? は? 意味分かんない。
「ここ、出ていく」
ペンを置いた哲也が、ゆっくり俺のほうを向いた。
「な…何、急に」
ずっとビールで喉を潤してたはずやのに、急に喉がからっからになって。うまく声が出ない。
「急に、ていうか……ちょっと前から考えてて」
「何で? 俺、何かした?」
「別に貴久が何かしたとか、そういうんじゃなくて」
「じゃあ何?」
「だってホラ……一応ここには、次の宿が見つかるまで、てことだったじゃんか?」
「住むトコ、見つかったってこと?」
問えば、哲也は少し視線を落とした。
「一緒に住まない? て言ってくれる人がいて…」
「………………」
「その人に、好きだって言われた」
「、」
急に。
サーッと酔いが醒めていくのが分かって。
哲也が顔を上げてこっちを向いたのに、まともに顔見られない。何も言えないのは、どうでもいいからじゃなくて、動揺しすぎて言葉が出ないから。
確かに、哲也の世界は、別に俺や啓ちゃんとの繋がりだけで出来てるわけじゃなくて、俺ら以外にもいっぱい友達いるだろうし、客商売だからその関係の知り合いだっている。
俺の知らないところで、哲也の世界はどんどん変わっていって。
俺らの関係が変わらなくても。
「哲也は……好きなの? その人のこと」
やっと絞り出した声。
気持ち悪いくらい、心臓が速く打ってる。
「……んー、どうかな。でも、一緒にいて嫌じゃないから。きっともっと一緒にいたら、好きになると思う。やっぱり自分のこと好きでいてくれる人の側にいたいじゃん」
ソイツのことを思ってか、哲也が少しはにかんだように笑って。
何だかそれが、まるで知らない人の笑顔に見える。
「……それじゃ、まるで俺はお前のこと、嫌ってるみたいだ」
こんなにも好きなのに。
ずっと、想ってたのに。
「でも貴久、俺のこと嫌いじゃないけど、別に好きでもないだろ?」
―――――…………、
「何、で…」
「え?」
「何で、そんなこと言うんだよ…」
別に好きでもない?
何でそんなこと言うんだよ。
俺は、
「貴久?」
俺は……
「………………お前がそうしたいって言うんだったら、そうすればいいじゃん」
俺は、何を言ってるんだろう…。
2008.08.25 (Mon)
7. 無邪気にはにかむ確信犯
水瀬が風呂に入っている間に、グチャグチャになったシーツやら、脱ぎ散らかしたままになっていた水瀬の制服らを片付けていたら、石田の携帯電話が音を立てた。
「あーはいはい」
ベッドに丸めたシーツを放り投げて、石田は急いでカバンから携帯電話を取り出した。
「………………。はぁ?」
背面ディスプレイに表示された、発信者の名前―――――水瀬環。
本当に、「はぁ?」だ。
(アイツ、風呂入ってんじゃねぇの?)
訝しく思いながら、石田は水瀬かららしい着信を受ける。
『あ、石田ー』
「……何、お前。風呂入ってんじゃねぇの?」
出てみれば、やはりその電話は水瀬からで。
何が何だか、訳が分からない。
『あのさー、パンツ持って来るの忘れたから、持って来て?』
「はぁ?」
『だからー、パンツ!』
「ちょっと待て、お前、今どっから電話…」
電話越し。
妙に響いている水瀬の声。
「……お前、風呂から掛けてんの?」
『そう』
「待て待て待て。何で風呂にケータイ持ってってんだよ!」
『暇だから』
「…………」
よく分からない理由を、さも当然のように言ってのけて、水瀬は『早く、パンツー』とデリカシーの欠けらもないことを口にする。
「あーもう! 今持ってくから!」
何で携帯電話は持っていって、肝心の下着は忘れていくんだ!?
それでも慣れた手つきでタンスを漁ると、石田は言われたとおりに下着と着替えを持ってバスルームに向かった。
「おー、ご苦労ご苦労」
脱衣所とバスルームを仕切るドアを少し開けて、ご所望の着替えを用意したことを伝えれば、湯船の中の水瀬が満足そうにそう言った。
「ホントにお前は…」
「あ、石田。もう1個お願い聞いて?」
「はぁ? 何だよ」
「ケータイ、そっちに置いて? 濡れちゃう」
「……」
だったら最初から風呂になんか持ってくんなよ! ―――――とは、言っても聞かないだろうから、あえて何も言わず、石田は携帯電話を受け取るため、バスルームの中に入った。
「水瀬、ケータイ」
ホラ、と差し出された石田の手。
ニヤリ。
水瀬の口元が少し上がったのを、石田は見ていなかった。
「え? ――――うわっ!?」
携帯電話を受け取るために伸ばされた石田の手は、なぜか水瀬にしっかりと掴まれて。
しかもあろうことか、その手はグイと、湯船の中にいる水瀬のほうに引っ張られて。
結果。
ザッバーン! と、派手な音と水しぶきを上げて、石田の上半身は、そのまま湯船の中に上半身を突っ込んでしまった。
「~~~~~~…………おま……」
「ひゃはははは」
「笑ってる場合かーーーー!!!」
石田の荒げた声は、バスルームということもあって、大きく響き渡ったけれど、水瀬はまったくそれに怯むことなく笑い続けている。
「つーかお前、ケータイは!?」
上半身ずぶ濡れ。
こんな状態にさせられてもまだなお、そうした張本人の携帯電話の心配をするあたり、石田のお人よし加減は大したものかもしれない。
ハッと周囲を見回しても、水瀬の携帯電話らしき物体は見当たらなくて、まさか湯船の中に落としてしまったのかと、石田はさらに焦る。
「水瀬、ケータイ…」
「それはもういいの」
「もういいって…」
「だって、ケータイもう向こうに置いてあるし」
そう言って水瀬が指差したのは、脱衣場の方向。
石田は脱衣場と水瀬の顔を交互に見た。
「は?」
「ま、いいじゃん。石田もこんだけ濡れたんだから、風呂入んなきゃだろ? 入ろ?」
「…………」
えっと。
えっとー…。
最初、一緒に風呂に入るのを断って。
1人バスルームに向かった水瀬に、パンツがないから持って来いと携帯電話で呼び出され。
濡れたら困ると携帯電話を受け取ろうとしたところで、湯船に上半身を沈められ(しかもすでに携帯電話は脱衣場に片付けられていて)。
結果、一緒に風呂に入るはめに。
「……て、お前、わざとかーーーー!!!!」
「ひゃはははは!」
パンツを持たずに携帯電話を持っていったのも。
携帯電話を片付けろと、わがままを言ったのも。
すべては、当初に断られた、『一緒にお風呂』を実行するための、伏線でしかなかったのだ。
「入るよね? 石田」
「………………」
「ね?」
無邪気に笑っている、確信犯。
「…………はい」
ヘタレ石田の、下克上への日は遠い。
*END*
「あーはいはい」
ベッドに丸めたシーツを放り投げて、石田は急いでカバンから携帯電話を取り出した。
「………………。はぁ?」
背面ディスプレイに表示された、発信者の名前―――――水瀬環。
本当に、「はぁ?」だ。
(アイツ、風呂入ってんじゃねぇの?)
訝しく思いながら、石田は水瀬かららしい着信を受ける。
『あ、石田ー』
「……何、お前。風呂入ってんじゃねぇの?」
出てみれば、やはりその電話は水瀬からで。
何が何だか、訳が分からない。
『あのさー、パンツ持って来るの忘れたから、持って来て?』
「はぁ?」
『だからー、パンツ!』
「ちょっと待て、お前、今どっから電話…」
電話越し。
妙に響いている水瀬の声。
「……お前、風呂から掛けてんの?」
『そう』
「待て待て待て。何で風呂にケータイ持ってってんだよ!」
『暇だから』
「…………」
よく分からない理由を、さも当然のように言ってのけて、水瀬は『早く、パンツー』とデリカシーの欠けらもないことを口にする。
「あーもう! 今持ってくから!」
何で携帯電話は持っていって、肝心の下着は忘れていくんだ!?
それでも慣れた手つきでタンスを漁ると、石田は言われたとおりに下着と着替えを持ってバスルームに向かった。
「おー、ご苦労ご苦労」
脱衣所とバスルームを仕切るドアを少し開けて、ご所望の着替えを用意したことを伝えれば、湯船の中の水瀬が満足そうにそう言った。
「ホントにお前は…」
「あ、石田。もう1個お願い聞いて?」
「はぁ? 何だよ」
「ケータイ、そっちに置いて? 濡れちゃう」
「……」
だったら最初から風呂になんか持ってくんなよ! ―――――とは、言っても聞かないだろうから、あえて何も言わず、石田は携帯電話を受け取るため、バスルームの中に入った。
「水瀬、ケータイ」
ホラ、と差し出された石田の手。
ニヤリ。
水瀬の口元が少し上がったのを、石田は見ていなかった。
「え? ――――うわっ!?」
携帯電話を受け取るために伸ばされた石田の手は、なぜか水瀬にしっかりと掴まれて。
しかもあろうことか、その手はグイと、湯船の中にいる水瀬のほうに引っ張られて。
結果。
ザッバーン! と、派手な音と水しぶきを上げて、石田の上半身は、そのまま湯船の中に上半身を突っ込んでしまった。
「~~~~~~…………おま……」
「ひゃはははは」
「笑ってる場合かーーーー!!!」
石田の荒げた声は、バスルームということもあって、大きく響き渡ったけれど、水瀬はまったくそれに怯むことなく笑い続けている。
「つーかお前、ケータイは!?」
上半身ずぶ濡れ。
こんな状態にさせられてもまだなお、そうした張本人の携帯電話の心配をするあたり、石田のお人よし加減は大したものかもしれない。
ハッと周囲を見回しても、水瀬の携帯電話らしき物体は見当たらなくて、まさか湯船の中に落としてしまったのかと、石田はさらに焦る。
「水瀬、ケータイ…」
「それはもういいの」
「もういいって…」
「だって、ケータイもう向こうに置いてあるし」
そう言って水瀬が指差したのは、脱衣場の方向。
石田は脱衣場と水瀬の顔を交互に見た。
「は?」
「ま、いいじゃん。石田もこんだけ濡れたんだから、風呂入んなきゃだろ? 入ろ?」
「…………」
えっと。
えっとー…。
最初、一緒に風呂に入るのを断って。
1人バスルームに向かった水瀬に、パンツがないから持って来いと携帯電話で呼び出され。
濡れたら困ると携帯電話を受け取ろうとしたところで、湯船に上半身を沈められ(しかもすでに携帯電話は脱衣場に片付けられていて)。
結果、一緒に風呂に入るはめに。
「……て、お前、わざとかーーーー!!!!」
「ひゃはははは!」
パンツを持たずに携帯電話を持っていったのも。
携帯電話を片付けろと、わがままを言ったのも。
すべては、当初に断られた、『一緒にお風呂』を実行するための、伏線でしかなかったのだ。
「入るよね? 石田」
「………………」
「ね?」
無邪気に笑っている、確信犯。
「…………はい」
ヘタレ石田の、下克上への日は遠い。
*END*
2008.08.24 (Sun)
6. いくらなんでもはしたない
*****
(何で、人んちの風呂の入れ方、熟知してんだろう…)
もう今までに何度となく思ったことを、今日もまた思いつつ、石田はパネルを操作して、湯船にお湯を溜め始めた。
お互い気の済むまで抱き合って、貪って、体を2つに分けたときにはもうとっぷりと日が暮れていて。
水瀬は「疲れたー、汗でベタベタするー、中グチャグチャで気持ち悪いー、風呂入りたいー」と言った後、いつもどおり「石田、風呂入れてきて」と、当然のようにのたまったので、石田はとりあえず下穿きだけ直して、バスルームに直行したのだった。
「はぁ…」
湯船の縁に手を突いて、項垂れる。
――――また、やってしまった。
幼馴染みの水瀬と初めて肌を重ねたのは、高校に入って間もなくのことで。
それから、ダメだダメだと思いつつ、もう数えるのも億劫になるくらい、水瀬とセックスをしている。
石田に彼女が出来たときも、『え、別に俺ら、恋愛感情があるわけでもないし、男同士だし、浮気になんなくない?』とか何とか、水瀬の口車に乗せられてヤッてしまったのだから、目も当てられない。
確かに水瀬の言うとおり、2人の間にあるのは、恋愛感情とは違う気がする。
水瀬のことを好きか嫌いかと聞かれれば、嫌いではなく好きだけれど、それがこれまで付き合ってきた彼女に対する気持ちと同類かといえば、そうではなくて。
ましてや恋人同士のわけもない。
(うーん……どっちかって言うと、主従関係…?)
