恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2010年11月

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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (89)


 恥も外聞もプライドも捨てて、別れたくないと縋り付いたって、真夕子の心は取り戻せない。真夕子はきっとまだ瑛貴のことを好きだけれど、そんな行為は無意味で、ただただ真夕子を惨めな気持ちにさせるだけだ。
 瑛貴が真夕子のもとに戻れば、また2人、傷付くだけだから。
 だからもう、戻れない。戻る場所なんて、瑛貴にはないのだ。

「アッキー、ゴメ…」
「もう謝んなよ。依織だけのせいじゃないよ」

 こんなことになってしまった原因の一端なら、もちろん依織にもあるけれど、何もかもすべて、依織が悪いわけではない。
 瑛貴は真夕子の寂しさに気付いてあげられなかったし、真夕子も分かっていながら何も言い出せずにいた、大人すぎた。
 誰が悪いわけではなくて、どこかでボタンを掛け違え、正しくない歯車が噛み合ってしまった。

「だからもう謝んな」

 瑛貴の手が伸びて、依織の頬に触れた。
 そこでようやく依織は、自分が泣いているのだと気が付いた。今度はその涙を、瑛貴が拭ってやる。
 瑛貴も人のこと言えないけれど、依織ももう髪も顔もグチャグチャになっているから、あやすように瑛貴はその頭を撫でながら、髪を直してあげた。

「優しくしないで、よ、アッキーのバカ…」

 好きになってくれないなら、2人、愛し合うことが出来ないなら、こんなことしないでほしい。
 依織でなくたって、勘違いする。

「…俺、依織のこと、好きだよ?」
「嘘っ…、さっき彼女のこと好き、て言った…!」
「…うん、好き。さっきも言ったけど、多分一生忘れない。でもさっき、お前から謝られてんの聞きながら、真夕ちゃんに言われたこととか、思い出してた」

 会えない間、寂しかったのは、頭に思い浮かべていたのは誰だったのか。
 依織が他の男と歩いている姿を見て、何でこんなにイラついた気持ちになるのか。
 そして何より、真夕子に罪悪感を持ちながらも、依織との関係を断ち切れなかったのか。

 それがやっと分かったんだ。

「依織のことが好き、て」
「『真夕ちゃん』より?」
「…多分」
「多分かよ」

 瑛貴に『好き』と言われて嬉しいはずなのに、涙が止まらなくて、『多分て何だよ』と突っ込んでみても、泣き笑いになってしまう。

「依織、」
「な、に……、ン…!」

 瑛貴は、零れ落ちる涙を拭っている依織の手首を掴み、自分のほうへと引き寄せる。
 うんと顔が近付いて、依織が戸惑う間もなく、唇が重なった。
 初めての、瑛貴からのキス。
 ビックリし過ぎて、依織の涙も止まった。

「まだ分かんない、けど……もっと好きになる……依織のこと」

 全然うまいセリフでもない、不器用な告白の言葉。
 依織は何度か瞬きをして、口元を緩ませた。そんなところが瑛貴らしくて、…だから好き。



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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (90)


「俺も…もっとアッキーのこと、好きになっていい?」
「…うん」

 瑛貴は、頼りなさげな依織の背中に腕を回す。
 素直にその腕の中に収まった依織は、けれど同じように瑛貴に腕を伸ばせなかった。
 瑛貴は依織を抱き締める腕に、少しだけ力を込める。

「もっと好きになろ? 今度はちゃんと、恋人になろう?」

 こんな形で出会った2人が、これから先、どんな方向へ進むのか分からない。
 ただ、傷付け合うだけの関係になるかもしれないけれど。でも今、好きだと感じたこの想いだけは、なかったことにしたくはないから。

「好きだよ、一番に」



*****

 2人して、泣き過ぎてグチャグチャになった顔を洗い終わったころには、もう空が明るくなり始めていた。

「もう朝だね」
「全然寝てない」
「眠いの? アッキー」
「いや、あんま」

 化粧を落として、ウイッグも取ったけれど、まだ女の子の服を着ている依織は、何だか少しだけ違和感があった。
 やっぱり依織は男なんだなぁ、と今さらながら思う。

 依織はそのままの格好で、ガサガサといつも持ち歩いているカバンを漁っている。
 スーツの上を脱いだ瑛貴は、着ているシャツのボタンが1つ、弾け飛んでいることに気付いた。あの、男たちのせいだ、瑛貴に乱暴を働こうとした。
 瑛貴は何とか逃げ切れたけれど、あのときは逃げることに必死で、考えていなかった。あの男たちも結局逃げ延びてしまって、もしかしたらまた同じようなことをしてしまうのだろうか。
 どうかこれに懲りて、改心してくれますように――――世の中、善人ばかりではないのは分かっている、けれど、瑛貴の儚い願い。

 ガコンッ。

 何となく感傷的な気持ちになっていた瑛貴は、何かがゴミ箱にぶつかった音に、ハッと我に返った。
 ゴミ箱に向って何か投げたのは依織で、本当はゴミ箱にシュートを決めたかったのに、思うように入らなかったらしく、むぅと唇を突き出していた。

「何してんだよ、依織」

 苦笑しながら、瑛貴はゴミ箱手前に弾かれたそれを手にした。
 しょうがないから代わりにゴミ箱に入れてやろうという、それだけだったのだ、が。

「え、これ、」

 瑛貴は何げなく手に取ったそれに驚いて、依織を振り返った。
 依織がゴミ箱に向って投げたのは、いつもカバンの中に入れているうがい薬だった。小さなボトルは、まだ褐色の液体でたっぷり満たされているのに。



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繁華街☆激濃ムラサキヴァイオレンス (91)


「何で捨てんの? 中身入ってんじゃん。もったいねぇ」
「だってもういらないもん」
「は?」
「え、だってアッキー、いいの? 俺が今までみたいに他の男といろいろしてても」
「…」

 依織にとって、うがい薬は、そういうことだ。
 風邪の予防とか、そういうことでなくて、一緒に過ごした男に口でしてあげた後、口でゆすぐためのアイテム。

「だから、もういらないじゃん」

 依織は立ち上がり、瑛貴の手からうがい薬を取ると、結局自分でゴミ箱に捨てた。

「でしょ?」
「…だね」

 無残にも、紙くずやらティシューやらの中に埋没してしまったうがい薬。
 依織は笑いながら、瑛貴にキスをした。

「ならさぁ、女の子の格好すんのもやめんの?」

 唇が離れて、瑛貴は何となくそう尋ねた。
 依織が女の子の格好をしていた理由を考えれば、うがい薬がもう必要ないなら、その格好も、もうしなくていいはずだ。

「んー…」
「…何で悩むの?」
「だって高かったし、服。捨てんのもったいないじゃん」
「えっ、そういうこと?」

 依織の言った理由が、何となく想像していたのと違って、瑛貴は驚いてキョトンとなったし、そんな瑛貴を見て、依織も訝しげな顔になる。

「それ以外に何があんの?」
「いや別に…」

 まさか、女の子の服を着て、また街で男に声を掛けられたいとか? なんて、一瞬でも思ってしまった自分が申し訳なくて、瑛貴は視線を外した。
 だって、依織を信じていないわけではないけれど、瑛貴にとって、依織が女の子の姿をすることは、今まで依織がしてきた行為に直結してしまうから。

「ま、いいか。ネットか何かで売っちゃっても」

 1人で落ち込んでいる瑛貴に気付かず、依織はのん気にそんなことを言った。

「ねぇアッキー」
「ぅん?」

 着替えてメシ食いに行こっか、と服を出しに向かおうとした依織が、瑛貴を振り返った。
 取れたシャツのボタンを気にしていた瑛貴が、顔を上げる。

「これからも、よろしくね」

 改まった顔で依織はそう言って、笑顔を見せる。
 瑛貴は、まっすぐに依織を見つめて、「うん」と頷いた。


*END*



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 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
 今までとはちょっと違った感じのお話を目指したんですが、いかがでしたでしょうか。

 もともとこのお話は、真夕ちゃんがお店にやって来てイオリンを引っ叩いて行った後、イオリンが「追い掛けてやって」とアッキーに言うところを書きたかったんですけど、書き上がったら、その部分も含めて、いろいろと当初とは違う感じになってしまいました。

 実は当初アッキーとイオリンは、最後の最後まで『キスもしない、本当にただのお友だち』という設定で、真夕ちゃんも、「アッキーには彼女がいる」というくらいの(名前もない)存在でした。
 で、彼女はアッキーが浮気をしてると思い込んで現れるんだけど、女装していることを含め、イオリンを激しく罵り、引っ叩いて去っていく…て相当ひどい子になるはずでした。
 しかも、口汚くイオリンを罵る彼女の姿に嫌気がさして、アッキーのほうが別れを切り出すはずだったの!
 そんで、彼女と別れてから初めてアッキーはイオリンちに行って、そこで初めて男の子の姿のイオリンと会う…みたいな話だったんですよ。

 なのに、真夕ちゃんを書き始めたら、そんなに嫌な子には出来なくて、しかも、『本当にただの友だち』だったら、引っ叩くまでは行かないよな…とか思ったら、キスくらいはさせるか…みたいになっちゃって。
 結局、こんな仕上がりになってしまいました。

 真夕ちゃんがいい子になった分、アッキーがすっごい不器用で鈍感な子に…。
 とにかく真夕ちゃんの幸せを願うばかりです。


 このお話は、実はシリーズものの1つという位置づけのお話で、泰我くんとか七槻くんが主役のお話もあるんですが、他のお話はまだ全然書いてません。
 いつか書き上げてアップしたいなぁ、と思ってますので、もし見かけたら(きっとみなさんが忘れたころだとは思いますが)、また読んでやってください。
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おでこ体温計 (前編)


「ふ…ふ……ふぇっくしょんっ! …………う゛ー…」

 ジュビジュビ。
 鼻を啜り上げた睦月が、ティシューへと手を伸ばす。

「…睦月」

 睦月の何度目かのくしゃみに、亮は読んでいたマンガ本を閉じて、顔を上げた。

「ハ……ハ…」
「睦月っ」
「…ック…………止まった…」

 亮に名前を呼ばれ、そちらに気を取られたら、出掛かっていたくしゃみが止まってしまった。
 こういうのって、ちゃんと出ないと、何だか気持ち悪い。
 言い掛かりもいいところだが、睦月は、何すんだよ…という顔で、亮を睨んだ。

「むっちゃん、風邪引いたの?」
「引いてない」
「おもっきし鼻声だし」

 第一、ゴミ箱から溢れ返らんばかりの、そのティシューの山は一体何だ。
 亮が問い詰めるように視線を向ければ、睦月は「知らない」と言いながら、またティシューを引き抜く。

「睦月、風邪引いたんでしょ?」
「引いてない」
「何でそんな嘘つくの」
「だって引いてないもん」

 どうやら睦月は、飽くまでもしらばくれるつもりらしい。
 花粉の季節でもないのに、これだけ盛大にくしゃみを連発しておいて、風邪を引いていないなんて、絶対に言わせない。

「くしゃみと鼻水以外は?」
「あ゛にが?」
「症状」
「何かボーとなる」
「…………」

 もしかして、熱もある?
 そこまでの症状が出ているのに、どうして風邪を引いていないとごまかそうとするのか。
 体温計なんてあったかなぁ…と思いつつ、亮はひとまず手のひらを睦月の額に当ててみる。

「…熱ある? 俺、熱あるの?」
「んー…分かんねぇな…」

 片方の手を睦月の額に、もう一方を自分の額に当ててみるが、これだと何となく分かるような、分からないような…。
 亮は首を捻りつつ、今度は額同士をくっ付けてみる。

「おでこ…」

 亮に前髪を掻き上げられ、おでこをピトッと合わせられて、何だか顔がとっても近い。
 あ…くしゃみ出そう。

(…………、セーフ…)

 さすがに亮でも、こんな顔の真ん前でくしゃみをされたら怒るだろう。
 何とかくしゃみを堪えた自分を、睦月は心の中で勝手に褒めた。

「亮、熱? ある?」
「んー…」

 やっぱりよく分からないのか、亮は額をくっ付けたまま、ウンウン言っている。
 何となく目を閉じそびれた睦月は、目を瞑って真剣に熱を測ろうとしている亮の顔を見つめる。

(……亮の顔、近い…)

 ――――そういえば、この距離って。

「…」
「、ッ、うわっ! 睦月!?」

 その瞬間、バチッと目を開けた亮の体が、ピョーンと大きく後ろに飛び退いた。
 感触を確かめるように、自分の唇に触れる。

「…むっちゃん、今キスした?」
「した」

 だって。
 この距離――――いつもキスしてる距離だったから。



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おでこ体温計 (後編)


「……」

 突然のキスに不意を突かれた亮は、はぁ~…と溜め息をついた。
 キスくらい……でも、こんな不意打ちには慣れていない。
 だって相手は睦月だし。
 今までに付き合ってきた女の子たちなら、こんなこと、きっと計算でするんだろうけど、睦月の場合、まったくの無自覚で天然なんだから、タチが悪い。
 いつもだったら、おねだりしたって、睦月からキスなんてしてくれないくせに。

「だって、顔近かったんだもん」
「何それ…。じゃあ今度から、キスしてほしくなったら、睦月に顔近付けたらいいの? そしたらキスしてくれる?」

 亮がちょっとだけ呆れたように言えば、「気が向いたらね」と睦月はクスクス笑っている。
 ついでに鼻もグズグズさせている。

「はい、もうお喋りは終わり。寝ようね、むっちゃん」
「熱は? 測るのやめたの?」
「後で体温計借りて来る」

 きっと祐介か和衣あたりなら、体温計とか風邪薬を持っていそうなので、睦月を寝かせたら聞きに行こう。
 でも寝る前に、風邪薬?
 いや、薬の前にご飯だ。

「はい、着替えてベッドー」
「うー…」

 やはり具合が悪いのをごまかし切れなくなったのか、睦月はスウェットに着替えると、素直にベッドに潜り込んだ。

「ちょっと寝てて。おかゆ作ったげるから。それ食べて、薬飲んで、熱測って、そんで寝るの」
「うぇー…そんなにいっぱい、いろんなことしなきゃいけないの?」
「いけないの」

 しなければいけない、とはいっても、大したことではない。
 おかゆだって、作るのは亮だ。

「とりあえず、体温計借りて来るね」
「亮、またおでこで測ってよー」

 鼻のところまでふとんを引っ張り上げて、睦月が甘えるみたいな声を出す。
 それで睦月がキスしてくれるなら、おでこで検温も満更ではないけれど、ひとまず今は正確な体温を測らないと。

「亮ー」
「ダーメ。キスしたくなっちゃうから」
「今ならしてあげたい気分」
「治ったらね」

 とっても魅力的な申し出だけど、今は心を鬼にする。
 今は睦月とのキスに溺れている場合ではない。

「はい、目閉じて」
「ぅんー…」

 拗ねても、いつもみたくプンプン怒り出す元気がないのか、睦月は言われるがままに目を瞑る。
 ズブズブとふとんに埋もれて、けれど息苦しくなったのか、やっぱり睦月は顔を出した。

「お休み、むっちゃん」
「…すみ」

 風邪薬を分けてもらって、おかゆ作って、食べさせて、薬を飲んだら。
 熱が下がったかどうか、おでこを合わせて測ってみよう。




 ねぇ、風邪が治っていたら、キスしてくれる?




