恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2010年02月

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恋せよ乙女 ~実践編 (5) R15


* R15です。若干の性的表現があるため、15歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「俺らが、初めて行ったとこ」
「…亮から聞いた?」
「うん」

 和衣は別に聞くつもりもなかったのに、拍子抜けするほどあっさりと、亮が白状したのだ。
 バッカじゃね? とか思ったけれど、ホッとさせられたのも事実だから、和衣はあまり強く出られなかった。

「何だかんだ言って、アイツも世話好きだよな」

 友情に感謝しなきゃ、て思っていたのに、祐介が苦笑するから、和衣も思わず笑ってしまった。

「…ん」

 笑いが治まって、ふと沈黙。
 和衣は引き寄せられるように、祐介の唇にキスを落とした。

「ふぅ、ん…」

 和衣はペロリと祐介の唇を舐めて、その熱い口内に舌を侵入させる。甘い舌を追い掛ける。
 人と比較したことがないからよく分からないけれど、和衣はキスが好きなほうだと思う。
 祐介とキスするのが好き。気持ちよくて、ふわふわしてくる。

「ゆぅ…ん、や…」

 キスに夢中になるうち、和衣は祐介のももを跨いで乗り上げてしまったけれど、それでもキスをやめる気にはならなくて、祐介の首に腕を回して、キュッと抱き付く。
 祐介の手が頭を撫で、首筋を辿り、耳元を擽る。
 ゾワリと快感が背筋を上がり、和衣は無意識に下腹部を祐介のほうに摺り寄せてしまった。
 まだキスだけなのに、もう昂り始めているのが分かる。
 祐介に触れ合っているだけで、どうしようもなく体は熱くなるのだ。 

「かず…」
「ん、ヤ…」

 唇が離れると、和衣はイヤイヤして、またキスをねだる。
 祐介ももっとキスしていたいけれど、和衣のこの勢い、このまま最後までここでやってしまいかねない雰囲気。
 多分、世の大半の男性にしたら、ベッド以外の場所でやるのは興奮材料の1つかもしれないが、申し訳ないけれど祐介は遠慮したいところ。
 無粋にキスを中断してまで雰囲気を白けさせたくはないが、積極的にもっといろいろしたい! と思っているらしい和衣が、勢いのまま最後までここでやろうと思ってしまう前に、ベッドに移動したい。

「ん…、ゆ…」

 上がってしまった熱を持て余すように、和衣は額を祐介の肩に擦り付けてきて、その仕草が、まるで猫のようだと思う。

「和衣、ここでしたいの?」

 念のため確認してみれば、和衣からの反応がない。
 やっぱりここでしたいのかな。
 進んでしたいとは思わないけれど、そこまで激しく拒絶することでない。和衣がしたいと言うなら、それに流されてみてもいいかな、なんて思ったけれど。

「ん…祐介は…?」
「え、」
「…ここで、したいの…?」

 和衣は窺うように、ぽわんとした顔で祐介を見つめている。
 どうやら今日の和衣は、いろいろしてあげたい! というご奉仕精神が旺盛なようで、祐介が望むなら、ベッド以外でもOKというスタンスらしい。
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テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

恋せよ乙女 ~実践編 (6) R18



*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「ゆぅ…?」
「えっ、あのっ…」

 そう来たか!
 祐介は、すっかり言葉を失ってしまう。
 だってそんな。あどけない顔で、そんなこと聞かないでほしい。
 出来ればベッドで…なんて思っていたのに、和衣のその姿に、思わず祐介も欲を揺さぶられてしまいそうで。

「ソファ…、どうやるか分かんないけど……祐介がしたいなら…」

 がんばる…、と熱い吐息とともに囁いた和衣は、2人の唾液で濡れた唇を手の甲で拭って、祐介のベルトのバックルに手を掛けた。

「ちょっ待っ…」
「…ぅん…?」

 祐介は慌てて、ジーンズのフロントホックを外そうとする和衣の手を止めた。

「和衣、ベッド行こう?」
「ぅ…? ここ…嫌…?」

 和衣はこてんと首を傾げた。
 それは恐らく無意識の行動なのだろう、けれど祐介にしたら、思わず衝動に駆られてしまいそうになって、そんな自分を落ち着けるためにも1つ息をついた。

「それに、シャワー」
「あ…、……うん」

 そういえば今日は、まだシャワーも浴びていなかった。
 汗臭いとか、そういうことも気になるけれど、男同士のセックスなので、和衣は、後ろのその部分も洗わなければならない。
 2人で入るときは祐介がいつもしてくれて、和衣は恥ずかしくて堪らないけれど、祐介の前で自分でするほうがずっと恥ずかしいから、と自分に言い聞かせて、羞恥に耐えている。

 最初のうち和衣は、祐介と一緒にお風呂なんて恥ずかしすぎる! と抵抗していたのだが、ラブホテルの一室に1人取り残されるのは心細いし、時間がそんなにあるわけでもないから、結局いつも一緒に入るようになった。
 だから一緒にお風呂に入ること自体に、照れはそんなになくなったのだけれど、やっぱりこの行為だけは恥ずかしい。
 だって和衣は、それだけでもう気持ちよくなってしまって、そんなの何だかすごく淫乱な感じがするから。

「…ん、ぅん…」

 宥めるようなキスを頬に受け、和衣は祐介に手を引かれ、バスルームに向かった。



*****

「ゃ、ふ…」

 シャワーの後にすることは決まっていて、上に何か着る必要もなかったけれど、素っ裸のまま室内をうろつくのは、和衣だけでなく祐介も気が引けるので、バスローブを羽織ってバスルームを出た。
 2人して雪崩るようにしてベッドに倒れ込み、キスを繰り返していると、祐介の手がバスローブの裾から忍び込んできた。

「ん…ヤ…、俺がするの」

 いつも祐介がしてくれるみたく、今日は和衣がいろいろしてあげるのだ。
 それで、祐介にもいっぱい気持ちよくなってもらいたい。
 慣れない手付きで、祐介が羽織っていたバスローブの前を寛げると、クシャリと髪を撫でられた。
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恋せよ乙女 ~実践編 (7) R18



*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「和衣のも、脱がせていい?」

 ダメ? それもさせてくれないの? と祐介が念のために尋ねれば、和衣は今さら恥ずかしそうに視線を彷徨わせて、それから身を委ねてきた。

「あ、ん…」

 2人とも一糸纏わぬ姿になって抱き合えば、伝わってくるぬくもりが心地よい。
 けれど和衣は、いつもにも増して心臓がバクバク言っていて、それが祐介にも伝わってしまうんじゃないかって、何だか心配になる。

(緊張してる…? 俺)

 祐介とこういうことをするときは、いつだってドキドキし過ぎて、どうにかなっちゃうんじゃないか、て思うけれど、今日は何だかまるで初めてのときみたいに緊張している。

「ん…ダメ…、ゆぅ…」
「…ん、」

 和衣を潰さないように伸し掛かって来た祐介が、首筋を舐め上げるから、敏感な体がすぐに反応する。
 ボディラインを辿る指先に翻弄されつつ、和衣は祐介の下腹部に手を伸ばす。その熱に指を絡めた和衣は、ゴクリと喉を鳴らした。普段も手でしてあげることはあるけれど、今日はそうじゃない。

(く…口で…!)

 亮と話した後も雑誌を読んでいろいろ勉強したけれど、やっぱりそのくらいのことはしてあげないと! と、和衣は心に決めたのだ。
 実のところ、祐介からは口でしてもらったことはないけれど、和衣的には、まさか「して」とも言えないし、そうしなくても、いつもいっぱい気持ちよくしてもらっているから、特別してほしいと思ったことはなかった。

(でも、してあげたい…)

 和衣はよく分からないけれど、亮が言うには、してもらって嬉しくない男なんていないみたいだし、他に何か出来るようなテクニックも持っていないから(オーラルセックスもまったく未経験だから、何のテクニックもないだろうけど)、せめてそのくらいのことは。

「あの…祐介…」
「…ん? ――――ッ…、えっ、ちょっ…」

 祐介の愛撫の手を止めた和衣が徐に起き上がり、何? て顔をしている祐介の前で、今度は伏せに身を屈めれば、頭上から祐介の焦った声。
 そして、慌てたように肩を掴まれ、頭を上げさせられた。

「ん…?」
「ぁ…え?」

 顔を上げれば、ひどく驚いた表情の祐介と目が合った。

「…ダメ?」

 祐介にいろいろしてあげたいけれど、もちろん嫌がることはしたくない。
 してから実は嫌だった、て言われたくないし、祐介のことだから、和衣を傷付けたくなくて、嫌だと思っても何も言わないかも。だとしたら、やっぱり先に聞いておいたほうがいいのかも……和衣はそう思って、祐介に尋ねてみたのだが。

 和衣はそのくらいのつもりでも、祐介にしたら、とんでもなく動揺させられてしまうわけで。
 だって、いくら祐介だって、目の前で身を屈めた和衣が、何をしようとしているのかくらい分かるし、慌てて止めた後、和衣がそのままの格好で小首を傾げるものだから堪らない。
 体勢的に上目遣いになるのは仕方ないとして、無垢な子どもみたいな顔で、けれどそれとは対照的に、危うげなほど艶めいた表情をしているのだから。
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恋せよ乙女 ~実践編 (8) R18