それでも水瀬が自分とのセックスに満足して、向こうから求めて来るのだから、まぁいいかとも思う。
結局、水瀬との関係は、惚れたモン負けな気がするから。
恋愛感情にするのは危険だと、本能がそう諭している。
「…」
グチャグチャとまとまらない思考を振り切って、石田は水瀬の待っている寝室へと戻った。
「水瀬ー、風呂…―――――って、何やってんだ、お前!」
言いながらドアを開けた石田は、ベッドの上であられもない姿を晒している水瀬に、ガクリとズッコケそうになった。
「ん?」
呑気に返事をした水瀬は、素っ裸のままベッドに寝っ転がって、カバンの中から取り出したスナック菓子を、もしゃもしゃ貪っていた。
「…あのね、何してんのよ、あなた」
「え、だっていっぱいエッチしたら、お腹空いたんだもん。これねー、今日しーちゃんから貰ったの。超おいしいんだよ」
「…………。あ、そう。メシは?」
時計を見れば、すでに7時になろうかという時刻。
今からそんなスナック菓子を食べていて、夕食はどうするつもりなのかと、石田が尋ねれば、水瀬はしれっと「お腹空いたら食べる」と、何となく見当違いなことを答える。
(だったらそんなお菓子食ってないで、メシ食えばいいじゃん…)
至極まっとうなその意見を、石田はあえて口にはしない。
「もうすぐ風呂沸くけど?」
「入る! あ、石田も一緒に入る?」
「結構です」
「何で? 一緒に入ろうよ。で、体洗って?」
「ガキか!」
たいていの男ならノックダウン寸前の水瀬のセリフも、旧知の石田には通用しない。
分かっていて言ったので、水瀬のほうも特に気を悪くするでもなく、袋に残っていたスナック菓子を一気に口の中に滑り込ませると、口をモグモグさせながらバスルームへと向かった。
2008.08.23 (Sat)
5. 熱いのは好き? R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
石田に腰を掴まれて、ガクガク揺さぶられて。
いつの間にか、シーツに頭と肩を付けているだけの、足を高く抱えられた格好になっていて。
でもそれを恥ずかしいとか考えるだけの、余裕もない。
「ぅ…うん、あ、あぁっ…」
もう無理、もう無理だよぉ…!
「や、や、やぁ、ひろっ…!」
石田の名前を呼びながら、抱え上げられているビクンと大きく痙攣させて、水瀬はずっと堪えていた欲望を解き放った。
「ッ…たまき、」
今日はゴムも着けていないし、やっぱ中出しはまずいって、石田が水瀬の中から自身を抜こうとした瞬間、逃すまいとでもするように、キュッと水瀬の中が締まって。
「あ、あぁ、ひろ、イッて、中で、あぁっ…!」
「ッ…」
石田の首にギュッとしがみ付きながら、水瀬はねだるようにそんなことを言うから。
甘く掠れた声が、耳元を擽る。
「ッ…」
そのキツイ締め付けに、石田はそのまま水瀬の奥を濡らした。
「ん、んっ…あ、あーあー…」
「はぁっ…」
水瀬の腰を掴んでいた手を離して、その顔の両脇に突く。水瀬に体重を掛け過ぎないようにガクリと肘を折れば、顔が近づく。
「あつ、い…」
「…え?」
「中……宏明の…熱い……流れてきてる……奥に…」
「ッ…バッバカ!」
「あぅ!」
うっとりとした声で、とんでもないことを口走る水瀬に、石田は慌てて突っ込みを入れたけれど、バッと体を起こした弾みに、入れたままの自身が水瀬の中を抉ってしまった。
「あ、あっ…バカぁ…」
「だってお前が!」
「はぁっ…あ、宏明……ん、や…またおっきくなってる…」
「~~~~~……お前はーーー!」
人が必死に我慢しようとしてるのに!
「やぁっ、ちょ、待っ…」
「ダメ、待たない」
イッたばかりで敏感な体。
力も入らなくて。
「あぁぁっ!」
グイ、と最奥まで石田が、突き刺すように進んでくる。
「あ、イヤッ!」
奥を刺激するように、石田が細かく腰を動かせば、先ほど中に放った石田の精液が溢れ出す。
ヌチャヌチャといやらしい音が耳をも犯して、イッたばかりだというのに、水瀬の体はまた反応してしまう。
「んぁ…は、ぅ…宏明…」
我慢はさっきで終わりだ。
水瀬は、そのまま快感へと身を任せた。
石田に腰を掴まれて、ガクガク揺さぶられて。
いつの間にか、シーツに頭と肩を付けているだけの、足を高く抱えられた格好になっていて。
でもそれを恥ずかしいとか考えるだけの、余裕もない。
「ぅ…うん、あ、あぁっ…」
もう無理、もう無理だよぉ…!
「や、や、やぁ、ひろっ…!」
石田の名前を呼びながら、抱え上げられているビクンと大きく痙攣させて、水瀬はずっと堪えていた欲望を解き放った。
「ッ…たまき、」
今日はゴムも着けていないし、やっぱ中出しはまずいって、石田が水瀬の中から自身を抜こうとした瞬間、逃すまいとでもするように、キュッと水瀬の中が締まって。
「あ、あぁ、ひろ、イッて、中で、あぁっ…!」
「ッ…」
石田の首にギュッとしがみ付きながら、水瀬はねだるようにそんなことを言うから。
甘く掠れた声が、耳元を擽る。
「ッ…」
そのキツイ締め付けに、石田はそのまま水瀬の奥を濡らした。
「ん、んっ…あ、あーあー…」
「はぁっ…」
水瀬の腰を掴んでいた手を離して、その顔の両脇に突く。水瀬に体重を掛け過ぎないようにガクリと肘を折れば、顔が近づく。
「あつ、い…」
「…え?」
「中……宏明の…熱い……流れてきてる……奥に…」
「ッ…バッバカ!」
「あぅ!」
うっとりとした声で、とんでもないことを口走る水瀬に、石田は慌てて突っ込みを入れたけれど、バッと体を起こした弾みに、入れたままの自身が水瀬の中を抉ってしまった。
「あ、あっ…バカぁ…」
「だってお前が!」
「はぁっ…あ、宏明……ん、や…またおっきくなってる…」
「~~~~~……お前はーーー!」
人が必死に我慢しようとしてるのに!
「やぁっ、ちょ、待っ…」
「ダメ、待たない」
イッたばかりで敏感な体。
力も入らなくて。
「あぁぁっ!」
グイ、と最奥まで石田が、突き刺すように進んでくる。
「あ、イヤッ!」
奥を刺激するように、石田が細かく腰を動かせば、先ほど中に放った石田の精液が溢れ出す。
ヌチャヌチャといやらしい音が耳をも犯して、イッたばかりだというのに、水瀬の体はまた反応してしまう。
「んぁ…は、ぅ…宏明…」
我慢はさっきで終わりだ。
水瀬は、そのまま快感へと身を任せた。
2008.08.22 (Fri)
4. もっと声を聞かせて、呼んで (後編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
「分かったから! もうちょっと我慢を覚えなさい」
「や、やらぁ…」
さっきまでいっぱい我慢したのに、まだ我慢しなきゃいけないの?
もうめちゃくちゃにしていいから、気持ち良くさせてよ。
イかせてよ。
「ふ、うぅ…ん」
なのに石田は、またしても水瀬の根元を片手で戒めると、わざとイイところだけを外すように緩く腰を動かしてくる。
「それ、ダメ…あ、ぁあっ」
カリの部分で入口を広げるように内壁に擦りつければ、石田を奥へと誘い込もうとするように、水瀬の中が妖しく蠢く。
口より何十倍も素直な体。
「あ、や…、奥、奥…して…」
「こう?」
「ひ…ああぁっ…!」
水瀬の望むままに深く奥まで突き刺せば、細い背中がグンとしなる。
キュウキュウと締め付けてくる水瀬の中に持っていかれそうになって、石田は奥歯を噛んでグッと堪える。
「あー…あ、いい…、ん…」
奥の、水瀬の好きなところを細かく突いてやれば、目を閉じた水瀬は、気持ち良さそうに甘い声を上げた。
石田が、反らされた水瀬の喉元に軽く歯を立てたり、首筋を舐め上げたりすれば、そのたびに、水瀬の中が反応する。
「やぁ…ぅん、イキたい…、ん…」
「またイッちゃうの?」
「だって…気持ちい…ぁ、や…手…」
石田の手によって戒められたままの自身。濡れた先端を、親指でグリグリと弄られて、一気に快感が強まる。
なのに石田の手は意地悪に、水瀬をそのまま絶頂へは連れて行こうとしない。
奥に与え続けられる強い快感と、けれど上り詰められない苦しさに、水瀬の腰が激しく動く。
「あ、やっ……あ、あ、あっ!」
「はぁっ…くっ…」
水瀬の中から抜け出るギリギリまで引き抜かれて、嫌だと水瀬が無意識に締め付けるのとほぼ同時に、再び石田が奥まで一気に入って来る。
狭い中を、引き抜いては奥まで押し入る長いストロークで、石田自身が抉っていく。
前立腺を突き上げられるたび、水瀬の体は跳ね上がるけれど、達することを許してくれない石田の手によって、それは塞ぎ止められていて。
「あぁ…も、あっ…ひろ…」
「…え?」
「宏明っ…」
ガクガクと体を揺さぶられながら、水瀬が口にした名前。
石田の、下の名前。
子どものころは、「宏明」とか「ひろ」とか、ずっとそう呼んでいたけれど、中学、高校と進学して、周りが石田のことを名字で呼ぶのを見て、何となく水瀬もそうするようになった。
最初、石田はギョッとした顔をしたけれど、理由を聞かれても、水瀬が「何となくだってば!」としか言わないので、いつしか突っ込むのをやめて、石田も水瀬のことを、下の名前「環」と呼ぶのをやめて、名字で呼ぶようになったのだった。
なのに。
「あ…っ、ん、ひろ…ひろあきっ…」
こんなときに。
こんな場面で、そんなふうに下の名前で呼ぶなんて。
(凶悪すぎるっ…!)
石田は水瀬自身から手を離すと、両手でその細い腰を掴んで、激しく腰を打ち付けた。
「あ、あっ…ん…」
「ね…もっかい呼んでよ」
「な、に…?」
朦朧とした頭では、石田の言うことを理解するには至らなくて。
ただ、イかせてほしいだけなのに。
「名前、呼んでよ、環…」
「あ、あ…」
耳元で囁かれた名前に、ビクリと体が反応して。
「ひろ…あき…」
「分かったから! もうちょっと我慢を覚えなさい」
「や、やらぁ…」
さっきまでいっぱい我慢したのに、まだ我慢しなきゃいけないの?
もうめちゃくちゃにしていいから、気持ち良くさせてよ。
イかせてよ。
「ふ、うぅ…ん」
なのに石田は、またしても水瀬の根元を片手で戒めると、わざとイイところだけを外すように緩く腰を動かしてくる。
「それ、ダメ…あ、ぁあっ」
カリの部分で入口を広げるように内壁に擦りつければ、石田を奥へと誘い込もうとするように、水瀬の中が妖しく蠢く。
口より何十倍も素直な体。
「あ、や…、奥、奥…して…」
「こう?」
「ひ…ああぁっ…!」
水瀬の望むままに深く奥まで突き刺せば、細い背中がグンとしなる。
キュウキュウと締め付けてくる水瀬の中に持っていかれそうになって、石田は奥歯を噛んでグッと堪える。
「あー…あ、いい…、ん…」
奥の、水瀬の好きなところを細かく突いてやれば、目を閉じた水瀬は、気持ち良さそうに甘い声を上げた。
石田が、反らされた水瀬の喉元に軽く歯を立てたり、首筋を舐め上げたりすれば、そのたびに、水瀬の中が反応する。
「やぁ…ぅん、イキたい…、ん…」
「またイッちゃうの?」
「だって…気持ちい…ぁ、や…手…」
石田の手によって戒められたままの自身。濡れた先端を、親指でグリグリと弄られて、一気に快感が強まる。
なのに石田の手は意地悪に、水瀬をそのまま絶頂へは連れて行こうとしない。
奥に与え続けられる強い快感と、けれど上り詰められない苦しさに、水瀬の腰が激しく動く。
「あ、やっ……あ、あ、あっ!」
「はぁっ…くっ…」
水瀬の中から抜け出るギリギリまで引き抜かれて、嫌だと水瀬が無意識に締め付けるのとほぼ同時に、再び石田が奥まで一気に入って来る。
狭い中を、引き抜いては奥まで押し入る長いストロークで、石田自身が抉っていく。
前立腺を突き上げられるたび、水瀬の体は跳ね上がるけれど、達することを許してくれない石田の手によって、それは塞ぎ止められていて。
「あぁ…も、あっ…ひろ…」
「…え?」
「宏明っ…」
ガクガクと体を揺さぶられながら、水瀬が口にした名前。
石田の、下の名前。
子どものころは、「宏明」とか「ひろ」とか、ずっとそう呼んでいたけれど、中学、高校と進学して、周りが石田のことを名字で呼ぶのを見て、何となく水瀬もそうするようになった。
最初、石田はギョッとした顔をしたけれど、理由を聞かれても、水瀬が「何となくだってば!」としか言わないので、いつしか突っ込むのをやめて、石田も水瀬のことを、下の名前「環」と呼ぶのをやめて、名字で呼ぶようになったのだった。
なのに。
「あ…っ、ん、ひろ…ひろあきっ…」
こんなときに。
こんな場面で、そんなふうに下の名前で呼ぶなんて。
(凶悪すぎるっ…!)