(顔をうんと近付けるからさ)




*END*



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ボクたち男の子! (前編)


*R15です。性的な表現は含まれていませんが、最初から最後まで通して、ずっと下ネタな感じなので、15歳未満のかた、そういった表現の苦手なかたはご遠慮ください。

*このお話は、「君といる~」3rdシーズン番外編「ボクらの青春に明日はない」の、その後のお話です。そちらを読んでいなくても分かるとは思いますが、よろしければ読んでみてくださいね。



 蒼一郎が出掛けた後、翔真だけになった部屋に亮が来て、それから和衣が来たので、結局室内には当初の定員以上の3人がいた。
 部屋の真ん中には、主にご飯を食べる用に使っているローテーブルがあって、3人してそれを囲んで顔を突き合わせているけれど、翔真は携帯電話を弄り、亮はマンガを、和衣は恋愛特集の女性誌を読んでいるので、3人してバラバラなことをしているのだが。

「――――あ、そうだ。亮、お前さぁ、真大に変なモン渡すなよなー」
「ぅん?」

 メールの送信を終えた翔真が、思い出したように顔を上げると、亮もマンガから顔を上げた。
 雑誌に集中していた和衣も、何のこと? と、何となくそちらに意識を傾け掛ける。

「あのコンドーム! イチゴの匂いするヤツ!」
「イテッ」

 そう言って翔真が足先で亮のお腹を蹴飛ばせば、亮は大げさに後ろに仰け反ったが、何もされていないはずの和衣まで、「ッッッΣ( ̄□ ̄;)!!??」みたいな顔で固まった。

 ちなみに翔真の言う『イチゴの匂いのするコンドーム』とは、この間ついヤッてしまった制服エッチの際、真大が出して来た代物で、聞けば亮から貰ったと言う。
 あんな最中に思い出したくない顔を思い出してしまって、思わず萎えそうになったのも事実だ。

「えー、よくなかった? おもしろかっただろ?」
「おもしれぇけど、おかしいだろ、俺と真大でイチゴの匂い漂わせてんの!」
「うひゃひゃ、想像すると笑えんだけど」

 ムッとしている翔真を(そして口をアングリさせたままでいる和衣のことも)お構いなしに、亮はさもおもしろそうに笑っている。
 素直に貰い受けて、使ってしまう真大も真大だが、やはり諸悪の根源は亮に違いないのに。

「、、、あのー…」
「ん?」
「どした?」

 しばらくポカンとしていた和衣は、ようやく気を取り戻したのか、突き合ったり蹴り合ったりしている亮と翔真のほうに身を乗り出した。

「…それってどういうこと? イチゴ?」
「カズ聞いてよー。こいつアホだからさ、匂い付きのゴム、真大に渡してんだぜ? しかもイチゴ! もうホンットにアホだろ!?」
「そ…そんなのがあんの? 匂い付き??」

 翔真は、全然堪えていない亮への不満を和衣にぶつけるが、和衣といえば、『匂い付きのコンドーム』という存在自体が初耳で、それってちょっとマニアックな感じ…? と若干引き気味だ。

「てかショウちゃん、それ使ったの…?」
「使ったよ。だって袋開けて、使う寸前に匂い付きだって分かったんだもん、しょうがない」

 口元を引き攣らせつつ和衣が尋ねれば、翔真は事もなげにそう答える。
 使ったどころか、いきなり匂いを嗅がされたのだ。

「カズも欲しけりゃやるけど? まだ余ってっから」
「いるわけないじゃん、バカッ!!」

 ニヤニヤしながら口を挟んで来た亮に、和衣は即行で突っ込む。
 そんなもの、絶対にいるわけがない。

「何で? お前イチゴとかそういうの好きじゃん。……、え、まさかお前ら生でやってんの?」
「ウッソー。カズ、意外とチャレンジャー」
「ちっ違う、違うしっ!! 何で!? 使ってるに決まってんじゃんっ!!」

 匂い付きのものがいらないと答えただけなのに、なぜかコンドーム自体、使用していない風に取られてしまって、冗談だと分かっていながら翔真もそれに乗っかるから、和衣は真っ赤になって全否定した。



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 ちなみに、イチゴの匂い付きコンドームのお話はこちらです→「僕らの青春に明日はない (44)
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ボクたち男の子! (中編)


*R15です。性的な表現は含まれていませんが、最初から最後まで通して、ずっと下ネタな感じなので、15歳未満のかた、そういった表現の苦手なかたはご遠慮ください。

「つーかさ、お前、どうやってゴムとか買ってんの?」
「は?」

 ようやく笑いを収めた翔真が、興味津々な様子で和衣の顔を覗き込んだ。
 親友の性生活には何の興味もないが(というか、寧ろ知りたくない)、匂い付きのコンドームの話をしたくらいでこの反応なのだ、からかいたい気持ちは存分に湧いてくる。

「あ、それ、俺も気になる。お前ら、どうしてんの?」
「ッッッ…!!!」

 もちろん亮も、すぐさまそれに乗っかって来る。
 2人に詰め寄られ、和衣の顔は一気に真っ赤になった。

「祐介と一緒に買いに行ってる姿、想像付かないんだけど」
「想像しなくていいし!」

 何でそんなこと想像されなきゃいけないの!? と、和衣は真っ赤な顔で翔真の頭を叩く。
 しかし和衣の敵は翔真だけではなかった。

「でもカズが1人で買いに行けるとも思えない」

 翔真の横で亮が(なぜか)至極真面目な顔をしてそう言い出す。
 さらには翔真も続けて、「え、じゃあ祐介が買ってるってこと? いっつも。それはそれで、何か想像できないんだけど」なんて言うから、和衣は「だから、想像しなくていいってば! もぉー!!」と喚いた。

 2人で一緒に買いに行くのも、どちらかが1人で買いに行くのも、やはり想像できない。
 いや別に想像したくはないけれど、でもよく考えたらこの2人、どちらもそういう雰囲気を漂わせていないなぁ、と改めて思った。

「てことは、やっぱ生でやってんの?」
「ちーがーうー!!」
「イダッ」
「イッテ…」

 何でそうなる!? と、和衣は亮と翔真の頭を思い切り引っ叩いた。
 和衣は小柄で華奢な体つきだが、もちろん男だし、小中高とずっと野球をやってきたおかげか力があるので、テンションが上がったときとか、こういう場合に加減知らずで叩かれると、本気で痛い。

「もぉー…バッカじゃないの、2人して。そんなの聞かれたって、2人だって困るでしょ? どうしてんの? とかさ」

 2人してからかってー…と、和衣は頬を膨らませつつ、反撃を試みた――――が。

「自分で買ってます」
「同じく」
「…いや、真剣な顔して答えられても、こっちの反応が困るんですけど」

 亮も翔真もあっさりと答えるから、逆に和衣のほうがどうしていいか分からない。
 竜也にもそうだが、この長年一緒にいる腐れ縁の幼馴染みにも、口では敵いそうにないらしい。

「あ、でもこないだ、むっちゃんと一緒に買いに行った。コンドームショップ」
「はぁ~~~?? 何でむっちゃんと行くわけ!? 何で? 何で!?」

 いきなり亮がとんでもないことを暴露するので、和衣はつい声を大きくしてしまった。
 別に2人でどこに行こうと構わないが、亮の言い方だと、一緒に出掛けたときに、たまたま買ったと言うよりは、わざわざそれを買いに、2人で出掛けたみたいだ。

「いや、何となくだけど。そういうお店あるんだよーて行ったら、むっちゃんが行ってみたいて言うから」
「それで2人で行ったの!? ギャハハ、超ウケるんだけど! 男同士で行ってるヤツなんて、他にいんの!?」

 亮の言葉に少なからずショックを受けている和衣と違い、翔真はウケまくって、その話に食い付いてきた。

「いたいた。でも多分、彼女と使うヤツ、友だちと一緒に買いに来たんだろうなぁ、て感じだった。女の子同士もいたし、普通にカップルもいたけど」
「マジかよ~。おもしれぇ、俺も行きてぇ!」

 腹を抱えて笑い出した翔真は、とうとう手足をバタつかせた。



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ボクたち男の子! (後編)


*R15です。性的な表現は含まれていませんが、最初から最後まで通して、ずっと下ネタな感じなので、15歳未満のかた、そういった表現の苦手なかたはご遠慮ください。

「カズ、今度一緒に行こうよー」
「何で俺が行かなきゃなんないの!? しかもショウちゃんと!」
「だってカズ、祐介とは行かないだろ? いや、カズが祐介と行くっつーなら邪魔しないけど」
「だから行かないってば!」

 みんなして、何でそんなに行きたがるわけ!? と、和衣は頭を抱えたくなった。

(でもむっちゃんも行きたいって……みんなそうなの? 俺も『行きたい!』とかって言ったほうがいいの? 祐介に?)

 ………………。

「無理無理無理無理ーーーーー!!! そんなんぜぇーーーーったいに無理アダッ…………うぅー…」

 1人で勝手に想像した挙げ句、無理無理~~~!! とジタバタして、和衣は思い切り手をテーブルにぶつけて悶えている。
 まったく忙しい子だ。

「じゃあ祐介誘おうっと」
「何でー!」

 和衣のことを誘うのを、意外にもアッサリ諦めたと思ったら、単に翔真は標的を祐介に変えただけのことらしい。
 手の痛みを堪えながら、和衣は「ダメーー!」と翔真に詰め寄った。

「ショウちゃん、真大と行きなよー」

 真大は翔真の恋人なんだから、誘ったって悪くはないだろうし、それに真大のことだから、間違いなくノリノリで一緒に行くと思う。
 だからもう和衣たちを巻き込まないででほしい…。

「いや、真大とも行くけどさ。でもカズも行ってみたいかなぁ、て思って」
「行きたくないし」

 てかショウちゃん、行くんだ…。
 別に翔真がコンドームショップに行こうが行くまいが和衣には関係ないが、そんなにキッパリ宣言しなくてもいいのに。

「も…疲れた…。俺、帰る…」

 ほんの何十分でもない会話なのに、和衣はすっかり疲れてしまって、開きっ放しになっていた雑誌を閉じて立ち上がった。

「つかカズ、お前これ女性誌…」
「ぅん?」

 閉じた雑誌の表紙には、『恋のお悩み解決』だとか『恋愛マナー』だとか、そんな文字が躍っていて、雑誌のタイトルも、よく知られた女性誌のもの。
 しかし亮が若干引き気味に言ってみても、和衣は、だから? という顔しかしない。

「え、カズ、お前こんなの買ってんの?」
「いっつも買ってるわけじゃないよー。たまに」

 引き攣り気味の顔で翔真に尋ねられても、和衣は素直に、無邪気にそう答えるだけ。
 そういえば和衣は、祐介へのクリスマスプレゼントをリサーチするのに、平気で女性誌を立ち読みしていたというし(真大から聞いた)、セックス特集が載った女性誌も買っていた(というか、亮が買わされた)。
 読みたい内容だったら、それが女性誌であることは、和衣にとって何も気にならないらしい。

(それって、コンドームショップ行くより、よっぽど恥ずかしいんじゃね…?)