*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「ゆぅ…?」
「あ…えと…」
「俺ね、口でしてあげたいの…。ダメ? イヤ…?」

 ゴクリ。
 思わず鳴ってしまった喉に、祐介はさらに慌てる。

「…ゆぅ?」
「お…お願いしま、す…」

 答えれば、和衣はホッとした顔で頭を下げたが、祐介はグシャグシャと、自分の頭を掻いた。
 祐介は、こういった経験がまったくないわけではないけれど、そんなに積極的にしてもらったことはない。どちらかといえば祐介は、相手に尽くす感じのセックスが好きだから、無理にしてもらおうとも思わなくて。
 和衣は祐介よりもずっと、こうした行為を恥ずかしがるし消極的だから、まさか和衣のほうから言ってくるなんてゆめゆめ思っていなくて、祐介は激しく動揺してしまったのだ。

「ふ、ぅ…」

 祐介の前に屈んだ和衣は、うるさいくらいに打ち付けている心臓を落ち着けようと、大きく息をついてから、祐介の昂りにそろそろと舌を這わせた。

 亮からは、やり方なんて、見たり聞いたりしただけで分かるものでないと言われたが、でも全然分かんないのも困る…! と和衣が縋り付けば、『とにかく歯ぁ立てねぇように咥えりゃいいんだって』と投げ遣りに返された。
 だから今はそれしか知識がないから(一応、雑誌も読んだけれど、やはり亮の言うとおり、したことのない人間が見ただけでは、何が何だか分からなかった)、後は祐介に気持ちよくなってもらいたい一心で、がんばるしかない。

「ん…」

 咥えたほうがいいんだろうな、とは思うけれど、『歯を立てるな』と言った亮の教えを守ろうと思うと、何だか咥えるのが怖い。
 だって、歯を当てないように咥えるなんて、そんなの絶対無理。

(でも多分、みんなそうしてるんだよね…?)

 亮も、……恐らく睦月も。
 女の子だって、彼氏にそうしてあげているわけなんだから、和衣に出来ないはずがない…………と思う。

(口、おっきく、あーん、てしたら…)

 和衣は覚悟を決めて大きく口を開けると、熱を帯び始めている祐介自身を口の中に迎え入れた。

「ッ…」

 頭上で、祐介が息を詰める気配がする。
 歯は当てていないつもりだけど、嫌なのかな? て思って、チラリと上を見たら、ばっちり祐介と目が合った――――途端。

「んっ…!」

 祐介のモノが急に質量を増して、和衣はビックリして口から出してしまった。

「いや、あのっ…」
「…ん、ゆぅ…ゴメ…」

 やっぱりうまく出来ない…と、若干凹みつつ、和衣はもう1度唇を寄せた。
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恋せよ乙女 ~実践編 (9) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

 けれど祐介にしたら、和衣、全然分かっていない! て言いたい。
 もう、してもらうだけでも十分興奮するのに、上目遣いで見てくるし、思わずそれに反応してしまった自分に嫌悪すれば、逆に和衣のほうが謝ってくるし、はっきり言ってタチが悪い。
 だってこれが全部、無意識で無自覚なんだから。
 いっそ計算だと言ってくれたら、まだいいのに。

「…ふ、ちゅ、ん…」
「はぁっ…」

 ビクッと祐介の腰が震える。
 最初は恐る恐るやっていた和衣も、祐介が嫌がっていないことが分かると、ちょっと安心して、大胆になってくる。
 何より、祐介にしてあげてる、て気持ちが、和衣を高揚させる。

「んぅ…は、ぁ…」

 祐介のきれいな指先が、和衣のフェイスラインを辿る。
 その手が顎の位置まで来たとき、和衣は祐介のモノを口から出し、その指に舌を這わせた。
 それは無意識の行為で、爪の先がカツンと歯に当たった瞬間、和衣はハッと我に返り、自分のしたことに恥ずかしくなって口を離した。
 祐介の性器と自分の口元を、唾液の糸が繋いでいる。

「ふぅ、んん…」

 濡れた唇をそのままに、もう1度顔を伏せたけれど、祐介の手が背中を滑っていき、這い上がった快感に、和衣はペタリと体を横たえた。

「和衣?」
「…ん、気持ちい…、はん…」

 和衣は横たわったまま、祐介自身に手を伸ばし、唾液と先走りで濡れたそれに指を絡めて擦り上げる。先端の窪みに溢れた雫を舐め取れば、手の中で祐介のモノが更に大きくなった。

「ぅん…ゆぅ…」

 祐介が手を伸ばして辿り着いた先、白くて柔らかい尻を揉み込めば、和衣の体がビクビクと震え出す。
 先ほど和衣に少し濡らされただけの指先は、その間で息衝いているアナルには簡単に入ってはいかなくて、祐介はローションを垂らした。

「はぁっ…ん」
「ゴメ…冷たかった?」

 エアコンの効いた室内に置かれていたとはいえ、そのまま垂らすには、少し冷たすぎたか。しかし和衣は「平気…」と緩く首を振った。
 祐介が、ローションを絡めた指先を、まだ窄まっている和衣のそこに進めれば、和衣の腰がモジモジと動いた。

「んん…はぅ…」

 わざとではなく、多めに注いだローションが、グチャグチャといやらしい音を立てる。
 ピンク色をしたそれが、和衣の白い尻にまで流れて、そのコントラストに、何だかクラクラしそう。

「ゆ…ん、ぁ…」

 ベッドに座った状態の祐介の前で、四つん這いを崩した格好で身を横たえ、伏せている和衣の顔は見えない。
 けれど、今日は祐介にいろいろしてあげたいという気持ちは続いているのか、後ろへの刺激で息も絶え絶えながら、懸命に祐介のモノを舐め上げている。
 最初のように咥え込むことは出来なくなったのか、舌先で先端のところをチロチロ舐めていて、たぶん和衣にしたら何も分かっていないと思うけど、祐介的にはかなりヤバい。
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恋せよ乙女 ~実践編 (10) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「ちょ、かずっ…」
「んぁ…?」

 焦った祐介が、ローションであまり汚れていない左手で、和衣の頭を上げさせた(いくら慌てていても、ちゃんと手を選べるあたりが、祐介らしい)。
 急にそこから頭を引き剥がされた和衣は、何? と小首を傾げる。

「ゆぅ…?」
「あの、も…いいから…」
「…?? 何、で…?」
「いやっ、あの…」

 やっぱりよくなかった? ずっと我慢してたの? と和衣が悲しそうな顔をするから、祐介はますますうろたえる。
 確かに我慢はしていたが、それは和衣がしてくれたことが嫌だったからではなくて、今にもイキそうだったから。
 そうです、はい。
 祐介だって男だし、かわいい恋人にここまでされて、いつまでも我慢が続くわけがない。
 だからこれだけ慌てふためいているというのに、やっぱり和衣は分かっていないのか、続けてもいい? ダメ? なんてかわいい顔して聞いて来る。

「あのね、和衣…、ちょっもぉヤバイから…」
「ぅん…? ヤバ…?」

 ジーザス!
 やっぱり全然分かっていない!

 和衣だって、これまでに何度も体を重ね、経験してきているのだから、祐介の今の状態が分かってくれてもいいはずなのに。
 けれどそれは、儚い期待だった。

「ゆぅ?」
「あの、あのね、いや…もぅイキそ…だから」

 だから、お願いだから、もう口を離して。

「ぁ…」

 ようやく和衣は祐介の言いたいことが分かって、途端、顔を真っ赤にした。
 今まで全然分かっていなかったということは、それだけこの行為に夢中になっていたということなのだろう。

「和衣?」
「…て、いいよ…?」
「え? あっ…ちょ、かず、」

 離して、て言ったよね?
 和衣、それを分かってくれたんだよね?

(――――なのに、どうしてまたーーーー!!)