石田は水瀬自身から手を離すと、両手でその細い腰を掴んで、激しく腰を打ち付けた。
「あ、あっ…ん…」
「ね…もっかい呼んでよ」
「な、に…?」
朦朧とした頭では、石田の言うことを理解するには至らなくて。
ただ、イかせてほしいだけなのに。
「名前、呼んでよ、環…」
「あ、あ…」
耳元で囁かれた名前に、ビクリと体が反応して。
「ひろ…あき…」
2008.08.21 (Thu)
4. もっと声を聞かせて、呼んで (前編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
石田のバカ。
バカバカバカバカーーー!!!
「うー…!」
「イテッ、バカ、蹴るなって」
焦らされまくって、もう何だかよく分からなくなって、ただもう早く入れてほしくて。
石田なんかにいいようにされて、もうイヤだって、水瀬は抱え上げられた足をバタつかせて、踵で石田の背中を蹴飛ばした。
そんな余裕、早く捨てちまえよ!
「もう欲しいの?」
「…ぅ…」
それでも聞いて来る石田を睨み付けてやるけれど、そんなの全然効果がなくて、石田は、こんなときにしか見せないエロい雄の顔で、水瀬の答えを待っている。
お前なんか欲しくないって、入れさせてなんかやんないって言ったら、石田だって困るくせに!
「水瀬、どうなの? いらないの?」
「は…はぅ…んんっ…!」
気持ちいいけど、もどかしい。
そんな場所ばっかりこすられて、次第に水瀬の体は痙攣するように震え出す。
「や、や…いし…」
「何、水瀬…?」
「も…早くぅ…」
陥落。
無理だ、セックスのとき、どうしたって石田には敵わない。
石田相手に、『早く』だの『欲しい』だの、そんなこと言いたくないのに。
「…入れるよ。力抜いて」
足を抱え直して、でも腰の下に枕をちゃんと入れてくれるあたり、石田らしい。
「、クッ…」
ゆっくりと、石田が侵入してくる。
ローションでよく解したとは言っても、もともとソレを受け入れるための器官ではないから、水瀬にしても石田にしても、最初は楽ではない。
けれど水瀬はもうそこから先、快感に繋がるそれを知っているから、力を抜いて素直に石田を受け入れる。
「ふ…ぅ、あぁっ…!」
張りのある部分を押し込めば、勢いのまま、ズルリと奥まで水瀬の中に入る。
水瀬の慣れた体は、その引き攣れるような痛みもすぐに快楽に摩り替えてしまって。石田の首に回していた腕には知らず力が籠っていて、水瀬はゆっくりとその腕を解いた。
「…ん、ぅ」
「動いてい?」
解けてしまった水瀬の手を、もう1度首の後ろに回させ、石田は柔らかな頬や首筋に唇を落とす。
「も…いいからぁ…!」
早く、早く!
辛くないように、馴染むまで待っていようとしたのに、急かすように水瀬は腰を揺らめかす。
散々焦らされた分だけ、水瀬は快感に貪欲になっていて。
「ちょっ、みな…!」
さすがに焦って、石田は慌てて水瀬の腰を掴むと、体勢を立て直した。
石田のバカ。
バカバカバカバカーーー!!!
「うー…!」
「イテッ、バカ、蹴るなって」
焦らされまくって、もう何だかよく分からなくなって、ただもう早く入れてほしくて。
石田なんかにいいようにされて、もうイヤだって、水瀬は抱え上げられた足をバタつかせて、踵で石田の背中を蹴飛ばした。
そんな余裕、早く捨てちまえよ!
「もう欲しいの?」
「…ぅ…」
それでも聞いて来る石田を睨み付けてやるけれど、そんなの全然効果がなくて、石田は、こんなときにしか見せないエロい雄の顔で、水瀬の答えを待っている。
お前なんか欲しくないって、入れさせてなんかやんないって言ったら、石田だって困るくせに!
「水瀬、どうなの? いらないの?」
「は…はぅ…んんっ…!」
気持ちいいけど、もどかしい。
そんな場所ばっかりこすられて、次第に水瀬の体は痙攣するように震え出す。
「や、や…いし…」
「何、水瀬…?」
「も…早くぅ…」
陥落。
無理だ、セックスのとき、どうしたって石田には敵わない。
石田相手に、『早く』だの『欲しい』だの、そんなこと言いたくないのに。
「…入れるよ。力抜いて」
足を抱え直して、でも腰の下に枕をちゃんと入れてくれるあたり、石田らしい。
「、クッ…」
ゆっくりと、石田が侵入してくる。
ローションでよく解したとは言っても、もともとソレを受け入れるための器官ではないから、水瀬にしても石田にしても、最初は楽ではない。
けれど水瀬はもうそこから先、快感に繋がるそれを知っているから、力を抜いて素直に石田を受け入れる。
「ふ…ぅ、あぁっ…!」
張りのある部分を押し込めば、勢いのまま、ズルリと奥まで水瀬の中に入る。
水瀬の慣れた体は、その引き攣れるような痛みもすぐに快楽に摩り替えてしまって。石田の首に回していた腕には知らず力が籠っていて、水瀬はゆっくりとその腕を解いた。
「…ん、ぅ」
「動いてい?」
解けてしまった水瀬の手を、もう1度首の後ろに回させ、石田は柔らかな頬や首筋に唇を落とす。
「も…いいからぁ…!」
早く、早く!
辛くないように、馴染むまで待っていようとしたのに、急かすように水瀬は腰を揺らめかす。
散々焦らされた分だけ、水瀬は快感に貪欲になっていて。
「ちょっ、みな…!」
さすがに焦って、石田は慌てて水瀬の腰を掴むと、体勢を立て直した。
2008.08.20 (Wed)
3. 欲しいと言えない (後編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
「はぁっ…」
震える水瀬の足を抱えて、ももにキス。
もう水瀬のモノは、腹に付くほどそそり立っているのに、そこには触れもせず、石田は水瀬の後ろにローションを垂らした。
「ひぁっ!」
いきなりの冷たい感触に、驚いて水瀬の体が跳ね上がった。
「ゴメン、ゴメン」
全然悪いなんて思っているふうもない、石田の謝罪の言葉。
いつもだったら一発ぐらい殴っているところだけれど、今の水瀬にそんな余裕はない。
「あ、あ…」
尻に垂れたローションを集めて、焦らすように穴の周囲をなぞった後、指の先をゆっくりと埋めていけば、慣れた体はすぐにそれを飲み込もうとする。
「ぅ…ん…」
奥まで潤すように、再びローションが注ぎ込まれる。
指が2本に増やされたのが分かった。バラバラに動く指が、水瀬の中のイイところ掠める。
今度こそ、本当に我慢できない。
でも、ダメってゆわれたし。
でもでも。
「あー…ぅん…んっ」
涙でぼやけた視界に、石田がいる。
こんなときじゃなきゃ見れない、男の、顔。
「や、やっ…イッちゃうっ…!」
「…いいよ」
「んぁっ…」
許しの言葉とほぼ同時、石田のキレイな指が水瀬の前立腺をグリグリと押して、先走りに濡れたその先端に爪を立てた。
「…あ、あぁっ…!!」
ビクン、ビクンッ…と、まるで陸に打ち上げられた魚のよう、水瀬はビクビクと体を震わせながら、自分の腹に精液をぶちまけた。
「やっぱ、後ろ弄られたほうが、感じるんだ?」
「…るせ、バカ! あぁんっ…」
ズルリと中から指を引き抜かれる感触にも、甘い声を上げてしまう。
薄い胸を激しく上下させながら、水瀬はクタリと体を弛緩させた。
「顔にも飛んでる…」
石田の顔が近付いてきて、ペロリと頬を舐める。
自分でイッて、自分の顔に掛けてしまった……それを自覚した瞬間、カーッと頬が熱くなるのを感じた。
「…ぅん」
唇を塞がれると、少し青臭いにおいと味。
それが自分の精液のせいだって分かるだけに、余計に恥ずかしさが増す。
「ぁ…」
両膝の裏を掬われて、尻の間に石田の熱が宛がわれた。ヌチャ…と濡れた感触がして、水瀬はこの次に来るであろう痛みと快感を思い、無意識に体の力を抜いた。
けれど、石田は水瀬の思うようにはしてくれなかった。
ももの間、水瀬の濡れそぼった後ろの穴や性器に、石田は勃ち上がった自身を擦り付けていくだけで、中には入れてくれない。先端を穴の周囲に押し当てれば、その先を期待して、水瀬の腰が揺らめく。
「ん、いし…」
早く早くと、誘うように水瀬の腰は動くのに、石田はグリグリと擦り付けるだけで。
「なん…で、ねぇ…」
「何が?」
「あぅ…バカ…!」
分かっているくせに。
自分だって、もうそんなに我慢できないくせに。
「あ、あっ…石田…!」
「言ってよ、水瀬」
「あぁっ…」
このヘタレな幼馴染みが、思いどおりにならないのが、悔しい。
コイツに追い詰められるなんて。
「ね、水瀬。言って、どうして欲しいか」
「はぁ…あっ…、ん」
「言ってよ……欲しいって」
「あ…」
―――――俺が欲しいって。
「はぁっ…」
震える水瀬の足を抱えて、ももにキス。
もう水瀬のモノは、腹に付くほどそそり立っているのに、そこには触れもせず、石田は水瀬の後ろにローションを垂らした。
「ひぁっ!」
いきなりの冷たい感触に、驚いて水瀬の体が跳ね上がった。
「ゴメン、ゴメン」
全然悪いなんて思っているふうもない、石田の謝罪の言葉。
いつもだったら一発ぐらい殴っているところだけれど、今の水瀬にそんな余裕はない。
「あ、あ…」
尻に垂れたローションを集めて、焦らすように穴の周囲をなぞった後、指の先をゆっくりと埋めていけば、慣れた体はすぐにそれを飲み込もうとする。
「ぅ…ん…」
奥まで潤すように、再びローションが注ぎ込まれる。
指が2本に増やされたのが分かった。バラバラに動く指が、水瀬の中のイイところ掠める。
今度こそ、本当に我慢できない。
でも、ダメってゆわれたし。
でもでも。
「あー…ぅん…んっ」
涙でぼやけた視界に、石田がいる。
こんなときじゃなきゃ見れない、男の、顔。
「や、やっ…イッちゃうっ…!」
「…いいよ」
「んぁっ…」
許しの言葉とほぼ同時、石田のキレイな指が水瀬の前立腺をグリグリと押して、先走りに濡れたその先端に爪を立てた。
「…あ、あぁっ…!!」
ビクン、ビクンッ…と、まるで陸に打ち上げられた魚のよう、水瀬はビクビクと体を震わせながら、自分の腹に精液をぶちまけた。
「やっぱ、後ろ弄られたほうが、感じるんだ?」
「…るせ、バカ! あぁんっ…」
ズルリと中から指を引き抜かれる感触にも、甘い声を上げてしまう。
薄い胸を激しく上下させながら、水瀬はクタリと体を弛緩させた。
「顔にも飛んでる…」
石田の顔が近付いてきて、ペロリと頬を舐める。
自分でイッて、自分の顔に掛けてしまった……それを自覚した瞬間、カーッと頬が熱くなるのを感じた。
「…ぅん」
唇を塞がれると、少し青臭いにおいと味。
それが自分の精液のせいだって分かるだけに、余計に恥ずかしさが増す。
「ぁ…」
両膝の裏を掬われて、尻の間に石田の熱が宛がわれた。ヌチャ…と濡れた感触がして、水瀬はこの次に来るであろう痛みと快感を思い、無意識に体の力を抜いた。
けれど、石田は水瀬の思うようにはしてくれなかった。
ももの間、水瀬の濡れそぼった後ろの穴や性器に、石田は勃ち上がった自身を擦り付けていくだけで、中には入れてくれない。先端を穴の周囲に押し当てれば、その先を期待して、水瀬の腰が揺らめく。
「ん、いし…」
早く早くと、誘うように水瀬の腰は動くのに、石田はグリグリと擦り付けるだけで。
「なん…で、ねぇ…」
「何が?」
「あぅ…バカ…!」
分かっているくせに。
自分だって、もうそんなに我慢できないくせに。
「あ、あっ…石田…!」
「言ってよ、水瀬」
「あぁっ…」
このヘタレな幼馴染みが、思いどおりにならないのが、悔しい。
コイツに追い詰められるなんて。
「ね、水瀬。言って、どうして欲しいか」
「はぁ…あっ…、ん」
「言ってよ……欲しいって」
「あ…」
―――――俺が欲しいって。
2008.08.19 (Tue)
3. 欲しいと言えない (前編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
「ん、く…」
先ほどまでの行為を、"焦らす"と言うには何だけれど、今日の水瀬にとっては、十分すぎるくらい焦らされているのに、石田は水瀬のキレイに付いた腹筋に唇を這わせたり、形よい臍を舐め上げたりするだけで。
「も…やだぁ…!」
「こら、暴れないの」
じれったさに身を捩る水瀬を押さえ付けて、鎖骨に唇を寄せる。それだけで水瀬の体はおもしろいように跳ね上がった。
「ん、んっ…」
体中を撫で回す石田の手に、翻弄される。
でも、触ってほしいところは、そこじゃない。
石田だって、分かっているくせに。
「いし…ッ、ん…あぁ…!」
待ち望んでいた性器への直接の刺激に、ビクリと水瀬の足シーツにが突っ張った。ゆるゆると擦り上げられて、急速に性感が高まっていく。
「はぁ…気持ちい…」
先走りに濡れたそれを激しく扱かれて、グチュグチュとイヤらしい音が耳を犯す。
「ん、んぁ…イイ…、それ……もぉ…」
「まだイッちゃダメだよ?」
「え? あ、やっ…!」
快感に流されるまま、一気に上り詰めようかというところ、今まで水瀬に快感を与えていた石田の手が、水瀬自身の根元を握って塞ぎ込む。
「や、や…いし……あ、ぁむ…」
何で? 何で?