 それこそ生まれたときから、もう20年になる付き合いだが、いまだに和衣の羞恥心のポイントが、亮にも翔真にも分からないときがある。

「亮、読みたいの? 貸したげよっか?」
「いらねぇし」

 以前にセックス特集の女性誌を買わされたときの悪夢が蘇り、亮は心底嫌な顔をした。

「そう? 読みたくなったら言ってね? いつでも貸してあげるから。ショウちゃんも」
「あはは…」

 多分そんな日は一生来ないけど……とは突っ込まず、翔真と亮は、雑誌を抱えて部屋を出ていく和衣を見送った。

「俺…時々アイツの友だち辞めたくなるときある…」
「泣くな、ショウ…」

 天然に敵うものなし。



*END*



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touch me! (前編)


 まったくもって、上原睦月という人間は、不思議な子である。
 それは恋人である亮も、長年一緒にいる幼馴染み(兼 保護者)も常々思っていることだが、本人にそんな気はまったくないのか、今日も今日で妙なことを口走っていた。

「ねぇねぇカズちゃん、お腹触ってー?」
「は?」

 次の授業までの間、カフェテリアで時間を潰していたところ、突如発せられた睦月の謎の言葉に、声を掛けられた和衣だけでなく、一緒にいた亮も祐介も翔真も『はぁ?』という顔をした。
 しかし睦月は、自分が変なことを言ったとは、もちろん思っておらず、「ねぇねぇ触って?」と、和衣の手首を掴む。
 妙なことは言われたが、和衣は言われたとおり、自分のお腹に手を当てようとしたら、なぜか掴まれた手を睦月のお腹のほうへ導かれる。
 どうやら自分の腹でなく、睦月の腹に触れということらしい――――しかも、服の上からでなく、直に。

「むっちゃん! 何してんの!?」
「お腹」

 慌てる和衣をよそに、睦月はのん気にお腹を丸出しにして、和衣に触らせている。
 周りには恋人の亮だけでなく祐介や翔真もいるし、隣のテーブルには他の学部の学生たちもいるのに。

「お腹しまって! しまって、むっちゃん!」
「俺のお腹冷たくない?」
「はぁ!?」

 一体何を言い出すんだろう、この子は。
 和衣はポカンとなったまま固まってしまった。もちろん亮も、祐介も、翔真も。
 恋人であるはずの亮も、『何、他の男に触らせてんだ!』と怒りたいところだが、それ以前に、睦月の行動に唖然としてしまって、言葉が出て来ない。

「冷たいでしょ? 俺のお腹」
「…………」

 和衣は何度か瞬きをした後、ゆっくりと顔を上げて、同じテーブルを囲む恋人及び友人たちの顔を見回したが、誰も何か言えるような状態ではなくて、仕方なく和衣は睦月に視線を戻した。

「何かね、お腹冷たいなぁ、て思って」
「そ…それって、お腹冷えたんじゃなくて?」
「そうなの?」
「むっちゃん、お腹痛くない?」
「痛くない」

 和衣は、捲れ上がったシャツを元に戻してあげるが、睦月はまだシャツの中に手を突っ込んで、お腹を触りながら小首を傾げている。

「むっちゃん、いつまでお腹触ってんの!」
「だって冷たいんだもん」
「えー…いつもそんななんじゃないの?」
「違う! 今日は冷たいの!」

 和衣の否定的な言葉に、睦月はムキになって反論する。
 まさか毎日お腹の温度を確認しているわけでもあるまいに。

「とにかく! もう触るのやめなよ」
「むー…」

 誰も分かってくれないのがおもしろくないのか、睦月はむくれた顔でペットボトルに手を伸ばした。
 睦月にしか分からない温度差だが、お腹が冷たくなっていると言うのだから、温かいものを飲めばいいのに、睦月の手にしているのは冷え冷えのコーラ。
 この矛盾に、果たして気付かないのだろうか。

「むっちゃん、余計お腹冷たくなんない?」
「だってコーラ飲みたいんだもん」
「お腹痛くなっても、知らないよ?」
「あむ…」

 和衣にそう言われて、睦月は口を付け掛けたペットボトルをテーブルに戻した。

「ホットコーラてあるよね。あっためて飲めば?」
「何それ、まずそう…」

 今はコーラを飲みたい気分だけど、お腹が冷たくても、何だかそんなの飲みたくはない。
 もしかしたらおいしいのかもしれないけれど、睦月の性にはちょっと合わない感じ…。

「むっちゃん、お腹出して寝てんじゃないの~?」
「えー? そうかな…」

 ようやく睦月の言動と行動の意味を理解した翔真が、爆笑しながらそう言えば、睦月は眉を寄せた。
 腹を出して寝ている自覚はないが、睦月は翔真の言葉ならわりと何でも(明らかな冗談でも)、真に受けてしまうタチなのだ。

「亮に腹巻買ってもらったら?」
「腹巻て、あれだよね。バカボンのパパがしてるヤツでしょ?」
「そうそう。でもあんなふうに、服の上から着けなくていいんだからね」

 腹巻でなぜかバカボンのパパを思い出してしまった睦月は、思いの外それがツボに嵌まったらしく、取り出したノートの端っこのほうに、下手くそなバカボンのパパを書き始める。

「むっちゃん。何かそれ、ちょっと違うよ。バカボンと、バカボンのパパが混じってるよ」

 一生懸命書いている睦月には悪いが、何だかそれって微妙に違う…と、和衣が隣に書いてあげるが、それもやっぱりちょっとどうかと思う仕上がり。
 じゃあ亮書いてみて、と亮にノートを差し出せば、それよりうまく俺のほうが書けると翔真がノートを取る。
 最後には、誰が一番うまくバカボンのパパを書けるか選手権みたくなって、睦月のノートの余白がバカボンのパパだらけになったところで、チャイムが鳴った。



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touch me! (後編)


「むっちゃん、お腹冷たいの治った?」

 睦月を膝の上に乗せてテレビを見ていた亮は、番組がコマーシャルになったところで、思い出したように睦月に尋ねた。
 結局、お腹冷たい、て何だったの? と亮は思わずにはいられなくて、パジャマの上から睦月のお腹に触れてみる。

「お風呂入ったから、もうあったかー」

 和衣が祐介に無遠慮に甘えることを未だに恥ずかしがっているのと違って、睦月はその辺のところに照れがないので、亮の膝の上で大人しくしている。
 今日はもうお風呂にも入って、ぬくぬく。
 冷たいと思っていたお腹も、今は温かさを取り戻している。

「そりゃよかった。睦月のお腹が冷たいと、いろいろ大変だから」
「大変?」
「むっちゃんがカズにお腹触らせるから、俺の気が気じゃなくて大変」

 今日、和衣にお腹を触らせている睦月を見たとき、それがあまりに突拍子もない行動だったので、唖然として何も言えなかったが、変な意味がないとしても、恋人がその素肌を他の男に触られるなんて、やっぱりいい気はしないから。

「じゃあもうカズちゃんには触らせない」

 睦月にしたら、単に和衣が隣に座っていたから、というだけの理由だったのだが、亮が気にするなら、もう和衣には触らせない。

「今度お腹冷たくなったら、亮に触らせるね」
「いや……うん」

 他の男に触らせるくらいなら、自分が触るほうが断然いいのだけれど、大学のカフェテリアで、あんなにも唐突にされるのもどうかと思って、亮はちょっとだけ口籠ってしまった。

「とりあえず明日は、最初に腹巻買わないとだね」
「え、むっちゃん、ホントに買うの?」
「買うよー。だってショウちゃんが腹巻、て」

 翔真の言葉を本当に本気にしているのか、睦月は「腹巻て、どこに売ってんのかなぁ?」と首を傾げている。
 明日は一緒に買い物にでも行こうかと話していて、亮的にはお買い物デートのつもりだったんだけど(睦月もそう思っていると信じたい!)、それが腹巻探しなんて、ちょっとムードが…。

「あのさ、むっちゃん…」
「ぅ?」
「…………。…いや、一緒に探そっか?」

 ムードのないデートにはなりそうだが、とりあえず今睦月がかわいいので、それもアリかと思い直す。
 ――――でも。

「あ、そうだ。どんなのがいいか、ショウちゃんに聞いて来よう」
「へっ!?」

 スルリ。
 亮の腕の中を抜け出す睦月。

「えっちょっむっちゃん!?」

 呆気に取られている亮に構わず、睦月はパジャマ姿のまま部屋を出ていってしまった。

「………………。…ショウ……後でぜってぇ締める…」

 テレビの音だけが、虚しく響く室内。
 1人取り残された亮は、低く呟いた。



 果たして一番哀れな男は?



*END*



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 お腹冷えたときて、触るとホントにお腹冷たくないですか?
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secret love? (1)


*このお話は、「君といる~」3rdシーズン番外編「ボクらの青春に明日はない」の、その後のお話です。そちらを読んでいなくても分かるとは思いますが、よろしければ読んでみてくださいね。


 睦月が「アイス食いたい」とか言って、売店に立ち寄ることにしたので、和衣は一足先にカフェテリアに来て席を確保していた。
 それにしても、こんな寒い時期に、よくアイスなんて食べたいとか思うなぁ。

「カーズちゃん」

 和衣がカバンから携帯電話を取り出して、着信を確認していたら、聞き覚えのある……和衣にしたら忘れてしまいたい声に名前を呼ばれ、手が止まった。

「…愛菜ちゃん、眞織ちゃん」

 和衣のことを、こんなかわいらしい呼び方で呼ぶのは、睦月以外ではこの2人しかいない、文化祭で催された女装コンテストに、優勝賞品の旅行券目当てで和衣を出場させた愛菜と眞織だ。
 この2人が揃って目の前に現れると、また何かとんでもないことをさせられるのではないかと、和衣は無駄に脅えてしまう。

「はい、これ」

 何? 何の用? と和衣が警戒心丸出しで2人を見ていると、愛菜も眞織もそれに気付かないのか(気付いていても、別にどうってことないのか)、和衣の向かいに座って、かわいくラッピングされた包みを差し出した。

「ぅ? 何?」
「おみやげ。カズちゃんに」
「俺に? え、どっか行って来たの? 旅行?」

 その包みで和衣を釣ろうという目的は、どうやらないようなので、和衣は恐る恐るだがそれを受け取った。

「そ。だって旅行券貰ったんだもん、行ってくるよ」
「もう行って来たの!? 2人?」
「行ってきたよ。え、カズちゃんまだ行ってないの?」
「うぅ…」

 だって学園祭が終わってから、まだ1か月半くらいしか経っていないのに、もう行って来たの!? と驚けば、まだ行ってないの? と愛菜たちに逆に驚かれてしまい、言葉が続かない。
 睦月にも呆れられたけれど、こんな調子で祐介を旅行になんて誘えるのかしら。

「何だ。旅行券取れたら、すぐにでも祐介くん誘って旅行行くのかと思ってた」
「、………………、はい?」

 いつになったら祐介のこと誘えるんだろ…と和衣が密かに凹んでいたら、愛菜が平然と爆弾を投下してくれたので、和衣は慌てて俯き掛けた頭を起こした。
 聞き間違いでなければ、愛菜は今、祐介の名前を口にしたはず。
 しかも、和衣と一緒に旅行に行く相手の名前として。
 確かに和衣は、祐介と旅行に行きたいと思っているけれど、そんなこと、どうして愛菜が。

 愛菜に今のセリフの真意を確かめたいけれど、とっても嫌な予感がして、思うように言葉が出ない。
 コンテストの準備のときは、『旅行券ゲットすれば、彼女と旅行に行けるよ』なんて言っていたから、和衣が一緒に旅行に行く相手を、『彼女』と思っていたはずで。
 それがどうして今、『祐介』になってしまったんだろう。

「えっと、愛菜ちゃん…、え、何で旅行、祐介と、て思っ…」
「え、だってカズちゃんの好きな人って祐介くんでしょ? 付き合ってんじゃないの?」
「ッッッッ…!!!!!」

 嫌な予感、的中。
 恐る恐る愛菜に尋ねた結果はこれ。
 あんなに心臓をバクバク痛くしながら、バレてませんようにー、と心の中でお祈りしたのに、何にもならなかった。



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secret love? (2)


「なっ…ッ、え…な、何で? 愛菜ちゃ…何でそう思うわけ…?」

 動揺を全然隠し切れずに(それでも和衣的にはがんばって冷静を装っているつもり)、愛菜に聞いてみる。

「何で、て…。だって、ねぇ?」

 自分がとんでもない爆弾を落としたとは思っていない愛菜は、どうして和衣がそんなに蒼褪めているのか分からず、隣の眞織に話を振れば、眞織もあっさり、「あたしもカズちゃんの彼氏、祐介くんだと思ってー」なんて言い出すから、和衣は頭を抱えた。

「え、違うの?」
「…………わない、です……」

 もともと嘘やごまかしは苦手だし(それは和衣が口下手ということもあるし、気持ち的に嫌だというのもある。だって実際に祐介と付き合っているのに、それを否定するなんて!)、大体、愛菜と眞織に口で敵うわけもないから、和衣はテーブルに突っ伏したまま、素直にそれを認めた。

「てか、何で分かったの…?」

 泣きたいような気持ちを抑えつつ、和衣はゆっくりと頭を起した。

「いや、何か見てれば」
「俺を?」
「うん」

 これまたあっさり2人に答えられ、和衣はガックリと項垂れる。
 自覚はないが、そんなに分かりやすい性格をしているだろうか。
 もしかしてみんな言わないだけで、和衣の態度から、祐介と付き合っていることが、バレバレなんだろうか。

(だとしたら、恥ずかしい…!)

 同性愛だとかそういうこと、昔よりは世間に浸透してはいるものの、まだまだ大っぴらに公言できるほど自由な気風は、今の日本にはない。
 だからと言って、別に祐介と付き合っていることを恥ずかしいとは思わないけれど、自分の態度や行動で、祐介への気持ちがバレバレだったとしたら、それはとんでもなく恥ずかしい!

「んー…でも普通だったら分かんないと思うよ。ウチらはホラ、コンテストの前、ずーっと一緒にいたじゃん?」
「あんだけ一緒にいれば、分かるよね」
「うん」

 愛菜と眞織は、真っ青になったと思ったら、今度は顔を真っ赤にしている和衣に、フォローとも言えないフォローをする。
 でも、これまでの自分の行動を思い返してみても、何かをうまくごまかせた試しなんて1度だってないと、和衣だって、自分でもそう思う。

 そういえば先日の女装コンテストの際、一緒にステージに立った真大に、『旅行券ゲットして、彼氏と旅行、行こ?』とか言われたっけ。
 和衣は真大に、祐介と付き合っていることを話した覚えはないのに、真大は『彼女』でなく『彼氏』と言った。あれは間違いなく、祐介のことを差していたのだろう。

「うぅー…」

 よく考えたら、祐介に片思いしているころ、勝手に睦月にヤキモチを妬いた挙げ句、睦月にその想いがすっかりバレてしまっていたっけ…。
 本当に、普通に接してるぐらいの人には、バレてない? 本当?