 サイドのを耳に掛けているから、上からでも見える。和衣の耳、真っ赤。
 そのくらい和衣だって、恥ずかしがって、興奮していて。
 でも、それはそうとして、いや、だから。

「かずっ…」
「だから……イッていい、てば…」
「ッ…!」

 そういうことか! と祐介はやっと理解した。
 さっき和衣がボソボソと言った言葉。よく聞き取れずにいたけれど、和衣は『イッて、いいよ…?』と言ったのだ。
 いやいやいや。
 言ったことが分かったところで、一体何になるというのか。状況はまったく変化なし。
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恋せよ乙女 ~実践編 (11) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「…ん、んふっ…」

 和衣は口を大きくアーンてして、深く咥え込んだ。
 初めてした和衣のテクニックが、そんなのうまいわけもないのに、祐介がイキそうなんだと分かったら、俄然やる気が出てきた。
 ここまでがんばったからには、このままイカせてあげたい。

「ダメ、だって……和衣っ…」

 必死で和衣を離そうとする祐介の手が、和衣の肩を押す。
 何で? もっとしてあげたいのに……でも、祐介の嫌がることもしたくないから、和衣は渋々口を離して、顔を上げた。

「ゆぅ…何で嫌…?」
「イヤ、ていうか……だって、このままじゃ口の中に…」
「……」

 その言葉に、和衣はピタリと固まった。
 確かに。
 和衣は口でイカせたい一心だったけれど、祐介の言うとおり、このまま祐介がイッたら、和衣は口で祐介の精液を受け止めることになるわけで。

(…でも俺、別に嫌じゃないかも)

 祐介のものなら、何でも平気だし、嫌だなんて思わない。
 未だかつて、精液の味を味わったことはないけれど(だってまさか自分ので味を確かめるわけにもいかないし。それじゃあ本当に変態さんだ)、してる人だっているんだから、たぶん我慢ならない、てことはないと思う。

「ゆぅ…、……いいよ?」

 和衣はすっかり固く勃ち上がっている祐介自身に唇を寄せ、先端を吸い上げた。
 歯を食いしばるような気配。
 イキそう? て和衣が目線を上げれば、眉を寄せて耐えている祐介と目が合って。

「――――ッ…、和衣っ…!」
「ッ、んっ…んぐ…!」

 口の中に広がる、熱い液体。
 勢いよく注がれたそれを、和衣は考えもせずにそのまま飲み込んでしまった。だって、考える間もなく口の中がいっぱいになってしまって、どうしていいか分からなかったから。
 それでも飲み込み切れなかった精液が、ポタポタと和衣の口の端から零れた。

「けほっ…、はぁ…ん」
「――――…………、かず、い…」
「…ん」

 ゆっくりと身を起こせば、祐介は困惑気味な表情で息を整えていた。
 どうしたんだろ…とは思ったが、口元がべた付くのが気になって、和衣は指先で付着している精液を拭って、ペロッと舌で舐め取った。
 その瞬間。

「ちょっ、和衣!」
「ふぇ?」

 すっごく慌てた様子の祐介に、両肩をガッシリと掴まれて、わけが分からずに和衣は首をコテンと倒す。

「和衣、舐めちゃダメ、舐めちゃダメ、そんなの!」
「だって、ベタベタする…」

 そんなの、て、精液のこと? 自分のなのに……て和衣が思っていたら、祐介がティシューで口元を拭いてくれた。
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恋せよ乙女 ~実践編 (12) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「…ていうか、え?」
「ん?」
「まさか和衣……飲んだ?」

 驚いて口を開けさせれば、確かに和衣の口に放ったはずなのに、あー、てしている和衣の口内には少しの残滓があるだけ。
 驚愕している祐介をよそに、和衣は何でもないように「うん」て頷いている。

「え、ダメだった?」
「いや、ダメていうか…」

 ダメではないけれど、ダメっていうか…。

「ゴメンね、和衣…」
「何で謝んの?」

 特別おいしいものでもなかったけれど、耐えられないほどでもなかったし、吐き出すタイミングも分からなかったから、飲むことに抵抗はなかった。
 だからどうして祐介がそんなに申し訳なさそうにしているのか、和衣にはよく分からない。

「祐介?」
「だって和衣だって、自分が俺に同じことしたら、超謝んない?」
「…………。……謝るかも…」

 だって、そんなの申し訳なさ過ぎて。

「あ、そういうこと!?」
「…分かった?」

 ようやく合点がいった様子の和衣に、祐介は困ったように眉を下げた。

「ゴメン、祐介…。だって、どうしてもしてあげたくて…。嫌だった?」
「え、いや…嫌、ではないけれど……まぁ、あの…」

 和衣は、恥ずかしがり屋の純情乙女なのに、何も知らない無邪気な分、大胆というか、逆に驚かされるというか。

「祐介ー、また、させてくれる?」
「えぇ…!? えっと、まぁ…また今度ね?」
「うん」

 気を取り直して、あどけない表情で頷いた和衣をシーツの上に組み敷く。
 啄ばむようなキスを繰り返しながら和衣の後ろに手を伸ばせば、先ほど潤したはずのソコはもう乾いていて、祐介はもう1度ローションを垂らして、指を忍ばせる。

「ん…」

 何度か体を重ね、祐介を受け入れてきたソコは、最初こそ頑なに閉ざしているものの、丁寧に解していけば、すぐに数本の指を飲み込んでいく。
 首筋を舐め上げると、キュッと瞑った瞳、長いまつげが震える。

「ふぁっ…! あっ…」
「和衣…」
「ヤッ、そこっ…!」

 3本にまで増やした指が、バラバラに動きながら、和衣の中の敏感な部分を刺激する。
 前立腺に触れたら、ビクンビクンと和衣の体が跳ね上がって、その中は祐介の指をキュウと締め付けてきた。

「ここ…、好きでしょ?」
「あ…らめ、イッ…」

 グンと射精感が高まって、怖くて和衣は祐介にしがみ付いた。
 そうさせているのは祐介だし、何も怖いことなんてないはずなのに、後ろへの刺激だけでどんどんと昂っていくのは、際限がないような気がして。
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恋せよ乙女 ~実践編 (13) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「ゆぅっ…」

 思わず身を捩ってしまった和衣の体を片手で抱き寄せ、濡れて真っ赤な唇を奪う。舌を侵入させれば、ただ唇を重ねていたときには分からなかった、青臭い味がする。
 そうだ。
 さっき、和衣のこの口の中に、放ってしまったのだ。

「かず…」
「はぅ、ん…」

 まさか自分の精液の味を知ることになろうとは。
 こんなの、絶対においしいとは思えないけれど、和衣は何てことない顔で、飲んでしまったのだ。

 多分、世間一般からすると、口に出すとか、飲んでもらうとか、そういうことは男のロマン的な位置付けだけれど、祐介には何となく抵抗感があったのも事実だ。
 けれど、祐介にいろいろしてあげたいの! てがんばっている和衣はかわいかったし、その懸命な姿が嬉しかった。

 まったく和衣は、開けたら何が飛び出すか分からない、ビックリ箱みたい。
 いつも驚かされてばかり。
 でも嫌になるなんて全然なくて、新しい表情を知るたびに、どんどん好きになっていく。

「ゆ…やぁっ…!」

 ズルリと指を引き抜けば、一緒にドロリとローションが溢れた。

「和衣…いい? 入れて」
「…ん」

 まだ唇に吐息が掛かるほどの近い距離で、まっすぐに瞳を見つめられながら尋ねられ、和衣はわずかに頷いた。
 祐介は、和衣の膝裏を掬い、細い足を持ち上げる。

 体勢的にはバックのほうが楽だろうが、恥ずかしいのと顔が見えない不安から和衣が好まないし、祐介も普通の体位でするのが好きなので、これは初めのころと変わらない。
 けれど、勉強熱心な和衣は、もしかしたらいつか、いろんな体位でしてみたーい! とか言い出すのだろうか。
 今までそんな積極的な子としたことがないし、そういう雰囲気を醸し出されても、それとなくかわしてきたけれど、和衣相手だと、きっとそんなこと出来ないだろうなぁ、て思う。

「和衣…」
「はぁっ…!」

 祐介が入ってくるのに、和衣は体の力を抜こうとがんばるけれど、何度受け入れても最初はきつくて、祐介の首に回した腕にギュウと力を込めてしまう。
 固く目を瞑っている和衣のまなじりにキスをすると、ヒクンと体が震わせて、和衣がゆっくりと目を開けた。

「ゆ…、ぅん…」
「ゴメ、もうちょっ…」

 きっと祐介だっていっぱいツライだろうに、あやすように何度もキスをしてくれて、そのキスに応えるうち、自然と和衣の体が開いていく。
 祐介の瞳に、和衣が映っている。
 見つめ合ったままのキスは、とっても恥ずかしいけれど、和衣のことしか見ていないんだ、て思うと、すごく嬉しくなる。

「あぁーッ…!」

 ずっと奥のほうまでいっぱいに、祐介に満たされる。
 中がすごく熱い。
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恋せよ乙女 ~実践編 (14) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「ゆっ…ゆぅ…」
「、ッ…ぅん?」

 祐介は目を眇め、熱い吐息を漏らす。
 すぐにでも動きたいと思うのは男として当然の欲求だろうけど、祐介は和衣がその衝動に馴染むまでゆっくり待ってくれていて、その優しさに和衣は、こんな状況なのに、胸がきゅぅんとなってしまう。
 祐介に、体も、心も満たされている。

「ゆぅ…好き…」

 そういえば、今日はまだちゃんと言えていなかった。
 いつも一番に伝えたいこと。

「俺も好きだよ」
「…ん」

 祐介の言葉とキスに、和衣ははぁ…と、熱い吐息を漏らす。
 "好き"て言葉が、体の奥にも、心の奥にも染み込んでくる。
 だってこんな。
 深く、奥まで全部繋がっているのに、嘘なんかつけるわけがない。本当の気持ち以外、伝わるわけがない。

「動くよ…?」

 和衣は返事の代わりに、コクリと頷き、祐介の唇にキスをする。
 祐介はクタリと横に投げ出されていた和衣の手を首の後ろに回させ、そのももを抱え直した。

「ぁ…」

 奥まで収まったものが、ゆっくりと抜けては押し入っていく。
 十分に馴らされはしたけれど、やはり指とは大きさが全然違う、抜き差しされるたび中が押し広げられていく感覚。
 内側の気持ちいいところをズルズルと擦られて、腰が震えるのが止まらない。

