恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2010年01月

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wish (11)


Side:Haru

 遠山の家を出たところで、遥琉に行く当てなどなく、子犬を抱えたまま公園のベンチに座って項垂れていた。

「お腹空いたの? ミルク? ゴメンね…どぉしよ…」

 遠山の手前、自分で世話をするなどという啖呵を切ってはみたものの、やはり彼の言うとおり、どうすることも出来ないでいる。
 だいたい、天界には生き物を連れて行けないのだ。
 まったく考えなしの自分の行動に、遥琉は深く自己嫌悪した。これじゃあ遠山が怒るのも無理はない。

「寒い? タオル…遠山くんちに置いてきちゃったし…」

 先ほど濡れたこの子犬を拭いたバスタオルは、そのまま遠山の家に置いて来てしまった。
 天使である遥琉は、人間界のこの寒さをそれほど辛いとは思わないが、人間はみな寒そうにしているし、この子も寒い寒いと言っているから、やっぱりこのままではダメなんだろう。
 だからと言って遠山にまた借りにいくことも出来ず…。

『くぅ~ん…』
「あ、そっか。あの段ボール箱の中に毛布が入ってたね。取りに行こっか」

 遠山は信じていなかったようだが、天使である遥琉は、普通に犬の喋っていることが分かった。
 人間が日本語や英語など各国の言葉が話せるように、遥琉は人間の言葉も動物の言葉も聞き分け、話すことが出来るのである。

 子犬に段ボール箱のことを言われ、最初にこの子犬が入っていた段ボール箱の中に、薄っぺらだが毛布が入っていたことを思い出す。
 この子の入っていた段ボール箱の中のものなんだから、勝手に拝借してきても、きっと怒られないだろう。

 遥琉は涙を拭って立ち上がった。



*****

 例の段ボール箱は遠山の家のそばなので、遥琉は朝のように遠山に見つからないよう、そっとダンボール箱を捜した。

「あった! あれ」

 雪を被った段ボール箱を見つけ、遥琉は急いで駆け出した――――が。

「うわぁっ!?」

 もう何度目になるか分からない、雪に足を取られ、ズルッ、ドタンッ、と遥琉は再び地面に引っ繰り返ってしまった。

「…ったぁ~」
『きゃんっきゃんっ』

 遥琉の腕から飛び出した子犬が、先に段ボール箱のほうへと駆けていく。遥琉は雪を払いながら起き上がって、段ボール箱の中から毛布を出してやった。

「ホラ、これでもう寒くないでしょ?」
『わんっ』
「でもおかしぃよなぁ。犬って普通、寒さに強いんじゃなかったっけ?」

 苦笑しながら遥琉は、毛布ごと子犬を抱き抱えた。

「よし、行こ?」
『くぅ~ん?』
「あ、そっか、そうだよね、行くとこ…」

 遠山を幸せにしなければ、試験は不合格となる。もちろんそれを覚悟で、天界に帰ろうと思えば帰れるけれど、生き物を連れていくわけにはいかなくて。

「よっ、どーしたの?」
「へ?」

 さも知り合いらしい呼び方の声に、遥琉は思わず辺りを見回した。
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カテゴリー:読み切り中編
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

B型に100の質問


*本日分のお話の更新は、1つ前の記事です。

 本日、1月1日をもちまして、「恋三昧」は2周年を迎えました。
 拍手、コメント、ランキングのクリックをはじめ、ご訪問くださるみなさんのおかげで、毎日休むことなく更新し続け、ここまで来ることが出来ました。
 本当にありがとうございます。

 てことで、今年は「てつめんぴーず」様からお借りした、「B型に100の質問 ver.1.0」行ってみたいと思います。
 長いですけど、どうぞお付き合いくださいませ。

 では、どうぞー。


Q1. HN、星座、出身地をお願いします。
A1. 如月久美子、てんびん座、新潟県。

Q2. RH+ですかRH-ですか?
A2. 「+」……かなぁ、多分。

Q3. 自己サイト、あるいは興味のあるサイトのジャンルは何ですか?
A3. BL小説。質問製作者のかたも、まさかこんなジャンルで使われるとは、思ってもみなかったでしょうね。スミマセン。

Q4. サイトの自己紹介には自分の血液型を書きますか?
A4. 自己紹介には書いてないですけど、どっかに書いたような気がします。

Q5. 自分は目立ちたがり屋だと思いますか?
A5. 別に思わないです。でも目立ったからといって、嫌だとかいうこともないです。

Q6. 家族構成と血液型を教えてください。
A6. 父AB型、母O型。ていうか、AB型て打ったつもりが、最初「AV型」て打ってたし。

Q7. B型の友人はどれくらいいますか?
A7. 分かんないす。友だちの血液型なんて、全然知らない。

Q8. B型って好きですか?
A8. 好きです。

Q9. B型の人間に対して特別な感情が湧きますか?
A9. あー…何か親近感はあるかも。

Q10. 血液型についての本を持っていますか?
A10. 例の説明書の本は買いました。あれ、当たってるよねー。

Q11. 本やサイトでB型の記述を読んで、凹んだことがありますか?
A11. ないです。当たってる! て、いつも思う。全然いいこと書かれてないけど。

Q12. これぞB型!と言う有名人を教えてください。
A12. いや、人の血液型なんて知らないし。友だちの血液型すら知らないのに、有名人とか。

Q13. このキャラクターはB型っぽい!と言うキャラクターを教えてください。アニメでもゲームでもなんでも。
A13. 考えたこともない。アニメとかゲーム自体そんなに知らないんですけど、詳しかったとしても、血液型予想はしないと思う。

Q14. ちょっと苦手な血液型は?
A14. 苦手はないです。相手はどう思ってるか知りませんが。

Q15. A型にひとこと。
A15. B型とは気が合わないらしいですね。B型のこと、嫌いですか?

Q16. B型にひとこと。
A16. やっぱり同じにおいを感じますか?

Q17. O型にひとこと。
A17. B型とは、相性いいらしいですよ。よろしくお願いします。

Q18. AB型にひとこと。
A18. よく変人とか言われてますが、どう思ってますか?

Q19. 好きな国はどこですか?
A19. 日本。日本大好き。

Q20. 好きな音楽のジャンルを教えてください。
A20. ROCK

Q21. 得意な教科はなんで(した)すか?
A21. 数学、日本史、美術。

Q22. 不得意な教科はなんで(した)すか?
A22. 理科、体育。

Q23. 付き合う(結婚する)なら血液型は何型?
A23. 結婚できるものなら、何型でも構いません。

Q24. 自分は自己中だと思いますか?
A24. 思います。

Q25. 周りから「マイペースだ」と言われたことがありますか?
A25. 言われたことはないです。思われてるかもしれませんが。

Q26. 観察力があるほうですか?
A26. 力があるかどうかは分かんないですけど、人間観察はしてる。ていうか、してない人がいるということを、最近になってようやく知った。

Q27. 自分の評判や噂…気にしますか?
A27. 人並みに気になります。いやだって絶対、気にならない人なんて、いないってー。

Q28. ファッションにポリシーってありますか?
A28. 暑いときは涼しい格好、寒いときは暖かい格好。

Q29. 仕切ることが多いですか?
A29. ないです。面倒くさいから。

Q30. 頼まれたら嫌とはいえない性格ですか?
A30. 本当に嫌なことは、嫌って言います。だってヤダもん。

Q31. 感情や欲求を抑えていますか?
A31. 抑えようと、がんばって生きてます。

Q32. 「ガードが固い」と言われますか?
A32. 言われたことはないです。てか、人に向かって、こんなこと言う?

Q33. 親友はいますか?
A33. います。

Q34. 失言が多いですか?
A34. どうですかね。自分で後悔した失言はないですが。

Q35. 「血液型を訊ねられてB型だと答えたら、その場の空気が変わった」ことがありますか?
A35. ないです。言うとだいたい、「あ~、だよね~」て雰囲気になる。

Q36. 「個性的だね」とか「変わってるね」とか言われたことはありますか?
A36. ないです。これも、人に向かって言わないよね、大人なら。

Q37. 孤独に弱いですか?
A37. 全然平気。1人大好き。

Q38. 早口ですか?
A38. 意識はしてないけど、そうらしいです。

Q39.「自分は天才」だとか「自分って最高」だとか思う瞬間がありますか?
A39. 思ったことはある。私、すげぇ、て。でも超くだらないこと。いや、人生にそのくらいのことを思う楽しみがなかったら、生きてけないよね。

Q40. プライドは高いですか?
A40. 高いのかなぁ、どうでしょう。よく分かんないです。でも、今よりも生活のレベルは落としたくないから、低くはないのかも。

Q41. ひとりごとが多いですか?
A41. 多いみたいですよ。自分じゃ分かんないけど。1人大好きとか言っておきながら、超寂しがり屋じゃん!

Q42. 今日できることを明日に延ばすタイプですか?
A42. 「明日できることは今日しない」が、座右の銘です。

Q43. 正直者でウソのつけない性格ですか?
A43. 嫌な飲み会とかを断るときの適当な言い訳をするときは、何かしどろもどろしてるから、そういう性格なのかも。だって、嘘って嫌だよね。

Q44. 感情に任せて行動するタイプですか?
A44. そうでもないです。計画を立てるという行動自体が好きなので。

Q45. 楽観主義者ですか?
A45. 基本的には。でも、今体調がよくないのは、何かしら悪い病気なのでは……とか考えるタイプ。

Q46. ゲンをかつぐほうですか?
A46. かつがないほうです。そういうの、面倒くさい。

Q47. 勝負事には負けたくないですか?
A47. 負けたくないです。負けてもいいとか、そんなふうに思うヤツは、最初から勝負事に参加しないでほしい。

Q48. ギャンブル好きですか?
A48. いや別に。他に楽しみがたくさんあるんで。

Q49. 楽しいことがあれば睡眠時間を削ってでも続けたいですか?
A49. いっぱい寝たい派なのに、お話がどんどん書けるときは、遅い時間まで書いてる。でも12時半が限界。

Q50. 寝起きはいいほうですか?
A50. めっちゃいいです。

Q51. どんなに好きな恋人でも「今日は会いたくない」…そんな時がよくあるほうですか?
A51. まぁ……基本1人が好きですからね。

Q52. どちらかと言うと肉好きですか?
A52. どちらかと言うと。

Q53. 身の回りに「こだわりの品」がありますか?
A53. ないです。そういうの、面倒くさい。

Q54. 団体行動は苦手ですか?
A54. 苦手です。いい大人なのに。

Q55. 熱しやすく冷めにくいですか?
A55. 熱しやすく冷めやすいです。すぐ飽きる。

Q56. どちらかと言うとせっかちですか?
A56. 気が早いとはよく言われる。グズグズしてるのは苦手。

Q57. ヒトの顔と名前を覚えるのは得意ですか?
A57. 顔を覚えるのは得意です。でもそこに、なかなか名前が結び付かない。残念。

Q58. 「時間のムダ」が気になりますか?
A58. なるんですけどねー、しょっちゅう無駄にしてます。

Q59. 掃除・料理・洗濯…好き(あるいは得意)な家事はどれですか?
A59. ないっす。全部苦手。どうしてもしなきゃいけないとしたら、料理。食べなきゃ死ぬから。

Q60. 現在の自分に満足してますか?
A60. アトピーが治ったら、大満足。

Q61. ヒトの好き嫌い激しいほうですか?
A61. これって、どういう意味なんでしょうか。食べ物の好き嫌いが激しい、みたいな意味ですかね。嫌いが多いかどうか、てことだとしたら、普通じゃないでしょうか。

Q62. 政治に関心ありますか?
A62. あります。

Q63. エコロジー意識してますか?
A63. してないです。

Q64. 褒められるのって好きですか?
A64. 褒められて伸びるタイプです。

Q65. たとえ見えすいたお世辞でも嬉しいですか?
A65. 嬉しいです。そういう年頃です。

Q66. お弁当のおかずが5種類。一番好きなものは何番目に食べる?
A66. 1番。

Q67. 血液型によって寿命の長そうな順に並べてください。
A67. B→AB→A→O

Q68. 天才は何型に多いと思いますか?
A68. 分かんないす。満遍なくいるんじゃないですか?