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secret love? (3)


「カーズちゃん、お待たせー!」

 すっかりベッコリ凹んでしまっている和衣に、何とものん気な声が掛かった。
 和衣を『カズちゃん』とかわいらしく呼ぶ、もう1人の人、睦月だ。

「ねぇ聞いてよぉ、むっちゃ~ん!」
「ねぇカズちゃん、聞いてよー!」

 ………………。

 和衣と睦月、2人同時に同じようなことを相手に向って言ったのだが、あまりに悲愴に満ちた和衣の声に対し、睦月のほうはあまりに浮かれ切っている。

「…………、え…、何、むっちゃん…」

 睦月がやって来て、和衣は愛菜たちとのやり取りを話して、助けを求めようとしたのに、睦月のあまりの『聞いて聞いて!』オーラに、思わず話す順番を譲ってしまった。

「ジャーン! 見て見て~!」
「えっ…」

 間抜けな効果音とともに、睦月が何かを和衣の目の前に突き付ける。
 近すぎて、何だか全然見えない。

「むっちゃん、見えな…」
「これこれ、当たったの、アイス!」

 ホラー! と見せてくれたのは、アイスの棒で、『あたり!!』と刻まれている。

「え…、当たったの? すごいね」
「でしょでしょー? しかもね、これ1本じゃないんだよ! 最初に買ったヤツが当たってね、そんでもう1本貰うじゃん? そしたらそれがまた当たったの!」

 睦月は自慢げに、愛菜と眞織にもアイスの棒を見せてやる。
 こんな調子だから睦月は、いつだって2人に幼稚園児並みにしか扱われないのだ。

「2回当たったの?」
「うん! 2回続けて当たり! すごくない!?」
「う…うん、すごい…」

 確かにその確率はすごいし、たかがアイスとはいえ、それだけ当たれば嬉しい。
 だとしても、アイスの棒をそのままギュッと握り締めて、駆けてくる辺りが、睦月らしい。

「さすがに一気に3本は食えないな、て思って、これは今度のお楽しみにしたの。そんでカズちゃんは?」
「は?」
「カズちゃん、何か言おうとしてなかった? 何?」

 言いたいことを言い終えて満足したのか、睦月は和衣の隣に座って、その顔を覗き込んだ。

「えっと…」

 もちろん和衣にも言いたいことはたくさんあったのだが、睦月ののん気で能天気な話を聞かされた後では、何と切り出していいか分からない。

「てかカズちゃん、それ何?」
「え、これ…」

 先ほど売店の前で別れたときには持っていなかった包みが和衣の手の中にあるのを、睦月が目敏く見つけた。

「おみやげ。旅行行って来たから。むっちゃんにもあるよ、はい」
「わーい、ありがとー」

 もう全然うまく喋れない和衣に代わって、眞織が同じようにかわいい包みを睦月にも差し出した。
 和衣には旅行券を獲得してもらった義理があったが、和衣にだけ買って来れば、「何で俺にはないの!?」と睦月が言い出すに決まっているから、最初から睦月の分も買って来たのだ。



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secret love? (4)


「そんでカズちゃん、どうしたの? 愛菜ちゃんに何されたの?」
「…ちょっと待って、むっちゃん。何であたしが何かしたこと前提なの?」

 和衣には旅行のおみやげを上げたくらいで、他には何もしていない。喜ばれこそしても、そこまで凹まれる筋合いはないと思うのだが。

「あのね、あのね、俺が祐介と付き合ってんの、愛菜ちゃんと眞織ちゃんにバレちゃった…」
「へぇ」

 …………。

「むっちゃん、聞いてた?」
「聞いてたよ。だから何?」
「何、て…」

 2人にバレちゃってたよ、どうしよー! と、睦月に縋り付きたい気持ちで言ったのに、肝心の睦月の態度は、あまりにも素っ気ない。
 というか、おみやげの包みのほうへ、完全に気持ちが行っている。

「ねぇねぇむっちゃーん!」
「何、何?」

 ユサユサと肩を揺さぶられ、睦月は面倒くさそうに包みを置いて和衣のほうを向いた。

「だからー、愛菜ちゃんと…」
「それは分かったってば。それで愛菜ちゃんにいじめられたの?」

 どうしても愛菜のせいにしようと言うのか、性懲りもなく睦月はまたそんなことを言う。
 和衣が祐介と付き合っていること、愛菜も眞織もそんなに他意なく言っただけで、からかうつもりも、ましてや和衣をいじめようだなんて、思ってもいないのに。

「…………、ホントに2人とも、カズちゃんに何もしてないの?」

 和衣の頭を撫でながら、睦月が疑わしげに愛菜と眞織を見る。
 だって、それにしては和衣が凹み過ぎだ。

「してないってば。カズちゃん、祐介くんと付き合ってんじゃないの? て聞いただけ。付き合ってんのかと思ってたから」
「それなのに、何でカズちゃん、こんなに凹んでんの?」

 2人に、祐介と付き合っていることがバレて、例えば男同士であることを悪く言われたとか、周囲に言い触らされたとか、そんなだったらめちゃくちゃ凹むかもしれないけれど、付き合っていることを指摘されただけで、どうしてここまで。

「だって別に愛菜ちゃんたちに、祐介とのこと言ったわけじゃないのにバレてんの…。俺、そんなバレバレだったの? めっちゃ恥ずかしい…」
「そんな…カズちゃんの恥ずかしい姿なら、もういくらでも見せてんじゃん。何を今さら」
「そっ…そんなにいろいろは見せてないよ!」

 確かに女装姿も見せているし、その準備段階も、ステージ上でも、結構に和衣は醜態を晒してはいて、睦月の言うように、今さらと言えば今さらなのだが。

「カズちゃんゴメンね、まさかそんな凹むとか思わなくて」
「でもさっきも言ったけど、ウチらはホラ、コンテストの関係でずっと一緒だったじゃん? だから分かっただけで、そんな誰も彼もにバレてるわけじゃないと思うよ?」

 まさか愛菜も眞織も、和衣がこんなにも衝撃を受けるなんて思ってもみなかったから、自分たちの言葉が失言だったことに、ようやく気が付いた。

「だってさ。大丈夫だよカズちゃん。まぁ2人にはいろいろされてるから、信用できない気持ちは分かるけど」
「…あのね、むっちゃん。そこまであたしたちのこと極悪非道みたいに言うの、やめてくれる?」

 和衣を慰めたい睦月の気持ちは分かるが、先ほどから何かと言い分がひどい。
 そんなに和衣に悪さをした覚えはないのだが。



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secret love? (5)


「でもよかったじゃん、カズちゃん」
「…何が?」
「これからは、何かあったら愛菜ちゃんたちに相談できるよ?」
「そーだん?」
「だってカズちゃん、どうせまた、クリスマスプレゼントどうしよぉ~とか言い出すでしょ? 今年は俺じゃなくて、愛菜ちゃんと眞織ちゃんに相談してね」

 優柔不断な和衣の買い物が長いのは、今に始まったことではない。自分の分を買うのは早いらしいが、祐介へのプレゼントとなるとからきしなのだ。
 今年こそは、もう勘弁してもらいたくて、睦月はそう話を振った。

「でも去年もむっちゃん、来てくんなかったじゃん。俺去年、真大と行った…」
「毎年違う人からアドバイス貰ったほうがいいよ。だから今年は愛菜ちゃんたちね?」

 どうあっても一緒には行きたくないらしい睦月は、愛菜と眞織の返事も貰わないうちから、勝手に決めてしまった。

「ちょ…むっちゃん。いや別にいいんだけど、何勝手に決めてんの」

 自分たちを目の前にしながら、勝手にどんどんと話を進める睦月に、一応愛菜が突っ込んだ。
 和衣の買い物に付き合うのは構わないが、男子へのプレゼントを選ぶのなら、女の子に聞くより、やはり男子に聞くべきなのでは? とも思うし。

「ホラ、愛菜ちゃんたちいいって。よかったね、カズちゃん」

 なのに睦月は、都合のいい部分だけを聞き取って、よかったよかった、と和衣の肩を叩きながら、話を一段落させてしまった。
 しかも単純な和衣は、そっかー、愛菜ちゃんたちいろいろ知ってそうだしね、と、簡単に納得してしまう始末。もう今さら、愛菜も眞織も口を挟む隙はなかった。

「あ、亮と祐介くんだ」
「えっ!?」

 和衣の問題は解決したし、じゃあ早速おみやげの包みを開けてみようとしたところで、眞織が向こうに亮と祐介の姿を見つけ、手を振った。
 もちろんその声に、和衣はすぐさま振り返ったが、睦月はそれよりもおみやげのほうを開けたかったので、ベリベリと雑な仕草で包装紙を剥がし始めた。

「お待たせ、むっちゃん」
「んー」
「何それ」
「おみやげ、愛菜ちゃんと眞織ちゃんから。てか亮聞いてー、アイス当たったー」

 包装紙を剥ぎ掛けで、睦月は当たりのアイスの棒を亮に突き付けた。

「え、アイス? この寒いのにアイス食ったの? 当たり?」
「2回当たったの!」

 睦月は、先ほど和衣に説明したときのように、2回連続で当たりが出たことを、無邪気に亮に教えてあげる。
 しかも愛菜と眞織からおみやげも貰って、とってもハッピー。

「亮たちにもおみやげあるよ、一応」
「…一応、な」

 余計なひと言を付け加えた愛菜に苦笑しつつ、亮は睦月の隣に座った。

「はい、祐介くんにもおみやげ」
「俺にもあんの? ありがと」



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secret love? (6)


 長辺に3人までしか座れない長方形のテーブルの、一辺が和衣・睦月・亮で埋まっているので、祐介は、愛菜と眞織の側に座ろうか、もう1つ椅子を持って来ようか迷っているようだった。
 先ほどまでのこともあって、和衣は、祐介が来ただけで頬が熱かったけれど、でも出来れば愛菜たちのほうでなく、自分の近くに座ってほしいと思った。
 しかし隣のテーブルにはすでに人がいて、そこから椅子を借りるのも何だし、かといって離れた場所から椅子を持ってくるのも面倒くさかったのか、祐介は眞織の隣の空いている椅子に座ろうとした。

「、…え?」

 座ろうとしたけれど、それより先に、和衣が祐介のシャツの裾を掴んで、引き止めてしまった。

「和衣?」
「え?」

 和衣にしても、そばにいてほしいなぁ、とは思ったけれど、シャツを掴んで引き止めたのはまったくの無意識で、何? と祐介に振り向かれて、初めて自分のしたことに気が付いた。

「あ…」

 頬が熱いかも…とかいうレベルでなく、顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。もちろん祐介だけでなく、みんなの視線が自分に集まっていることも。

(あわわわわわ、何してんの、俺ーーーー!!!)

 いよいよ和衣の脳内は、パニックに陥る。

「あっあっこれはっ」

 慌てて祐介のシャツから手を離した和衣は、うるさく音を立てて椅子から立ち上がった。
 何かいい言い訳なんて、そんなの口下手の和衣がうまく出来るわけもなく。

「カズちゃん?」

 隣の睦月が、一体どうした? と和衣を覗き込む。

「もっ…ゴメンっ!」
「うわっ」

 恥ずかしくて逃げ出したい! という思いのまま、和衣はダッシュでその場から走り去った――――なぜか祐介の腕を掴んで。
 まったく何も身構えていなかった祐介は、いきなり腕を引かれてガクンとなったが、あまりにも訳が分からな過ぎて、そのまま引っ張られて行ってしまった。

「何だ、アイツ」

 あまりに唐突な出来事に、事情の分からない亮は呆然と、去っていく和衣と祐介の背中を見つめるしか出来ない。
 隣で睦月もポカンとしている。
 しかしなぜかその向かいの席では、眞織が声を上げて笑っており、愛菜は呆れた顔をしていた。

「…だーかーら、バレるんだってば」

 愛菜の呆れた呟きは、和衣の耳には届かなかった。



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*END*
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ラブホバトン


*R15です。性的な表現はありませんが、内容が内容なので、15歳未満の方やこういった内容の苦手なかたはご遠慮ください。

ラブホテル★

意外と楽しい場所だと思うラブホテルについてのバトン。
『いつもやってる』『取り敢えずやったことがある』『ついついやってしまう』という項目に○や×で答えて下さい



【回答者 : カズちゃん、むっちゃん、翔ちゃん】
和「な…何でこんなの答えなきゃなんないの…」←すでに涙目
翔「何か面倒くせぇなぁ」
睦「お腹空いた」


・歩いてホテルに行ったことがある
→ 和:○ 睦:○ 翔:○

睦「歩く以外でどうやって行くの?」
翔「車じゃね? ガレージインのトコとか」
睦「車で入れんの!? 行ってみたい!」
翔「でも車ないじゃん」
睦「そっか…。あ、カズちゃん、ゆっちは車の免許あるよ。今度行ってみたら?」
和「やっヤダよ! (まだ祐介の運転する車、1回も乗ったことないのに、最初の行き先がラブホなんて…!)」

・実は同性で入ったことがある
→ 和:○ 睦:○ 翔:○

睦「俺、亮としか行ったことないの」
翔「そうなの? 偉いね」
睦「翔ちゃんは? 女の子と行ったことある?」
翔「真大と付き合う前は。あ、昔カズと行ったことある!」
睦「??? カズちゃんと? 2人で?」
和「ちっ違うよ! 部屋、別だったでしょ! お互い彼女と行ったの!」


・フロントにおばちゃんがいるとなんか恥ずかしくなる
→ 和:○ 睦:△ 翔:×

睦「おぉー、ここで初めて意見が分かれましたね」
翔「別に恥ずかしくはないよ」
和「何でっ! 絶対に恥ずかしいし! むっちゃんだって、そうでしょ?」
睦「俺、フロントに人がいるトコ、行ったことないの」
翔「そうなの? (亮も結構、気ぃ使ってんだな)」
和「俺も祐介と行くときは、フロントに人がいないトコ選んでるよ。だって人と会うの、恥ずかしいもん…」