「ぅン…!」

 ちょっとでも気を抜いたら、意識ごとバーンて遠くに飛ばされてしまいそうで、怖くて和衣はギュッと祐介にしがみ付いた。
 耳元に、祐介の熱く荒い息が掛かって、それすらも和衣を興奮させる。

「ゆぅ、ゆぅっ…んぁっ…!」

 グンと奥まで突き上げられ、和衣の背がしなる。
 体を揺すられるたびにゆらゆらしていた足が、痙攣するみたいにビクンと1つ震えて、爪先がギュッと縮こまる。

「ひんっ…ゆぅ、あっ、あ…」
「ッ…、かず…」

 和衣は、持ち上げられていた足を、祐介の背中に絡める。
 だって、もっと。
 もっと祐介が欲しい。
 ずっと奥まで深く祐介に満たされて、何もかも1つに溶けてしまえばいいのに。

「あ、やっ、も…」

 もう限界が近いのか、和衣の中はうねうねと祐介に絡み付いてくる。
 祐介が、トロトロと先走りを零している和衣自身を柔く握り込めば、体中を支配する快感に、和衣はブンブンと首を横に振って身を捩った。
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恋せよ乙女 ~実践編 (15) R18


*R18です。性的表現が多く含まれるため、18歳未満のかた、苦手なかたはご遠慮ください。

「やっ、やぁっ…!」
「かずっ…」
「ひぅっ…ん、ん…」

 食らい付くように、和衣の唇を奪う。
 逃げ場を失った熱が、和衣の中をグルグルと駆け回る。
 もっと祐介を見ていたいけれど、もう目も開けていられない。ギュッと瞑った瞼の裏が、スパークするみたいにチカチカする。

「んっんんっ…!」

 もうダメ、て思うのに、祐介自身とその手は確実に、追い詰めるように和衣の快感を引き摺り出す。
 気持ちよくて、気持ちよ過ぎて、もう何が何だか分からなくなって、これが、理性が焼き切れるてこと? 和衣は夢中で祐介にしがみ付く。

「ぁっ…!」

 ちょうど中の一番敏感な部分を突き上げたとき、祐介の手が強く和衣のモノを擦り上げたから、とうとう堪え切れずに和衣は、体の中を蠢いていた熱を祐介の手の中に放った。

「くぅっ…んっ…! ッ…ん、ふ…」
「クッ…、ッ…」

 ピーンと緊張した体と同じように、祐介のモノを咥え込んだソコも、ギュウとキツクなる。
 さすがにその締め付けには耐えられなくて、イッたばかりの和衣の弛緩した体を抱えると、祐介は激しく突き上げて高みへと上り詰めた。

「はぁっ…、ん…」
「ゆぅ…」

 精を放って、上がり切った呼吸を整えていたら、ぽわんとした顔の和衣が、そっと祐介の頬に手を添えた。

「ゴメ……キツかった…?」
「んーん…、ゆぅ……好きー…」
「、」

 最後のほう、衝動に突き動かされるがまま、和衣のことを考えずに自分のペースで動いてしまったから、やっぱり辛かったかな、て心配して尋ねたのに、和衣ははにかむようにそう言って笑うから。

「ぁ…ん、ゆぅ…?」
「あっ…ゴメ…、あの、ゴメン!」

 和衣にしたら、無意識に違いない。
 けれどその仕草と表情に、和衣の中に収めたままの自身が、性懲りもなくまた反応してしまったのだ。

「ゆ…まだ、したいの…?」
「いや、あのっ…」
「俺は……したい、よ?」
「ッ…」

 あぁ、ダメだ。
 やっぱり和衣には敵わない。

「ゆぅ? あんっ…!」
「…っ」

 いくら祐介だって、かわいい恋人を前にして、その欲望に抗えるほどの精神力など持ち合わせているはずもなくて。
 そして2人でまた、欲望の渦の中へと落ちていった。
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恋せよ乙女 ~実践編 (16)


*****

「亮ー! 亮亮亮りょーっ!!!」
「うっせぇよ」
「アダッ」

 よく通る声、目一杯の大声で名前を呼ばれ、亮は駆け寄って来た和衣のおでこをペチンと叩いた。

「亮、何すんのっ?」
「うるせぇよ」
「もー、せっかくお礼言おうと思ったのにー」
「イダダダダ」

 異様にテンションの高い和衣が、バシバシと背中を叩いて来て、本気で痛い。全然力の加減が出来ていない。

「で、何? 俺、これからバイトなんだけど」
「だからー! お礼! こないだの」
「は?」

 和衣は分かって当然という顔をしているが、亮としては、こんなにも和衣のテンションを上げさせてやるほどのことをした覚えはない(普段からちょくちょく和衣のフォローはしているから、礼を言われる筋合いならあるが)。

「いろいろ教えてくれて、ありがとね? 祐介、めっちゃ喜んでくれた!」
「…………。あぁ! アレ? ふーん、試したんだ?」
「うん。俺、がんばった!」

 特別アドバイスをしたというつもりでもないが、和衣がそれに満足して、祐介とのセックスに活かせたのだというのなら、それでいい。
 とってもすっごく面倒くさいけれど、親友として話を聞いてやった甲斐があるというものだ。

「まぁ、よかったんじゃね?」
「えへへー」

(…つーか、後で祐介に、どんなだったか、聞いてやろー)

 ここまで協力してやったのだ、和衣だけでなく、祐介からだってお話を窺いたいところ。
 どうせ和衣のことだから、亮からいろいろ聞いたんだてこと、祐介に言っているはずだから、しらばっくれるなんて出来ないだろうし、させるつもりもない。

 無邪気に喜ぶ和衣は、隣りで亮がそんなことを考えているなど、知る由もないのだった。




*END*





 最後は短くてすみません。でも、カズちゃんよくできました、のご報告はしないと(笑)
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5コール (君の声に会いたい) (1)


「仕事だから」

 と言われれば、

「がんばってね」

 と言うしかない。



 だって俺は、聞き分けのいい恋人。





5 コ ー ル ( 君 の 声 に 会 い た い )




 有名どころの雑誌での仕事が決まって、その撮影に京都まで行ってしまった恋人。
 撮影期間は10日間の予定でも、2月14日にはだだ被り。
 せっかく買ったチョコも(また手作りにしようとしたら慶太に止められた)、バレンタイン当日には渡せそうもない。

 遠いって言ったって、新幹線だって何だってあるんだから、距離感はあってないようなものだけど、明日は朝から学校があるから、今から京都に向かったら戻って来れない。
 つまり簡単に言うと、俺ははーちゃんに会いに行けないってこと。

「はぁ…」

 溜め息で、携帯電話の液晶画面が曇る。指先でキュッキュッて曇りを拭うと、"いつ帰ってくるの?"って文字。
 恥ずかしくなって、内容を破棄して、メールの編集画面を閉じた。

 もう嫌だ。こんな女々しい自分。

「声、聞きたいな…」

 電話、してみようか。
 着信があったのに気付けば、仕事が終わった後、掛け直して来てくれるかもしれない。

 ドキドキ。

 着信履歴からはーちゃんのメモリを拾い出す。
 撮影の合間を見ては、俺に電話してきてくれるの。忙しいのに。

 掛けようかな。どうしようかな。
 掛けてもいいかな。
 ウザいって思われない?

 ドキドキ。

 覚悟を決めて、通話ボタンを押す。
 規則的なコール音が耳にこびり付く。

 出ないかな?
 出ないよね?

 もう切ろうと思って、電話を耳から離した瞬間。




『―――はい』
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5コール (君の声に会いたい) (2)


『―――はい』


 出た!!



 ビックリしすぎて、思わず手から携帯電話を落っことしちゃった。



『もしもし?』
「あ、も、もしもし!?」

 自分から掛けておいて、動揺で声が裏返ってしまう。
 とにかく落ち着こうと、何度か深呼吸して。

『マコ? もしもし?』
「もし、もし……あ、あの、今、大丈夫……ですか?」
『何で敬語なの?』

 クスッて笑う声が、耳を擽る。
 あぁ、はーちゃんの声だ。

『今、ホテルに戻ったとこ』
「撮影、大変?」
『んー、まぁ…でも平気だよ』
「そっか……がんばってね。あ、疲れてるのに、電話してゴメンね」
『何で謝るの? マコから電話貰えて、嬉しい』
「…俺も、はーちゃんの声、聞けて嬉しい」
『なら、もっと掛けてきてよ、電話。メールでもいいし。俺がこっち来てから、あんま掛けて来ないよね?』
「そんなこと…」

 はーちゃん相手だからだよ。
 だって、忙しいのに、迷惑掛けたくない。

 それに……だって、今だって。

 声、聞いたら、会いたくなっちゃうもん…。

『マコ?』

 ヤバイ。
 何か鼻の奥のほう、ツンッてしてきた。
 泣いちゃいそう。

『マコ、どうしたの?』

 急に黙りこくった俺を変に思ったのか、はーちゃんが不審そうに聞いてくる。

「ど…もしない。仕事、がんばってね」

 これ以上はーちゃんの声聞いてたら、絶対泣いちゃう。
 早く電話、切っちゃいたい。
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5コール (君の声に会いたい) (3)


『マコ、泣いてんの?』
「泣いて、ない」
『寂しかった? 俺の声聞いて、会いたくなったの? それで泣いてんの?』
「そんなんじゃない!! 泣いてないってば!」

 ギュッと唇を噛む。
 感情がぶわっと込み上げてきて、涙が零れそう。

 嘘つき。

『…そう』

 急にトーンの落ちたはーちゃんの声。
 え? 何?