イかせてよぉ。
覆い被さる石田の肩口やら首筋に歯を立てて、水瀬は何とかイケない快感をやり過ごそうとする。
石田は、水瀬の機嫌を取るように、チュッと唇にキスを落としてから、ベッドの隙間に隠すように常備しているローションのボトルを取り出した。
「はぁ…ん…」
「あ、コラ」
石田がローションを手に垂らそうと、水瀬から手を離した隙、堪え切れずに水瀬が自身に手を伸ばしたのだ。
自分で快感を引き出そうとした水瀬に気付き、石田は水瀬の手を取った。
「ダメって言ったでしょ?」
「バカぁ…うぅん…」
別に約束したわけでもない。どうとでも出来る石田の言葉なのに、水瀬はそれに逆らえず、シーツを手繰り寄せて、膝を擦り合わせる。
いつもだったら、我慢なんかしない。
相手が石田でなかったら、水瀬はいつだって相手の優位に立って、奔放なセックスをして、好き勝手に快楽を貪るのに。
「ん、く…」
先ほどまでの行為を、"焦らす"と言うには何だけれど、今日の水瀬にとっては、十分すぎるくらい焦らされているのに、石田は水瀬のキレイに付いた腹筋に唇を這わせたり、形よい臍を舐め上げたりするだけで。
「も…やだぁ…!」
「こら、暴れないの」
じれったさに身を捩る水瀬を押さえ付けて、鎖骨に唇を寄せる。それだけで水瀬の体はおもしろいように跳ね上がった。
「ん、んっ…」
体中を撫で回す石田の手に、翻弄される。
でも、触ってほしいところは、そこじゃない。
石田だって、分かっているくせに。
「いし…ッ、ん…あぁ…!」
待ち望んでいた性器への直接の刺激に、ビクリと水瀬の足シーツにが突っ張った。ゆるゆると擦り上げられて、急速に性感が高まっていく。
「はぁ…気持ちい…」
先走りに濡れたそれを激しく扱かれて、グチュグチュとイヤらしい音が耳を犯す。
「ん、んぁ…イイ…、それ……もぉ…」
「まだイッちゃダメだよ?」
「え? あ、やっ…!」
快感に流されるまま、一気に上り詰めようかというところ、今まで水瀬に快感を与えていた石田の手が、水瀬自身の根元を握って塞ぎ込む。
「や、や…いし……あ、ぁむ…」
何で? 何で?
イかせてよぉ。
覆い被さる石田の肩口やら首筋に歯を立てて、水瀬は何とかイケない快感をやり過ごそうとする。
石田は、水瀬の機嫌を取るように、チュッと唇にキスを落としてから、ベッドの隙間に隠すように常備しているローションのボトルを取り出した。
「はぁ…ん…」
「あ、コラ」
石田がローションを手に垂らそうと、水瀬から手を離した隙、堪え切れずに水瀬が自身に手を伸ばしたのだ。
自分で快感を引き出そうとした水瀬に気付き、石田は水瀬の手を取った。
「ダメって言ったでしょ?」
「バカぁ…うぅん…」
別に約束したわけでもない。どうとでも出来る石田の言葉なのに、水瀬はそれに逆らえず、シーツを手繰り寄せて、膝を擦り合わせる。
いつもだったら、我慢なんかしない。
相手が石田でなかったら、水瀬はいつだって相手の優位に立って、奔放なセックスをして、好き勝手に快楽を貪るのに。
2008.08.18 (Mon)
2. 弱い部分をひと握り (後編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
「も、や…そこばっか…!」
壁に手をついてバランスを崩さないようにしていた水瀬だったが、胸ばかりを執拗に攻められて、じれったくなって、石田の髪を掴んで引き剥がそうとする。
「何、じゃあどこがいいの?」
上目使いに尋ねる石田と、目が合う。
そんなふうに聞かれて、水瀬が素直に答えられないことを知っているのに。
「気持ちイイこと、したいんでしょ? どうしてほしいの?」
「は…あ、うぅん…」
指先で小さな乳首を捏ね繰り回されて、堪え切れずに水瀬は身を捩る。
「ちょっ…危な!」
後ろに引っ繰り返りそうになった水瀬の背中を慌てて支え、石田は水瀬からシャツを脱がすと、もどかしげに揺らめかす腰を押さえて、水瀬のベルトのバックルに手を掛けた。
「すげ…もうちょっと濡れてる…。気持ち良かった?」
「…っ、バ、カ…! 早く脱がせ、ろ! 制服、汚れ…」
「はいはい」
子どもをあやすような仕草で髪を撫でやり、水瀬をベッドに押し倒すと、下着と一緒に制服のスラックスを足から抜いた。
「はぁ…ん」
水瀬は呼吸を整えながら、同じように制服を脱ぐ石田を見上げる。
自分より背は高いけれど、筋肉があるのは断然こちらだし、なのにこうやって組み敷かれて。しかもそれが嫌じゃないなんて。
「何考えてんの?」
制服を脱ぎ終えた石田が覆い被さって来る。
「んー…俺と石田って、体の相性、いいなー…て」
「は?」
「そう思わない?」
「…そりゃどうも」
喜んでいいのかどうか微妙だ、と石田は密かに思う。
確かに体の相性がいいからこそ、こうやって何度も体を重ねているのだけど。けれどそれは、比べる対象があってこそのこと。
時おり耳にする、水瀬の男関係の"よろしくない"噂は、やはりあながち間違いではないと思い直させるから、その言葉は、本当に微妙だ。
けれど石田は、それ以上考えることをやめて、滑らかな水瀬の肌に唇と指を滑らせた。
「も、や…そこばっか…!」
壁に手をついてバランスを崩さないようにしていた水瀬だったが、胸ばかりを執拗に攻められて、じれったくなって、石田の髪を掴んで引き剥がそうとする。
「何、じゃあどこがいいの?」
上目使いに尋ねる石田と、目が合う。
そんなふうに聞かれて、水瀬が素直に答えられないことを知っているのに。
「気持ちイイこと、したいんでしょ? どうしてほしいの?」
「は…あ、うぅん…」
指先で小さな乳首を捏ね繰り回されて、堪え切れずに水瀬は身を捩る。
「ちょっ…危な!」
後ろに引っ繰り返りそうになった水瀬の背中を慌てて支え、石田は水瀬からシャツを脱がすと、もどかしげに揺らめかす腰を押さえて、水瀬のベルトのバックルに手を掛けた。
「すげ…もうちょっと濡れてる…。気持ち良かった?」
「…っ、バ、カ…! 早く脱がせ、ろ! 制服、汚れ…」
「はいはい」
子どもをあやすような仕草で髪を撫でやり、水瀬をベッドに押し倒すと、下着と一緒に制服のスラックスを足から抜いた。
「はぁ…ん」
水瀬は呼吸を整えながら、同じように制服を脱ぐ石田を見上げる。
自分より背は高いけれど、筋肉があるのは断然こちらだし、なのにこうやって組み敷かれて。しかもそれが嫌じゃないなんて。
「何考えてんの?」
制服を脱ぎ終えた石田が覆い被さって来る。
「んー…俺と石田って、体の相性、いいなー…て」
「は?」
「そう思わない?」
「…そりゃどうも」
喜んでいいのかどうか微妙だ、と石田は密かに思う。
確かに体の相性がいいからこそ、こうやって何度も体を重ねているのだけど。けれどそれは、比べる対象があってこそのこと。
時おり耳にする、水瀬の男関係の"よろしくない"噂は、やはりあながち間違いではないと思い直させるから、その言葉は、本当に微妙だ。
けれど石田は、それ以上考えることをやめて、滑らかな水瀬の肌に唇と指を滑らせた。
2008.08.17 (Sun)
2. 弱い部分をひと握り (前編) R18
*R18です。18歳未満のかた、そういったものが苦手なかたはご遠慮ください。
仕事の忙しい水瀬の両親が家にいないことはざらで。大学に通うために家を出た姉もめったには帰って来ないから、基本的に水瀬は1人暮らしも同然だ。
けれど、お隣の石田さんちが家族同然に過ごしてくれたので、寂しいと感じたことは1度だってなかった。
それに今となっては、良くも悪くも、他に誰もいない、2人きりになれるスペースとして、水瀬と石田に与えられたわけで。
「ん、ぅむ…」
ベッドの上、壁に背中を預ける体制で座った石田のももを跨ぎ、水瀬は夢中でその唇を貪っていた。
まるで逃がすまいとでもするように、石田の頭をしっかりと押さえて、息継ぎをする間も惜しむように、唇と舌の感触を味わう。
「っ…、」
すでに腰を揺らめかせている水瀬の好きなようにさせていた石田だったが、水瀬の背後に回していた手を、ソッとスラックスのウエスト部分に滑らせた。
シャツを引き抜き、中に忍ばせた手で、素肌をなぞる。
ピクリと震える、敏感な体。
「んっ…、はぁ…」
長い口付けを解いて、水瀬はイヤイヤするように首を振る。
「や、いし…ふぅ…」
「どうしたの? 何か発情してるね、今日」
もうすでに堪え切れない様子の水瀬に対し、石田はまだ全然冷静で。
片手で水瀬の肌を辿りながら、もう片方の手で、濡れた唇を拭ってやる。すると水瀬は舌を出して、その指を舐め上げた。
ピチャピチャと、赤い舌を覗かせながら指を舐める水瀬は、ミルクを欲しがる仔猫のそれに似ている。
(ま、こんなにエロい猫はいないけどね…)
水瀬に取られたままの手はそのままに、石田は反対の手で、器用に水瀬のネクタイとシャツのボタンを外していく。
露わになった水瀬の肌は、もうほんのりと赤く色付いている。
石田は水瀬の口から指を引き抜くと、濡れた指を水瀬の鎖骨から胸に掛けて滑らせる。
指先が胸の突起を掠めると、水瀬は「くぅ…」と小さく鳴いた。
「ん、ぅうん…あ、やっ…!」
引っ掻くように片方の乳首を弄られ、もう片方を吸われると、水瀬は背をしならせて善がった。
最初はこんなところ、男のくせに感じるわけがないと思っていた水瀬だったが、何度も石田に抱かれるうち、快感を覚え込まされてしまった。
おそらく水瀬の性感帯の大半は、石田が開拓したものだ。
水瀬は石田以外の男とも何度も体を重ねて来たけれど、きっと水瀬の体を一番知っているのは、石田に違いない。
普段はヘタレな幼馴染みだけれど、ベッドの上で水瀬が主導権を握れたことなんて、ただの1度もない。
仕事の忙しい水瀬の両親が家にいないことはざらで。大学に通うために家を出た姉もめったには帰って来ないから、基本的に水瀬は1人暮らしも同然だ。
けれど、お隣の石田さんちが家族同然に過ごしてくれたので、寂しいと感じたことは1度だってなかった。
それに今となっては、良くも悪くも、他に誰もいない、2人きりになれるスペースとして、水瀬と石田に与えられたわけで。
「ん、ぅむ…」
ベッドの上、壁に背中を預ける体制で座った石田のももを跨ぎ、水瀬は夢中でその唇を貪っていた。
まるで逃がすまいとでもするように、石田の頭をしっかりと押さえて、息継ぎをする間も惜しむように、唇と舌の感触を味わう。
「っ…、」
すでに腰を揺らめかせている水瀬の好きなようにさせていた石田だったが、水瀬の背後に回していた手を、ソッとスラックスのウエスト部分に滑らせた。
シャツを引き抜き、中に忍ばせた手で、素肌をなぞる。