・廊下やエレベーターで他のカップルと鉢合わせてなんか恥ずかしくなる
→ 和:○ 睦:△ 翔:×

和「こんなの恥ずかしいに決まってんじゃんっっ!! 何で翔ちゃん、×なの!?」
翔「だって別に恥ずかしくないもん」
和「むっちゃんの△は何!?」
睦「だって鉢合わせしたことないもん」
和「でももし会ったら恥ずかしでしょ!?」
睦「んー…別に。あ、でも、カズちゃんと会ったら、恥ずかしいかな。ゆっちも一緒だし」
翔「それあるよな。知り合いと鉢合わせしたら、恥ずかしいてか、気まずい!」
和「絶対堪えらんない…」


・清掃中のおばちゃんと鉢合わせるとなんか恥ずかしくなる
→ 和:○ 睦:× 翔:×

和「…翔ちゃんて、何もかもが恥ずかしくないの…?」
翔「何で。別に知らないおばちゃんだし、平気」
和「むっちゃんは、△から×になってるしー…」
睦「おばちゃんなら恥ずかしくない。おっさんとか、若い人だったら恥ずかしいかも」
翔「うはは、その基準て何?」
睦「分かんないけど、何か」


・電話注文をしておばちゃんが部屋に来るとなんか恥ずかしくなる(対応はパートナーに任せる)
→ 和:○ 睦:× 翔:×

睦「恥ずかしいわけじゃないけど、知らない人だから応対したくない。亮に任せる」
和「人見知りだもんね」
翔「俺も別に恥ずかしくないかな。出るのはそのとき裸じゃないほうだけど、電話は大体俺がしてる」
和「…恥ずかしいに決まってるから、最初から電話なんかしない…」


・ベッドにダイブする
→ 和:× 睦:○ 翔:×

翔「むっちゃん、やっちゃうんだ…」
睦「初めて行ったとき、スゲェ!! て思って、思っきしダイブした! 何かベッドおっきいトコとかだと、したくなっちゃう。カズちゃん、しないの?」
和「しないよ」
翔「俺もしないな、それは。でも確かに寮のベッドでそれやったらぶっ壊れそうだし、やってみてもいいかも」
睦「やっちゃおう」


・ガウン着る
→ 和:○ 睦:○ 翔:○

睦「お風呂から上がった後とか、寝るときとか。着ないときもあるけど」
和「着ないこともあんの!? 俺、絶対着るよ? 裸なんて恥ずかしいじゃん」
睦「着ないことあるよ。でも何かガウンとかさぁ、セレブっぽいよね。だから着たい」
翔「いやいや、安すぎるでしょ、そのセレブ」
睦「お手軽にセレブ気分。翔ちゃんは?」
翔「メシ食うときくらいは着るかな」
和「後は?」
翔「裸」
睦「はだかんぼ」
翔「何でかわいく言い直してくれたの?」
睦「うへへ」


・カラオケ歌っちゃう
→ 和:× 睦:× 翔:△

睦「カラオケ自体、そんな好きじゃないし」
和「ラブホでカラオケとか、そんな気分にはなんない」
翔「昔はしたけど、真大とはしたことない」
睦「翔ちゃん、カラオケとかすんの? 何かちょっと意外」
翔「え、何で? 俺、どういうイメージ?」
睦「ガツガツ」
和「キャハハハ、むっちゃん、翔ちゃんのこと、そういうふうに見てんの!?」
睦「うん」
翔「(間違ってはいないけど、ちょっと複雑な気持ち…)」


・冷蔵庫の無料サービスの飲み物全部飲んじゃう
→ 和:× 睦:△ 翔:△

和「全部は飲んじゃわない」
睦「全部飲んじゃうつもりはなかったけど、気付いたら全部飲んでたことはある」
和「そんな喉渇いてたの?」
睦「お風呂でのぼせて」
翔「飲んじゃうときもある。無理して飲む気はないけど」


・部屋にあるポットで沸かしたお湯でカップラーメン食べる
→ 和:× 睦:△ 翔:△

睦「カップラーメンは食ったことない。何かスープ的なのはある」
和「ウッソ!?」
睦「行く前にコンビニ行ったら、何かおいしそうなのあって、食べたかったの」
翔「そうだな、カップラーメンはないけど、そういうのはある。あとお茶とか、コーヒーとか」
和「んー…何かポットとか、ちょっと使いたくない…」
睦「カズちゃん、そんなに潔癖だっけ?」
和「いや何か。何となくだけど」


・部屋の鏡がマジックミラーかどうか気になる
→ 和:× 睦:?? 翔:△

睦「マジックミラーて何?」
翔「部屋のほうから見ると鏡だけど、裏から見ると部屋の中が透けてんの」
睦「そんなすごい鏡があんの!? ラブホすげぇ」
翔「いやいや、スゲェとかそういうことじゃなくて。マジックミラーだったら、裏から自分たちのしてること、丸見えだからね。そんなのホントはダメだから」
睦「でもカズちゃんも翔ちゃんも、そんな気にしてないじゃん」
和「気にしてないっていうか……やっぱそういうトコて、ホントにあんの? そういうの、噂かなぁて思ってたけど…」
翔「んー…気にしてた時期もあったけど、何か面倒くさいし、もういいや、て思うようになった」


・部屋にカメラが付いてるかどうか気になる
→ 和:× 睦:?? 翔:△

睦「カメラって、何カメラ?」
翔「AVとかのさ、隠し撮りとか盗撮とかのヤツ」
睦「撮られてんの? いっつも?」
翔「そういうカメラがあるホテルもあるって言うけど、どうなんだろ」
和「気にしてないの…。ホントにあるの? カメラとか。気にしなきゃダメ?」
翔「んー、気にしてたこともあったけど、今はもう何か面倒くさくなった」


・照明の演出パターンに感動する
→ 和:○ 睦:○ 翔:△

和「これは感動する。スゲェて思うっ」
睦「思うね。すごいもんね。一通り押す」
和「いや、そこまではしないけど…」
翔「俺は別にどうでもいいけど、一緒に行った子が喜んでるの見ると、いいなぁとは思う」


・部屋についてるスロットで遊んじゃう
→ 和:× 睦:△ 翔:×

和「そういうのが付いてるトコに行ったことない。てか、あってもしない」
睦「おもしろそうじゃん。俺もそういうトコ行ったことないけど、あったらしたいー」
和「だってラブホ来てさぁ、そんな気分…てか、そんなことする気持ちの余裕がない」
翔「え、てことはカズ、ラブホだと完全にセックスしかしないてこと?」
和「えっ…いや、あの、そーだけど、だって、別に変な意味じゃないよっ」
翔「変な意味、て…」
和「だってさ、だってさ、そういうのは別にラブホじゃなくても出来んじゃん! ラブホは緊張してるから、そういうことする余裕ないのっ。翔ちゃんだって、してないじゃんっ!」
翔「だってスロットとか興味ねぇもん」


・AV見てみる
→ 和:× 睦:× 翔:○

和「だ…だってそれって、祐介と見るってことでしょ!? そんな恥ずかしいこと出来るわけないじゃんっ!」
睦「俺とは見たじゃん。てか、無理やり見せたじゃん」
翔「カズ…」
和「あれは勉強のためだもんっ! 祐介となんか見てないよ! 見ないよっ」
睦「俺も見たことない。ラブホにあるAVて、やっぱ普通に男と女のヤツなの? 俺、AV見ても、何かそんな興奮とかしないからさぁ」
翔「そうなの? 男同士のがあったら見る?」
睦「んー…亮が見たいって言ったら、見てもいい。どっちでもいい。翔ちゃんは見るんだね。真大と一緒に見んの?」
翔「うん」
和「Σ( ̄□ ̄;)!!??」
翔「だって男の子だもん。昔付き合ってた彼女とも、見てたよ」
和「( ̄□ ̄|||)!!!」


・大人のおもちゃ買う
→ 和:× 睦:× 翔:△

睦「買ったことない」
和「かかか買わないよっ、そんなの!」
翔「買ったことはある」
睦「マジで? 翔ちゃん、大人だもんね」
翔「いや、そのコメントはちょっとおかしいよ、むっちゃん」


・匂い付きコンドームの匂いを嗅ぐ
→ 和:× 睦:○ 翔:○

睦「これって、ラブホ関係あんの?」
翔「ラブホで匂い付きの買って、てことじゃないの?」
睦「ラブホで買ったヤツではないけど、匂い嗅いだことはある」
翔「同じく。てか、嗅がされた。あ、場所もラブホじゃなかった」
和「えー…嗅ぐの?」
睦「ホントにイチゴの匂いするかな、て思って、確かめた!」
和「匂い付きとか、使ったことない…。普通のでいいよ、こういうのは」


・精算方法が精算機じゃなく筒に入れるタイプのやつで、音が凄くてなんかびびった
→ 和:?? 睦:○ 翔:×

翔「今どきエアシューターて、あんまないよね」
和「俺、見たことない。どんなの?」
睦「何かカプセルみたいのが、パイプん中、シューーー!! て行くの」
和「カプセル? シュー? 何が? 何でそんなことすんの?」
翔「その中にお金入れると、パイプ通ってフロントに行くんだよ。それで精算すんの」
和「何それ、スゲェ! 知らない、俺!」
翔「最近ないよ、そんなのめったに」
和「そうなんだ…。そんなに音すごいの? ビビるくらい?」
睦「カプセル戻ってきたとき、何かガコッてすごい音した。でもさぁ、あのカプセル、シューー! てなるの、すごいよね」
翔「そう?」
睦「シューー! 俺、ボタン押す係」
翔「係(笑)? 押したいんだ、ボタン」
睦「うん」


・泡風呂にする
→ 和:× 睦:△ 翔:△

睦「カズちゃんしないの? 入浴剤とか、そういうの好きじゃん」
和「だって祐介と入んのに、恥ずかしいじゃん」
睦「でも寮のお風呂じゃ出来ないんだし、他ですることないよ?」
和「んー…そっかー。翔ちゃんは?」
翔「相手がしたいなら、してもいい。俺はあんま興味ない」
睦「してもいいけど、それよかブクブクーて空気が出るヤツがいい」


・ジャグジーON
→ 和:× 睦:○ 翔:○

翔「むっちゃんの、さっきのブクブクーて、ジャグジーのこと?」
睦「うん。言葉出て来なかった。絶対しちゃう」
翔「しちゃうねー」
和「しないー」
睦「恥ずかしいから?」
和「うん」
翔「カズ、恥ずかしがりすぎ」
和「てか、一緒にお風呂入んのも、ホントは恥ずかしいの!」


・風呂にテレビがついてると、ちょっとリッチな気分になる
→ 和:× 睦:○ 翔:×

睦「お風呂にテレビなんて、セレブじゃん! リッチ! でも見ないけど」
翔「見ないんだ(笑)」
睦「そんなの見るほど長く入ってたら、絶対のぼせる」
翔「見るときもあるけど、リッチとか思ったことはなかった。ラブホって大抵付いてね?」
和「付いてるね。見ないけど」
睦「カズちゃん、長風呂好きなのに?」
和「1人だった見るだろうけどー…」


・浴室に入ったらマット付きでなんか戸惑う
→ 和:?? 睦:?? 翔:×

睦「そういうトコ行ったことない」
和「俺も。マットって何のために?」
翔「いろんなことのために(ニヤリ)」
睦「???」
和「???」


・備品を持ち帰る
→ 和:× 睦:× 翔:×

翔「別にいらないし」
睦「うん、いらない」
和「いらないし、何かそういうの持って帰るの、セコイ感じがして恥ずかしい」


・水につけると膨らむスポンジに感動する
→ 和:× 睦:× 翔:×

和「あ、むっちゃんが初めて感動しない!」
睦「だってこんなの別に感動しないもん」
翔「うん、どうでもいい」
和「感動はないけど、便利だと思う」



●ここからは質問形式です

・セーラー服やメイド服なんかのコスチューム買ったことある?
→ 和:× 睦:× 翔:×

和「そっそんな変態くさいことしないよっ!」
睦「何でわざわざ女の子の格好のヤツ、買わなきゃいけないわけ? 買わないよ」
翔「買わないなぁ、別に」
睦「あ、でもカズちゃん、前の、女装コンテストで着たヤツは? 制服。使わないの? 制服エッチ」
和「使わないし、しないよ、そんなこと! 制服は愛菜ちゃんたちに返したもん!」
翔「(制服エッチはした…)」


・本来の目的以外での利用は?
→ 和:× 睦:× 翔:×

睦「意見が合うねー。俺たち!」
翔「んー…金払って行ってるわけだし、そりゃやっぱ、行けばヤルでしょ」
和「金払って…てか、そのためでなかったら、ラブホなんて行かないし。ただでさえラブホ恥ずかしいのに…」
睦「別にエッチはしてもしなくてもいいけど、今のところ、行ったらヤッてる」
翔「しなくてもいいんだ(笑)?」
睦「うん。あのおっきいベッドに、ポーン! てするだけで満足」


・ラブホテルを『モーテル』って言う?
→ 和:× 睦:× 翔:×

睦「言わない。聞いたこともない、そんな言葉」
翔「何か西部劇みたい」
和「言わないね。昔みたい」


・『ここに住みたい!』と思ったことは?
→ 和:× 睦:○ 翔:△

和「え、あんの!? むっちゃん」
睦「ある。だって快適じゃん。ベッド、ボーン!」
翔「ひゃはは! 何それ、むっちゃん、おもしろい! 今の、もっかいやって!」
睦「そう? ベッド、ボーン!」
翔「あはははっ!」
和「翔ちゃん、ウケすぎだし! てか、△て何?」
翔「いつもじゃないけど、いい部屋に当たったときは、住んでもいいかも! て思う」
和「住みたくはないよー…」


・今までで一番『ここは凄い!』と思ったホテルはどういうところ?