『俺だけ、だったのかな? マコの声聞きたいって思ってたの。今日、マコから電話してきてくれて、すごい嬉しかったんだけど…。もしかして俺がしょっちゅう電話掛けてたの、ウザかった?』

 え? え? どうして?
 俺、はーちゃんから電話貰えて、声聞けて、すごく嬉しいのに。

「はーちゃ…」
『ゴメンね』

 何で謝るの?
 俺だって、はーちゃんの声、聞きたかったよ?

『明日学校朝から? 風邪とか引かないように、気を付けるんだよ?』

 優しい、はーちゃん。
 何で俺、素直になれないの?

「はーちゃん…! はーちゃ……俺、俺…!」
『マコ?』
「会いた、……会いたいよぉ…。声聞きたい、はーちゃんの声、聞きたくて、でも会いたくなっちゃうから……ふぇ…」

 もう、止まらなかった。
 涙と一緒に、堪えていた思いがとめどなく溢れて。

『マコ…』
「はーちゃん、から……電話、来ると、すごい嬉しくて…、俺、」

 もう、自分でも何を言ってるのか、よく分かんない。
 でもとにかく、この想いを伝えたくて。

『明後日には帰るから。そしたら一番にマコに会いに行く』
「え…?」
『それまで、泣かないで待ってられる?』
「ん、うん!」
『寂しくなったら、いつでも電話して? 1人で泣いちゃダメだよ。京都からじゃ、慰めに行けないんだから』
「うんっ…」

 電話越し、俺はブンブンとバカみたいに頷いて、涙を拭った。


 大好き、大好き。
 これだけは嘘じゃない。ホントの気持ち。



 俺はチョコの包みをギュッと抱き締めた。





*END*





 プチ遠恋。京都なのは何となく……私が行きたいから(笑)
 バレンタイン、あんま関係ない…か?
 タイトルは、約30の嘘さまから。thanks!
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気付かせないで、恋心 (1)


 BLイラスト&お題配布サイト「あまトロ」さまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載スタートします。

 お題のイラストは、コチラ!


 もうホント、素敵すぎる…! て感じで、私のお話でイメージを壊さなきゃと心配してるわけですが。
 お付き合いよろしくお願いします。

 

 今をときめくトップアイドルだからといって、好きな仕事だけをしていればいいというわけではない。
 歌にダンスに雑誌の取材、ドラマ、映画、イメージを崩さない程度のバラエティ番組への出演。
 体がいくつあっても足らない忙しさが続いても、さらに仕事が舞い込んで来るのは人気者の証。ハードルの高い仕事をやらされるのも、期待されているから。
 人気アイドルグループeternityの一員である槇村希尋(マキムラ キヒロ)は、そう自分に言い聞かせ、どんな仕事が来ても前向きに取り組もうと思っている。

 ――――いるけれど、解せないことは、いくらでもあるわけで。

(何で加倉井と…)

 少し先を歩くスタッフの背中を見つめながら、希尋は何度目になるか、そう思った。



***

 いつものアイドル雑誌の取材。
 スタッフも見知っているし、インタビューだって、"アイドル槇村希尋"のイメージを崩さない受け答えを知っている。
 写真だって、昔は女装とかもさせられたけれど、今となってはいい思い出。今はクールに決めるか、いわゆる"アイドルらしい"かわいい系か、どちらにしても何を困ることもない。

 ――――はずだったのに。

 男心と女心がテーマだという今日の取材。
 インタビューでは、いつもどおり当たり障りのない受け答えをしたし、そこそこ気の利いたことも言えたから、希尋的には大満足だった。
 後は撮影だけだと気合を入れ直したところへ、先に撮影をしていたメンバーの唯人(ユイト)と亜津季(アツキ)が戻って来た。

「ぅ? 今日、撮影、2人ずつ?」
「そうだよー」

 6人組だけれど、忙しいせいもあって、なかなかメンバー全員が揃うことのない雑誌の取材。
 故に写真はソロカットが多いのが、最近の常なのに(しかし販売された雑誌では、6人並んで撮ったかのように仕上げられていることは、よくあることだ)。

 今日も、6人で同じ雑誌の取材なのだが、微妙にスケジュールが合わないせいで、結局それぞれに取材を受けて、撮影をすることになっていた。
 だから希尋は、いつもどおり写真も1人で撮影すると思っていたのに。

「唯人と亜津季が一緒だったの?」
「うん」
「俺は?」
「知んない」

 少しの考える気もないのか、亜津季が即答した。
 誰と一緒に撮影をするか、その答えを知りたいというよりは、構ってほしかっただけなので、亜津季のあっさりとした態度に、ちょっと切なくなる。
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気付かせないで、恋心 (2)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

「あっちゃぁ~ん!」
「うあ゛っ!」

 亜津季はソファにカバンを置いて、ちょうど希尋に背中を向けるような格好で、その中身を整理している。
 希尋が甘えるような声で亜津季を呼んで、その背中に飛び付けば、勢い余って、亜津季の体はそのままソファに突っ伏してしまった。

「イッター…」
「あっちゃん、あっちゃん、あっちゃん」

 ソファと希尋に挟まれて潰れかかっている亜津季に、希尋はキュウキュウと抱き付く。

「希尋、すっげぇウザい…」

 ひどく嫌そうな顔で、とぉ~っても嫌そうに言ってやったのに、希尋はそれに気付かないのか、分かっていて無視しているのか、背後から亜津季の首筋に鼻を擦り寄せる。
 ちょうど大型犬みたいな感じ。
 でも絶対、うちのワンコのほうがかわいいし、お利口だ、と亜津季は確信する。

「希尋くん、スタジオお願いしまーす!」

 まだ甘え足りない…と、希尋が勝手に亜津季の背中で和んでいたところに、スタッフから声が掛かる。
 こうなってはさすがに、亜津季から離れないわけにはいかなくなる。

「行ってらっしゃーい」

 やっと離してくれた、と清々したみたいな顔をする亜津季に、ベーと舌を出してから、希尋は楽屋を出て行った。

「今日は加倉井くんと撮影一緒なんで」
「……………………、えっ?」

 あっちゃんのバカー…と、しつこく亜津季への恨み言を思っていた希尋は、スタッフの言葉に、一瞬、反応が遅れる。
 かなり間を置いて返事をした希尋に、スタッフも「ん?」と聞き返してくる。

「えっと…、え? 加倉井と?」
「はい」

 念のために希尋が確認すれば、スタッフはあっさりと答える(しかし別にスタッフの答え方があっさりしていても、亜津季のときのように抱き付こうとは、少しも思わない)。

「加倉井と俺?」
「そうです。あと、唯人くんと亜津季くん、朔也くんと陽向くん」

 それでもと思って、もう1度希尋が尋ねると、スタッフは丁寧にすべての組み合わせを教えてくれる。
 そこまで言ってくれなくても、6人しかいないメンバーの組み合わせなら、希尋だって分かるのだけれど、いや、そうでなくて。

(俺と……加倉井?)

 ここでまた聞いてしまったら、完全に頭のおかしい人だと思われるので、希尋は心の中だけで尋ね直す。

 加倉井聡(カクライ サトル)
 同じくeternityのメンバーで、昔はよく一緒に取材も撮影もしたけれど、最近ではその回数もめっきり減ってしまった。
 テレビでも、くっ付いたり喋ったり笑ったり、加倉井とはしないようになったし、ペアを組んでのロケでも一緒にはならないし、音楽番組で席が隣にもならなくなった。
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気付かせないで、恋心 (3)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

 きっと何か、希尋の知らなくていい大人の事情があって、そうさせられていて。
 仕事でこれだけ離れいるうち、いつしかプライベートでも遊ばなくなっていて、けれど、忙しいとはいえ仕事でしょっちゅう顔を合わせているのだから、プライベートでまでそんなに会う必要がないのだろうと、希尋なりの結論に達していた。

 だから、いつの間にか開いてしまっていた距離を、希尋はどうすることも出来なかったし、どうしようとも思っていなかった。
 不仲説が流れたところで、実際は別に仲なんか悪くはないし(加倉井も同じ気持ちだと信じたい)、かといって、とっても仲良しなわけでもない。
 自分たちの関係は、そういうものなのだと、希尋はずっと思っている。