ピクリと震える、敏感な体。
「んっ…、はぁ…」
長い口付けを解いて、水瀬はイヤイヤするように首を振る。
「や、いし…ふぅ…」
「どうしたの? 何か発情してるね、今日」
もうすでに堪え切れない様子の水瀬に対し、石田はまだ全然冷静で。
片手で水瀬の肌を辿りながら、もう片方の手で、濡れた唇を拭ってやる。すると水瀬は舌を出して、その指を舐め上げた。
ピチャピチャと、赤い舌を覗かせながら指を舐める水瀬は、ミルクを欲しがる仔猫のそれに似ている。
(ま、こんなにエロい猫はいないけどね…)
水瀬に取られたままの手はそのままに、石田は反対の手で、器用に水瀬のネクタイとシャツのボタンを外していく。
露わになった水瀬の肌は、もうほんのりと赤く色付いている。
石田は水瀬の口から指を引き抜くと、濡れた指を水瀬の鎖骨から胸に掛けて滑らせる。
指先が胸の突起を掠めると、水瀬は「くぅ…」と小さく鳴いた。
「ん、ぅうん…あ、やっ…!」
引っ掻くように片方の乳首を弄られ、もう片方を吸われると、水瀬は背をしならせて善がった。
最初はこんなところ、男のくせに感じるわけがないと思っていた水瀬だったが、何度も石田に抱かれるうち、快感を覚え込まされてしまった。
おそらく水瀬の性感帯の大半は、石田が開拓したものだ。
水瀬は石田以外の男とも何度も体を重ねて来たけれど、きっと水瀬の体を一番知っているのは、石田に違いない。
普段はヘタレな幼馴染みだけれど、ベッドの上で水瀬が主導権を握れたことなんて、ただの1度もない。
2008.08.16 (Sat)
1. 気持ちイイコト、しようよ
「いーしだくーん、かーえーろ!」
教室の入り口、教科書なんか殆ど入っていないカバンを抱えて、小学生のような口調で声を上げたのは、隣のクラスの幼馴染み、水瀬。
その声にギョッとして、石田は慌てて席を立った。
「水瀬、声デカイから!」
「だって石田遅いんだもん」
遅いとは言っても、ホームルームが終わる時間はどのクラスも大体一緒で、その後、石田が特別ダラダラしていたわけでもなく。
はっきり言って、石田が遅いなんてことは、少しもないのだけれど。
「帰り、マック寄ってこーね、石田の奢りで」
「…はい」
ニッコリと、けれど有無を言わせない笑顔でそう言う水瀬に、石田は素直に頷くしかない。
その相変わらずの光景に、クラスメイトたちは苦笑いをしているが、昔からのこのパワーバランスを、石田は高校に入ってからも覆すことが出来ないでいた。
*****
「あ、水瀬、英語の小テスト、どうだった?」
「むぐ?」
約束どおり(というか、一方的な水瀬の決定により)、石田の奢りのハンバーガーを頬張っていた水瀬は、向かいの席でシェイクを飲んでいた石田の言葉に、キョトンとした顔で視線を向けた。
「え、水瀬のクラス、なかったの? 英語の小テスト」
「……あった」
クラスは違うが、どちらのクラスの英語も、栗原が受け持っている。今日の授業で小テストを受けた石田は、英語が死ぬほど苦手な幼馴染みをつい気に掛け、何となく聞いてみたのだ。
だが、『どうだった?』という問いは明らかに愚問で、水瀬の表情を見れば、その結果は聞くまでもないことだった。
「あぅー…英語嫌い、栗原嫌い…」
「お前の英語嫌いは栗原のせいじゃねぇだろ。大体、補習まで受けたのに、何でそんななんだよ」
「…………。ほ、しゅー…」
石田の発した『補習』という言葉に、ピタリと水瀬の手が止まった。
英語のテストだけ、あえなく赤点を取ってしまった水瀬は、休み返上で補習に参加したわけで。
けれどその補習は、教室の中だけでは、終わらなかったわけで。
(栗原のヤツ…。でも、気持ち良かったし…。あぅ…)
そんなつもりはないのに、水瀬は、あのとき自分を翻弄した栗原の手を思い出してしまった。
指の感触。
快感。
……顔が熱い。
「水瀬、どうした?」
顔を赤らめ、急に黙り込んでしまった水瀬に、石田は眉を寄せる。
目の前で手を振られ、ようやく水瀬はハッと我に返った。
「は、わ…何でもない…」
自分の意志とは関係なく、熱くなってしまった体を冷ますように、水瀬は石田のシェイクを奪い取って、ゴクゴク飲み干した。
「ちょっ…」
勝手にシェイクまで飲まれてしまった石田は、一瞬慌てたけれど、いつもの気ままな水瀬の行動と受け止め、深くは追求しなかった(こういうところが、いつまで経っても優位に立てない原因だということには、もちろん気が付きもせず)。
(ヤダな―…、俺、こんなとこで発情してるよ…。もぉヤダ…)
快感に弱い、自分の体が憎い。
別に誰かれ構わず抱かれたいわけではないが(もちろん女の子も大好きだし)、けれど、ちょっとタイプだなーなんて思った相手から誘われると、断り切れない自分がいて。
「…石田」
「ん?」
「今日ウチ来て。これから」
「何、英語の勉強する?」
「違ぇよ、バカ! ハゲ!」
会話の流れ的に、石田の言い分は何も間違っていないはずなのに、なぜかひどい言葉で否定されてしまう。
「じゃあ何?」
「今日もウチ、誰もいないの。帰っても」
「うん」
だから何? と、水瀬の言葉の意味を悟らない石田は、首を傾げている。
水瀬は溜め息をついて、シェイクの入っていたカップを握り潰すと、石田に耳を貸すよう手招きする。
「え、何なの、水瀬」
それでも素直に顔を近づけてくる石田。
水瀬はその耳元に口を寄せて。
「帰って、気持ちイイこと、しよ?」
たっぷりと甘みと艶を含んだ声で、そう囁いた。
教室の入り口、教科書なんか殆ど入っていないカバンを抱えて、小学生のような口調で声を上げたのは、隣のクラスの幼馴染み、水瀬。
その声にギョッとして、石田は慌てて席を立った。
「水瀬、声デカイから!」
「だって石田遅いんだもん」
遅いとは言っても、ホームルームが終わる時間はどのクラスも大体一緒で、その後、石田が特別ダラダラしていたわけでもなく。
はっきり言って、石田が遅いなんてことは、少しもないのだけれど。
「帰り、マック寄ってこーね、石田の奢りで」
「…はい」
ニッコリと、けれど有無を言わせない笑顔でそう言う水瀬に、石田は素直に頷くしかない。
その相変わらずの光景に、クラスメイトたちは苦笑いをしているが、昔からのこのパワーバランスを、石田は高校に入ってからも覆すことが出来ないでいた。
*****
「あ、水瀬、英語の小テスト、どうだった?」
「むぐ?」
約束どおり(というか、一方的な水瀬の決定により)、石田の奢りのハンバーガーを頬張っていた水瀬は、向かいの席でシェイクを飲んでいた石田の言葉に、キョトンとした顔で視線を向けた。
「え、水瀬のクラス、なかったの? 英語の小テスト」
「……あった」
クラスは違うが、どちらのクラスの英語も、栗原が受け持っている。今日の授業で小テストを受けた石田は、英語が死ぬほど苦手な幼馴染みをつい気に掛け、何となく聞いてみたのだ。
だが、『どうだった?』という問いは明らかに愚問で、水瀬の表情を見れば、その結果は聞くまでもないことだった。
「あぅー…英語嫌い、栗原嫌い…」
「お前の英語嫌いは栗原のせいじゃねぇだろ。大体、補習まで受けたのに、何でそんななんだよ」
「…………。ほ、しゅー…」
石田の発した『補習』という言葉に、ピタリと水瀬の手が止まった。
英語のテストだけ、あえなく赤点を取ってしまった水瀬は、休み返上で補習に参加したわけで。
けれどその補習は、教室の中だけでは、終わらなかったわけで。
(栗原のヤツ…。でも、気持ち良かったし…。あぅ…)
そんなつもりはないのに、水瀬は、あのとき自分を翻弄した栗原の手を思い出してしまった。
指の感触。
快感。
……顔が熱い。
「水瀬、どうした?」
顔を赤らめ、急に黙り込んでしまった水瀬に、石田は眉を寄せる。
目の前で手を振られ、ようやく水瀬はハッと我に返った。
「は、わ…何でもない…」
自分の意志とは関係なく、熱くなってしまった体を冷ますように、水瀬は石田のシェイクを奪い取って、ゴクゴク飲み干した。
「ちょっ…」
勝手にシェイクまで飲まれてしまった石田は、一瞬慌てたけれど、いつもの気ままな水瀬の行動と受け止め、深くは追求しなかった(こういうところが、いつまで経っても優位に立てない原因だということには、もちろん気が付きもせず)。
(ヤダな―…、俺、こんなとこで発情してるよ…。もぉヤダ…)
快感に弱い、自分の体が憎い。
別に誰かれ構わず抱かれたいわけではないが(もちろん女の子も大好きだし)、けれど、ちょっとタイプだなーなんて思った相手から誘われると、断り切れない自分がいて。
「…石田」
「ん?」
「今日ウチ来て。これから」
「何、英語の勉強する?」
「違ぇよ、バカ! ハゲ!」
会話の流れ的に、石田の言い分は何も間違っていないはずなのに、なぜかひどい言葉で否定されてしまう。
「じゃあ何?」
「今日もウチ、誰もいないの。帰っても」
「うん」
だから何? と、水瀬の言葉の意味を悟らない石田は、首を傾げている。
水瀬は溜め息をついて、シェイクの入っていたカップを握り潰すと、石田に耳を貸すよう手招きする。
「え、何なの、水瀬」
それでも素直に顔を近づけてくる石田。
水瀬はその耳元に口を寄せて。
「帰って、気持ちイイこと、しよ?」
たっぷりと甘みと艶を含んだ声で、そう囁いた。
2008.08.15 (Fri)
22. 塗り潰してしまって。 (前編)
「ぅ゛ー……おはよぉ…」
朝メシ作ってたら、哲也がもそもそと起き出してきた。
二日酔いとかなってないのかな。
「具合は? 平気か?」
「……ん、ちょっと、頭痛い…」
「飲み過ぎだよ」
苦笑しながら、水を渡す。
「俺、昨日そんなに飲んでたぁ?」
「覚えてないのか?」
水を飲み干したグラスの縁をガシガシ噛みながら、哲也はキュッと眉を寄せる。
窺うように俺を見る哲也は、身長差からしても、ちょうど上目遣いになるわけでダメだって、ホント…。
「んー……何かところどころには……。俺、何か変なこと、しなかった?」
「変なことー?」
哲也からグラスを取り上げて、わざと、考えるふり。
どこからどこまでを"変なこと"って線引きしたらいいんだろ。俺が普通と思ってても、哲也にしてみたら、変なことかもしれないじゃん。その逆も然り。
とりあえず昨日は、俺の思う"変なこと"はなかった…………と思う。
でも、あれは。
あれはどうなんだろ。
酔っ払った弾みで、俺に『好き』とか言ってましたよ、哲也さん(その直後に爆睡したけど)。
それは、どういう意味で取ったらいいの?
どう解釈したらいい?
友情として?
恋愛感情として?
それともただの恩義を感じてる相手として?