Q69. 意外と秘密主義だったりしますか?
A69. このBLという世界にはまっていることは、オフの友人には内緒です。

Q70. 泊まるならホテルと旅館、どちらが好きですか?
A70. ホテル。ビジネスホテル大好き。旅館は面倒くさい。部屋まで案内されるのとか。

Q71. ヒトの話を聞くより自分がしゃべるほうが多いですか?
A71. 半々くらいだと思います。いや、でも喋るほうかな。分かんない。

Q72. 自慢のコレクションがありますか?
A72. ないです。自慢できないものなら、あるけど。

Q73. ドレスアップスタイルよりカジュアルのほうが好きですか?
A73. ドレスアップて、たまにしかしないから、いいんだよねー。日常生活なら絶対にカジュアルのほうが好きだけど、どっちが好きかって言ったら、ドレスアップのほうがいい。

Q74. 冠婚葬祭は面倒だと思いますか?
A74. 死ぬほど面倒くさいです。

Q75. 新たに出会ったヒトを早い段階で敵と味方とに分別しますか?
A75. 敵と味方には分別しないけど、好きか嫌いかは、すぐに判断する。

Q76. 思い立ったら即断即決で行動しますか?
A76. 即断即決で計画を立てる。

Q77. ある日突然億単位の大金が手に入ったら、どう使いますか?
A77. 親が払ってる家のローンを返す。後は投資信託。もしくはハイリターンだけどハイリスクだからって尻込みしてる金融商品を買う。

Q78. 自分は不器用な性格だと思いますか?
A78. 器用ではないかも。もっと器用なら、今ごろ結婚くらいはしてるわ。

Q79. 一度でも自殺したいと思ったことがありますか?
A79. ないです。痛そう。

Q80. 死後の世界はあると思いますか?
A80. 思わないです。

Q81. 心霊体験はありますか?
A81. ないです。

Q82. 献血したことありますか?
A82. あります。このくらいしか社会に貢献できないんで。

Q83. 臓器移植カードを持っていますか?
A83. 持ってないです。何1つとしてあげるつもりないんで。

Q84. 骨髄バンクに登録していますか?
A84. してないです。めっちゃ痛いらしいですね。申し訳ないですが、献血くらいで勘弁していただきたい。

Q85. 過去の栄光を語るタイプですか?
A85. 語るほどの栄光もないです。

Q86. 生まれ変わったら今度はどの血液型がいいですか?
A86. 何でもいいです。

Q87. B型以外に間違えられたことがありますか?
A87. ないです。あ、でもAB型にはあるかも。

Q88. 自分のB型度を%で表記してみるとどれくらいですか?
A88. 100%

Q89. B型しかいない会社ってどうなると思いますか?
A89. 普通じゃないですか。血液型で会社の行く末は変わんないと思います。

Q90. 50年後のB型人口はどうなっていると思いますか?
A90. 今とだいたい同じ比率。だって、O型同士の両親からしかO型が生まれないのに、いまだに絶滅してないし。

Q.91 犬派? 猫派?
A91. どっちもそんなに好きじゃないです。動物はゴメンなさい、全般的に苦手です。

Q92. 家電製品には強いですか?
A92. 普通くらい。苦手ではない。

Q93. なんだかんだ言っても自分が大好きですか?
A93. 何だかんだ言ってもね。

Q94. 座右の銘は何ですか?
A94. 明日できることは今日しない。

Q95. 酷暑と極寒、より耐えられないのはどっち?
A95. 酷暑。汗っかきだから。汗かくと、アトピー悪化するし。

Q96. 死ぬ前にひとつのメニューだけ食べられるとしたら何を食べますか?
A96. 死ぬか生きるかの瀬戸際に、ご飯なんかどうでもいい。ていうか、もともと食にそんなに興味がない。

Q97. どうしても食べられない食べ物を教えてください。
A97. 我慢すれば、何でも食べられる。

Q98. 一つ自分で質問を作って答えてみてください。
A98. Q.何でこんなにつまんないことした答えられないのですか? A. 頭が悪からです。

Q99. B型は世間の嫌われ者だと思いますか?
A99. 思わないです。血液型だけでそんなに嫌われてたら、世の中の4分の1は嫌われ者ですよ。そんな。

Q100. お疲れ様でした。最後に、今思っていることを五・七・五でお願いします。
A100. 何でわざわざ五・七・五にしなきゃいけないの? て思うのが、B型なんですよねー。てことで、パスで。
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カテゴリー:notes

wish (12)


 掛けられた声に、遥琉は顔を上げて辺りを見回したが、周りには声を掛けてきたと思われる、3人組の男たち以外はいない。

「…俺?」

 見覚えのない顔に、遥琉は警戒しながら聞き返した。

「そうそう。何か困ってんじゃないの?」

 別の男は笑顔のまま遥琉のほうに近付いてきた。
 まだ試験にも合格していないダメ天使でも、遥琉だって天使の端くれ。人間の纏っている気配やオーラには敏感だ。
 コイツらは、絶対ヤバイ。

「何か用ですか?」
「そんなおっかない顔しないでよー。つーかさ、そんなカッコで寒くないわけ? どっかあったかいとこ行って、遊ばない?」
「遊ばないです。俺、別に寒くないし…」

 生真面目に返事をする遥琉に、男たちがバカにしたように笑っている。
 これ以上、コイツらには関わりたくない。そう思って、背を向けようとしたが、周りを取り囲まれてしまって、逃げ場がない。

「つーか、何、男の子?」
「いーじゃん、男でも」
「まぁな」

 ニヤニヤ笑いながら、男たちは目配せし合っている。
 何がいいのか分からないけれど、相手にしたくない。

「なぁなぁ、俺たちと遊ぼーぜ?」
「やめっ…」

 馴れ馴れしく肩を組まれて、その嫌悪感に遥琉は、思わずその腕を振り解いた。
 大した力だとも思わなかったが、嫌だという思いがよほど現れてしまったのか、振り払われた男は2,3歩後ずさるほどだった。

「てめっ…!」

 まさかこんな女みたいな、しかも人間から見たらイカれたような格好をしている男の子に、こんなに力強く払われるとも思っていなかったのだろう、男は遥琉の胸倉を掴んだ。

『きゃんっ!!』

 途端、腕の中の子犬が、男に大きく吠えた。
 男は大きく舌打ちして、乱暴に遥琉の服から手を離した。その勢いで遥琉はよろけたけれど、今度は背後にいた別の男に掴まった。

「何だよ、この犬」

 男が毛布ごと犬を遥琉から取り上げた。

「ちょっ…返してよっ!」

 遥琉は、奪われた子犬を何とか取り返そうとするけれど、他方の男に腕を捕まれ、逃れられない。
 まさか自分がこの男たちの誘いを断ったせいで、この子犬に万が一のことがあったら、とても耐え切れない。
 そんなこと、絶対に嫌だ。

「あんな犬なんてどうでもいいじゃん。それよりさぁ、俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」
「やだぁっ、やめてよぉっ!」

 遥琉がどんなに手を伸ばしても、男たちは揶揄うように犬を遥琉に近づけたり遠ざけたりする。

「返してっ!!」
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テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

wish (13)


『うー……わんっわんっわんっ!!』

 振り回されていた子犬が、唸り声とともに大きく吠え、男の手に齧り付いた。

「イッテ……くそっ!!」

 あまりの鳴き声と、噛み付かれたことに激怒したのか、男は、それが生き物に対してする行動とは思えない、子犬を地面に叩き付けた。

「やっ…嘘っ……やめてぇっ…!」

 遥琉は泣きながら、男の腕の中で暴れた。
 地面に打ち付けられた子犬は、ピクリともしない。お願い、目を開けて。

「うるせぇっ! 大人しくしてろっ」

 どんなにもがいたところで、男3人相手だ。
 遥琉の体は、路地裏のほうへと引きずられてしまう。

「ヤダ! たす…助けてっ、遠山くんっ!!」

 思わず声に出してしまった名前。
 遥琉は泣きながら遠山の名前を呼び続けた。

 雪の上に押し倒され、もうわけが分からなくて、遥琉はギュウと目を瞑った。
 やっぱりダメ天使は、最後までダメだったんだ。
 好きな人を幸せにも出来なかったし、ちゃんと世話をすると約束したあの子犬は目を開けてくれないし、まさか人間に凌辱されるはめになるとは。

「――――遥琉っ!!」

 偉い天使の先輩方から教えてもらった祈りの言葉を、一生懸命に頭の中で唱えていたら、もう聞けるはずのないと思っていた声が、自分の名前を呼んだような気がした。
 もしかして自分は汚されてしまって、どうにもならなくなってしまったから、最後のご慈悲にと、幻聴でも聞かせてくれた?
 あぁ、天使でも、地獄に落ちるのかしら。

「誰だよ、お前。邪魔すんなよ」

 男たちが自分から離れる気配がした。
 遥琉は恐る恐る目を開け、体を起した。
 そこは地獄ではなかった。そこは先ほど連れ込まれた路地裏で、顔を上げた先には、3人の男たちのほかに、遠山がいる。

 それこそ、何が起こったのか、遥琉には分からなかった。
 男たちと遠山は、若干の小競り合いがあったものの、男たちはすぐにその場を離れていった。

「遠山く…、どうし…」
「何か外が騒がしくて、気になって出てきたら……遥琉、大丈夫か?」

 まだ茫然とその場に座り込んでいる遥琉に、遠山は声を掛けた。
 夢でなく、遠山がそこにはいた。
 分からない、急に感情が込み上げて来て、遥琉はボロボロと泣き出してしまった。

 天使のくせに、何もかもに助けられている。
 もう迷惑は掛けないと誓った遠山に、また助けられているし、あの子犬にも……

「あっ、犬!」
「え?」
「犬がっ…」

 遥琉は慌てて立ち上がり、先ほどの場所にまで駆けていく。
 足元が滑ったが、転ばないように気を付けている暇もなかった。

「コイツ…」

 しゃくり上げながら、遥琉は道路に落ちた毛布を手繰り寄せた。
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テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

wish (14)


 遠山もその場にしゃがみ込み、遥琉が抱き上げた毛布をそっと広げた。

「コイツ…」

 つい先ほどまで、遥琉のために必死に吠えていたあの子犬は、いまだ目も開けずにグッタリとしている。

「ねぇ、ど…したの? 寝ちゃったの…?」
「遥琉…」

 そっと遥琉の手から毛布ごと犬を受け取ると、微かだが、息をしているのが分かる。
 まだ救える命に違いない。

「遥琉、すぐに病院に連れていこう、まだ息してる」
「病院…? 何で? コイツ、寝てるんじゃないの? 何で病院? 死んじゃうの?」

 自分が襲われかけたのと、自分のせいでぐったりとなってしまった子犬と、様々なショックが重なって、遥琉はただ茫然となったまま動くことすら出来ずにいた。
 もういっそ、今は遥琉のことを置いて、いったん病院に行って来ようか、でも、

「――――なぁ、遥琉。前言ってた、俺の願い事叶えてくれるっての、まだ有効なの?」
「え?」

 どうしたの急に、と瞬きした遥琉の瞳から、溜まった涙が溢れ落ちた。

「100人の人間を幸せにするってヤツ」
「え、うん、いいけど…」
「ホントは別の願い事、ちょっと考えてたんだけど…、でもいいや。ねぇ、それでさ、コイツ助けてやってよ? 死んだヤツを生き返らせるわけじゃないんだから、いいよな?」

 自然の摂理に逆らってまで、お願い事をしようだのという傲慢な気持ちを持っているわけではない。
 けれど、助かるかもしれない命を、このまま見殺しになんて出来っこない。

「でも…それじゃ遠山くんの、ホントの願い事…」
「そうだけど、もしこの犬助けないでほかの願い事叶えてもらったって、絶対に幸せになんか、なれそうもないから」

 遠山はそっと遥琉の前に犬を差し出した。

「…うん。あ、でも、遠山くんのホントの願いも聞かせてよ、もしかしたらそれも叶えてあげられるかもっ…」

 しかし遠山は首を横に振った。

「無理だよ、……それは無理。たとえそれを俺が一番に望んでたって、絶対に叶わないから」
「何で? 分かんないじゃん、そんなの! ねぇっ!」

 何で教えてくれないの? と、なおも食い下がる遥琉に、遠山は隠し通すのをとうとう諦めたのか、溜め息をついて口を開いた。

「ずっと、遥琉と一緒にいたいなぁって…、いれたらいいなぁって思った」
「……え…?」
「でも無理だろ? 俺の願い事叶えて幸せにしちゃったら、俺は遥琉のこと、忘れちゃうんだし」

 予想だにしなかった遠山の言葉に、遥琉は立ち竦んだまま遠山を見つめた。

「調子のいいこと言ってゴメン。あんなにいっぱい遥琉のこと傷付けたのに、俺、遥琉のこと、好きになってたみたい」
「あの…遠山く…、俺…」
「…いいから、早くこの犬、助けてやって?」
「あ…、うん」

 コクンと頷いた遥琉は、子犬に手を翳しながら、小さく何かの言葉を唱えた。まるで優しい光が犬を包み込んでいるようにも見えた。
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カテゴリー:読み切り中編
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wish (15)


「遠山くん、俺…」

 遠山のほうを向いた遥琉の顔は、涙で濡れていた。

「俺もね、遠山くんのこと……好き」
「え…」
「だから、どうしても遠山くんの願い叶えたくて、直接願い事聞いたら、絶対間違いない、て思って姿見せたの。……でもさ、直接聞かなきゃ願い事も分かんないようなヤツじゃ、そんなの全然ダメだよね」
「遥琉…」
「結局、遠山くんのこと、悲しませることになっちゃった…。でも心配しないで! 俺のこと忘れちゃったら、きっと俺のこと好きだって気持ちも忘れちゃうから。そしたらステキな彼女作って、幸せになってね?」

 遥琉は無理やり笑って、そう言った。
 瞳からは、次々に新しい涙が零れてくる。

「忘れねぇよ。たとえ忘れたって、絶対に思い出す、お前のことは。お前以外のヤツなんか、好きになんねぇよ」
「遠山くん…」
「ホントに好きだから」

 静かに雪が降り出す。
 天使が泣いているから?