睦「結構いっつもすごい! て思ってるよ。だって何かいろいろすごいじゃん」
和「むっちゃん、結構何でも感動してるよね」
睦「えへへ」
翔「別に褒めたわけじゃないと思うけど…」
和「俺はねぇ…部屋がおっきいと、やっぱすごいなぁて思うよ。翔ちゃんは?」
翔「部屋に露天風呂が付いてるとこがあって、それはマジすげぇて思った」
和「露天!? てことは、部屋の外にお風呂があんの!?」
翔「うん。何かテラスみたいになってて、外に出られんの」
睦「外から見えちゃわないの? お風呂入ってるトコ」
翔「見えないように、一応壁はある。でも隙間から外の景色も見えたよ」
和「ふぇー…」


・『もう二度と行きたくない』と思ったホテルはどういうところ?

和「今のところ、そういうのには出くわしたことないけど、やっぱフロントに人がいるトコは行きたくない…」
睦「んー…俺も、そんな変なトコは行ったことない。基本的に俺何もしないから、どうでもいいんだけど」
翔「そんなひどいトコはないけど、1回、DVDが壊れてる部屋に当たったことがあったから、そこはもう行かない」
睦「エッチなの、見れないから?」
翔「テンション下がんない? 何か」
睦「せっかく見ようと思ってたのにねー」


・どんなホテルに行ってみたい?

翔「むっちゃんは、やっぱベッドおっきいトコがいいの?」
睦「うん。ベッド、ボーン!」
翔「ひゃはははは!」
和「いつまでそれやってんの?」
睦「カズちゃん、どういうトコがいいの?」
和「んー…やっぱフロントに人がいないトコかな」
睦「部屋の感じは? やっぱロマンチック?」
和「う…うん、まぁ…。もういいじゃん、俺のことは! 恥ずかしいっ。翔ちゃんは!?」
翔「えー、いや、いろいろ行きたいトコはあるけど……えっと、アソコと、アソコとー」
和「(リサーチ済み!?)」
睦「(やっぱ翔ちゃん、あなどれねぇ!)」


お疲れ様でした♪


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 恐らくブロガーさん自身が答えるためのバトンだとは思うんですが、私のラブホ経験について答えても仕方ないんで、彼らに答えさせてみました。
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世界はやさしい (1)


 20歳になったら、やっぱりまずはお酒でしょ。
 タバコにも興味はあったけれど、火が点いていないのを1度だけ銜えさせてもらったとき、あまりのまずさにウェッてなっちゃったので、吸わないと決めた。
 タバコなら吸うも吸わないも自分のことだけど(しかも最近では愛煙家は敬遠されがちだし)、友だちやバイト先で飲み会もあるので、お酒は飲めたほうが楽しめると思う。

 ということで、睦月は目下のところ、飲み会の席で楽しめるよう、いろいろなお酒をお試し中なのである。
 試すと言っても、何をどう試していいか分からないし、滅多やたらに買って飲むわけにもいかないので、亮と一緒に買い物に行ったときに、「これはー?」とお伺いを立てるのが常なのだが。

 ちなみに亮も、ちゃんと成人してからお酒の味を覚えたいい子だが、睦月とはこなす飲み会の数が違うせいか、自分に合うものをちゃんと把握している。
 その亮が下した判断は、「むっちゃん、あんまお酒強くないから、間違っても強いお酒は飲んじゃダメだよ? 飲み過ぎちゃダメだからね」だった。
 一口も飲めないほどの下戸ではないが、決して強くはない睦月に、最初から釘を刺したのだ。
 睦月に反論されるかなとも思ったが、缶チューハイを1本でフワフワ~と気持ちよく酔いが回ってしまったのは間違いない事実で、強くは否定されなかった。

「でもビールは苦いから、あんまし飲みたくないのー」
「甘いの頼みなよ、甘いの」

 デートの帰りに入った店で、ドリンクメニューを覗き込みながら、睦月はウンウン唸っている(ちなみに睦月がアルコールを飲みたがった時点で、食後の行き先はホテルでなく寮だと亮は判断した)。

「どれが甘いのー?」
「カクテルとか、サワーとかじゃない? 睦月、前にカルアミルク飲んで、おいしーて言ってなかった?」
「あー…おいしかったかも。でも今日は他のに挑戦したい気分ー」
「そうなの?」

 そう言って睦月は、一生懸命にメニューを眺めているが、残念ながら亮は、どちらかと言うと甘いお酒は苦手なほうなので、なかなか睦月の力にはなってあげられない。

「カシスソーダは? 睦月、炭酸好きでしょ?」
「んー…じゃあそれにする」

 結局のところよく分からないし、さっさと注文したいから、睦月は言われるがまま、それに決めた。
 お口に合わなかったら、亮に飲んでもらおう。

「亮、お酒詳しー」
「そうでもないよ。超一般的なのしか知らないし」

 亮に適当に食べるものを注文してもらった後、睦月は足をプラプラさせながら、再びドリンクメニューを眺める。

「でも俺、何も分かんない。だってさ、こういうふうに一緒に飲むの、亮かカズちゃんくらいだし、あとバイトかゼミの飲み会とかだもん」
「祐介と2人で飲まねぇの?」
「飲まない! だって酔っ払ったら、次の日怒られそうだもん」

 祐介の場合、単に過保護なだけでなく、ちゃんとしていないときは叱る、まさに保護者のような存在なので、睦月は今までの経験上、祐介の前では迂闊に酔っ払えないと分かっているらしい。
 いつものメンバーで飲んだときも、確かに睦月は甘いお酒を1杯飲んだだけで、あとはずっとコーラだった。
 普段だったら、あれも飲んでみたい、これも飲んでみたいと、いろいろ頼みたがるくせに、一体どうしたのかと思っていたが、祐介がいたからだったのか。



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世界はやさしい (2)


「祐介って、飲んだらどうなんだろ」
「分かんなーい。今度、酔わせちゃう?」
「その後が怖そうだけどな」

 いたずらを企む子どもみたいな顔でニヤリと笑った睦月に、亮は苦笑しながら返す。
 祐介がアルコールに強いかはよく分からないが、人前で飲むときは自制しているようで、酒を断りはしないが、ベロベロに酔っ払ったところは見たことがない。
 酔っ払ってタガが外れた祐介も見てみたい気はするが、後からこっぴどく叱られそうだから、やめておくのが無難だろう。

 睦月がドリンクメニューを見ながら、これは? これは? と亮にあれこれ尋ねているうち、注文していたアルコールが運ばれてきた。

「これ何だっけ? 俺、何頼んだんだっけ?」
「カシスソーダでしょ。飲めそう?」

 睦月は受け取ったグラスを鼻先に持っていき、クンクンとにおいを嗅ぎ始める。
 目新しいものに興味を持ち始めた小さな子どものような睦月に、亮は思わず笑ってしまう。
 そういえば子どものころ、何でもにおいを嗅ぐ子、いたっけ。

「いただきまーす」

 亮の生ビールのグラスと合わせて乾杯をしてから、睦月は神妙な顔でグラスに口を付けた。

「どう? おいしい?」
「…ん。何かさぁ、何かさぁ、ブドウの、炭酸のヤツみたい」
「ジュースみたいてこと? お酒なんだから、気を付けて飲んでね、むっちゃん」

 睦月に限ったことではないが、特にカクテル何かの口当たりのいいお酒は、うっかりたくさん飲めてしまうから、気を付けないといけない。
 とくに睦月は、その『うっかり』が多そうだから。

「今度ね、金曜日、バイトの飲み会があんの。辞めちゃう人がいて、その人のお別れ会」
「ふぅん? でもコンビニて24時間やってんじゃん? 全員参加できんの?」
「その人と一緒のシフトで働いてた人が出れる日にち、設定したんだってー。それ以外は、出れる人はご参加ください、て。カズちゃんが出るて言うから、俺も出ようかと思って」

 相変わらず人見知りな睦月は、同じコンビニで働く人でも、自分と同じ勤務時間で働く人か、シフトの交代で引き継ぐ人としか、あまり打ち解けていない。
 和衣の都合が悪いなら、申し訳ないが睦月も欠席しようと思っていたのに、こういうところで義理堅い和衣は、ちゃんと出席すると言うから、睦月も出ることに決めた。

「これおいしいから、これにしようかな」

 1杯飲んだところで、すでにほんのりと頬を赤らめている睦月は、送別会に備えて自分でも飲めるお酒を見つけておきたいらしい。
 バイトを始めたときは未成年だったから、歓迎会もノンアルコールで通したが、店長をはじめ出席者の飲みっぷりに圧倒された記憶があるので、お酒が飲めるようになった今だと、一体どうなってしまうのか、若干の心配はあるのだが。

「何にしても、飲み過ぎないようにね」

 やっぱり別のにしようかなーとメニューを覗き込んでいる睦月に、その声が届いたのかどうか、亮は一抹の不安を覚えつつ店員を呼んだ。



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世界はやさしい (3)


 最近の当たらない天気予報よりも見事に、亮の不安が的中した金曜日。
 フラフラと覚束ない足取りで歩く睦月を、和衣は懸命に支えていた。

「むっちゃん、そっち車道だから危ないってば!」
「んー」

 分かっているのかいないのか、睦月は和衣の必死の声に返事はするものの、全然まっすぐに歩けていない。

 バイト先での送別会に参加した睦月は、先日亮と一緒に飲んだときに教えてもらった甘めのカクテルを飲んでいたのだが、やはりつい飲み過ぎてしまった。
 しかも酒豪揃いのみんなが、調子に乗って睦月にお酒を勧めるものだから、結局睦月は、飲むつもりのないものまで飲んでしまったという始末。
 すっかり酩酊してしまった睦月を放ってはおけなくて、和衣は二次会のお誘いを断って、睦月を連れて寮へと向かっていた。

「むっちゃん、危ない!」

 ちょっと目を離すと、ふらふら~と車道のほうに行ってしまうので(さっきなんて、停めてあった自転車をなぎ倒し掛けた)、和衣は仕方なく睦月の手を取る。
 人前では祐介とだって手を繋いだことがないのに、どうしてそれより先に、睦月と繋ぐはめになってしまったのだろう、なんて、ちょっとだけ切ない気持になる。

「カズちゃ~ん」
「なぁに、むっちゃん。ちょっ、まっすぐ歩いて!」
「カズちゃん、カズちゃん、ねぇねぇ、亮がいるー」
「はぁ!?」

 あぁもうこれだから、酔っ払いの戯言には付き合っていられない、と、自分だって酔っ払っているくせに、和衣はそんなことを思う。
 こんなところに亮がいるはずないのに。
 会いたくなっちゃったのかな。

「亮ー」
「ちょっ、むっちゃん!」

 睦月がいきなり、和衣と繋いでいるのとは反対の手をブンブンと振り出すから、和衣は慌ててその手を押さえる。
 人通りの多い通りだが、いや、そんな通りだからこそ、睦月は目立ってしまう。

「むっちゃん、ダメ!」
「んー、やぁー」

 押さえられてジタバタする睦月に気を取られていて、和衣は少しも気付かなかった。
 向こうから近付いてくる数人の集団の中に、本当に亮が交じっていたなんて。

「え、カズ? 睦月?」
「えっ? えっ? 亮!?」

 声を掛けられて、和衣は驚いて振り返った。
 本当に亮がいた。

「ねっ、亮いたでしょー?」
「あ、うん」

 ふにゃふにゃになりながらも、睦月は自分の言い分が間違っていなかったと、満面の笑みになる。
 亮は一緒にいた仲間に、「一緒の大学の…」と和衣たちのことを説明している。

(手繋いでるの、変に思われるかな…)

 和衣の知らない人たち、亮のバイト先の仲間なのだろうか、初対面なのに、男の子2人で手を繋いでいるところを見られてしまって、何だかちょっと気まずい。
 いや、百歩譲って、初めて会った人たちには、恥ずかしいとか気まずいで済むけれど、亮にこんなところを見られたのって、もしかしたらまずいんじゃ…?
 睦月が酔っ払って危ないから、と言ったほうがいいのだろうか。



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世界はやさしい (4)


「りょーおくん! 誰そのかわいい子ー!」

 和衣がどうしよう…と戸惑っていると、やたら元気のいい声がして、いきなり背後から女の子が亮に飛び付き腕を組んだ。
 勢いで亮の体が少し前につんのめる。

「ちょっ…、だからおんなじ大学の…」

 勝手に腕を組まれた亮は、やんわりとその腕を解こうとしたが、酔っ払ってテンションの高くなっている女の子は、そう簡単に離してくれない。
 周囲もそんな亮たちを、勝手に盛り上げている。

「よろしく~」

 女の子は自己紹介をしながら和衣たちに深く頭を下げたが(お酒が回っていて、思うように体が動かないだけかもしれない)、酔っ払っても人見知り全開の睦月は、少しだけ会釈をして、和衣の後ろに隠れてしまった。

「えと…バイトの、送別会?」
「…終わった。二次会あったけど、むっちゃん酔っ払っちゃったから、出ないで帰んの」

 女の子に腕を組まれたままの亮に尋ねられ、和衣は少しだけ素っ気なく答える。
 和衣は、仕方なくだが睦月と手を繋いでしまって、亮に申し訳ない気持ちでいたのに、亮は睦月の前で女の子に腕を組まれても、あんまり気にしていないようにも見えるから。