「貴久?」
「……ぁ…」
ずっと黙り込んでたから、哲也は、自分がよっぽど変なことでもしたんだろうかと心配になったらしく、困ったように俺を見てた。
「変なことは……うん、してない。酔ってワンワン泣いてたくらいで」
「ッ…!! ///////// ……泣いてないわ! アホ!!」
それだって十分変なことじゃんか! って、子供みたいにプンプン怒りながら、哲也は洗面所に逃げていった。
「だって……言えないじゃん」
言ったって、どうせ覚えてないんだろ? お前は。
あれは、酔っ払いの戯言。
聞かなかったことにするのがいいに決まってる。
だってそしたら、きっと俺らは今までどおりでいられる。
愛情に発展できないなら、友情のままでもいい。気持ちを伝えて哲也が離れていくなら、この感情を抑え込むことくらい、どうってことない。
そうすればこの関係は、発展もしない代わりに、崩れもしない。
…………そう思い込んでた。
朝メシ作ってたら、哲也がもそもそと起き出してきた。
二日酔いとかなってないのかな。
「具合は? 平気か?」
「……ん、ちょっと、頭痛い…」
「飲み過ぎだよ」
苦笑しながら、水を渡す。
「俺、昨日そんなに飲んでたぁ?」
「覚えてないのか?」
水を飲み干したグラスの縁をガシガシ噛みながら、哲也はキュッと眉を寄せる。
窺うように俺を見る哲也は、身長差からしても、ちょうど上目遣いになるわけでダメだって、ホント…。
「んー……何かところどころには……。俺、何か変なこと、しなかった?」
「変なことー?」
哲也からグラスを取り上げて、わざと、考えるふり。
どこからどこまでを"変なこと"って線引きしたらいいんだろ。俺が普通と思ってても、哲也にしてみたら、変なことかもしれないじゃん。その逆も然り。
とりあえず昨日は、俺の思う"変なこと"はなかった…………と思う。
でも、あれは。
あれはどうなんだろ。
酔っ払った弾みで、俺に『好き』とか言ってましたよ、哲也さん(その直後に爆睡したけど)。
それは、どういう意味で取ったらいいの?
どう解釈したらいい?
友情として?
恋愛感情として?
それともただの恩義を感じてる相手として?
「貴久?」
「……ぁ…」
ずっと黙り込んでたから、哲也は、自分がよっぽど変なことでもしたんだろうかと心配になったらしく、困ったように俺を見てた。
「変なことは……うん、してない。酔ってワンワン泣いてたくらいで」
「ッ…!! ///////// ……泣いてないわ! アホ!!」
それだって十分変なことじゃんか! って、子供みたいにプンプン怒りながら、哲也は洗面所に逃げていった。
「だって……言えないじゃん」
言ったって、どうせ覚えてないんだろ? お前は。
あれは、酔っ払いの戯言。
聞かなかったことにするのがいいに決まってる。
だってそしたら、きっと俺らは今までどおりでいられる。
愛情に発展できないなら、友情のままでもいい。気持ちを伝えて哲也が離れていくなら、この感情を抑え込むことくらい、どうってことない。
そうすればこの関係は、発展もしない代わりに、崩れもしない。
…………そう思い込んでた。
2008.08.14 (Thu)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、 (後編)
「うー……」
何杯目かのビールをお代わりしたところで、突然哲也が呻き出した。
「どうした?」
俺も啓ちゃんもアルコールが入って、(俺は感じていた気まずさも忘れて)若干テンションが上がり気味だったんやけど、ジョッキを置いて哲也の様子を窺う。
「テツ? 大丈夫か?」
「らい、じょー……ぶ」
…………絶対ダメだわ。
コイツ、ホントはすっごい酒弱いのか? そういえば、最初に会ったときもベロンベロンに酔っ払ってたもんなぁ。
普段は加減してるけど、今日は雰囲気に飲まれて、飲み過ぎたか。
「今日はもうお開きにするか?」
「らめ!」
そう提案した啓ちゃんに、すかさず哲也が突っ込む。
ていうか君、もうグダグダのグズグズじゃん。ここは素直に言うこと聞いてたほうがいいよ。
「嫌らぁ〜、まだ飲むもん……な、たかひさ?」
「ふぇっ!?」
突然話を振られ、下から上目遣いに顔を覗き込まれ、最終的にはポテッと体を凭れ掛かられて。
こんな状況で、僕は一体全体どうすればいいんでしょうか…!?
助けを求めるように啓ちゃんを見れば、さすがにこの状況には頭が付いていかないのか、ポカンと口を開けてる。
「テツ、明日も仕事あるんだろ? もうこの辺で…」
「やらぁ。けい、何でそんなん言うの…?」
グズッて鼻を啜って…………えっ!? もしかして泣き出した!?
「て、哲也!」
泣かなくていいから、て肩をポンポンしてやれば、コクリ頷いて、俺の腕の中に収まってしまった。
…………ッッッ……!
ちょっ……そんな甘えられても、非常に困るんですけど…!!
「啓ちゃん、」
「…………え……あ、うん」
そんな、一気に酔い覚めましたー、みたいな顔しないでよ!
「分かった、テツ。分かったから泣くな、な?」
「泣かんもん、ボク…」
って、まだ鼻がグズグズ言ってますがな。
でも、覚束ない手つきでジョッキを掴む哲也は、やっぱりどうしてもまだ飲みたいらしくて。
零す、零す…!
「貴久…」
啓ちゃんに呼ばれて、ビール零さんように哲也のジョッキを支えながら顔を上げると、"やっぱもう会計しよ?"って目配せされて、それに頷いた。
啓ちゃんが会計を済ませてる間、仕方ないから、グダグダになってる哲也をあやしてる。
何か知らないけど、哲也は1人ですごいご機嫌で。
いいようにアルコールが回ってるのかな。
「たかひさぁ」
「はいはい、何ですか?」
人の気も知らないで、存分に甘えてくれちゃって。
「んー……今日、ありがとー…」
「あぁ?」
「俺、今すっごい嬉しいの……こんな席、設けてもらってー…」
「そっか」
スリスリ擦り寄って来られて、…………うん、悪い気はしない。てか、ちょっと嬉しいというか、ドキドキするというか、胸キュン系? (ダメだ、俺も酔ってる…)
「何かさぁ……また貴久んち戻ってきたじゃんかぁ」
「うん」
「したら、やっぱ何か貴久、前と違うからぁ」
「違うか? 違わないだろ?」
「分からんけどぉ、何か……違う。気まずそうにしてる」
してない、て答えようとして、そういえばその"気まずい"て、啓ちゃんとの会話の中にも出てきたことを思い出した。
哲也は、俺が哲也との関係を気まずいって感じてるって思ってたみたいだけど…。
「だからぁ、やっぱ俺が戻って来たの、迷惑だったのかなぁって思って…」
「迷惑じゃないよ」
「ホント? 俺のこと、嫌いになったんじゃないの…?」
「え……何で? なってないよ?」
「ホントぉ…?」
「ホントだって」
頭を俺の胸に押し付けたまま、見上げるようにして俺の顔を見て、哲也がぱぁっと笑顔になって。
俺は、ヤバイ! って思うくらい、心臓が早く打つのを感じた。
ヤバイ、マジでヤバイ。
これ以上ドキドキしたら、哲也に気付かれるんじゃないか?
「んふふ……良かったぁ。嫌われた、ら……俺、ん…貴久のこと、好き、なのにぃ…」
………………………………。
「…………………………え………………?」
何杯目かのビールをお代わりしたところで、突然哲也が呻き出した。
「どうした?」
俺も啓ちゃんもアルコールが入って、(俺は感じていた気まずさも忘れて)若干テンションが上がり気味だったんやけど、ジョッキを置いて哲也の様子を窺う。
「テツ? 大丈夫か?」
「らい、じょー……ぶ」
…………絶対ダメだわ。
コイツ、ホントはすっごい酒弱いのか? そういえば、最初に会ったときもベロンベロンに酔っ払ってたもんなぁ。
普段は加減してるけど、今日は雰囲気に飲まれて、飲み過ぎたか。
「今日はもうお開きにするか?」
「らめ!」
そう提案した啓ちゃんに、すかさず哲也が突っ込む。
ていうか君、もうグダグダのグズグズじゃん。ここは素直に言うこと聞いてたほうがいいよ。
「嫌らぁ〜、まだ飲むもん……な、たかひさ?」
「ふぇっ!?」
突然話を振られ、下から上目遣いに顔を覗き込まれ、最終的にはポテッと体を凭れ掛かられて。
こんな状況で、僕は一体全体どうすればいいんでしょうか…!?
助けを求めるように啓ちゃんを見れば、さすがにこの状況には頭が付いていかないのか、ポカンと口を開けてる。
「テツ、明日も仕事あるんだろ? もうこの辺で…」
「やらぁ。けい、何でそんなん言うの…?」
グズッて鼻を啜って…………えっ!? もしかして泣き出した!?
「て、哲也!」
泣かなくていいから、て肩をポンポンしてやれば、コクリ頷いて、俺の腕の中に収まってしまった。
…………ッッッ……!
ちょっ……そんな甘えられても、非常に困るんですけど…!!
「啓ちゃん、」
「…………え……あ、うん」
そんな、一気に酔い覚めましたー、みたいな顔しないでよ!
「分かった、テツ。分かったから泣くな、な?」
「泣かんもん、ボク…」
って、まだ鼻がグズグズ言ってますがな。
でも、覚束ない手つきでジョッキを掴む哲也は、やっぱりどうしてもまだ飲みたいらしくて。
零す、零す…!
「貴久…」
啓ちゃんに呼ばれて、ビール零さんように哲也のジョッキを支えながら顔を上げると、"やっぱもう会計しよ?"って目配せされて、それに頷いた。
啓ちゃんが会計を済ませてる間、仕方ないから、グダグダになってる哲也をあやしてる。
何か知らないけど、哲也は1人ですごいご機嫌で。
いいようにアルコールが回ってるのかな。
「たかひさぁ」
「はいはい、何ですか?」
人の気も知らないで、存分に甘えてくれちゃって。
「んー……今日、ありがとー…」
「あぁ?」
「俺、今すっごい嬉しいの……こんな席、設けてもらってー…」
「そっか」
スリスリ擦り寄って来られて、…………うん、悪い気はしない。てか、ちょっと嬉しいというか、ドキドキするというか、胸キュン系? (ダメだ、俺も酔ってる…)
「何かさぁ……また貴久んち戻ってきたじゃんかぁ」
「うん」
「したら、やっぱ何か貴久、前と違うからぁ」
「違うか? 違わないだろ?」
「分からんけどぉ、何か……違う。気まずそうにしてる」
してない、て答えようとして、そういえばその"気まずい"て、啓ちゃんとの会話の中にも出てきたことを思い出した。
哲也は、俺が哲也との関係を気まずいって感じてるって思ってたみたいだけど…。
「だからぁ、やっぱ俺が戻って来たの、迷惑だったのかなぁって思って…」
「迷惑じゃないよ」
「ホント? 俺のこと、嫌いになったんじゃないの…?」
「え……何で? なってないよ?」
「ホントぉ…?」
「ホントだって」
頭を俺の胸に押し付けたまま、見上げるようにして俺の顔を見て、哲也がぱぁっと笑顔になって。
俺は、ヤバイ! って思うくらい、心臓が早く打つのを感じた。
ヤバイ、マジでヤバイ。
これ以上ドキドキしたら、哲也に気付かれるんじゃないか?