 最初で、最後のキス。





*****

「―――ん…んー…」

 ふと目を開けると、すでに辺りは真っ暗だった。遠山はコタツの中で体を反転させて、壁に掛かっていた時計に目をやった。

「6時か…」

 あくびをしながら大きく伸びをして、起き上がる。眠気を払うように頭を振ると、コタツを抜け出て部屋の明かりをつけた。

『くぅ~ん…』

 遠山の足に、子犬が甘えるように擦り寄ってきた。

「何だよ、起きたのか?」

 よしよしと言うように頭を撫でてから、子犬を抱き上げた。

「どうしたー? お腹空いたか? 今ミルクやるからなぁー」

 ミルクを用意すると、よほど腹を空かせていたのか、子犬はすぐに皿に飛び付き、おいしそうにミルクを飲み始める。
 遠山はしばらくその様子を眺めていたが、台所に戻って夕食の支度を始めた。

『きゃんっ!!』

 遠山が包丁を使っていると、ミルクを飲み終えたのか、子犬が遠山のもとへとやって来て、足にじゃれ付き出した。

「おい、コラ、危ないだろ? おいってば、えっと…」

 イタズラをやめさせようと、包丁を置いて叱ろうとするが、屈んで犬を抱き上げ、ふと気付く。

「名前…何だっけ…?」

 名前を呼んで注意しようと思ったのに、どういうわけか犬の名前が出てこない。
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wish (16)


「あれ、おかしいな…。何で自分ちの犬の名前が出て来ないんだよ」

 首を傾げながら、ジッと子犬の顔を見つめる。
 最近仕事が忙しかったからといって、いくら何でも飼い犬の名前を忘れてしまうほど、ボケてはいない。

「お前、何て名前だっけ?」
『くぅ~ん?』

 犬のほうも不思議そうに、遠山を見つめている。

「お前に名前付けたっけ? てか俺、犬なんて飼ってたっけ?」

 そのわりに、部屋の中には、犬に関するものが少ない。
 子犬用の粉末ミルクはあったけれど、しかしそれを入れて飲ませたのは、普通の食卓用の皿だ。

「え、あれ…?」

 遠山は食事の仕度をやめ、子犬を抱いてコタツのほうに戻る。
 何か大切なことを忘れているような気はするけれど、何を忘れているのか、何を必死に思い出そうとしているのか、それすらも何だかあやふやでよく分からない。
 もしかしたら、何も忘れてなんていないのだろうか。

「俺、どうしちゃったんだ?」
『くぅ~ん…』

 そんな自分に苦笑していれば、子犬は寂しそうな顔で遠山の腕から抜け出て、部屋の隅へとトコトコと歩いていった。そこには汚れた毛布が、丸まって置いてある。

「ん? そんなの、ウチにあったっけ?」

 ぼんやりと子犬の様子を眺めていると、子犬はその汚れた毛布を咥えて、懸命に遠山のほうへ引き摺って来ようとしているのだと分かった。

「何? どうした?」

 遠山がそばに行くと、子犬は遠山のほうを向いて、『きゃんっ』と吠えた。

「え…お前、あぁ、そういえばお前、この中にいたんだっけ? そっか拾ったんだよな、外で…」

 抜け落ちていた記憶のピースが、少しずつ埋まっていく。

「……は、る…?」

 毛布にじゃれ付く子犬を見つめたまま、何気なく漏れた言葉。
 誰か、知り合いの名前だっただろうか? それともそれがこの犬の名前?

「え…ハル?」
『きゃんっ!』
「―――あっ、遥琉っ!」

 遠山はハッと顔を上げた。
 突然、遠山の前に現れた、天使の遥琉。幸せにするから願い事を聞かせろって言って…。

「でも…傷付けてばっかだった…」

 茫然を引き摺ったまま、遠山は頭を抱えた。
 遠山の願いを叶えた遥琉は、遠山の記憶とともに消えていったのだ。

「遥琉…、好きだって言ったのに…。忘れたって絶対に思い出すって…」
『くぅ~ん…』

 毛布を離した子犬が、遠山の足に擦り寄る。
 あぁ、アイツはこの子犬と話をしていたっけ。
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wish (17)


 すべてを思い出した。
 突然現れ、そして去って行った、天使の遥琉。
 そうすると、この子犬は、忘れ形見になってしまうのか。

『きゃんっ!』

 突然子犬が遠山の手を擦り抜けて、玄関のほうに向かって駆けていった。
 まさかこのまま逃げて行ってしまうなんてこと……さすがにそれは怖くて、遠山は慌てて追い掛けた。

「おい、どうしたんだよ」

 追い掛けた先、子犬はドアに向かってうるさく吠えている。
 遠山は子犬を逃がさないように抱き上げて、そっとドアを開けた。

「どうし……あ…」

 本当にバカみたいに、「あ」と発した口のまま、閉じることも忘れて遠山は、今目の前にある現実にただただ呆然となった。

「遠山くん」

 瞬きも出来ない。
 だって、目を閉じて、開けた次の瞬間にはいなくなっているんじゃないかって、そんなバカなことすら思ってしまう。

「遥琉…? マジで? え、ホントに遥琉なのか?」
「…うん」
「どうし…」

 言葉が続かなかった。
 目の前には、遥琉がいた。
 もう会えないと思っていた遥琉が、そこには立っていて。

「遠山くんが、思い出してくれたから」
「え? 何、どういう…、あ、てか早く中入んな、寒いだろ? いや、寒くねぇのか、えっと…」

 そういえば、どういう仕組みになっているのか、天使の遥琉は雪の降る中でも、あの白っぽい寒そうな格好でも、全然平気でいた。
 家に上げるうまい口実が他になくて、何だかアタフタしていたら、遥琉が声を上げて笑い出した。
 遥琉の、笑顔。

「……、上がって?」

 まだドキドキはすぐに収まりそうもないけれど。
 遥琉を出迎えた途端に大人しくなった子犬も連れて、遥琉を招き入れた。

「遥琉、でもどうして?」
「だって遠山くん、忘れたって絶対に思い出すって言ったじゃん」

 こたつに入った遥琉は、掛けぶとんに顔をうずめながら、ポツリポツリと語り出した。

「だからね、信じたの。三宮さんは、あ、三宮さんていうのは俺の上司なんだけど、三宮さんは絶対に無理だって言うの、思い出せるわけない、て。じゃあ、思い出したら遠山くんのトコに行ってもいい? て聞いたら、」
「いいって言ったのか?」
「うん。絶対に無理だから、て。でも遠山くんは……思い出してくれたでしょ?」

 そっと視線を上げた遥琉と目が合って、何だかちょっと恥ずかしかったが、遠山はコクリと頷いた。
 ちゃんと思い出した。
 だって、忘れるなんてそんなこと、出来るわけがない。
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wish (18)


「遠山くんが思い出してくれたから、だから……来ちゃった。そのかわり試験は不合格だけどね」
「え、何で?」

 遥琉の言葉に、遠山は慌てる。
 この子犬を元気に、という遠山の願いは、100個目として、カウントしてもらえなかったのだろうか。

「え、だって俺の課題は、100個の願い事を叶えるんじゃなくて、100人の人間を幸せにすることだもん。遠山くんが幸せになるのは、これからでしょ?」
「なるほど…。え、じゃあ、俺が幸せになっちゃったら、遥琉はまたいなくなるってこと?」
「まさか! だって、離れ離れになっちゃったら、また幸せじゃなくなっちゃうじゃん、遠山くんは」
「…」
「1年近くも彼女が出来なかった遠山くんが、俺以外のヤツと、そう簡単に幸せになんかなれっこないもんねぇー?」

 自信たっぷりに、しかも少々毒を混ぜながら遥琉は言ってやった。
 言われたことも少なからず悔しいが、言い返せないところがもっと悔しい。

「ホントにお前はー!」

 遠山はわざと怒った振りをして、遥琉の脇腹を擽った。

「わぁーっっぎゃははははっやめっ…ゴメンなさぁ~いっあはっはっはっ!」
「分かればよろしい」

 何故か偉そうにそう言って、遠山は擽り攻撃から遥琉を解放した。

「はぁーっ、もう! 天使にこんな攻撃するなんて、ホント信じらんない!」

 そう言いつつも、遥琉は遠山に寄り添った。
 遠山もそんな遥琉の肩を抱いて顔を近づける。あと少しで口唇が重なる……その瞬間。

『きゃんっきゃんっ!!』

 今の今まで大人しくしていた子犬が、突然2人の間に割り込んできて吠え出した。
 放っておかれたのが寂しかったのだろうか、いい雰囲気を邪魔したとは微塵にも思っていないような素振りで、子犬は2人に擦り寄った。

「おっまえ~、今、いいトコだったのに」

 悔しそうに遠山は子犬を抱き直した。

「ヤキモチ妬いたんだよねぇ~、俺と遠山くんが仲良くしてたから」
「はぁ?」
「だって俺たち相思相愛だもんっ」

 遠山の腕の中から子犬を奪って、遥琉はチュッとその子犬にキスをした。

「あぁっ!」

 先に犬にキスを奪われてしまった遠山は、がっくりと項垂れた。

「あはははっ! 遠山くん、犬にヤキモチ妬いてる!」
「しょうがねぇだろっ、お前のこと好きなんだから! 犬にだってヤキモチ妬くの!」
「……」

 思いがけない言葉を貰って、遥琉は嬉しいのと恥ずかしいので、顔を赤くして俯いてしまった。

「遥琉、顔上げて?」

 遠山の言葉に導かれるまま頭を起こすと、今度こそ遠山の顔が近づき、唇が重なる。
 最後ではないキス。

『きゅ~ん』

 邪魔したくはないけど、僕のこと忘れないで? とでも言うように(いや、実際にそう言っているのかもしれない)、子犬が寂しそうに鳴いた。

「分ーかった、て。お前のことは忘れてねぇよ。つーか、コイツの名前、どうする?」
「え、いいの? 遠山くん、この子、飼っても…」
「…だってもう、寂しい思いさせたくねぇじゃん」