「じゃ、俺も帰る…」
「えぇー、ダメェ~~~、亮くん、帰っちゃヤダ~」

 帰る素振りを見せた亮に、不満の声を露わにしたのは、腕を組んでいるのとは別の女の子だった。
 他の男の子も、まだ帰るなよ~、と亮を引き止めている。

「大丈夫、ちゃんと連れて帰るから。亮、まだ飲んできなよ」
「え、ちょっ…」

 和衣の言葉に、亮でなく周りが盛り上がってしまい、亮が戸惑っている隙に、和衣は睦月を連れてその場を去った。



*****

 亮に対して、もしかしたらちょっと態度が悪かったかもしれない。
 それに、亮が一緒に帰ってくれるなら、こんなに大変な思いをせずに、睦月を連れて帰って来れたかもしれない。
 けれどアルコールの回った頭では、それ以上は考えることも出来なくて、和衣はしょうがないんだと無理やり自分を納得させて、寮に戻った。

「むっちゃん、鍵ー」
「んー…カバン中…」

 高かった睦月のテンションも収まり、今ではいつ寝てもおかしくない状態。それでも睦月は、何とか鍵のありかを和衣に伝えた。
 亮が先に帰って来ているなんて、そんなことはやはりなくて、部屋の中は暗く静まり返っている。

「…っしょ」

 和衣は睦月をベッドに下ろすと、大きく息をついた。



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世界はやさしい (5)


「むっちゃん、お水飲むー?」
「んー…いらな…」
「飲んだほうがいいよ。冷蔵庫開けていい?」

 睦月は「んー…」と、いいのかダメなのかよく分からない声を出したが、和衣は構わず冷蔵庫を開け、未開封のミネラルウォーターを見つけると、勝手に取り出した。
 亮のものだとしても、ミネラルウォーターの1本くらいで怒りはしないだろうから。

「はい」
「…ん」

 キャップを開けて渡してやると、睦月は素直にそれを受け取って口を付けた。
 何だか頭がフワフワして、和衣はベッドの傍らの床に座ると、ベッドの縁に顔を乗せる。

(何か…眠い…)

 寝るなら自分の部屋に戻らなければ…と思うが、酔っ払った睦月を1人でここに残しておけないと心配する気持ちもあって、頭の中が纏まらない。
 睦月をベッドに乗せただけで、和衣自身もまだそのままの格好だけど、寮に帰ってきたことで少しホッとして気が抜けたのか、和衣も急に酔いが回ってしまったようだ。
 睦月が先にすごく酔っ払ってしまったので、和衣は自分までも酔っ払えないとずっと気を張っていたが、実のところ、和衣も結構な量のお酒を飲んでいたのだ。

(むっちゃん、着替えさせないと…)

 ペットボトルを和衣に返したところで、睦月からはすぐに寝息が聞こえて来た。きっとこのまま朝まで起きないだろう。
 しかし睦月の着替えのありかは分からないし、探す気力もないし、というか、動きたくない。

(…むっちゃんは、気になんないのかな…。亮が女の子に腕組まれたの)

 和衣の頭の中に、先ほどの光景が蘇る。
 女の子も酔っ払ってそうしただけで、それ以上の他意がないのは分かるし、それを無理やり引き剥がすのも何だか大人げないから、亮がそうしなかったのも分かる。
 けれど、和衣は頭で分かっていても、感情のほうが言うことを聞いてくれない。
 だってもしあれが祐介で、変な意味がないにしても、女の子にあんなふうに腕を組まれたら、和衣は嫉妬でどうにかなりそうだ。
 でも。

(亮……俺がむっちゃんと手繋いでたの、どー思ったんだろ…)

 亮は確かに女の子に腕を組まれていたけれど、和衣だって睦月と手を繋いでいた。和衣がこんなふうに思ったみたいに、もしかしたら亮だって嫌な気持ちになっていたかも。
 和衣は自分が嫉妬深い性格であるのを知っているけれど、それをどこまで人に当て嵌めていいかが分からない。
 睦月は、バレンタインに亮が女の子からチョコを貰っても全然気にしていなかったし、翔真も意外とそんなタチだ。
 じゃあ、亮は?

(亮は気にすんのかな、しないかな。俺だったら何かヤダな。祐介がむっちゃんと手繋いでたら、むっちゃんが酔っ払ってるからでも、…でも俺、繋いじゃった。亮、ヤダったかな…)

 先ほどから、同じことばかりがグルグルと頭の中を回る。
 結局こんなことに結論などなくて、人によって捉え方も違うのは分かっているけれど、和衣の酔いが回った頭は、どうしても結論を導き出そうとがんばる。



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世界はやさしい (6)


 和衣ボンヤリと閉じたままのドアを見つめるが、あれからどのくらい時間が経ったのか、亮の帰ってくる気配はない。
 和衣があんなことを言ったから、遅くまで楽しんでくるのだろうか。それとも、帰りたくても他の仲間が帰してくれないのかも。

(亮も、むっちゃん酔っ払ってたから、きっと心配だろうな。でも俺…)

 亮にすげない対応をしてしまったことに、今さらながら後悔する。
 和衣は思いのほか、考えなしに何かしてしまうことが多いが、今日は酔っ払っていたせいもあって、よく考えればとても理不尽なことをしてしまった。

 亮に、電話してみようか。
 やっぱり帰って来て、て。

(でも亮、怒ってたらどうしよう…)

 こんなに酔っ払ってしまったけど、睦月は何も悪くないから、睦月のために帰って来てと言えば、許してくれるだろうか。
 和衣のことは許さなくてもいいから、睦月のことは嫌いにならないでほしい。

 お酒を飲んでいるときも、面倒くさかったけど酔っ払った睦月を連れて帰っているときもずっと楽しかったのに、何だか急に泣きたいような気分になってしまった。
 それでも和衣は、ダメもとで亮に電話をしてみようと、投げ出していたカバンから携帯電話を取り出した。
 履歴の中から見つけた亮の名前にホッとしながら通話ボタンを押せば、耳元に届く呼び出し音と――――聞き覚えのある着信音。

「えっ?」

 ほぼ同時に、2種類の音がして、和衣はわけが分からず視線だけを彷徨わせた(本当は辺りをきょろきょろしたかったのだが、思うように体が動かなかった)。
 それほど大きな音ではないが、着信音はドアの向こうから聞こえてくる。そのドアの向こうでは、携帯電話の着信音だけではない、何やらガサガサと気配。
 和衣は携帯電話を耳に当てたまま、ジッとドアのほうを見つめた。

(誰…?)

 和衣の心臓は、バカみたいにうるさく高鳴る。
 睦月はもう熟睡してしまっているし、もし何かヤバい人だったら、和衣が1人でどうにかしないと。

 カチャリ――――ドアノブが回る。ドアが開く。

「ゃ…」
「え、お前ここにいたの?」
「りょ、う…」

 恐怖のあまり、和衣は思わず声を漏らしたが、現れたのは、着信音が鳴りっ放しの携帯電話を持った亮だった。

 亮は部屋の中にいた和衣に驚きつつも、電話の主がそれ以上に驚いた顔で自分のほうを見つめているので、何となく事情を察して電話を切った。

「亮…お帰り…」
「え、あ、うん」

 街で偶然会ったとき、酔った睦月を連れて帰ることに使命感を燃やしていたから、どこにも寄らず寮に戻ったとは思っていたが、まさか和衣もこの部屋にいるとは思わなかったので、少しビックリした。



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世界はやさしい (7)


「むっちゃん、1人にしたらダメかな、て思ったから…。亮来たから、俺、部屋戻るね」

 和衣は無造作に携帯電話をカバンに突っ込むと、壁に掴まって、フラフラの体を支えながら立ち上がった。
 寮の同じ階。和衣の部屋はこの隣の隣だから、帰れないなんてことはないはず。
 今は何となく亮と一緒にいるのは気まずいし、亮が帰って来たなら睦月のことを心配する必要もないから、もう帰ろう。そして寝てしまおう。
 亮には、明日ちゃんと謝る。

「おいカズ」

 和衣が立ち上がったところで、亮に呼び止められた。
 やはり怒っているのかもしれない。だって、和衣のあの態度はよくなかった。自分でもそう思う。
 でも今はフラフラだから、明日にしてほしい。

「お前も危ねぇから、今日はここで寝てけよ」
「え…?」

 しかし亮から掛けられた言葉は、和衣が全然予想していなかったもので、一体何を言われたのか、和衣は一瞬では理解できなかった。
 ここで寝ていけ? 危ないから?
 亮は、和衣のことまで心配してくれているのだろうか。

「そんなにフラフラなのに、どうやって部屋まで戻んだよ」
「部屋…すぐ、そこ…」
「なら歩いてみろよ、1人で」
「…」

 怒っているというふうにも、呆れているというふうにも取れる、亮の声色。
 小さいころからずっと一緒で、声だけで機嫌なんて分かるくらいなのに、でも今は亮の気持ち、全然分からない。やっぱり怒っていて、意地悪でそう言ったのかな。
 和衣は掴まっていた壁から手を離して、1歩を踏み出そうとしたけれど、クラッとしてしまって、うまくいかない。

「カズ」
「も、帰…――――わっぷ…」

 がんばって歩こうとしていたところに何かが投げ付けられて、驚いたのと酔って頼りなくなった足元のせいで、和衣はその場にへたり込んでしまった。
 また意地悪! と思ったのに、投げられたのは亮のジャージ。
 わけが分からなくて、和衣は亮に視線を向けた。

「さっさと着替えて寝ろ、酔っ払い」

 和衣が思っている以上に、亮は、和衣が酔っ払ってフラフラなことに気が付いていたから、帰るとグズっている和衣に無理を言ってみたが、どうせ歩けないだろうことは最初から分かっていたし、1人で部屋に帰らせるつもりもなかった。

「頼むから、お前は1人で着替えろよ?」

 和衣がジャージを持ったままボーとしているうちに、亮はさっさと部屋着に着替えて、ベッドで寝ている睦月を着替えさせようとしていた。
 意識のない人間の服を着替えさせるのは、結構と重労働なのだ。
 これで和衣が着替えないまま寝てしまったら、もう本当に手が負えない。

「亮ー…」

 同じ位置にペタンと座り込んだ和衣は、パシパシと何度か瞬きをした後、亮の言わんとすることが分かり、今度こそ素直にモソモソと着替え始めた。



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世界はやさしい (8)


「俺さぁ…亮が女の子に腕組まれて、むっちゃんはそういうの、あんま気にしない人だけど…、もしあれが祐介で、そしたら俺、めっちゃヤダけど、でも俺もむっちゃんと手…」

 何とか上下ジャージに着替えたところで、和衣は再びベッドの上に頭だけ乗せた。
 睦月の服を着せている亮が、和衣の話をちゃんと聞いてくれているのか分からないが、その様子をぼんやりと眺めながら、和衣は言葉を続ける。

「むっちゃんがね、酔っ払っちゃって危なかったから、手繋いで……俺、祐介ともそんな繋いだこと、人前で…」

 何とか睦月を着替えさせ終えて、亮は甲斐甲斐しくふとんまで掛けてやる。
 …と、ちょうど和衣がベッドに頭を乗せていたものだから、思い切り和衣の頭に被さってしまった。

「ぅんー…!」
「何してんだ、酔っ払い」
「亮のバカー」

 和衣はぐすりながらも、ふとんの中から頭を出した。

「ねぇ亮、女の子…」
「あれは友だち」
「別に…」

 そういうことを聞きたいんじゃなくて、あれを浮気だと言いたいわけでもないし、そうだとしてもそれは亮と睦月の問題で、和衣の出る幕ではない。
 でも、他意がないにしても、恋人が自分以外の人と手を繋いだり腕を組んだりなんて、和衣は考えただけでも嫌だ。

「でも俺も、むっちゃんと手…繋いじゃった…」
「睦月が酔っ払ってたからだろ? 分かってるから」
「でも、でもでも!」
「何だよ」

 何だと問われて、しかし和衣は何と言葉を返していいか分からない。
 亮は和衣の恋人ではないけれど、女の子に腕を組まれている亮を見て、何だか嫌な気持ちになって、でも自分は睦月と手を繋いでいて。
 先ほどから延々と繰り返している、和衣の思考ループ。

「つーか、お前、それ…」

 グズるように和衣は、手の中のものをクシャクシャに丸めているが、よく見ればそれは、亮が和衣に渡したTシャツだ。
 和衣はすでにジャージを上下着込んでいるのに、Tシャツを手に持っているということは、直にジャージを着たということか。だって、和衣がもともと着ていた服は、全部投げ出してある。
 ちゃんと着ろと言ったところで、この酔っ払いをどうにか出来そうもないので、亮は溜め息混じりにTシャツを取り返して、クロゼットに放った。

「カズ、ホラ水。飲みな?」
「ん…これ、むっちゃんに…」
「睦月はもう寝たから」

 先ほど睦月に飲ませた残りのペットボトルを渡される。
 睦月には水を飲んだほうがいいと言った和衣だが、自分では一口も飲んでいなかったのだ。

「亮ー…」
「もう寝ようぜ? 明日また聞いてやるから」
「んー…」

 普段は酔っ払っても絡まない和衣が、今日に限ってこんなにしつこいのは、単に絡みたいのではなくて、やはり今日のことをいろいろ気にしているのだろ。
 けれど酔っ払い相手に何か言っても無駄だし、亮ももう眠いし、話なら明日聞いてやるからと和衣を説得する。



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世界はやさしい (9)


「カズ、ベッドまで歩けるか?」
「…え?」
「俺のベッド向こうだから。ホラ、立てよ」

 別に睦月のベッドで寝かせてもいいけれど、睦月は狭いベッドいっぱいに、文字どおり大の字になって寝ているから、それをまた動かすのは面倒くさい。
 まさかこの年になって、和衣と1つのベッドに寝るはめになるとは思ってもみなかったが、この際だから仕方がない。

「俺ここでいー…」
「アホか、早くしろ」

 ズルズルと床に倒れて、そのまま寝てしまいそうになっている和衣を立たせて、亮は自分のベッドへと和衣を放った。
 別に嫌で乱暴に扱っているわけではない。
 いくら和衣が小柄で華奢でも、女の子と違って骨格のしっかりした男子だから、完全に力を抜いて体を預けられると結構重たいので、床に倒れないうちにベッドに乗せたのだ。