 なので、今日のように不意打ちで、"加倉井と2人で"という状況を設定されると、どうしていいのか分からなくて、希尋は非常に戸惑ってしまうのだ。
 いや、いくら以前のように、"とっても仲良しさん"という関係でないとしても、別に2人で撮影をするくらい、どうということもない。
 楽屋でだって、2人で話くらいしているし。

(――――でも)

 わざわざ作られたその環境が、何となく希尋を意識させる。
 ただ写真を撮られるだけだとは、分かっているけれど。

「いた…」

 先に撮影をしてから取材を受けるという加倉井は、すでにセットのところでスタンバイして、カメラマンと話をしている。
 何度か一緒に仕事をしたことのあるそのカメラマンは、希尋たちよりも2回りくらい年上だけれど、気さくで話しやすいから、とても仕事がしやすい。
 こんな撮影のときだからこそ、カメラマンが彼だったのがせめてもの救いだと、希尋は本気で思った。

(いやいや、それじゃ俺が加倉井のこと、苦手みたいじゃんか…)

 希尋は、自分の中のモヤモヤした気持ちを打ち消した。

「じゃ、希尋がこっちで、聡がこっちに立って、向かい合ってー。今日はクールに行くからなぁー」

 白いシャツに黒のスラックスという、飾り気のないシンプルな衣装の2人に合わせて、撮影セットもいたってシンプル。
 希尋が、加倉井を含めてセット全体を見回したところで、カメラマンから指示が飛んだ。

 カメラマンから見て右に希尋、左に加倉井が立って、言われたとおりに2人は向き合う。
 特に、ソロでない撮影の場合、自由にポーズを取らせてくれることもあるけれど、今日は細かく決められるらしい。
 下手な小道具もない中で、加倉井と2人で自由にしていいと言われても、それはそれで困るから、逆に全部指示してもらえるほうが有り難いかも…と、希尋はカメラを見つめる。

「2人とも、手をこう……こうっ…」
「いや、分かんないっす」

 片腕を相手のほうへ伸ばせと言いたいのだろうが、どうにも伝わって来ないし、しかカメラマン自ら見本として取ってくれているポーズが、また何とも妙だから、おかしくて仕方がない。

「だから、右腕を、こうっ…」
「ぶはっ」

 堪え切れずに、とうとう加倉井まで吹き出した。
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気付かせないで、恋心 (4)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

 本当にあれと同じ格好をするのだとしたら、希尋と加倉井の写真は、完全にウケ狙いにしかならない。
 もちろんカメラマンは、そんな変な写真を撮りたいわけではなくて、頭の中で思い描いている格好いいポーズを、体現できないだけなのだ。

「こう?」

 加倉井が右腕を伸ばし、希尋の肩に置いた。
 不意に感じた加倉井の体温に、希尋の心臓が跳ねる。
 カメラマンの説明はよく分からないが、単に腕を前に伸ばすだけでは、小学生のころにした前ならえになってしまうから、肩に手を置いた加倉井の行動も、間違いではないのだろう。

「そうそう、オッケー、オッケー!」

 やっと伝わった! とカメラマンは上機嫌になるが、もちろん先ほどの説明が伝わったわけではない。加倉井の洞察力が優れていただけだ。

 最初に『2人とも』と言っていたから、希尋も同じようにしなければならないのだろう。
 右腕を伸ばした加倉井に希尋が左腕を出せば、2人で肩を組むようになるが、立ち位置からして、それでは2人してカメラに背中を向けてしまうことになるからと、希尋も右腕を伸ばした。

「俺……こう?」

 よく分からないけれど、違ったら違ったで修正してくれるだろうからと、希尋は自分も同じように右腕を伸ばして……加倉井の肩に手を乗せた。
 向かい合ったまま、互いの顔を見ようとすれば、今さら埋まらない身長差のせいで、希尋は少しだけ加倉井を見上げる格好になる。

 向かい合って、右手を相手の肩に乗せ合って…………一体何のポーズだろう、これは。
 加倉井も微妙に思っているのか、何とも言えない表情をしている。
 2人の間に距離があるとかないとか、仲がいいとか悪いとか、そういうことを抜きにしても、何だかとっても微妙。

「もっと手……こうっ」
「だから、分かんないって」
「手を、こー…こうっ」
「こう、て何?」

 彼の説明には、必ず『こう』が入るけれど、その一言で、頭の中に浮かんでいる9割くらいのことを伝えようとしているのだから、堪ったものではない。

「手を首の後ろのほうに、こう…」

 分からないと言っているのに、やはり最後には『こう…』と付け加えてしまうカメラマンに、スタジオ中が笑いに包まれてしまう。
 確かクールな写真が撮りたかったのでは?

「だから、手をこう…首の後ろに」
「首の、後ろ?」

 要はこういうこと? と、希尋が加倉井の首の後ろへと手を回せば、加倉井も同じようにするから、先ほどよりも少しだけ2人の距離が近づいた。
 まるで頭を抱き寄せるような格好。
 先ほどまでの格好を思えば、間抜けさは払拭されたけれど、それはいいとして、これって男2人でやるポーズ?
 しかも相手は加倉井。
 まったくもって、意味が分からない。
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気付かせないで、恋心 (5)


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「これでいいの?」
「いい、いい! こういうのがいいんだって。女の子が『キャ~!』て言うんだから!」
「何かキモイ…」

 50近い男が、女の声色をまねて嬌声を上げても全然かわいくなくて、クールに決めたくても、失笑するしかない。

 確かにメンバー同士でくっ付いた写真を撮ると、女の子受けするのは知っている。
 希尋も、他のメンバーとはよくそういう写真を撮るし、『そういうのは女の子とやれよ!』と突っ込まれそうなことでも、平気でやったりする。

 けれど、それなのに最近では、加倉井とはペアで写ること自体が滅多にないし、ましてやこんなに近い距離で撮影することなんて、なかった。
 それがNGだとハッキリ示されたことはないが、6人しかいないメンバーでペアを組むのに、何度も一緒になるメンバーがいる中、加倉井と一緒にならないのは、つまりそういうことなのだと、暗に示しているようなものだ。

 それなのに、どうして急にそれが解禁になってしまったのか。
 目の前のカメラマンは、確かに変なおじさんだけど、この業界では凄腕の人だし、彼がそういう写真を撮りたいと言えば、事務所も断固としてNOとは言いづらいのかもしれない。

「意味分かんない…」

 希尋はポツリと呟いてから、それは声に出して言うべきではなかったな、と少し後悔した。
 もしかしたら加倉井は、希尋が加倉井と一緒に撮影することに不満があって、そう漏らしたのだと勘違いしたかもしれない。そう受け取られかねない言い方だった。
 しかしその言葉が加倉井に聞こえたのかも分からないし、わざわざ説明するのも変だから、黙っているしかない。

 一瞬、加倉井の視線がこちらに向いたような気もしたけれど、希尋は気付かないふりでカメラのほうを見つめる。
 今は、撮影に集中しよう。

「2人とも目線こっちー。聡はそんなに首捻んなくていいから、目線だけ流して」

 ポーズを取るところまでは、説明も頼りないし、変な見本も取ってくれるカメラマンだが、さすがはプロ。
 そこからは、ビシッと決まっている――――が。

「もっと目力! 目に気合!」

 クールだから、笑ったらいけないのだろうけど、カメラマンはやっぱり言葉が妙というか……笑わせたいに違いないと、希尋や加倉井が思っても仕方がない。
 それなのにカメラマンは、「希尋、笑うなー。もっと挑発的な顔!」なんて言い出して。
 これで笑うなと言うほうが、無理な話だ。
 顔は見えないけれど、隣で聡だって笑っているのが、気配で分かる。

(でも、笑うのやめなきゃ、撮影になんない…)

 ちゃんとした写真が撮れないことには、いつまで経っても加倉井とこのポーズをしていなければならない。
 ――――いや、別にいいんだけれど。

 加倉井以外とは、こんな写真、いくらでも撮られているし、もっとベッタリくっ付いていることだってある。
 撮影が押して、いつまでも仕事が終わらないのは困るけれど、加倉井と一緒だからという理由で、早く終わらせたいと思ってしまうなんて、そんなの。
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気付かせないで、恋心 (6)


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(俺、何意識してんだ…?)

 相手が加倉井だというだけで、いつもの自分になれない。
 何で?
 同じグループのメンバーで、特別に大の仲良しというわけではないけれど、仲が悪いわけでもなくて、楽屋でも仕事でも普通に話すし。
 他のメンバーと何が違うの?