「んふふ……良かったぁ。嫌われた、ら……俺、ん…貴久のこと、好き、なのにぃ…」
………………………………。
「…………………………え………………?」
2008.08.13 (Wed)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、 (中編)
仕事が終わって、啓ちゃんが予約してた店に行くと、その前に、社会人の男としては少し派手な格好をした小さな姿…………哲也がいて。
幸いにも今日は、変なナンパには引っ掛かってなかった。
哲也の店は、勤務体制がシフト? フレックス? 何かそういうのがあって、終わるのが遅いときもあれば、俺らと同じくらいの時間に上がるときもある。
「お待たせ。中で待ってても良かったのに。暑かっただろ?」
「今来たとこだから。お疲れさん」
たあいのない話をしながら、店に入る。学生さんやらサラリーマンやらで賑わってる店内。俺らはちょっと奥のほうの小さい個室に通された。
俺と哲也が並んで、テーブルを挟んだ向こう側に啓ちゃんが1人で座ってる。最初に啓ちゃんが、席の真ん中に座ったから、俺らが2人で並ばざるを得なくなったんだけど。
ビールと、適当に食べるものを頼むと、何となくの沈黙。
別に気を遣い合うような間柄じゃないのに。
「貴久……昨日の今日で、平気なの?」
顔も上げず、手元のおしぼりを弄りながら、哲也が口を開いた。
「何が?」
「熱。下がった?」
聞き返せば、少し視線を上げる。
あぁ、昨日熱っぽくて具合悪なったのに、今日はいきなり外でメシ食うなんて言い出したからか。そうだな、大人しく寝とけばいいものを。
「あぁうん。別に風邪じゃないから。大したことない」
確かに風邪を引いたわけでもなく。
熱は知恵熱やし。具合悪いのも、別に体調不良ってわけじゃなくて。
「テツ、お前ちゃんと看病したのか?」
隣で啓ちゃんがからかうように茶々を入れてくる。
「したよ! ホントもう、子供のお守は大変なんだから!」
「うっさい!」
ようやく普段の雰囲気になったところで、注文していたビールが届いた。
「じゃあ、テツの復職を祝って乾杯」
3人でジョッキを合わせる。
確かに啓ちゃんの言ったとおり。
もし今この場に啓ちゃんがいなかったら、俺、どんなふうに哲也と話したらいいか分からない。
何を今さら意識してんだって話だけど、ホント。
あぁ、そういうのを気まずいって言うんだな…。
幸いにも今日は、変なナンパには引っ掛かってなかった。
哲也の店は、勤務体制がシフト? フレックス? 何かそういうのがあって、終わるのが遅いときもあれば、俺らと同じくらいの時間に上がるときもある。
「お待たせ。中で待ってても良かったのに。暑かっただろ?」
「今来たとこだから。お疲れさん」
たあいのない話をしながら、店に入る。学生さんやらサラリーマンやらで賑わってる店内。俺らはちょっと奥のほうの小さい個室に通された。
俺と哲也が並んで、テーブルを挟んだ向こう側に啓ちゃんが1人で座ってる。最初に啓ちゃんが、席の真ん中に座ったから、俺らが2人で並ばざるを得なくなったんだけど。
ビールと、適当に食べるものを頼むと、何となくの沈黙。
別に気を遣い合うような間柄じゃないのに。
「貴久……昨日の今日で、平気なの?」
顔も上げず、手元のおしぼりを弄りながら、哲也が口を開いた。
「何が?」
「熱。下がった?」
聞き返せば、少し視線を上げる。
あぁ、昨日熱っぽくて具合悪なったのに、今日はいきなり外でメシ食うなんて言い出したからか。そうだな、大人しく寝とけばいいものを。
「あぁうん。別に風邪じゃないから。大したことない」
確かに風邪を引いたわけでもなく。
熱は知恵熱やし。具合悪いのも、別に体調不良ってわけじゃなくて。
「テツ、お前ちゃんと看病したのか?」
隣で啓ちゃんがからかうように茶々を入れてくる。
「したよ! ホントもう、子供のお守は大変なんだから!」
「うっさい!」
ようやく普段の雰囲気になったところで、注文していたビールが届いた。
「じゃあ、テツの復職を祝って乾杯」
3人でジョッキを合わせる。
確かに啓ちゃんの言ったとおり。
もし今この場に啓ちゃんがいなかったら、俺、どんなふうに哲也と話したらいいか分からない。
何を今さら意識してんだって話だけど、ホント。
あぁ、そういうのを気まずいって言うんだな…。
2008.08.12 (Tue)
21. 虹色の空のなかに、泣きたくなるほどの希望を見た気がして、 (前編)
だって俺のこの気持ち、伝えたって、叶わないでしょう?
*****
「おはよう、貴久」
会社に行けば、早速ニヤニヤした顔の啓ちゃんが近付いてきた。
嫌な顔。
「…………何?」
「何だよ、その反応。で、どうだった? 昨日は」
「……啓ちゃん、何かおっさん化してる……アダッ」
失礼な言い草には、即行でデコピンが飛んでくる。
「昨日はー……熱が出た」
「はぁ?」
痛む額をさすりながら答えれば、啓ちゃんはグッと眉を顰める。
そんな顔されたって、ホントだもん。
「風邪か?」
露骨に嫌な顔をして俺から少し距離を取る啓ちゃんに、「知恵熱」って答える。
「知恵熱〜? 頭使い過ぎたってこと?」
「そぉ」
「まぁそりゃ悩むだろうけど……熱まで出すか?」
「知らん」
だってですよ?
もし俺のこの気持ちが、哲也に対する気持ちが度の過ぎた友情じゃなくて、愛情なんだとして。
哲也は『ノン気には手ぇ出さない』って言ってたし。
つまりは、どの道、報われない想いってことだ。
あーでも、哲也のこと好きだって思ってるってことは、もうノン気とは違うのかな?
でも他の男、例えば啓ちゃんとかに、そういう感情は湧かないのよ。
「う゛ー……」
「おい、こんなとこでまた熱出すなよ?」
「………………はい」
ダメだ、またショートしそう…。
「なぁ、じゃあさ、今日やろっか?」
「何を?」
「テツの復職祝い会」
「、ッ…なんっ……テッ…」
またペチンて額を叩かれて、「動揺しすぎ」って言われる。
もう、朝っぱらからこんなにド突かれて、これ以上アホになったらどうすんの?
「いいじゃん。どうせまた家で2人きりになれば、気まずいんだろ?」
「気まずいわけじゃ…」
「ホントか? でもテツは」
「え?」
「…………何でもない」
啓ちゃんが、言ってから、思わず「しまった!」みたいな顔で視線を逸らすから、俺は無理やりその視界に割り込む。
「啓ちゃん」
「何でもないって」
「哲也が気まずいて言ってたの?」
俺と一緒にいるのを? 俺んちにいるのを? それとも、昨日のこと?
「違うって。だからー」
「何?」
「お前が何か気まずそうにしてるって…」
「哲也がそう言ってたの?」
「…………まぁ……」
俺、そんな雰囲気醸し出してたか?
自分で気付いてないだけで、昨日とかもそんなだったとか?
「自分で気付いてないのか?」
確かに、今までと同じような感じではいれないって思って…………でも気まずいとか、そんなんじゃないけど……。
「いいじゃん、な? 今晩、一緒にメシしようぜ? 俺からテツに連絡するし」
「……うん」
「だって、そう転ぶにしたって、このままじゃいられないだろ?」
啓ちゃんは俺の肩をポンと叩くと、そう言い残して自分の席へと戻っていった。
*****
「おはよう、貴久」
会社に行けば、早速ニヤニヤした顔の啓ちゃんが近付いてきた。
嫌な顔。
「…………何?」
「何だよ、その反応。で、どうだった? 昨日は」
「……啓ちゃん、何かおっさん化してる……アダッ」
失礼な言い草には、即行でデコピンが飛んでくる。
「昨日はー……熱が出た」
「はぁ?」
痛む額をさすりながら答えれば、啓ちゃんはグッと眉を顰める。
そんな顔されたって、ホントだもん。
「風邪か?」
露骨に嫌な顔をして俺から少し距離を取る啓ちゃんに、「知恵熱」って答える。
「知恵熱〜? 頭使い過ぎたってこと?」
「そぉ」
「まぁそりゃ悩むだろうけど……熱まで出すか?」
「知らん」
だってですよ?
もし俺のこの気持ちが、哲也に対する気持ちが度の過ぎた友情じゃなくて、愛情なんだとして。
哲也は『ノン気には手ぇ出さない』って言ってたし。
つまりは、どの道、報われない想いってことだ。
あーでも、哲也のこと好きだって思ってるってことは、もうノン気とは違うのかな?
でも他の男、例えば啓ちゃんとかに、そういう感情は湧かないのよ。
「う゛ー……」
「おい、こんなとこでまた熱出すなよ?」
「………………はい」
ダメだ、またショートしそう…。
「なぁ、じゃあさ、今日やろっか?」
「何を?」
「テツの復職祝い会」
「、ッ…なんっ……テッ…」
またペチンて額を叩かれて、「動揺しすぎ」って言われる。
もう、朝っぱらからこんなにド突かれて、これ以上アホになったらどうすんの?
「いいじゃん。どうせまた家で2人きりになれば、気まずいんだろ?」
「気まずいわけじゃ…」
「ホントか? でもテツは」
「え?」
「…………何でもない」
啓ちゃんが、言ってから、思わず「しまった!」みたいな顔で視線を逸らすから、俺は無理やりその視界に割り込む。
「啓ちゃん」
「何でもないって」
「哲也が気まずいて言ってたの?」
俺と一緒にいるのを? 俺んちにいるのを? それとも、昨日のこと?
「違うって。だからー」
「何?」
「お前が何か気まずそうにしてるって…」
「哲也がそう言ってたの?」
「…………まぁ……」
俺、そんな雰囲気醸し出してたか?
自分で気付いてないだけで、昨日とかもそんなだったとか?
「自分で気付いてないのか?」
確かに、今までと同じような感じではいれないって思って…………でも気まずいとか、そんなんじゃないけど……。
「いいじゃん、な? 今晩、一緒にメシしようぜ? 俺からテツに連絡するし」
「……うん」
「だって、そう転ぶにしたって、このままじゃいられないだろ?」
啓ちゃんは俺の肩をポンと叩くと、そう言い残して自分の席へと戻っていった。
2008.08.11 (Mon)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (後編)
「はぁ〜〜〜…。まぁいいけど。気分は?」
「は?」
盛大な溜め息をついた後、哲也は呆れ顔ながら、俺にそう問うて来た。
「気分。熱、まだある?」
そう言いながら哲也は、ぴとっと、さっき思っきし突っ込んだ俺の額に手を当てて、何やら熱の有無を確認してる。
何?
熱ってどういうこと?
「お前、さっきソファんとこで話してるとき、具合悪いとか言ったじゃんか。その後も何かブツブツ言ってたけど、したらいきなり目ぇ閉じて、くたんてなるから!」
「ホントに?」
「ホントに! 何か熱っぽいし、病院行かないとか言ったから、とりあえずベッドまで引っ張ってきたの」
哲也に捲くし立てられるように説明されて、俺はようやく、ここに来るまでの状況を思い出した。
そういえば、リビングでずっとグダグダ考えてたんだった…。
「何、寝不足? 風邪?」
「………………知恵熱」
「はぁ?」
考えすぎて、頭ん中がショートしたってことか。
おいおい、もうちょっとがんばれ、俺の頭。
「なぁ哲也」
「んー?」
「俺、さっきソファんとこで、何言ってた?」
「何って……もうダメだ、とか……何でお前なんだ、とか…」
「そっか…」
俺は寝返りを打ってうつ伏せになると、枕に顔を押し付けた。
「貴久…?」
「……ゴメン…」
「何が?」
「…………分からん」
「……………………」
ギシリ、ベッドが軋んで、哲也がベッドを下りたのが分かった。
「…………どこ行くの?」
「んー? 俺ももう寝る」
顔を上げれば、「ふとん、あっちだから」って、哲也がドアのほうを指さしてる。
「こっち来て」
「え?」
「哲也……こっち来て」
何言ってんだろ、俺…。
「貴久?」
薄暗い室内。
哲也が近付いてくる気配だけがする。
「まだ具合、悪い?」
「…………分からん……」
「もう寝よ?」
哲也がベッドに入って来る。
「寝よ?」
「……ん…」
「は?」
盛大な溜め息をついた後、哲也は呆れ顔ながら、俺にそう問うて来た。
「気分。熱、まだある?」
そう言いながら哲也は、ぴとっと、さっき思っきし突っ込んだ俺の額に手を当てて、何やら熱の有無を確認してる。
何?
熱ってどういうこと?
「お前、さっきソファんとこで話してるとき、具合悪いとか言ったじゃんか。その後も何かブツブツ言ってたけど、したらいきなり目ぇ閉じて、くたんてなるから!」
「ホントに?」
「ホントに! 何か熱っぽいし、病院行かないとか言ったから、とりあえずベッドまで引っ張ってきたの」
哲也に捲くし立てられるように説明されて、俺はようやく、ここに来るまでの状況を思い出した。
そういえば、リビングでずっとグダグダ考えてたんだった…。
「何、寝不足? 風邪?」
「………………知恵熱」
「はぁ?」
考えすぎて、頭ん中がショートしたってことか。
おいおい、もうちょっとがんばれ、俺の頭。
「なぁ哲也」
「んー?」
「俺、さっきソファんとこで、何言ってた?」
「何って……もうダメだ、とか……何でお前なんだ、とか…」
「そっか…」
俺は寝返りを打ってうつ伏せになると、枕に顔を押し付けた。
「貴久…?」
「……ゴメン…」
「何が?」
「…………分からん」
「……………………」
ギシリ、ベッドが軋んで、哲也がベッドを下りたのが分かった。
「…………どこ行くの?」
「んー? 俺ももう寝る」
顔を上げれば、「ふとん、あっちだから」って、哲也がドアのほうを指さしてる。
「こっち来て」
「え?」
「哲也……こっち来て」
何言ってんだろ、俺…。
「貴久?」
薄暗い室内。
哲也が近付いてくる気配だけがする。
「まだ具合、悪い?」
「…………分からん……」
「もう寝よ?」
哲也がベッドに入って来る。
「寝よ?」
「……ん…」
2008.08.10 (Sun)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (中編)
何、安心したように熟睡してんだよ…。
哲也を起こさないように体を動かして、そっと哲也の頬を指でなぞった。
ふよふよしてる。
俺もちょっとふにふにしてるけど(最近少々メタボってるせい…)、それとはまたちょっと違う感じ。
「んー……ゃ…」
くすぐったいのか、哲也は俺の手を払おうとするような仕草をするけど、寝惚けてる(というより、殆ど寝てる)せいで、動かした手は、目的地に辿り着く前にペタンと元の位置に落ちた。
うはは、何か笑える。
懲りずに指を動かしてると、哲也の眉間にシワが寄り出す。起きるかな?