 誰かに捨てられる悲しみは、もう味わわせたくない。
 ずっと一緒がいい。
 それは犬でも、人でも、……天使でも同じ。

「名前、どうする?」
「んー…また明日決めよっか?」
「明日?」

 すぐにでも決めようと言うのかと思ったのにと、遠山は首を傾げた。

「だって、これからはずっと一緒なんでしょ? コイツも。そんなに慌てなくたって、大丈夫……でしょう?」
「そっか、それもそうだ」

 ずっと一緒。
 そして2人と1匹の夜は更けていく。




*END*





 クリスマスのお話のはずが、普通に年を明けてしまいました。スミマセン。

 実はこの話、すっごい昔に書いた未発表のヤツのリメイク版です。
 クリスマスのお話、クリスマスのお話、て探していたら発掘されたのはいいんですが、あまりに文章とか表現がひどかったんで、手直ししなきゃ! てなったんですけど、途中で放棄したくなるくらい、殆ど直さなきゃいけなかった、ていうね…。
 ていうか、1度は放棄したんですけどね。

 てか、何がひどいって、ビックリマークの多さに、こっちがビックリ! みたいな。
 見苦しいくらいに「!」と「…」だらけで、何だよコイツ! て、過去の自分にドロップキックです。

 がんばって直したつもりですが、直し切れなかったっていうか、何かもう「諦める」ていう技を覚えたっていうか…。
 何かいつもと文章違う、て感じたかたは、サラッとスルーしてください。

 ここまでお付き合い、本当にありがとうございました!
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愛してほしい日々 (1)


*このお話は、「君といる~」シリーズの番外編です。本編を読んでいなくても意味は通じますが、カップリング等のネタバレにはなりますので、ご注意ください。


「相変わらず暇人だなぁー、お前」
「……、亮に言われたくないんですけどー」

 1月1日、元日。
 学校が冬休みに入り、クリスマスも終えた後、大半の学生が、年末年始を地元で迎えるために帰省したが、亮も翔真もその例外に漏れず、実家へと帰って来ていた。
 もちろんその間、地元の仲間や帰省してきた同級生たちと遊ぶ約束はあるけれど、それも連日ではない。
 特に今日みたいな元日に集まろうなんて元気のいい連中はいなくて、2人は暇を持て余していた。

「つーか、俺んち来てゴロゴロしてんなら、自分ちでよくね?」
「亮の家がいいのー。だって家にいると、母さんにいろいろ手伝いさせられるし」
「たまに帰ったときくらい、手伝ってやれ」
「亮だって何もしてないじゃん」

 先ほどから同じような話の繰り返し。
 そして結局、何の結論も出ないまま、ダラダラすること数時間。
 正月のテレビ番組はつまんないし、マンガも読み飽きた。

「ぅん?」

 あー暇! て翔真が亮のベッドの上を転がっていれば、何となく階下が騒がしい。
 年始のお客様にしては、妙に賑やかだなぁ、なんて思っていた矢先。

「りょ~! 明けましておめでとーー!!」

 ノックもなしにドアが開き、現れたのは、言わずもがな和衣だ。
 道理でお客様のわりに、賑やかなわけだ。

「あ、ショウちゃんも! ナーイス。この後、ショウちゃんちにも行こうとしてたんだよ! 明けましておめでとー!」
「……、おめでと…」

 新年早々テンションの高い和衣に、亮も翔真も若干圧倒されてしまう。
 帰省する新幹線の中で、祐介に会えないの寂しー、て嘆いていたのと、同じ人間のテンションとは思えない。

「ねぇねぇねぇ~、初詣行こうよ~!」
「はぁ?」
「初詣! お参りしてー、おみくじ引こっ?」

 とっても面倒くさそうにしている2人をよそに、和衣はすっかりノリノリで、行こう行こうと亮の腕を引っ張っている。

「何かめんどいんだけど…」
「何でぇ? 行こうよー、お参りしよ? 今年もむっちゃんと仲良くいられますようにー、て俺も一緒にお参りするから!」
「いや、お前にお参りされなくても…」
「はい支度して? ショウちゃんも!」
「えぇー…」

 全然乗り気になれないけれど、和衣も言い出したら聞かない性格だから、ここは2人が折れるほかないだろう。
 どうせ暇だったのだ、たまには行ってみるのもいいかもしれない、と思い直す。

「あ、そうだ。ショウちゃん、これ」
「え? 何?」

 はい、と和衣が差し出したのは、間違いなくポチ袋。お年玉?

「亮のママから貰ったの。ショウちゃんにも渡しといてー、て言われたから。ショウちゃんちまで配達しようとしたら、ここにいた」
「え? あ、そう? ありがと…」

 20歳になってお年玉、ていうのもなぁ…と照れくさい気持ちもあるが、貰えて嬉しい気持ちは変わらないから、翔真はありがたく受け取った。





 ようやくお話の中の季節もお正月になりました。仲良しさん。
 タイトルは、約30の嘘さまより。ラブ。
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愛してほしい日々 (2)


「つーか、俺、貰ってないけど…」

 そう言ったのは亮だ。
 別に貰えるなんて期待していなかったけれど、和衣や翔真が貰えるなら、自分だって貰えてもいいはずなのに。

「えっへっへ、いい子にしか貰えないんだよねー?」
「いやカズ、それはサンタさんでしょ?」

 くだらないことを言いながら階下に下りれば、ちょうど亮のママに出くわした。

「お年玉、ありがとうございまーす」
「いいえー。亮くん、出掛けるの?」
「初詣」
「そうなの? じゃあ、お母さんの分もおみくじ引いてきて?」
「いや、人の分とか引いて、それって有効なの?」

 亮のママさんは、もしかしたらお姉さんて言っても通用するんじゃないか、てくらい若く見えて(実際年齢も若いんだけれど)、顔は何となく亮に似ているけれど、亮よりもずっとおっとりした性格だ。

「行ってきまーす」

 笑顔の亮ママに見送られて、亮の家を出た。

「ギャッ、さむっ!」

 途端、冷たい風が吹き抜け、コートにマフラーの完全防備をした和衣が、なぜか真っ先に竦み上がった。

「かぁずー、何お前が一番寒がってんだよー」
「だって寒いもんっ」

 亮も翔真も、和衣に引っ張られて出てきたというのに、言い出した本人がこれでは、突っ込みたくもなる。

「寒いー」
「バカ、重いっつーの!」

 和衣が、寒い寒い言いながら、亮の背中にへばりついた。

「あー、カズが亮と浮気してるー」
「何でっ? 違うし!」

 からかいついでに翔真が、取り出した携帯電話を構えて、写真を撮ろうとするものだから、和衣は慌てて亮から離れて、翔真の携帯電話を覗き込んだ。

「見んなって、カズ」
「撮ってないよねっ?」
「さぁねん♪」
「ショウちゃん!」

 別にそんな偽浮気写真で脅されるとは思っていないが、たとえそうでも、そんな写真、人の携帯電話に残されていたくない。

「ショウちゃん、見せてよっ」
「ホラ、ちゃんと消したってば!」

 フォルダを開いて、その写真が保存されていないことを見せてやれば、和衣はようやく納得したのか、翔真からも離れた。
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愛してほしい日々 (3)


「人いっぱいいるー…」

 超地元の神社にしようかとも思ったが、せっかくなので、電車で数駅のところにある規模の大きめな神社に来てみれば、和衣たちが想像していたよりもずっと多くの人手で賑わっていた。

「お参りのとこ、めっちゃ人いる」
「でもあの後ろに並ばないとだろ?」

 初詣に来て、お参りはなし、というわけにはいかない。
 次から次へと列が伸びていく後ろに、和衣たちも並んだ。

「うぅー…苦しい…」

 和衣たちの後ろにもどんどんと人は並んでいって、しかもキュウキュウに詰めてくるから、亮や翔真はまだしも、小柄な和衣はすっかり押し潰されている。
 そんなに押さなくても、ちゃんと順番は回ってくるのに~、と言ってやりたかったけれど、それだけみんなの気持ちも浮き足立っているんだろう、て思って我慢した。

「カズ、だいじょぶ? 顔真っ赤だよ」
「暑いー…」

 来るまでずっと寒がっていたけれど、この人いきれに上せてしまったのか、小さな子どもみたいに、和衣の頬は真っ赤になっている。

「こんなに混んでるとか、思わなかったー」

 こういう風景、テレビで見たことはあるけれど、まさか自分が体験するとは、思ってもみなかった。
 というか、元日に、まともに初詣に来たこと自体が初めてだった。
 初詣て大変…。

「ふぅー…」

 ようやく順番が来て、和衣は財布の中から100円玉を取り出したが、それを投げ入れようとして、ふと手を止め、隣を見た。

(100円で……いいのかな?)

 何となく金額が高いほうが御利益がありそうだけど、あいにく財布の中にある硬貨は、100円玉が1番高額で。かといって、お札をポンポン入れられるほど、和衣だってお金を持っているわけではない。
 だから、みんながいくら入れているのか気になったのだ。

「カズ? 何してんの?」

 やっと順番になったのに、なぜか賽銭も入れず、手も合わせない和衣に、隣の翔真が不思議そうに声を掛けた。

「ショウちゃん、お賽銭、いくら入れたの?」
「え? 10円だけど」
「え、そうなの?」

 あれ? 和衣が思っていたのと、0の数が1個違う…。

「……。気持ちの問題じゃん? カズが入れたい額、入れなよ」
「そう?」

 和衣が何で悩んでいるのか想像がついたのか、翔真は若干呆れながらも、アドバイスをしてやった。

「えいっ」

 ポーンと100円玉を賽銭箱に放って、和衣はようやく手を合わせた。
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愛してほしい日々 (4)


(えと…家族みんなが、健康でいられますように。今年も祐介と仲良くいられますように。あっ、亮とむっちゃん…、でも、だったらショウちゃんと真大のことも……でも…)

 出掛ける前、亮と睦月のこともお願いしてあげると言ったことを思い出し、和衣は慌てて付け加えたが、それなら翔真たちのことを言わないのは申し訳ない気がする。
 でも、気持ちの問題とはいえ、たった100円のお賽銭で、ちょっと欲張りすぎ? て感じもするし…。

(えーっと…)

 いろいろと悩んだ末、結局和衣は、みんなが健康で仲良くいられますように、とお願いをして、顔を上げた。

「あれ?」

 お参り終わったー、て横を見たら、隣にいたはずの翔真も亮もいない。何で? どこ? と思ったら、2人は列から離れたところで和衣を待っていた。
 他に待っている人もたくさんいるから、その邪魔にならないよう、端によけていたのだ。一応、和衣に声も掛けたのだが、お参りに集中していた和衣の耳には届いていなかったらしい。

「えへへ、お待たせ~」
「お前、ホッント、とろくさいよな」

 何かにつけて優柔不断で、物事を決めたりやったりすることの遅い和衣の性格は、今に始まったことではないけれど、元日早々これじゃあ、今年1年が思いやられる。

「ゴメンゴメン。じゃ、おみくじ引きに行こ?」
「えー…めっちゃ混んでるけど…」

 和衣に言われておみくじの売り場に目をやれば、そちらも大変な混み具合で、翔真と亮は、思わずうんざりした顔をしてしまう。
 お参りをした後はおみくじ、と考えるのは、和衣だけでなく、参拝客に共通のことだ。

「いいじゃん、引こうよ~」
「えー…カズ、凶が出たらめっちゃ落ち込むんだから、やめといたほうがいいじゃね?」
「あ、でも凶って入ってる数が少ないから、出たら、それはそれでラッキーて聞いたことある」
「マジで? よかったじゃん」
「ちょっ、何で俺が凶出すことになってんの!?」

 勝手に話を進める2人に、和衣は頬を膨らませた。

「亮のママからも、おみくじ頼まれてるんだから! 行こ!」
「えー…人の分引くとか、ありなの?」

 これで悪いヤツ引いちゃったら、一体どうなるわけ?
 亮はそう思ったが、和衣は2人の腕を引っ張って、ズンズンとおみくじの売り場へ向かってしまう。

「どこに並ぶ? みんなおんなじ種類?」
「一緒でしょ」

 売り場の窓口はいくつかあったが、どれも列が出来ているから、しばらくは待たなければならない。
 売っているおみくじの種類が同じなら、なるべく列の短いところに並ぼうと和衣は言ったが、どの列もだいたい同じくらいの長さだ。

「あ、あの子かわいい」
「じゃあ、あの列で」

 どうしよう、と和衣が迷っているうちに、翔真と亮は、おみくじを売っている巫女さんのかわいさを基準に、列を決めてしまった。

「何それー…」

 和衣は何だか納得が行かないが、1人で違うところに並ぶのは寂しいから、2人に付いていった。
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愛してほしい日々 (5)