「希尋、視線!」
「ぁ…はい!」

 頭の中がグルグルして、いろんなことを考えていたら、ボーっとなっていた。
 カメラマンの声に、ハッと意識をそちらに向ける。
 けれど、カメラに集中できない。

(熱い…)

 状況なんて、先ほどと何も変わっていないはず。
 なのに、加倉井の触れる部分から、じんわりとその熱が伝わってくるように、熱くて。

 この熱を知っていると、希尋は思った。
 この手の感触も、伝わるぬくもりも、みんな知っている。いや、知っていた。
 知っていたけれど、それはもうずっと昔に封印してしまっていて。
 感情と一緒に。

 ――――だって、ダメだから。

 この感情は、ダメ。
 加倉井にこの感情を抱いてしまったら、気付いてしまったら、ダメになる。
 だから。

「槇村……何緊張してんの?」
「へっ…?」

 加倉井のことを気にしないように、意識しないようにと自分に言い聞かせていた希尋は、不意に加倉井に声を掛けられ、ビクリと肩を震わせた。
 カメラマンにまた注意されるかな、と思いつつ、目線だけを加倉井に向ければ、同じように希尋のほうに視線を向けていた加倉井と目が合う。

「別に緊張なんてしてねぇし」
「ずっと、居心地悪そーじゃん」

 そう言い放った加倉井は、片方の眉を少し上げ、希尋を見遣った。
 何となく見透かされているような気がして、ドクリと心臓が大きく打つ。

「俺と一緒の撮影で、しかもこんなポーズだもんな。そりゃ、嫌がられて当然か」
「なっ、ちが…」

 何で。
 加倉井のことを嫌がるなんて、そんな。
 確かに、妙に意識してしまっていたのは事実だけれど、別に嫌だなんて思ってもいないし、どうして加倉井にそんなふうに思われてしまったのかも分からない。

「2人とも、見つめ合ってないで、こっち見ろー!」

 カメラマンの声が響く。
 カメラのほうを見なければと思うのに、加倉井から目が離せない。

(――――嫌じゃない)

 嫌なんじゃなくて。
 俺は加倉井のこと、
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気付かせないで、恋心 (7)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

「ッ…」

 封印していた感情を思わず曝け出しそうになったところで、クシャリ、襟足の髪に加倉井の指が絡み、希尋は言葉を詰まらせる。
 居た堪れなくて俯きそうになった希尋に、加倉井は指を絡めた髪を引っ張って、無理やり顔を上げさせる。
 強い視線。
 心臓を、鷲掴みにされる。

「カメラのほう、見ろってさ」

 けれど先に視線を外したのは、加倉井のほう。
 カメラマンの指示に従って、前を向く。

 希尋だってカメラのほうを向きたいのに、でも体が動かない。
 どんなふうに顔を作ってカメラを見たらいいのか、分からない。今はどうやったって、どんなにがんばったって、感情を隠せない。
 こんな顔、絶対に写したらダメだから。



 こんな…………加倉井のことが好き、て顔、誰にも見せちゃダメ――――。



 テレビで、雑誌で、希尋と加倉井が離されるようになったのは、何も大人の気まぐれではない。
 2人の知らない大人の事情なんかでもない。
 希尋がその感情を、加倉井を好きだという思いを、隠せなくなってしまったから。カメラを前にしても、その思いを溢れ出させてしまうから。

 たとえ実らない恋でも、人がその思いを抱くことは自由けれど、希尋はそんな普通の人ではない。おいそれと、同じグループの男に恋などしていられる立場ではないのだ。

 誰にも知られてはいけない感情。
 たとえ加倉井本人にでさえ、気付かれてはいけない思い。
 誰にも何にも知られなければ、グループはこのままでいられるし、希尋もずっと、加倉井の隣にいられる。

 だから全部、その思いも、ぬくもりも、みんな閉じ込めたのだ。
 こんな感情を知らなかったころに、何も知らなかったころに戻れるように。

 この距離は、加倉井との離れてしまったこの距離は、誰よりも、希尋自身が作り出したものだ。

「希尋ー、こっち見ろー」

 体が動かない。
 動かないよ。
 だって、こんな顔、写されちゃったら…。

「お前、いい加減に…、……え…」

 少しもカメラマンの言うことを聞こうとしない希尋に焦れたのか、加倉井は苛付いた声を上げたが、あまりに絶望的な表情で固まっている希尋を見て、言葉が続かなかった。

「槇村…?」
「ど、しよ…、俺…」

 どうして、こんな撮影なんか。
 どうして今さら、加倉井と2人で写真なんか。
 こんなふうに触れ合わなかったら、思い出さなかったのに。気付かないままでいられたのに。
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気付かせないで、恋心 (8)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

「槇村、まき…希尋、息、吸ってみ?」
「え…」
「深呼吸しろ、つの」

 加倉井の手が、希尋の後ろ頭を優しく撫でてくれる。
 何でこんなことするの?
 何で、昔みたいに呼んでくれるの?

「カメラのほう見ろ。そしたら、すぐに撮影が終わるから」
「で、も…」
「大丈夫だから」
「…」

 希尋は言われたとおりに何度か深呼吸をした後、カメラのほうを向いた。
 カメラマンが何か言っているけれど、耳に入らない。
 加倉井の手が熱い。

「お前、撮影が終わった後、さっさと帰んなよ?」
「…え…?」
「俺が取材終わるまで、絶対待ってろよ?」

 加倉井の言葉の真意が分からなくて、その顔を見たかったけれど、今度こそ、カメラから目を離せない。
 意識を離してはいけない。
 撮影に集中して。

 目力。
 気合を入れて。
 もっと挑発的な顔。

 カメラマンからの言葉を思い出す。
 要求どおりの表情をして、ポーズを撮れば、撮影なんてすぐに終わる。

(心臓、痛い…)

 早く。
 早く終わって。

 ――――俺が取材終わるまで、絶対待ってろよ?

 加倉井の言葉が蘇る。
 息が、止まりそう。

「よし、オッケー」

 カメラマンが、ファインダーから顔を上げた。
 いくらカメラマンがおもしろくて、笑わせてばかりいるとしても、やはり撮影中の現場には緊張感が漂っていたけれど、ようやくホッとした空気が広がった。

 スルリと加倉井の手が離れていって、熱くて、どうにかなりそうで、早く離してほしかったのに、その手が離れていくことが切ない。
 思い出してはいけないぬくもりを、思い出してしまったから。

「希尋、ぜってぇ待ってろよ?」
「、」

 呆然としている希尋の顔を、加倉井が覗き込む。
 強い眼差し。
 返事も、頷くこともしない希尋に、加倉井はもう1度、先に帰るなと告げて、さっさとスタジオを後にした。
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気付かせないで、恋心 (9)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

 戻って来た楽屋は、なぜか誰もいなかった。
 唯人と亜津季はすでに帰ったのだろう、希尋はこの楽屋でインタビューを受けたけれど、加倉井は違うのか、やはりいなかった。
 スタッフもマネージャーもいない楽屋に、正直ホッとした。
 1人になりたかった。

 希尋は衣装のまま、ソファに身を投げた。
 耳に残る、加倉井の言葉。

『希尋、ぜってぇ待ってろよ?』

 どうして?
 待ってろなんて。待っていたら、何があるの?
 もしかして、希尋の気持ちに気付いてしまったのだろうか。

(――――誰にも気付かれたら、ダメなのに…)

 大きく息を吐き出す。
 両手で顔を覆う。
 泣きそうなんだろうか、心がグチャグチャだ。

『希尋、ぜってぇ待ってろよ?』

 ――――希尋。

 加倉井から、そう呼ばれなくなって、もう久しい。
 それと同じだけの時間、希尋も彼のことを『聡』と呼ばなくなった。

 もう今さら埋まらない距離。
 いくらこの感情を思い出したところで、どうにもならない。
 気付いたところで、何も変わらない。変えられない。

「聡…」

 昔のように呼んでみる。
 それだけで、気持ちが溢れ出しそう。
 ダメだと分かっているのに。

「…――――さとる、聡…」


「はぁい」



「ッ!?」

 返って来るはずのない返事が返って来て、希尋はソファから飛び起きた。
 バタ付いた足がローテーブルを蹴飛ばしてしまう。

「ぁ…」

 同じ楽屋を使っているし、ここで待っていろと言ったのだから、加倉井が来ることは分かっていたが、まさかこんなにすぐに来るなんて――――と、視線を向けた時計は、希尋が来てからもうだいぶ経っていることを伝えてくれる。
 時間の感覚がなくなるくらい、ボンヤリしていたなんて。

「ちゃんと待ってたんだ」
「…うん」

 お前が待ってろって言ったんだろ! なんて、かわいげのない言葉は出て来なかった。
 そんなセリフが思い浮かばないくらい、頭の中が真っ白。
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気付かせないで、恋心 (10)


 BLイラスト&お題配布サイト あまトロさまからお借りしました、イラストお題によるプチ連載です。素敵なイラストはこちら(第1話にリンクしています)。

 加倉井は後ろ手にドアを閉めて、静かに希尋に近付いて来た。
 希尋は、ソファから動けなかった。ジッと加倉井のことを見つめたまま、視線を外せなかった。

「お前……いつから『聡』て呼ばなくなったんだっけ?」
「え…」

 加倉井は、立ったまま。
 希尋の前に立ったまま、瞬き1つ出来ないでいる希尋を、同じように見つめる。

「お前、昔は俺のこと、『聡』て呼んでたじゃん」
「…そうだね」
「呼んでよ、昔みたいに」
「何で」

 希尋は何とか大きく息を付いて、視線を落とした。
 これ以上、加倉井と目を合わせているのはヤバイ。

「そんなに嫌い? 俺のこと」
「なっ…」
「目も合わせらんねぇくらい、嫌いなのかよ」

 全然見当違いなことを言い出す加倉井に、希尋はただ呆然となるしかない。
 目が合わせられないのは、怖いから。
 好きだという思いが伝わりそうで、怖い。

 何も言わない希尋に、加倉井は、はぁ~と大きく溜め息をつく。
 きっと前髪を乱暴に掻き上げているのだろうけど、希尋の視界には、前ボタンをいくつか外した、加倉井の衣装の白いシャツしか見えなくて。
 ねぇ、今どんな顔してるの?