「ぅんー…」
かすかにまつ毛が震える。
あ、起きる…。
起こしたらダメだ、て気持ちもあったのに。てか、9割がたそう思ってたのに。
ギュウゥ〜〜〜。
「……ん、ぅ? う゛?? うぁ…アダダダダダッ…!!!!」
さっきまで頬をなぞっていた手で、ギュウッと哲也の頬を抓まんで、引っ張って。
もうついでだから、空いてるほうの手でも、反対側のほっぺたを引っ張る。
「いひゃい! なっ!? うわぁ〜〜〜!!」
「あ、」
バッチリと目を開けて、自分を覚醒させた痛みの正体が俺の手だって分かった瞬間、哲也はものすごい勢いで起き上がって俺の手を振り払うと、そのままベッドの下に転がり落ちた。
「哲也、大丈夫か?」
「イッター!! 大丈夫じゃないわい、アホ! 何してんだ!」
真夜中だってのに、哲也はものすごい剣幕で突っ込みを入れてくる。
「いや……大丈夫?」
「だから、大丈夫じゃない言ってんだろっ!」
「イタッ」
哲也はベッドに這い上がって来ると、ベチンと俺の額を叩いた。
「何だよ、何のつもりだよ!」
「いや……哲也、気持ち良さそうに寝てるなぁ…と思って」
「何でその安眠を妨害すんだ、お前は!」
「…………さぁ」
何となく?
頭の中では起こしたらだめだって思ったんけど…。
哲也を起こさないように体を動かして、そっと哲也の頬を指でなぞった。
ふよふよしてる。
俺もちょっとふにふにしてるけど(最近少々メタボってるせい…)、それとはまたちょっと違う感じ。
「んー……ゃ…」
くすぐったいのか、哲也は俺の手を払おうとするような仕草をするけど、寝惚けてる(というより、殆ど寝てる)せいで、動かした手は、目的地に辿り着く前にペタンと元の位置に落ちた。
うはは、何か笑える。
懲りずに指を動かしてると、哲也の眉間にシワが寄り出す。起きるかな?
「ぅんー…」
かすかにまつ毛が震える。
あ、起きる…。
起こしたらダメだ、て気持ちもあったのに。てか、9割がたそう思ってたのに。
ギュウゥ〜〜〜。
「……ん、ぅ? う゛?? うぁ…アダダダダダッ…!!!!」
さっきまで頬をなぞっていた手で、ギュウッと哲也の頬を抓まんで、引っ張って。
もうついでだから、空いてるほうの手でも、反対側のほっぺたを引っ張る。
「いひゃい! なっ!? うわぁ〜〜〜!!」
「あ、」
バッチリと目を開けて、自分を覚醒させた痛みの正体が俺の手だって分かった瞬間、哲也はものすごい勢いで起き上がって俺の手を振り払うと、そのままベッドの下に転がり落ちた。
「哲也、大丈夫か?」
「イッター!! 大丈夫じゃないわい、アホ! 何してんだ!」
真夜中だってのに、哲也はものすごい剣幕で突っ込みを入れてくる。
「いや……大丈夫?」
「だから、大丈夫じゃない言ってんだろっ!」
「イタッ」
哲也はベッドに這い上がって来ると、ベチンと俺の額を叩いた。
「何だよ、何のつもりだよ!」
「いや……哲也、気持ち良さそうに寝てるなぁ…と思って」
「何でその安眠を妨害すんだ、お前は!」
「…………さぁ」
何となく?
頭の中では起こしたらだめだって思ったんけど…。
2008.08.09 (Sat)
20. 何が最善策なんて世界中の誰にもわかるまい (前編)
「う゛ー……」
………………寝苦しい……。
あれ? 俺、いつベッドに行ったんだったっけ…?
誰かいる…………お母さん…? …………て、
「哲也!?」
こんなとき、マンガとかドラマみたいにガバッて起きれるほどじゃなくて、俺は隣ですやすや眠ってる哲也の名前を呼ぶのが精いっぱいだった。
それも結構大きい声だったはずなのに、コイツは少しも起きる気配がないし。
てか、何でコイツ、ここで寝てんの?
それより、俺いつベッド行った?
確かさっきまで、リビングのソファで哲也と何か話してたよな。もしかしてそのまま寝ちゃったんだろうか。
そんでコイツが、ここまで連れて来てくれたってこと?
………………で、哲也と……何の話、してたんだったっけ…?
「……ん…」
ビクッ。
だって哲也が急にモゾモゾ動き出すから!
たぶん寝惚けてんだろうけど、アンタ、人のシャツ、キュッと掴んで、何してらっしゃるの…!
「哲也、」
………………動けない…………。
「はぁ〜〜〜……」
もう起きることは諦める。
まだ夜中の2時半を過ぎたとこだし、何も考えないで、このまま寝たほうがいい………………寝れるもんなら。
これで、こうやって抱き付いてくれてんのが女の子だったら、こんなに悩まないのに。
好きだって感情も、素直に認める。
きっとこの小さな体を抱き締めて、心地よい夢の中に落ちていけるはず。
なのに、こうして一緒に寝てんのは、男の子で、倉橋哲也くんで。
その寝顔を見てみても、確かに男にしては、"かわいい"部類に入るとは思うけど、でも女じゃない。
体は小さいけどがっしりしてるし、鍛えてんのか、筋肉もかなり付いてる。
男、男、男、男。
男なんだ、コイツは。
今まで、生まれてこの方、1度だって男にときめいたことなんかないでしょ、瀬戸貴久くん! いつだって、付き合う相手は女の子だったでしょ。
この子だって男なんだから。
この気持ちは、気のせいなんだ。
もしくは勘違い。思い違い。友情と愛情の。
………………寝苦しい……。
あれ? 俺、いつベッドに行ったんだったっけ…?
誰かいる…………お母さん…? …………て、
「哲也!?」
こんなとき、マンガとかドラマみたいにガバッて起きれるほどじゃなくて、俺は隣ですやすや眠ってる哲也の名前を呼ぶのが精いっぱいだった。
それも結構大きい声だったはずなのに、コイツは少しも起きる気配がないし。
てか、何でコイツ、ここで寝てんの?
それより、俺いつベッド行った?
確かさっきまで、リビングのソファで哲也と何か話してたよな。もしかしてそのまま寝ちゃったんだろうか。
そんでコイツが、ここまで連れて来てくれたってこと?
………………で、哲也と……何の話、してたんだったっけ…?
「……ん…」
ビクッ。
だって哲也が急にモゾモゾ動き出すから!
たぶん寝惚けてんだろうけど、アンタ、人のシャツ、キュッと掴んで、何してらっしゃるの…!
「哲也、」
………………動けない…………。
「はぁ〜〜〜……」
もう起きることは諦める。
まだ夜中の2時半を過ぎたとこだし、何も考えないで、このまま寝たほうがいい………………寝れるもんなら。
これで、こうやって抱き付いてくれてんのが女の子だったら、こんなに悩まないのに。
好きだって感情も、素直に認める。
きっとこの小さな体を抱き締めて、心地よい夢の中に落ちていけるはず。
なのに、こうして一緒に寝てんのは、男の子で、倉橋哲也くんで。
その寝顔を見てみても、確かに男にしては、"かわいい"部類に入るとは思うけど、でも女じゃない。
体は小さいけどがっしりしてるし、鍛えてんのか、筋肉もかなり付いてる。
男、男、男、男。
男なんだ、コイツは。
今まで、生まれてこの方、1度だって男にときめいたことなんかないでしょ、瀬戸貴久くん! いつだって、付き合う相手は女の子だったでしょ。
この子だって男なんだから。
この気持ちは、気のせいなんだ。
もしくは勘違い。思い違い。友情と愛情の。
2008.08.08 (Fri)
本棚バトン、行きま〜す!
「メンタルメンテ」のイチゴさんから、すてきなバトンが回って来ましたんで、さっそくやってみたいと思います!
でも何か……聞かれたことに、ちゃんと答えてるか、私。
求められてることを、答えてない気がする…。
ゴメンね、イチゴさん!
では、どうぞー!
◆あなたの本棚にある恥ずかしい本は?
いや、きっと人様が見れば恥ずかしいような代物も、平気で本棚に入れてるな、私…。
廊下に1つ本棚置いてるんですけどね、普通に家族がその前をスルーしてます。
しかもBL本(エロあり)も、平気で置いてます。
私の存在自体が恥ずかしい…orz
あ、本棚に入れてないけど、男性向けの同人誌(もちろんエロ)とか、見られたら死ぬ…(持ってることを明かしてる時点で…)(ドンマイ!)
◆あなたの本棚にある自慢できる本は?
ないないない!!!
自慢できる「本」はないけど、本棚的に言えば、コナンを全巻持ってるとか、ルパンも全部揃えたとか、まぁいろいろマンガを全巻揃えてるとか、そんなでしょうか。
あと、某出版社の小説原作の推理物のマンガ各種も揃えてるとか。
というか、買い出したら全部揃えないと気が済まない人なんで。古本屋で大人買いとかするし(バカ)(ゴメン!)
あ、大学のころのテキストを、まだ大事に本棚に入れてます(全然見てないけどね☆)
◆あなたの本棚にある手放したいのにいつまでもある本は?
大昔に買ったマンガ。大量。
手放したいわけじゃないけど、読まなきゃ手放せばいいのに、捨てられない。
えっと、明かすと年バレるんで、言いませんけど。
15年? 20年? くらい前にアニメにもなったことのあるようなマンガばっかです(…て、これで十分バレるがな)。
あと、昔はまってたジャンルの同人誌も。本棚には入ってませんが。
◆あなたの本棚にある、あなたが頻繁に読み返す本は?
何だろ…本、めっちゃいっぱい持ってるんで、どれか1つてことはないですけど。
ごく最近は、今お気に入りのジャンルの同人誌。
また大人買いしてしまった…!!!
あと、コナンはよく読む。推理系とか、大好き。
◆本棚の中を見てみたい5人にバトンをまわしてください。
柚子季 杏さん、大野こうこさん、やってみませんか!? (もう回ってたら、ゴメンなさい…)
すてきな文章を書くんで、どんなのを読んでるのか、気になります!
スルー可です。
あと、やりたい方がいれば、どうぞお持ちください!
イチゴさん、バトン回してくださって、ありがとうございました! (なのに答えがこれ…)
でも何か……聞かれたことに、ちゃんと答えてるか、私。
求められてることを、答えてない気がする…。
ゴメンね、イチゴさん!
では、どうぞー!
◆あなたの本棚にある恥ずかしい本は?
いや、きっと人様が見れば恥ずかしいような代物も、平気で本棚に入れてるな、私…。
廊下に1つ本棚置いてるんですけどね、普通に家族がその前をスルーしてます。
しかもBL本(エロあり)も、平気で置いてます。
私の存在自体が恥ずかしい…orz
あ、本棚に入れてないけど、男性向けの同人誌(もちろんエロ)とか、見られたら死ぬ…(持ってることを明かしてる時点で…)(ドンマイ!)
◆あなたの本棚にある自慢できる本は?
ないないない!!!
自慢できる「本」はないけど、本棚的に言えば、コナンを全巻持ってるとか、ルパンも全部揃えたとか、まぁいろいろマンガを全巻揃えてるとか、そんなでしょうか。
あと、某出版社の小説原作の推理物のマンガ各種も揃えてるとか。
というか、買い出したら全部揃えないと気が済まない人なんで。古本屋で大人買いとかするし(バカ)(ゴメン!)
あ、大学のころのテキストを、まだ大事に本棚に入れてます(全然見てないけどね☆)
◆あなたの本棚にある手放したいのにいつまでもある本は?
大昔に買ったマンガ。大量。
手放したいわけじゃないけど、読まなきゃ手放せばいいのに、捨てられない。
えっと、明かすと年バレるんで、言いませんけど。
15年? 20年? くらい前にアニメにもなったことのあるようなマンガばっかです(…て、これで十分バレるがな)。
あと、昔はまってたジャンルの同人誌も。本棚には入ってませんが。
◆あなたの本棚にある、あなたが頻繁に読み返す本は?
何だろ…本、めっちゃいっぱい持ってるんで、どれか1つてことはないですけど。
ごく最近は、今お気に入りのジャンルの同人誌。
また大人買いしてしまった…!!!
あと、コナンはよく読む。推理系とか、大好き。
◆本棚の中を見てみたい5人にバトンをまわしてください。
柚子季 杏さん、大野こうこさん、やってみませんか!? (もう回ってたら、ゴメンなさい…)
すてきな文章を書くんで、どんなのを読んでるのか、気になります!
スルー可です。
あと、やりたい方がいれば、どうぞお持ちください!
イチゴさん、バトン回してくださって、ありがとうございました! (なのに答えがこれ…)