「そういえば俺、こないだ巫女さんのコスプレしてる子見た」
「マジで? 神社にバイト行く途中とかじゃなくて?」
「だってその格好で、カフェのビラ配りしてたもん」

 間違っても、神社でおみくじを売っている女の子が、そのままカフェのビラ配りはしないだろうから、やっぱりそういうコスプレなんだろう。
 今の時代、本当に何でもありみたいだ。

「ショウちゃん、貰ったの? そのビラ」
「何か渡されるがままに。え、カズ、行きたいの?」
「違うし!」

 バカなことを言って騒いでいるうちに和衣たちの順番が来て、コスプレでなく、助勤だが本当の巫女さんからおみくじを引かせてもらい、3人は列を離れた。

「あ、やった。中吉!」

 最初に声を上げたのは、翔真だ。
 混雑を面倒くさがってはいたが、いい結果が出れば、やはりそれは嬉しい。内容もなかなかいいことが書いてあるし。

「俺、小吉だ。カズは?」
「末吉ー。ねぇねぇ、末吉って順番的にどうなの? 小吉よりいいの? 悪いの?」
「えー知らね。ただの"吉"てのもあるじゃん」

 予想されていた凶が出なかったからよかったけれど、待ち人のところが『来たらず』となっているのが、ちょっと気になる…。

(待ち人、て……どういうこと? 会いたい人? …は祐介だけど、でももう出会ってるし、電話もメールも来るしー…)

 何となくいいような、悪いような、全体的に微妙な内容のおみくじ。
 まぁ、凶じゃなかったから、いいんだけど。末とはいえ、吉は吉だし。

「結ぶとこ、あっちだ。かぁず?」
「ふぇっ?」

 和衣が眉を寄せながら、うむ~…ておみくじを熟読していたら、翔真に肩を叩かれた。

「なぁー、おみくじってさ、いいのも悪いのも、みんな結ぶもんなの?」
「悪いのは結んで、いいのは持って帰る、て聞いたことあるけど。ショウちゃん、持って帰れば?」
「えー、でも持って帰ってさ、汚したり粗末に扱ったりしたら、逆に罰当たりそうじゃね?」

 ごく普通の若者らしく、特別に信仰心が篤いわけではないが、やはりおみくじだのお守りといった類のものは、粗末にできないという気持ちはあって。
 せっかくの中吉だけど、結んで帰ることにしよう。

「木に結ぶんじゃねぇんだ?」

 境内に木はたくさん植えられているが、おみくじは決められた場所に結ぶようになっているようで、何本も張られている紐にはびっしりとおみくじが結び付けられている。

「木に結ぶと、やっぱよくないんじゃない? 枝、折れちゃったりして」
「ふぅん?」

 それでもいくつかのおみくじが近くの木の枝に結び付けられていて、和衣はちょっと悲しくなる。
 和衣が勝手に結び換えるわけにはいかないから、そのままにしておくしかないけれど、でも。
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愛してほしい日々 (6)


「この後、どこ行く?」
「…ぅん?」

 おみくじを結び終えた和衣は、亮の声に顔を上げた。
 元日から開いている店とかあるのかなぁ、なんて思っていたら、聞き覚えのある声が和衣たちを呼んだ。

「あ、真大」
「明けましておめでとうございまーす」

 和衣たちの後輩であり、翔真の恋人である真大が友人たちと一緒に現れ、ぺこりと頭を下げた。

「真大たちも初詣? 今来たの?」
「うん。カズくんたちは? これから?」
「んーん、もう帰るとこ。あっ、亮、おみくじ!」
「は? 今結んだじゃん」

 突然、和衣は亮を振り返ってそう言った。
 たった今、引いたおみくじを3人で結んだばかりだというのに、一体何を言い出すんだ? と亮は首を傾げる。

「亮のママから頼まれてたじゃん! 引いて来よ? じゃあショウちゃん、俺たち行ってくるね」
「は? え?」

 何で2人で? 俺は? と翔真は慌てるが、和衣は構うことなく真大に笑顔を送ると、亮を引っ張って、おみくじの売り場へと戻ってしまった。
 真大の友人たちも、意味が分からない…という顔をしているが、真大はその笑顔の意味に気付いたらしく、こっそり和衣にブイサインを返した。

「え、俺、置いていかれちゃった系?」

 何で? と、翔真はまだよく分かっていないらしく、和衣たちが消えた方向を見ている。

「翔真くん、1人? 俺、付き合おうか?」
「へ? だって…」

 友だちいるじゃん、と翔真が返そうとするより先、真大は友人たちに、「ゴメーン」て手を合わせている。
 別に同じ部活でもなかったのに、なぜか1つ先輩の翔真と仲がよさそうな真大に、友人たちは不思議顔だったが、真大の自分に素直な性格(簡単に言えば、無自覚な自己中)はよく知っているので、「じゃあまたなー」と去って行った。

「ちょっ、いいのかよ、真大」

 地元の友だちなら、きっと久しぶりに会うだろうに。
 先ほどの話では、真大たちはここに来たばかりで、もしかしたらこの後だって、予定が入っていたのかもしれないのに。

「…翔真くん」
「え、何?」

 真大に低い声で名前を呼ばれ、ドキリとする。
 しかし、余計な気を遣って真大のことを優先しなかった自分に、俺といるの嫌なの? と拗ねられるのかと思いきや、けれど真大は驚いたような、呆れたような顔をしていた。

「まさか、気付いてないとか? マジで?」
「だから何が? は?」
「ちょっ翔真くん! 新年早々マジボケしないでよ!」

 真大に、ギャハハハーて腹を抱えて笑い出されてもまだ、翔真は何のことだか分からないようだ。
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愛してほしい日々 (7)


「だってカズくん、俺らのこと2人にしようとして、亮くん連れてったんでしょ?」
「へぇっ?」
「え、翔真くん、マジのマジボケ?」
「だって…」

 腐れ縁の幼馴染みには悪いが、まさか和衣がそんな気の利いたことの出来る子だとは思っていなかったから。

 きっと和衣のことだ。元日に、約束もしていなかった恋人と偶然会えるなんて、運命ぽい~とか思っちゃったに違いない。
 その場の空気を読んだり、スマートに気を利かせたりするのが苦手な和衣なりに、懸命に考えたらしい。

「つーか、おみくじ……亮くんのお母さんの分?」

 どうせ嘘つくにしても、それってあんまりなんじゃないの? と、本当に頼まれたなんてことを知らない真大は笑う。

「ねぇ、お参り……あ、でも翔真くん、もうお参りしたんだっけ?」
「いいよ、もっかい並ぼ?」

 変だな。さっきは、あの人混み、行列にウンザリしていたはずなのに。
 今度は自分から並ぼうなんて言い出してる。

 先ほど和衣たちと並んでお参りをしてからだって、結構な時間が経っているのに、参拝の列は少しも減っていない。
 けれど、先に行ったはずの真大の友人たちの姿はもう見えなくて、少しずつながらも列は進んでいるらしい。

「相変わらず混んでるねー」
「真大、ここ来たことあんの?」
「初詣、毎年ここに来るもん」

 初詣なんて、まともに来るのは初めてかも、という翔真と違って、どうやら真大は毎年きちんとしているらしい。

「高校生くらいから友だちと来るようになったけど、ちっちゃいときはお父さんとお母さんと来てた」
「すげ。俺、連れて来てもらったことねぇ」

 生まれて初めてのちゃんとした初詣で、まさか2度もお参りをすることになるとは、夢にも思っていなかったが。
 けれど、2回もお参りして、それははたして有効なのだろうか。
 亮ママのおみくじを、代わりに引いていくのと同じくらいに疑問だ。

「ねぇねぇ翔真くん」
「何? ちょっ…」

 混雑しているせいで密着度は高いが、真大がさらにくっ付いてくるから、何? て思っていたら、ふいに小指を絡められて、翔真は慌てる。
 偶然じゃない。
 真大は分かっていて、やっているのだ。

「平気だよ」

 前後も左右も、余裕がないくらいにみんなくっ付いている中で、真大と翔真の手元に注目している人なんていない。
 第一、見ようと思ってもコートの裾に隠れているし、それと分かって覗き込みでもしなければ、絶対に分からないと思う。
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愛してほしい日々 (8)


「翔真くん? 何? そんなに嫌?」
「いや、そうじゃないけど、いろんな意味でドキドキする」

 まさか中学生じゃあるまいし、好きな子と手を繋ぐこと自体へのドキドキはそうないけれど、周りにこんなに人がいる中では、バレるんじゃないか、てドキドキはする。

「大丈夫だよ、チューでもしなきゃね?」
「バッ…」

 ニヤリと笑った真大の頭を小突こうとして、反射的に動いた利き手の左手が、実は真大に繋がれているほうだということに気付いて、翔真は慌てて手を引っ込めた。

 小指とはいえ手を繋いでいるんだから、翔真が何をしようとしたかなんて、真大にもすぐ分かる。それが分かって、おかしくて、そしてちょっと切なかった。
 ちっちゃな子ならまだしも、いい年をした男同士が人前で手を繋いでいて、普通の目で見られないことなら、真大だってよく分かっている。
 翔真との関係を別に疾しいことだとは思っていないけれど、でも世間的には普通ではないこと。

 ……神様の前でこんなことしちゃって、罰とか当たっちゃうんだろうか。

 僕たち何も悪いことしてません! て一生懸命言い訳すれば、許してくれるかな。

「あ、小銭ない」

 ようやく順番が回って来て、繋いだ指が解けて。
 取り出した財布の中を覗いた真大が一言。

「………………、マジで?」

 10円とはいえ、先ほど1度はお賽銭を入れてお参りした翔真はともかく、参拝するためにこの行列に並んでおいて、お賽銭がないとか、絶対あり得ない。

「お前、毎年来てんだろ? 何で賽銭忘れるわけ?」
「普通に入ってると思ってた。1円しかない。1円じゃ、やっぱまずいよね?」
「気持ちの問題だろ?」

 そういえばさっき、和衣にも同じセリフを言った。
 彼が悩んでいたのは、100円で足りるかどうかのようだったけれど。

「気持ちの問題だからだって!」
「はぁ?」
「気持ち的に、1円じゃ足りない気がする」
「……」

 あぁ、もう面倒くさい!
 翔真は自分の財布を取り出すと、10円玉を真大の手に握らせてやった。
 財布の中には100円玉も500円玉もあったけれど、翔真だって10円だったんだから、これで十分だ。

「ありがと、翔真くん」

 とっても軽い調子でお礼を言われ、翔真は仕方ないな、て溜め息を零す。
 元日早々これじゃあ、やっぱり今年も1年、真大に振り回されそうな予感。
 でもそれを嫌と思わない自分がいて。
 結局、それだけ真大にベタ惚れなんだって思い知らされた気がして、それこそ元日早々、しかも神様の前で一体何考えてるんだろう、て翔真は恥ずかしくなった。

「翔真くん、これからどこ行く?」
「ぅ、ん?」

 自然といろいろなことを考えていた翔真は、ふいに真大に声を掛けられ、ハッと意識を戻した。
 どうやらいつの間にか、真大のお参りは終わっていたらしい。
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愛してほしい日々 (9)


「ご飯でも食べてく? もうお昼だし」
「真大、おみくじは?」
「引かなーい」

 翔真はすでに1度引いているし、あの行列には正直ウンザリだけど、やっぱり神社に来たらおみくじは定番て感じがするから、一応声を掛けてみたのに、真大はとってもあっさりとそう言ってのけた。

「え、マジで?」
「? 引かないけど? 翔真くんが引きたいなら、付き合うよ?」
「いや、俺はさっき引いたから別にいいけど。引かないんだ?」
「だって悪いの出たら、凹まない? 気にすんな、とか言われても、絶対気になるし。おみくじごときに振り回されたくない!」
「ごとき、て…」

 よく分からないが、それが真大の信念らしいので、もうそれ以上は突っ込まない。
 というか、真大がおみくじ"ごとき"で凹むとは、到底思えないのだが。

「ねぇねぇ、翔真くん、何お参りしたの?」
「え、……言わない」

 ぴっとりと寄り添って隣を歩く真大が、翔真の顔を覗き込んでくる。
 翔真より少しだけ背の低い真大は、自然と上目遣いになっていて、翔真はそれだけでちょっと心臓が跳ねる。