「ん、んー…」

 酔っ払っているせいか、和衣はちょっとばかし乱暴な扱いを受けても、天地が逆転したのも分からないようで、何も文句を言わずにベッドに身を沈めている。

「亮ー…」
「あ?」

 部屋の明かりを消して亮がベッドに潜り込めば、壁際に身を寄せていた和衣が、目を閉じたまま亮を呼んだ。
 まだ寝てなかったのかと、亮は面倒くさそうに返事をした。

「昔さぁ、亮とー、ショウちゃんとー、一緒に寝たよねー…」

 幼馴染みの亮と和衣と翔真は、子どものころからお互いの家を行き来していて、しょっちゅう誰かの家に泊まっては、3人一緒に寝ていた。
 さすがに中学生くらいからは別々だったが、小さいころは同じふとんに並んで寝ていたし、そういうときは大抵、和衣が寂しがって真ん中になることが殆どだった。
 きっとあのころなら、このベッドだって十分な大きさだろうけど、今は2人で並んだだけで、もう窮屈になってしまう。

「久し振りに、亮と寝…」

 隣で和衣がモゾリと動いて、ふとんの端に抱き付いたが、寝苦しいのか、小さな声でウンウン唸っている。
 仕方がないから、もう1度水を飲ませようか。確か冷蔵庫にもう1本水が……と思ったところで、和衣が亮を呼んだ。

「…亮、むっちゃんと手、繋いじゃって、ゴメンね…」
「だから別に、」
「ん…」
「…………、カズ? …………寝てる…」

 ずっとがんばって亮に話し掛けていた和衣だったが、とうとう睡魔に耐え切れなくなったのか、ふとんに抱き付いたまま眠りに落ちてしまっていた。

「ったく…」

 別に謝ることはないと、何度言ったら和衣には伝わるのだろうか。
 酔っ払った睦月を心配して手を繋いだことに、亮は何か言うつもりはないし、亮だって一緒に飲んでいた友だちがそんな状態になれば、手は繋がなくても、腕ぐらいは貸す。
 どちらかと言えば、酔った女の子に腕を組まれた亮のほうが、責められても仕方がないと思ったが、和衣はあまり何も言って来なかった。

(ま、相当気にはしてたみたいだけど…)

 分かりやすい和衣の性格は、酒が回っても相変わらずで、きっとあそこで亮と会って、いろいろ考えてしまったに違いない。

(はぁ~面倒くさっ…)

 けれど、面倒くさくても嫌いになれないのが、幼馴染みであり、親友だ。
 亮は、眉を寄せて眠っている和衣の隣で目を閉じた。



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世界はやさしい (10)


 翌朝、珍しく(本っっっ当に珍しく)、睦月が誰にも起こされることなく目を覚ました。

「…りょう」

 そのとき亮はすでに起きていて、何となく雑誌を眺めていたが、睦月に名前を呼ばれて、それが特別大きな声だったとか、そういうことでもないのに、ビックリして顔を上げた。
 だって、睦月が誰かに起こされることなく目を覚ますなんて、そんなことあり得ないと、亮は本気で思っていたから。

「むっちゃん、起きてたの?」
「…ん」

 起きたとは言っても、睦月はただ目を開けているだけで、ベッドにうつ伏せになった状態で枕に横顔を押し付けて、眠そうな顔で亮のことを見ていた。

「具合は? 悪くない? 気持ち悪いとか頭痛いとか」
「…………、ない、けど…、……」

 少しも体勢を変えないまま、睦月がボソボソと答える。

「ん? 何?」
「何か…、目がもしょもしょする…」

 何だかよく分からない言葉で今の状態を説明する睦月に、亮は「何それ」と眉を寄せながらも、ベッドのそばに行って、起き上がろうとする睦月を手伝ってやった。
 けれど、もそりと起き上がった睦月は、ベッドの上にペタンと座ったまま、目をゴシゴシしている。まだ寝惚けているのかもしれない。

「むっちゃん?」
「んー…」
「ちょっそんなに目擦っちゃダメだって」

 起きたはいいけれど全然目が開かないのか(睦月の言うところの、『もしょもしょする』状態なのだろう)、不機嫌そうな唸り声を上げながら、しつこく両目を擦っている。
 慌てて亮が止めに入れば、睦月は手を止めて亮を見た。

「亮ー…」
「むっちゃん、具合は? 悪くないの」
「…ないの」

 気持ち悪いとか、具合が悪いとかいう以前に、まだ完全には覚醒していないらしく、睦月の頭はフラフラと舟を漕いだみたくなっている。

「起きる?」
「…起きる」
「ご飯は?」
「…食べる。…いらない」
「どっち」

 普段の寝起きよりもずっと低いテンションで受け答えする睦月に、亮は苦笑しつつ、ミネラルウォーターのペットボトルを渡す。
 気分が悪くないのだとしても、昨夜はだいぶアルコールを摂取したようだし、やはり飲ませておいたほうがいいかな、と思って。

「…………」
「ぅん?」
「カズちゃんがいる」

 睦月が素直に、渡されたペットボトルに口を付けていると、亮のベッドで丸くなっている和衣を発見した。



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世界はやさしい (11)


「昨日、カズがここまで連れて来てくれたんだよ。覚えてない?」
「…………、カズちゃんと一緒に帰った記憶はある。でも、ここまで来た覚えがない」
「帰る途中で俺に会ったのは?」
「何となく覚えてる」

 あぁ、うん。そう言えば和衣と一緒に帰っている途中、亮に会ったっけ。
 でも次に気付いたときには、自分のベッドで目を覚ました状態……というか、それは今だ。

「俺、いっぱい飲んだのかな?」
「分かんないけど……記憶なくすくらいなんだから、結構飲んだんじゃない?」

 一緒にいたわけではないから、実際の飲酒量は分からないが、昨日会ったときに見た限り、睦月は相当酔っ払っていたから、恐らく今まで亮と一緒に飲んだときよりは、飲んでいるのだろう。

「…………、…お風呂行ってくる…」
「いいけど、大丈夫?」

 昨日、帰って来てそのまま寝てしまっているから、睦月が風呂に行きたがる気持ちは分かるが、具合が悪いとか、まだアルコールが抜け切れていないとかだったら、風呂に行かせるのは、ちょっと危ない気がする。
 一緒に行ってもいいけれど、亮は睦月が起きる前に、もうシャワーをして来てしまったのだ。
 とりあえず付いて行って、脱衣所のところで待っていようか、そこまで過保護にする必要もないか。

「だいじょーぶ。カズちゃんも連れてこう」
「カズ起こすの? 起きるか?」

 空になったペットボトルを亮に返して、睦月は、うつ伏せにふとんを抱え込んで寝ている(果たしてその体勢は苦しくないのだろうか)和衣のもとに行く。

「カズちゃーん、お風呂ー」
「んぅー…」

 亮は、起きないだろうなぁ、と思っていたが、睦月に呼び掛けられた和衣は、返事なのか、単なる唸り声なのか、小さく声を漏らした。
 しかし、いつもはそれほど寝起きの悪くないのに、今日ばかりはすんなり目が開かないのか、睦月の呼び掛けに返事はするものの、なかなか起きようとしない。
 そんな和衣に痺れを切らした睦月は、とうとう和衣の背中に乗っかってしまった。

「カズちゃん、お風呂行こうよぉ」
「おふ、ろ…? うぅ…おも…」

 やはり上に乗った睦月が重いのだろう、目は開けていないが、和衣はキュウと眉を寄せている。

「カズちゃーん」
「ぅん…? むっちゃ、ん…?」

 そろそろ上から睦月を退かしてやったほうがいいだろうか、と亮が思ったところで、和衣が重たいまぶたを少し開けた。

「カズちゃん、起きた?」
「ん…」

 上に乗ったままの睦月に問われ、働かない頭のまま、和衣は素直に頷く。
 どうして自分の背中に睦月が乗っているのかなんて、全然分かっていないだろうし、もしかしたら寝惚けているせいで、不思議にも思っていないかもしれない。



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世界はやさしい (12)


「睦月、退いてあげなって」
「ぅんー」

 和衣自身が何も言わないから放っておけばいいのかもしれないけど、いい加減睦月を退かさないと和衣がかわいそうだと思い、亮は睦月を抱き上げて、その上から退かしてやった。

「ぅー…」

 和衣から離されても睦月がしつこく名前を呼んでいたら、和衣はようやく目をこすりながら上体を起こした。

「むっちゃん…? ………………、え、亮?」

 ずっと睦月に呼び掛けられていたのに、目を開けた和衣の視線の先にいたのは、なぜか亮だった。
 睦月に起こされていると思ったのは、夢だったのだろうか、だとしてもなぜ亮が?

「え? あれ?」

 起き上がって目をこすっていた和衣がキョトキョトしていたら、睦月は亮の足元、床にペタンと座っていた(亮に手を離された後、自分で立つ気がなかったのだ)。

「カズちゃん、おはよ」
「え? うん、おはよ…。…………、え?」

 睦月の挨拶に返事をして、亮を見て、部屋の中をグルリと見回して、それでも何だかよく分からなくて、和衣は首を傾げた。

「ここ……亮の部屋?」
「気付くの遅っ」

 呆れたように亮に突っ込まれても、全然頭が働かない。
 でもここは間違いなく亮と睦月の部屋で、和衣が寝ていたのは亮のベッドだ。
 そう言えば昨晩、酔っ払った睦月を連れて寮まで帰って来た後、和衣ももう動けなくなってしまって、結局ここで一晩を過ごしたんだった。

「カズちゃん、お風呂行こ?」
「お、ふ…ろ?」

 まだ頭がしっかりしていないのか、和衣は目をこすったり、頭をゆるゆる振ったりしている。

「お風呂入って、それからご飯食べるの」

 睦月はそう言って、どうでもいい今日のスケジュールを発表したが、風呂に行くと言っているわりには何の支度もしていないし、第一、立ち上がろうという気すら見えないのだが。

「……、むっちゃん、ホントお風呂行くの?」
「行くよ」

 和衣がもう1度聞き直せば、睦月は亮の手に掴まりながら、もそもそと立ち上がった。

「だからカズちゃんも行くの」
「うん…」

 和衣も風呂には行きたいし、睦月の誘いを断るつもりもないが、そういえば昨晩、帰って来た亮に散々絡んだような気もするし、いろいろ世話を掛けたような気もするから、謝りたい…。
 でも何となく睦月がいると恥ずかしくて、チラリと亮に目を遣ると、ちょうど振り返った亮と目が合った。



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世界はやさしい (13)


「あのっ…昨日ゴメン…」

 着替えを出そうとクロゼットに頭を突っ込んでいる睦月に気付かれないよう、和衣が小さな声で謝ると、亮は少し驚いたように眉を上げた。

「カズちゃーん」

 和衣が続きを話そうと口を開き掛けたのに、パンツ(もちろん下着のほう)を手にした睦月が和衣を呼んだ。

「あ、うん…。あの、亮、後で…」

 二日酔いがどうとかと言う以前に、まだ寝起きの睦月は、それほど機嫌がよくないようで、なかなか風呂に行く支度をしてくれない和衣に、焦れたような声を上げる。
 これ以上は睦月を待たせられないと、和衣は亮に謝ると急いで部屋を出た。
 ここは亮と睦月の部屋だから、和衣が風呂に行くために支度するには、いったん自分の部屋に戻らなければならないのだ。

 部屋に戻って着替えを用意していたら、自分が着ているのが亮のジャージだということに気が付いた。
 しかも、慌てて出てきてしまったから、昨日着ていた服も、カバンも、みんな置いて来てしまっていた。

(後で取りに行かなきゃ…)

 どうせ風呂に行くのだから、携帯電話も財布も必要ない。
 今はとりあえず早く用意して、睦月の機嫌をこれ以上損ねないことが先決だ。

「ゴメンむっちゃん、お待たせ」

 和衣が急いで部屋を出ると、睦月がパンツ(何度も言うが、下着のほう)とタオルだけを持って立っていた。
 どうやら着替えを持っていくのも面倒くさかったらしく、部屋で着替えてきたようだ。
 それにしても、ここが男子しかいない寮で、一緒に風呂に行くのも和衣だからいいけれど、せめてそのタオルで持っているパンツを隠せばいいのに。

「あ。昨日カズちゃんが連れて帰って来てくれたんでしょ? 俺のこと。ありがと」
「んーん。むっちゃん、大丈夫? 二日酔いとかなってない?」
「へーきだけど、眠い。お酒飲んだ次の日は、こんな眠くなんの? 俺、今まで1回もそんなことないよ?」
「いっぱい飲んだからじゃない? 俺も眠い」

 2人してあくびをしながら、寮の風呂場に辿り着いた。
 今まで使える時間の決まっていた風呂場も、入寮者の要望から、シャワーだけならいつでも使えるようになったのだが、2人が時間外に使うのは今日が初めてだった。
 本当にシャワー使えるのかな? と、自分たち以外のいない風呂場で、和衣は念のため、シャワーのお湯が出るか、服のまま確認しに行く。
 素っ裸になった後、やっぱりお湯が出なかったら、すごく間抜けだから。

「…カズちゃん、服のまんま何してんの?」

 ちゃんとお湯が出たことを確認して、和衣が脱衣場に戻ると、もう全部服を脱ぎ終えた睦月が訝しむように和衣を見ていた。

「ホントにお湯が出るか、確かめてたの!」
「出るでしょ、そりゃ」
「念のための確認だもん。むっちゃん、待ってよ」

 さっさと風呂場に向かおうとする睦月を引き止めて、和衣は着ていたジャージの前ファスナーを下ろし…………そして「ギャッ」と悲鳴を上げた。



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