「分かったよ、もういいよ」
「な、にが…?」
「お前、俺に何か言いたいことあんのかと思ったけど、もういい」

 吐き捨てるように言って、加倉井は背を向ける。
 遠ざかる。
 まだ衣装のままだから、そのままじゃ帰れないのに、加倉井は楽屋を出ていこうとして。
 勘違いしたまま。真実を知らないまま。

『目も合わせらんねぇくらい、嫌いなのかよ』

 ずっと加倉井は、希尋に嫌われていると思っていたのだろうか。
 希尋は普通に話しているつもりだったけれど、その間も、嫌いなヤツと話していると、そう思っていたのだろうか。
 ずっと、ずっと――――。

(――――嫌いなわけ、ないのに…)

 嫌いなわけがない。
 嫌いになんて、なるはずがない。

 だって。

「加倉井のこと…………聡のことが…好き…。ずっと好きだった…」

 たった1つの思いを唇に乗せて、吸い込んだ息と一緒に吐き出す。
 床を蹴る加倉井のブーツの音が止まる。
 希尋は、絶望に頭を抱えた。
 早く、ここから出て行って、お願い。
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気付かせないで、恋心 (11)


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「何で今さら、そんなこと言うんだよ…」

 何でなんて、そんなこと。
 聞かれたってそんなの、希尋だって分からない。
 ずっと閉じ込めていた思い。今さら露わにするつもりなんかなかった。思い出すつもりなんかなかった。気付きたくなんかなかった。
 でも、蘇ってしまった思いに、嘘はつけなくて。
 加倉井のことを嫌っているだなんて、勘違いされていたくはなくて。

「何で…。……は…? そんな……いつから…?」
「え?」
「いつからお前、好きとか、そんな…」

 呆然としたような加倉井の声に、希尋はゆっくりと顔を上げた。
 加倉井は、希尋のことを見下ろしていた。愕然とした表情。撮影のときのような、あの強い眼差しは、そこにはなくて。

「聡…」
「だってお前、ずっと俺のこと避けて…」
「避けてたわけじゃ…、だって聡のこと好きで、好きだから、だってそんなの言えないし、写真とかテレビも、そんな顔で、お前のこと好きだってバレバレの顔で写ったら…」

 ただ、叶わないだけの思いならいい。
 自分がツライだけで済むなら。
 けれど、この思いは加倉井にだけではない、他の誰にも気付かれたらいけない思いだから。

「だから、聡のこと嫌いとか……そんなの、ない…」

 そんなこと絶対にない、と希尋は繰り返す。
 嫌いだなんて思ったことは、1度だってないから。

「バカッ…、何で言わなかったんだよっ…」
「言えるわけ…」

 言えるわけがない、と続けようとして、けれどあまりに加倉井の顔が悲愴に満ちていて、希尋は言葉を失った。
 固く握り締めたこぶしが、震えている。

「お前が俺のこと、急に避けるようになったから、分かんねぇけど、何か嫌われたのかな、て…。だから…、……だから…」
「聡?」
「――――お前のこと好きでも、諦めなきゃ、て…」

 はぁっ…と大きくついた息は、先ほどのような、諦めを含んだ溜め息ではなくて。
 ずっとしまい込んでいた思いを、ようやく解放したような、

「……さと、る…?」
「俺だって、希尋のことが好きだよ…」
「…………え……」

 希尋は緩く首を振った。
 そんな。だって、

「嘘……そんな…」

 信じられない、と言うように、希尋は首を振り続ける。
 だって2人、同じ思いでいられるはずなんて。
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気付かせないで、恋心 (12)


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「そんな……聡が好きなんて、知らなかっ…」
「俺だって、お前の気持ちなんか、知らなかったよっ…」

 張り裂けそうな思いに、希尋の目には涙が浮かんで、しかしそれが零れ落ちる前に、加倉井もまた苦しかった胸の内を明かす。

 互いに抱く気持ちは同じだったのに、それが伝えられないまま、気持ちに蓋をして、閉じ込めて、気付かないふりをして、ずっと何でもない顔をしていた。
 叶わない思いだと、知られてはいけない気持ちだと、ずっと思い込んでいた。

 何て不器用な2人。

「希尋は…」

 言い掛けて、加倉井は希尋の前に屈んだ。
 見下ろす形ではなく、希尋と同じ高さの目線で見つめ合う。

「希尋は、まだ俺のこと……好き?」
「…」
「ずっと好きだったって、その気持ちはまだ有効?」

 憂い顔ではなくて、問い詰めるようなものでもなくて、優しい加倉井の表情。
 この顔も、希尋は知っている。
 昔はずっとこんな優しい顔で、加倉井だけでなく希尋だって、こんな優しい顔で話していた。感情を隠すような、そんな顔はしなかった。

「俺はまだ……ずっと希尋のことが好きだよ?」
「俺っ…、…………俺も……ふぇっ…」

 とうとう涙が溢れる。
 伝えなきゃいけないのに。
 今こそ絶対に、好きだって伝えないとダメなのに。

「俺、希尋のこと、好きでいていい?」
「んっ…ぅん、っ…、俺も聡のこと、…………好き……」

 やっと、ちゃんと加倉井の目を見て言えた。
 ずっとずっと閉じ込めていた思い。深くしまい込んで、封印して、自分でも気付かなかったことにしていた気持ちを、ようやく。

「今日、一緒に撮影して…、聡が触れたとこ……熱くて、」

 そのぬくもりに――――思い出したのだ、この恋心を
 やっぱり、封じ込めたままではいられなかった、だってこんなに溢れんばかりの思いなのに。

「やっぱり聡のことが、好きだよ」
「…うん。俺も好き」

 ねぇだから。
 恋人同士のキスをしようか。
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気付かせないで、恋心 (13)


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*****

「うわっ、希尋たちこんな写真撮ったの?」

 あれから1か月経って、また同じアイドル雑誌の取材がやって来たけれど、残念ながら今日は、亜津季としか一緒になれなくて。

 撮影の合間の時間、暇潰しに現在発売中の、件の雑誌を捲っていた亜津季は、希尋と加倉井が写っている写真を見て、思わず声を上げた。
 携帯電話を弄っていた希尋は、亜津季の反応に、ギクッとなってしまった。
 やはり自分の表情は不自然だっただろうか。

「何か変…?」
「別に変じゃないけど、何か恥ずかしくない? こんなめっちゃカッコつけたことすんの」
「え? …………。…え? カッコつけた?」

 あれ?
 表情じゃなくて?

 加倉井と思いが通じ合って、何も怖がることはないと言われて、でもそれでも怖くて見れなかった、例の写真。
 もし誰も気付かなかったとしても、自分なら分かるから。

 希尋は恐る恐る雑誌を覗き込む。
 加倉井と2人、互いの頭を抱き寄せるようにして、顔を寄せ合って撮った写真。
 目力だの、挑発的にだの、散々言われて、いつもだったらそんな表情、楽勝でこなせるのに全然出来なくて……

「でも、いい顔してんじゃん、希尋」
「え…、……そう?」
「うん」

 間違ってもお世辞なんか言うはずのない亜津季が言うのだから、そうなのだろうか。
 もしかしたら、加倉井が『大丈夫だから』と言ってくれた後かもしれない。
 あのとき確かに、まだ加倉井の気持ちを知らなくて、自分の気持ちを認めたくなくて、そう思っていたのに、加倉井のその言葉にホッとしたのも事実だから。
 でも。

(今だったら、もっといい顔できる――――)

 加倉井を好きでいることに脅えていたころとは違う。
 もう、大切な気持ちを封印していた自分じゃないから。

「希尋さん、亜津季さん、お願いしまーす」
「はーい」

 スタッフの声に、亜津季が返事をする。
 希尋は、長い長い片思いにようやく終止符を打てた恋人へのメールを送信して、携帯電話を閉じた。



*****

 ちなみに、このツーショット写真の掲載された雑誌は、普段よりも3割増しの売れ行きだったとか。


*END*





 ここまでお付き合いありがとうございました。
 イラストお題は初めてだったんですが、楽しませていただきました。ただ、こんなクールで素敵な絵に、私のこんなお話……精進せねば、ですね。

 ちなみに最初は、2人ともモデルさんで、女物の香水のイメージキャラに起用され、ポスター撮影で初顔合わせ……という設定でした。
 撮影されたポスターが、お題のイラストてことで書き始めたんですが、女物の香水のイメキャラに男2人を起用するコンセプトが、どうしても私には考え付かず……半分ぐらい書いて断念。
 他に男2人でこんな写真を撮るのは、アイドルぐらい? て超単純な発想で、この設定に落ち着きました。

 当初はコメディのはずだったのに、設定を変えたらとんでもないシリアスになってしまったというオチ。
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