「何で言わないの? 教えてよー」
「じゃあ真大は何お参りしたんだよ」
「えー、でもこういうのって、人に話したら叶わないとか言わない?」
「なら何で俺に聞いたんだよ!」
「あははー、だって気になったんだもん」

 そう言って真大は無邪気に笑っている。
 しかし気になったとは言うものの、しつこく聞き出そうという気はないのか、真大はそれ以上は聞いてこなくて、翔真は正直ホッとした。
 翔真が「言わない」と言ったのは別に、人に話したら叶わないからというわけではなくて(そんなこと、真大に言われるまで知らなかった)、単に恥ずかしかったからで。

(だって、これからもずっと一緒にいられますように、とか…)

 そういうキャラじゃない、て自分でも思うけど。
 神様にそうお祈りしたくなるくらい、ずっと一緒にいたい人だから。

「真大ー」
「ん?」
「好き」
「はっ? え、うわっ!?」

 神社の裏参道の階段を下りる途中、思い掛けない翔真の言葉に驚いて、真大は段を1つ踏み外してしまう。
 咄嗟に翔真が手を掴んだから、道路まで真っ逆さま…てことは避けられたけれど、冗談抜きで背中を冷や汗が伝う。

「びっ…くりしたー…」
「危ねぇよ、お前! 俺のほうが焦ったっつーの…」
「だって!」

 急に翔真くんがそんなこと言うから!
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愛してほしい日々 (10)


 男同士だから、ということを抜きにしても、翔真が人前で必要以上にくっ付いたり、イチャイチャしたりするのを好む性格でないことを知っているから、まさかこんなところでそんなことを言われるとは、思ってもみなかったのだ。
 しかも、まったくの偶然だけれど、今度は小指どころではない、しっかりと手を繋いでしまっている。

「俺がそんなこと言ったら悪いのかよ」
「っ! そんなことない! 超嬉しい! 俺も翔真くんのこと大好き!」
「うっせ」
「ひっど」

 そんなこと言って、でもそれが照れ隠しなんだってこと、本当は知ってるけどね。

「何笑ってんだよ、真大。つーか、いい加減、手」
「いいじゃん、いいじゃん」
「よくねぇ」

 解こうと思っても、解けない。
 いや、解きたくないのは、翔真も同じ。

「なぁ真大ー。おみくじ引くのもさぁ、たまにはいいよ?」
「は? 何急に」
「別にー」

 だって俺の中吉のおみくじ、恋愛のとこに『この人より他になし』て書いてあったんだぜ?





*****

「ただいまー」
「…ここ俺んちだけど」

 当たり前のように帰宅の挨拶をして、和衣が上がり込んだのは亮の家。
 亮の突っ込みを無視して、和衣は約束どおりに引いてきたおみくじを持って、亮のママのところへと急ぐ。

「これ、おみくじ! 大吉なの!」
「きゃーカズちゃん、ありがとう。カズちゃんが引いてくれたの?」
「んーん、亮」

 適当に引いときゃいいって、と言った亮に対して、『ダメ! 亮のママの分なんだから、亮が引かなきゃ意味ないの!』とか言って、和衣が亮に引かせたのだ。
 人の分を引いている時点で、誰が引いても同じ気がするのだが、和衣なりのこだわりがあったらしい。
 まぁ大吉が引けたのだから、最終的にはよかったのだけれど。

「亮くん、ありがとう~。あ、亮くんにもお年玉。はい」
「え、あ、どうも」

 これをおみくじの効果だなんて言ったら、あまりにも即物的だろうか。
 でもまぁ、みんながハッピーなんだから、それでもいっか。

「今、あったかいもの出すから、こたつ入っててね」
「はーい」
「だから、ここはお前んちかっつの」



 今年1年、みんなが幸せでありますように。





*END*
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (1)


*このお話は、「君といる~」シリーズの番外編です。本編を読んでいなくても意味は通じますが、カップリング等のネタバレにはなりますので、ご注意ください。

「はぁ…ふぅー…」

 思わず口をついて出てしまった吐息が、傍から見たらビックリするくらいに艶めかしかったとしても、立ち読みしている雑誌に集中していた当の和衣は、そんなことにはまるで気付かずにいた。

 大学構内にある売店。
 和衣はたまたま通り掛かった雑誌コーナーの1冊に目を奪われ、そして心も奪われていた。

(大好きな彼と、もっと愛し合うセックス…!)

 ――――もちろん女性誌である。

 雑誌の表紙に書いてあった大胆なキャッチコピーに、一瞬ですべてを持っていかれた和衣は、何の躊躇いもなく手に取ったのである。
 まずはじっくりと表紙に書いてあるコピーを熟読し、恐る恐る雑誌を開けば、ベッドインに始まり、最中、最後にいたるまで、その作法やマナー、ディープにテクニックまで、こと細かに載っている。

 単に体の感じる快楽だけでなく、心も満たされてこそのセックスを望むのは、もちろん和衣だけではない。けれど、やはり身体的に苦痛では続かないわけで。
 どんなセックスをしてあげたら、彼に喜んでもらえるのか――――和衣は夢中で雑誌を読み進める。

 だから気付かなかったのだ――――背後に亮が来ていたことに。

「カズ、もう行かね?」
「ひっ…、……キャーーーー!!!」
「ッッッ!!!???」

 亮としては、ただ友人の肩をポンと叩いただけである。
 まさかそんな素っ頓狂な声を上げられるとは、ゆめゆめ思っていない。それこそマンガのように目を丸くして、固まってしまった。
 ゆっくりと、ぎこちない動作で和衣が振り返る。

「え…亮…?」

 胸にギュウと雑誌を抱いた和衣は、心臓をバクバク言わせながら、硬直している友人の名を呼んだ。

「おま…バッ…何つー声…」
「え…? え? あっ…」

 それほど広いわけでもない売店。
 隅々にまで、和衣の叫び声が行き渡ってしまったようで、何事かと雑誌のコーナーを覗き込む人も出始めて。

「えと…あっ、亮! これ買って来て!?」
「はっ?」
「これ! はい!」

 和衣はビックリした拍子に抱き締めてしまっていた雑誌を、無理やり亮に押し付ける。
 まだ状況をよく理解できていなかった亮は、わけの分からぬまま、それを受け取ってしまって。

「お金、これ!」

 ついでに財布も渡して、その背中をレジのほうへと押しやると、和衣はさっさと売店を出てしまった。

「ちょっ…」

 取り残された亮は、周囲の視線に堪え切れず、そそくさとレジに向かった。
 しかしそこで、和衣に無理やり渡された雑誌が何なのかを知って、今度は亮が絶叫しそうになる番だった。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (2)


「カズ~、てめぇ~~」

 鬼の形相とはよく言ったもので、長い付き合いの幼馴染みである和衣が見ても、思わず震え上がりそうになるような怖い顔で、亮がズカズカと歩み寄って来た。
 けれどそこはそれ。
 その手にしっかりと雑誌の入った紙袋があるのを見つけると、和衣は、亮の怒りもそっちのけにホッとする。

「おめぇなぁ、ホンット、何させんだよっ」
「亮、ありがとう~」
「聞けっ!」

 和衣は、亮の手から紙袋を引っ手繰ると、中を確認した。

「うへ」
「お前…」

 だらしない笑顔になる和衣に、亮の怒りも何だか削がれてしまう。というか、怒っているのがバカバカしくなってしまった。
 もう帰る…と和衣に背を向ければ、分かっていない和衣は、俺も! と、その後をついて来て、結局2人して寮まで帰って来た。
 するとなぜか和衣は、自分の部屋でなく、亮の部屋へとやって来る。

「…え、何?」
「亮の部屋、行ってもいいでしょ? むっちゃん、実家帰ってて、いないんだし」

 睦月と祐介は、地元でクラス会があるとかで、この週末、2人で帰省している。
 和衣は、『久々に会った同級生の中にかわいい子がいても、浮気しないでね!』とは口に出して言わなかったけれど、そうお祈りしながら祐介を見送ったのだ。

「来てもいいけど、お前、俺の部屋で、それ読む気?」
「まぁ……うん。でもでも! 亮にいろいろ聞きたいこともあんの。ねっ、いいでしょ?」
「はぁ~…?」
「お邪魔しまーす」

 亮が部屋の鍵を開ければ、和衣は勝手に上がり込んでしまった。
 睦月もいなくてどうせ暇だし、和衣が買った雑誌を自分の部屋で読みづらいと言うのなら、別に部屋に上がるくらいいいけれど。
 けれどそれだけでなく、何となく嫌な予感もする。

「よし。これでゆっくり読めるぞ」
「カズー…、それって女性誌じゃねぇの?」
「ぅん? だから?」

 肩を叩いただけで悲鳴紛いの声を上げられ、挙句、無理やり買いに行かされた雑誌は女性誌。しかもセックス特集。こんな羞恥プレイ、生まれてこのかた、させられたことなんか1度だってない。
 それを嫌味混じりに言ってみても、平気な顔で立ち読みしていた和衣にはまったく通用せず、亮は深く溜め息をつくしかない。

「だってさ、だってさ、気になんないっ? もっと愛し合うセッ……むぐぅっ…!」

 興奮気味の和衣が、大きい声のまま、雑誌のキャッチコピーを口走り掛けるものだから、亮は慌ててその口を塞いだ。
 部屋には2人しかいないけれど、壁やドアは薄いのだ。気にし過ぎかもしれないけれど、万が一、隣の部屋や外に聞こえたら…。

「カズ、シー!」
「ん、んっ、んはっ…! もぉー。あ、ちゃんと亮にも見せてあげるから」
「いや、別に見たくねぇし」
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (3)


 何が悲しくて、今さら雑誌でセックスのテクニックを学ばなければならないのか。
 男はセックスにおいて、自分のテクニックを重視したがる傾向はあるらしいが、けれど和衣の買った……いや、買ってもらった雑誌は女性誌で。もちろん内容も女性向け。
 テクニックもマナーも、女性に対しての指南ということになる。

(…それを、コイツが読んで、勉強すんの?)

 確かに祐介と和衣のセックスは、和衣のほうがネコ――――つまり男女のセックスに置き換えれば、女性役をやっている。
 とはいえ、和衣だって間違いなく男なわけで、テクニックだろうと雰囲気だろうと、自分がいいと思うことは恐らく、祐介だって嫌がりはしないだろうに。

「でも俺、亮とかショウちゃんと違って、そんなに経験多くないから…。祐介にも、ちゃんと気持ちよくなってもらいたいし」

 ほんのりと頬を染めてそう言った和衣は、まさに乙女の顔をしている。

「ねーぇー、亮はどうなの? むっちゃんとのセックス」
「はぁっ?」

 部屋の中央にあるローテーブルのところにちょこんと座った和衣は、相手にするまいと、そことは離れた自分のベッドに腰を下ろした亮に、思い切って尋ねてみれば、亮は驚いてベッドから飛び降りた。

「だって気になるじゃん。むっちゃん最近、面倒がって、あんま話聞いてくんないし」
「はぁ? お前、睦月とどんな話してるわけ?」
「えーいろいろ?」

 和衣の口から聞き捨てならないセリフが飛び出して、亮は内心穏やかではない。
 睦月がセックスについて何か話すとすれば、当然亮とのことになるわけで、自分の知らないところで一体何が話されているというのか。
 和衣の話なんか聞く気もなかったが、一体どういうことなのかと、亮も和衣の隣に、膝を突き合わせるように座った。

「だってー、何かいろいろ相談したいじゃん。むっちゃんが一番話しやすいんだもん」

 何しろ睦月とは、一緒にゲイDVDを見た仲だ。
 蒼一郎にもいろいろお世話にはなっているが、彼は師匠だから(和衣が勝手に格付けしているだけだが)、やっぱり睦月のほうへと行ってしまう。

「ね、ね、それでどうなの? むっちゃんと」
「いや、何でそれをお前に教えねぇといけねぇの? てか、睦月から何聞いてんの?」
「むっちゃんねぇ、自分たちのことは、あんま教えてくんないんだよー。こういうときどうする? て聞いても、自分で考えろって言うしー」

 それを聞いて、亮は少しホッとする。
 自分たちのセックスについて、いくら親友とはいえ、あれこればらされるのは、ちょっと気まずい。

「ねぇねぇ、亮たちどうなのー? 教えてよぉ」
「言うかよ。お前だって言えねぇだろ? 祐介とどうやってんのかなんて」
「そうだけどぉ…。でも何かいろいろ知らないと、今のままでいいのかも分んないじゃん。ダメなセックスして、祐介に嫌われたくない…」
「いやいや、そんなんで嫌いになるとか、ないんじゃね?」

 お互い同意のうえでするセックスに、いいもダメもない気がする。
 ましてや祐介が、そんなことで和衣のことを嫌いになるなんて。

「でも、いろいろ出来たほうが嬉しいんでしょ? 亮だってそういうほうが好きでしょ?」
「俺と比べんなよ」

 和衣の言う、"いろいろ出来たほうが嬉しい"かどうかなんて人それぞれで、確かに亮はそういうセックスが好きだったけれど、あまり経験のない睦月とする今のセックスだって、十分気持ちいいし、満足している。
 昔はフリーだったら遊びでセックスもしたけれど、どんなにテクニックを持った相手でも、本当に好きな人とするセックスには、やっぱり敵わないと思う。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (4)


「それはそうだけど…。……俺、おかしい?」
「は?」
「エッチのスキルアップしたいとか考えちゃうなんて、やっぱ俺って変? でもいろんなこと出来たほうが…」

 亮の言い分は尤もで、和衣だってそれは分かっているけれど、でもそれでもそんなふうに思ってしまうなんて、しかも雑誌まで買ってしまった自分は、どこかおかしいのだろうか。
 何だか落ち込みそう…。

「変つーか……まぁ、祐介のためにスキルアップしたいつーなら、それはそれでいいんじゃね? 別に悪いことなわけでもねぇんだし」

 そう考える人が和衣だけでなく少なからずいるから、こういった雑誌が発売されるのだし、ネットでもそういう情報が溢れ返っているのだろう。
 亮にしたら、ちょっと思い付かない発想だけれど、落ち込むほどのことでもない。

 恋人同士でなく、単に遊びでするセックスなら、快楽を追求するだけだから、よりテクニックがあったほうがいいかもしれないが、恋人同士が愛情を確認するセックスに、技巧的なうまさはそれほど関係ないように思える。
 相手のことを考えない、思いやりのないセックスはしたくないけれど、セックスでいろいろ出来ないからって冷めてしまうような感情なら、そんなの最初から愛情とは言わないだろう。

「そっかぁ」
「てかお前、セックスんときにいろいろ出来ないと、祐介に飽きられるかも…とか思ってんの?」
「飽きられ…! うぅん、そこまでは思ってないけど! けど祐介、飽きちゃうかな…」
「さぁな。俺、アイツがどういうの好きとか、知らねぇし」

 というか、知りたくもない。
 祐介は、男同士の経験がある数少ない仲間だから、情報は共有したいが、だからってどんなセックスが好みかなんて、教えてくれると言われたって、お断りだ。

「ぅむー…」

 和衣は難しい顔をしながら、後ろに引っ繰り返った。
 自分が今まで思っていたことと、亮に言われたことで、頭の中がグルグルしているのだろう。

「つーか、お前って、ヤッてる最中、マグロなの?」
「はぇっ!?」

 ふと思った疑問をぶつけてみれば、和衣はマンガみたいに目を真ん丸くして、ガバッと起き上がった。
 妙な声を上げたままの状態で、口もポカンと開いている。
 いくら和衣が純情乙女でも、亮が言った言葉の意味が分からない、なんてことはないだろうに、しかし和衣は、ビックリした顔のまま、一言も発しない。

「カズ?」
「あ…あぅ…」

 まさか亮の言葉に、自分たちの普段のセックスの様子でも思い出したのだろうか。
 和衣の頬が一気に赤くなった。

「お前さぁ…」
「だって亮が変なこと言うから!」
「いや、何か今までのお前の話聞いてたら、そんな感じだから。どうなんだよ? やっぱそうなの?」

 いろいろしてあげたい! と考えるようになったくらいだから、今までのセックスで、そんなに積極的には何かしていないのだろうけど、それでも、完全にすっかり受け身状態のマグロとでは、わけが違う。
 どうなんだよ、と亮は爪先で和衣の膝をつついて、答えを促す。
 もうどうせここまで来たのだ、今さら引き返せないのなら、和衣の思っていることをすっかり引き出して、相談にでも何でも乗ってやろう。
 どうせ同じ穴の何とか。
 亮だって別にプロフェッショナルでもないから、和衣の話を聞く中で、自分でも何か気付くことがあるかもしれないし。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (5)


「何かぁ…あのね、あのね」

 とうとう意を決したのか、和衣が口を開いた。
 だって和衣は、祐介と初めて体を繋げるに至るまでに、ネットで男同士のセックスのやり方を調べたり、蒼一郎に頼んでゲイのDVDを購入して睦月と一緒にそれを見たりと、いろいろ勉強をしたのだ。
 亮に、男マグロかよ、て思われたままでいたくない。

「何だよ、いろいろしてやってんじゃん。なら別に今さら…」
「でもぉ…」

 実際のセックスでは、自分の体なのに全然思うようにならないし、祐介は、和衣がよくしてあげたいて思っても、あんまりそんなふうにはさせてくれなかった。
 どちらかといえば、祐介のほうがいろいろやりたがった? 何だか和衣は、祐介に与えられる快感に、翻弄されっ放しだったのだ。

「はぁ~? じゃあ結局、予習はしたけど、全然実践できなかったってこと? やっぱマグロじゃん」
「ううぅ…亮のバカぁ~」
「何で俺がバカなんだよ、バカはお前だろ」
「俺だって、がんばってんの! いっつも、毎回毎回がんばってんの! でも何か祐介が、いいよ、みたいなこと言って、気付いたら何もしてない、みたいな…」

 気持ちだけは、いつも全力で祐介のために出来ることを思っているのに、亮の言うとおり、それが実践にまで行き着かない。
 何となく自然に、やんわりと、しなくていい、みたいなことになっているのだ。
 祐介は、別に和衣に触られるのが嫌だとか、和衣が下手くそだからとか、そんなことは言わないけれど、もしかして和衣が傷付くから本当のことを言わないだけで、心の中ではそう思っているのだろうか…。

「ガーン…」

 自分の勝手な想像で、和衣はまた落ち込んだ。

「亮、どう思う…?」
「えー…祐介がそれでいいっつってんだから、いいんじゃね? そういうのが好きなヤツだっているだろ」
「じゃあ、あんまいろんなこと、覚えないほうがいいかな? いろいろ知ってたら、逆に引かれたりして?」
「だからそこまでは知らねぇって! 俺が祐介のセックスの好みなんか、知るわけけねぇだろ」

 頼りにされるのはありがたいが、そんな無茶な質問されても、亮だって答えてみようがない。
 かと言って、直接祐介に聞いてみろとも言えるはずがなく。

 チラリと様子を窺えば、こちらを見ていた和衣と目が合った。

「ねぇ亮、…やっぱあれなの…? ……でしてあげたほうがいいの?」
「え、何?」
「だからー!」

 和衣がボソボソと喋るものだから、本当に聞き取れなくて聞き返したのに、和衣は真っ赤な顔をして亮を睨んだ。

「口でしてあげたほうがいいの? て聞いてんの!」
「ちょっ…バッ!」
「イダッ」

 和衣が思わず声を張り上げるものだから、亮は慌てて和衣の頭を叩いた。
 恥ずかしさの勢いとはいえ、何ということを口走っているのだろう。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (6)


「だって分かんないから! どうなの? …やっぱそうなの? してもらったら、嬉しい?」
「え、えー?」

 和衣に縋るように詰め寄られて、亮はすっかり困ってしまう。
 いくら親友とはいえ、どうしてこんな質問に答えるはめになってしまったのだろう。
 だからといって翔真に聞けとも、そして間違っても睦月に聞けとも言えるはずがなくて。

「亮?」
「あー…まぁ、してもらって嬉しくない男なんて、いねぇんじゃね? つーか、お前だってそうだろ?」
「分かんない…。だってしてもらったことないし…」
「いや、祐介でなくても、元カノとか」
「ないってば!」

 前の彼女とは体の関係まで至ったけれど、和衣が口でしてほしいなんて頼んだこともないし、彼女もそういうことに積極的な子ではなかったから、実のところ和衣は、オーラルセックスの経験がない。
 ましてや、男と付き合うのは祐介が初めてで、男同士のセックスも祐介と以外にしたことはないから、相手に口でしてあげたことだってなくて。
 けれど、和衣がいくら恥ずかしがり屋の純情乙女でも、子どもではないから、経験がなくてもそれがどういうことなのかは分かるし、"いろいろしてあげる"手始めになる気がした。

「…祐介も、してあげたら喜ぶかな?」

 亮が言うように、してもらって嬉しくない男なんていないんだとしたら、祐介も言わないだけで、本当はしてほしいのかも。
 和衣がしてあげたら、喜んでくれるかな。

「どう思う? 亮」
「知らねぇー! 悪ぃけど、それだけは知らねぇから」

 さっきも同じようなことを思ったが、そんなこと、知りたくもない。

「でも、どうやってしてあげたらいいか、分かんないんだけど」
「は?」

 大まじめに、深刻そうに和衣が言う。
 確かに、したこともされたこともなければ、分からないかもしれないが、いやだけど、どうしてそれを亮に言う?

「ねぇ亮はされたことあんの? 前の彼女とか」
「え? あ、うん。え?」
「むっちゃんは? むっちゃんはしてくれる? てか、亮はむっちゃんにしてあげたことあんの?」
「いや、ちょっ待て」

 勢いに任せて、一体何を聞いてくるんだ。
 思わず答えてしまいそうになった亮は、慌てて和衣をストップさせた。

「どうやったらいいか教えて、亮」
「はぁ~~~~???」

 それこそ、隣の部屋や廊下に聞こえる、なんてことも忘れて、亮は声を張り上げてしまった。
 わが親友ながら、一体何を聞いてくるのだろう……頭を抱えたくなる。

「だって亮、分かるんでしょ? 教えてよ。俺も祐介にしてあげたい!」
「いや、ちょっ」

 してあげたいというその意欲は分かった。
 分かったけれど、そう言われても。

「俺、お前に咥えられんの、何かヤなんだけど…」
「…………」

 だって教えるとなれば、そういうことでしょ? と亮は当然のように実践練習を想像したのだが、教えてくれとせがんだ和衣は、そんなこと思ってもみなかったのか、バカみたいに口をポカンと開けて固まっている。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (7)


「カズ?」
「なっ…亮、バッカじゃねぇの!」
「はぁ? 教えろっつったの、お前だろ」
「だからって何で亮のっ…」

 咥えなきゃ…と続けそうになって、和衣は慌てて口を噤んだ。
 いくら頭の中が慌てふためいていても、そんなこと口走れないと思考回路が判断したらしい。

「だって言って分かるもんでもなくね?」
「でも亮のっ…するなんて。祐介にだってしてあげたことないのに…」
「だから、させねぇっつの!」

 うまい下手の問題でなく(絶対にうまくはないと思うが)、間違っても、親友からそんなサービスなんて受けたくはない。

「じゃーどうすればいいわけ!?」
「お前がキレんな!」
「だってぇ!」

 それでも食い下がる和衣に、亮はほとほと困り果てる。
 先ほどの和衣の話では、よく睦月に相談しているようだが、あの気の短い睦月がよく付き合っているものだ。

(あー面倒くせっ!)

 必死の和衣には悪いが、本気で面倒くさくなってくる。
 和衣のこの性格は今に始まったことでないし、昔からよく知ってはいるけれど、でもやっぱり面倒くさい。

「亮ー!」
「…………。つーかさ、じゃあ、俺がしてやろっか?」

 だから、ほんのちょっと、からかうくらいのつもりだった、のに。

「………………。…………rグchks@%g;ヵhtl、kmjhgr…!!!???」

 何のこと? と首を傾げた和衣に、亮がすっごくエロい顔で、ベロッと赤い舌を覗かせれば、和衣は言葉にもなっていない意味不明な声を発して、思い切り後退った。
 こんなときに限って和衣は、しっかりと真に受けてしまったようだ。

「や、や、やっ…ヤダ、そんなのっ!!」
「バカ、冗談に決まってんだろ!」

 頼まれたって、そんなことするわけがない。
 パコンと頭を叩かれて、和衣はようやく亮のタチの悪い冗談に気付いたようで、情けない顔でホッと息をついた。

「亮のバカ…バカバカバカー…」
「うっせぇ」

 ズリズリと元の位置まで戻ってきた和衣は、クッタリとテーブルの上に頭を乗せた。

「亮ー、俺がんばれるかなぁ…?」
「知らねぇよ。いいじゃん、お前がやりたいと思ったことやってみて、祐介がヤダっつったら次からやらなきゃいいんだから」
「でも祐介にヤダとかって拒否られたら、しばらく立ち直れないかも、俺…」

 もしくは祐介のことだ。嫌だと思っていても、それを和衣には言わないかもしれない。
 そんな状況がずっと続いて、しまいには和衣自身に嫌気が……

「だから妄想だけで落ち込むなよ」

 想像だけで、絶望的なほど暗い顔をする和衣に、亮はよしよしとその頭を撫でてやる。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (8)


 亮的には、恋人が自分とのセックスのためにいろいろ勉強してがんばってくれたら、とっても嬉しいし、すごく燃えるけど、祐介はどうなんだろう。
 まず祐介は、いろんなことをしてセックスを楽しみたいとか、そういうタイプではない気がする。
 そりゃ、自分のためにがんばってくれる恋人を歓迎しないことはないだろうけど、和衣が考えているようなテクニックが…とかそういうことへの関心は薄そうだ。
 和衣に何もしなくていいようなことを言うってことは、祐介自身が相手に尽くす感じのほうが好きなんだろう。

(俺だったら、いろいろしてくれるように仕込むけどなぁ)

 亮はぼんやりとそんなことを思う。
 セックスに対しての知識が少ない睦月は、覚えたての快感にすぐに溺れるから、亮がこうしてほしい、て言ったら、わりと何でもすぐにしてくれる。
 もちろん無理やり何かさせることはないし、睦月のあの性格だ、嫌なことは絶対に嫌と言うから、バランスは取れていると思う。

 要は、そういうことだ。
 相手のしてほしいことをしてあげられたり、それが嫌だったら嫌と言えたり、してほしくないことをやらなかったり。
 別にセックスにおいてだけでなく、普段からだってそう。恋人として、素直で自然なあり方だ。

「だから、お前がしてやりたいって思うなら、やってみればいいし、祐介がヤダつったら、やめりゃいいんだよ」

 和衣が、祐介から一方的に与えられるだけじゃなくて、本当は自分ももっとしてあげたい、て思っているなら、それを伝えなければ始まらない。
 1人で悩んで、亮に相談なんかしている場合ではないのだ。

「んー…うん、亮、ありがと」
「どーいたしまして」

 亮は、羞恥プレイのごとく女性誌を買ってやった以外、特に何かしてやった覚えもない。
 和衣のありがとうは、雑誌を買ってくれたことではなくて(亮的にはこちらを感謝してもらいたいのだが)、相談に乗ってくれてありがとう、ということなのだろうが、亮にしたら、あんなの相談のうちにも入らない。
 思い込んだら一直線の幼馴染みは、すぐに何でも深刻に考えがちだけれど、そんなことでダメになるような関係ではないことは、本当は和衣自身が一番よく分かっているはずだ。

「次のとき、がんばってみるね」
「あー、はいはい。…あ、間違ってもその報告はいらねぇから」

 和衣のことだ、うっかり口走りかねないと、亮は念のため忠告しておいた。

「じゃあ、1つ大人になった和衣に、亮くんがいいこと教えてあげよう」
「ぅん?」

 亮は机のところにあるパソコンの電源を入れ、まだ床に転がったままの和衣に手招きした。

「ここ、ここ」

 ネットに接続した亮は、何やら検索して、何かのホームページを開いた。
 何かの施設のサイトのようだが、和衣はまだよく分からなくて、ジッと画面を見つめている。

「ん? 亮?」
「このラブホ、結構よかったから」
「………………。………………はぁっ!? なっ…何言って…!」

 亮の言葉が脳内の隅々にまで行きわたった途端、和衣は顔を真っ赤にして声を張り上げた。
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恋せよ乙女 ~レッスン編 (9)


「いや、いろいろ試すんならさ、場所も心機一転、たまには違うトコですんのもよくね? つーか、もしかしてもうここ行った?」
「なっ、ッ、はっ!?」

 和衣の口からは、意味不明な声しか漏れない。
 だって、何で亮に、おすすめのラブホ、紹介されてんの?
 けれど亮にしたら、それは予想の範囲内の反応だったから、別に驚きもしなくて。

「だって俺が前に教えたとこ、よかっただろ?」
「…………、…は? …………はぁっ!?」

 今までに、亮にそんなこと教えられた覚えなんかない……と和衣は思ったが、ふとあることに気が付いた。
 祐介と初めて行ったラブホテル。
 一体祐介は、どうやってこの場所を知ったんだろう、て和衣は1人でいらない嫉妬心をメラメラさせていたのだが、もしかしてそれを教えたのって、亮なんじゃ…。

「そうだけど?」

 問い詰めるまでもなく、亮はあっさりと白状した。

「なっ…何してっ…、亮、バッカじゃねぇの!?」
「何でだよ、よくなかった?」

 別に祐介から聞かれたわけではない、亮が勝手に教えてやっただけなのだが、けれど祐介がそのころ、それなりに頭を悩ませていたのも確かだ。

「だーかーら! いろいろ考えて、悩んでんのはお前だけじゃねぇってこと」

 つい、余計なことまでグチャグチャと考え込んでしまう、悪い癖を持った幼なじみを、面倒くさいとは思いつつ、やっぱり親友として、放っておけはしないのだ。

「んー…亮! 俺がんばる!」
「おぅ、がんばれ、がんばれ」
「うんっ。そんで、後でどうだったか報告すんね?」
「いやだから、いらねから、それ」

 恋せよ乙女。
 決戦はすぐそこだ。




*END*





 短くてすみません~。実践編に続きます!
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恋せよ乙女 ~実践編 (1)


 その瞬間、和衣は思った。

(雑誌で勉強したことなんて、全然役に立たなーい!!!)

 本当に声を大にして叫びたいような心境だったが、もちろん声に出せるはずもなく、何とか心の中の大絶叫にとどめた。



*****

 祐介と付き合い始めてから1年以上。
 体の関係だって、それなりの回数がある。
 和衣はいつだって満足していたし、祐介からも何か言われたことがなかったから、自分自身も、そして祐介も、セックスに何の不満も疑問も抱いていないと思っていた。

 それなのに。
 和衣は、たまたまセックス特集をしていた雑誌を見つけてしまい、そして心を奪われてしまったのである。

 大好きな彼と、もっと愛し合うセックス。

 そう題された特集を読み進めていくうち、和衣は、今までの祐介に何もしてあげていなかった自分のセックスを、大いに反省してしまった。
 祐介と睦月が帰省した隙に、こっそり亮に相談を持ち掛ければ、2人が普段どんなふうにしているのかは教えてもらえなかったけれど、和衣がしてあげたいと思うことはしてあげて、それでもし祐介に拒まれたらやめればいいという、セックスだけでなくて、恋人としてごく自然の結論を諭された。

 それはいい。
 和衣もそれには納得した。
 けれどその後どういうわけか、和衣は亮からおすすめのラブホテルを紹介されてしまうのである。
 和衣が1つ大人になったから?
 よく分からないけれど、亮はそう言っていた。

 和衣としては、そんなのおすすめされても困る! と思ったが、初めて祐介と行ったあのラブホテルが、実は亮が祐介に教えたものだと知って、ちょっと安心したのも事実だ。
 何しろ和衣はそれまで、祐介がどうやってあのラブホテルを知ったのか、といらない嫉妬心を燃やしていたから。

 そこでホッとしてしまったのと、亮の『いろいろ試すんならさ、場所も心機一転、たまには違うトコですんのもよくね?』とかいう唆しに、単純な和衣は、すぐにその気になってしまった。
 何せ初めてのとき以来、2人が利用するのはそこか、たまたま雑誌に載っていたデートホテルの特集で見つけたホテルくらいだったから。

 別に不満もなかったし、第一探すとなれば、まず有人のフロントを通らないところがいいし、学生であるがゆえ予算的なこともあるし、それなりに雰囲気にいいところがいいし……なんて思ったら、あまり積極的に探す気にならなかった。
 今はネットでもラブホテルを検索は出来るけれど、そんなノリを持ち合わせた2人でもないし。

 けれど、祐介にいろいろしてあげた~い! て気持ちが高まっていた和衣は、せっかく亮が教えてくれたんだし、違うところに行ってみるのもいいかも? なんて思ってしまったのである。

 だが、今まで1度も自分から祐介をホテルに誘ったことのない和衣にしたら、どうやってそれを祐介に伝えたらいいか、全然分からない。
 普段は祐介がリードしてくれるし、そんなとき和衣はすっかりほわほわしていて、気付けばホテルの一室だから(隙がありすぎるよ、と祐介には困ったように笑われたけれど、そんなふうになるのは祐介の前だけだから大丈夫、と和衣は思っている)。

 困った和衣は、購入した(というか、亮に無理やり買ってもらった)女性誌を、デートの前にいっぱい読んで勉強をしてきたのだが、実際に祐介を前にすると、とてもそんなふうには出来そうもなくて。

 そして冒頭の、心の叫びに繋がるのである。
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恋せよ乙女 ~実践編 (2)


 だいたい、そんな簡単にホテルとかに誘えるくらいだったら、亮から新しいところを教えてもらわなくたって、自分で探してどうにかしている。
 そんなに器用な人間でないから、ここまでもいろいろと苦労してきたのだ。

(はぁ…やっぱ俺ってダメダメだなぁ。全然うまくいかない…)

 小さく溜め息をついて、和衣はポテリと、隣の祐介の肩に頭を乗せた。

「ん? 疲れた?」
「んーん…」

 疲れたわけじゃなくて、自分自身に情けなくなっただけ。
 祐介が甘やかすみたいに和衣の頭を撫でてくれるから、和衣は、もう辺りは暗いし人通りもないから、ちょっとくらいこうしていたって、きっとバレないと思って、素直に甘えた。

(まだ帰りたくない、とか言ったらいいのかな)

 帰りたくないのは確かだけど、何だか取って付けたような言い方だし、どこかで聞いたことのあるような、ありきたりなセリフ。
 ――――そういえば、例の雑誌に載っていたかもしれない。

(うぅん、雑誌には、もっとカッコイイ感じに書いてあった気がする…)

 何て言ったらいいか分からなくて、チラリと祐介の顔を見れば、祐介はずっと和衣のほうを見ていたのか、バッチリ目が合って和衣の心臓が跳ねる。

「和衣、何かいろいろ考えてる?」
「えっ?」

 祐介に、まるで心の中を読まれたみたいなことを言われて、ビックリした和衣は目をパチパチさせた。
 そんな和衣の反応がおかしくて、祐介が吹き出した。まさか気付いていないとでも思っていたのだろうか。

「しわ。ずっと寄ってたよ」
「あぅ」

 クイと眉間を人差し指の先で押される。
 どうやらいろいろと考え込んでいるうち、難しい顔になっていたらしい。

「だって…何か俺、ダメダメだなぁ、て思って」
「和衣、よくそういうこと言うよね」
「だってダメなんだもん。全然うまく…」

 優しい顔をした祐介に見つめられて、和衣は思わず全部言ってしまいそうになったけれど、ふと自分が口走りそうになった言葉に気付き、慌てて口を噤んだ。
 だって、うまくホテルに誘えないとか、そんなこと言えるわけがない。

「ぅん? 何?」
「何でも…」

 言わなければ祐介だって、和衣がそんなことを考えているだなんて分からないのに、何だか心の中を読まれるんじゃないか、て恥ずかしくなった。
 頬が熱い…。
 祐介の肩に頬を押し当てたまま、和衣は目を伏せた。

「…和衣」

 スルリと、祐介の指が和衣の頬を撫でる。
 冷たい空気で冷えた指先が、熱い頬に心地いい。

「もしかして、亮に相談してたこと、また悩んでるの?」
「………………、えっ亮?」

 祐介に触られるの好きー…なんて、使いどころを間違えたら、ちょっと大変なことをのん気に思っていた和衣は、突然祐介の口から亮の名前が出て、驚いて目を見開いた。
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