恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2011年06月

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もうさようならの時間 (9)


「…でも、それでも言ってほしかったよ、やっぱ」
「亮、」
「やっぱり睦月に隠し事されんのはヤダし、最初はもしかしたら反対するかもだけど、睦月がそこまで思ってんなら、納得すると思うだよね。俺だけじゃなくて、カズとか祐介とかも」
「…」

 …それは、和衣にも言われた言葉だった。
 実は和衣は、もっと前から、睦月の行動に気が付いていて、最初こそ危ないからと反対したのだが、睦月の気持ちが動かないことを知ると、ならばせめて亮にちゃんと話したほうがいいと言っていたのだ。
 大したことじゃないとしても、やっぱり隠し事はよくないよ、て。ワンちゃんの散歩、楽しいことしてるけど、でも何か後ろめたくない? て。

 それは確かにそのとおりで、散歩を終えて寮に帰って来るときは、もしもう亮が帰っていたらどうしよう…と、変な不安を覚え、そして後ろ暗い気持ちになっていた。

「カズ、気付いてたんだ…」
「…ん。前にショウちゃんに、学校のカフェテリアだっけ? あそこで、夜どこ行ってたの? て聞かれたことあったじゃん?」
「睦月が、コンビニ行ってた、て答えたとき?」
「うん。あんときにはもう、カズちゃんにはバレてた」
「マジかよ…」

 あのときは、和衣のことを本気で呪いたいくらいに、とんだKY野郎だと思っていたのだが、実は和衣が一番聡かったのだ。
 ごまかし方は全然うまくなかったけれど、睦月の気持ちを尊重して、がんばって庇ってあげたのだ。
 先ほど亮に言ったように、本当のことは、睦月自身が直接話したほうがいいと思って。

「…亮」
「ん?」
「内緒にしてて、ゴメンなさ……イダッ!」
「ア…て…」

 やっぱり隠し事はよくなかった、と反省した睦月が、ゴメンなさいと頭を下げたら、ちょうどその前に屈んでいた亮の頭に、思い切り頭をぶつけてしまった。
 体勢的に、頭突きしてしまうのは、ちょっと考えれば分かることだったが、今の睦月にはそこまでのことが思い付かなかったらしい。

「イタ…亮、ゴメ…なさ…」
「いや、いいけど…イテ…」

 もう何に対して謝っていいのやら、睦月はおでこを押さえながら、亮に何度も謝った。

「分かったから、もういいから。むっちゃんこそ大丈夫、頭」
「痛い…」

 自分で仕掛けた頭突きだが、やろうと思ってやったことではないから、何も身構えていなかったし、普通にどこかに頭を思い切りぶつけたのと同じことなわけで。
 頭を撫でられながら、睦月は亮に抱き付いた。



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もうさようならの時間 (10)


 雨の日にお散歩した後、濡れたワンちゃんをそのままにしておくと、風邪を引いたり皮膚病になったりするので、しっかり拭いてあげないといけない。
 今は犬用のエプロンやレインコートがあって、雨の日にお散歩しても濡れにくくなっているけれど、おばあさんの家にそういうものはなかったので、雨の日は、三郎さんの散歩はお休みだ。
 睦月的には濡れたワンちゃんを拭くのは全然手間ではなかったけれど、おばあさんが逆に気を遣ってしまうので、控えることにしていた。

 まだ梅雨には早い少し時期だったけれど、近ごろ雨が続いていたので、睦月は全然三郎さんの散歩に行けていなかった。
 犬小屋は玄関先に出ているのだが、雨の日、三郎さんは家の中にいるので、その姿すら見えない。

 睦月はしばらく三郎さんに会えていなくて、寂しさとちょっとした苛立ちを募らせていたが、そんなことで誰かに当たっても仕方ないので、ただひたすら雨が上がることを願っていた。

(月曜日…会いに行っちゃおっかなぁ)

 土日はバイトも学校も休みだが、その日まで三郎さんの相手をしていると、本当に亮と過ごす時間がなくなってしまうので、三郎さんの散歩もお休みにしている。
 このところの雨の手伝って、全然三郎さんに会えていないから、月曜日になったら、会いに行ってみよう。おばあさんは、雨が降って散歩に行けなくても遊びに来ていいのよ、と言ってくれているから。


 睦月は決意するまでも早いが、決めてから行動に移すまでも早い(だからこそ、優柔不断な和衣にイライラさせられることが多いのだが)。
 月曜日、睦月の決意が天に通じたのか、久々に太陽が顔を出し、睦月は学校が終わるとすぐにおばあさんの家に向かった。
 あれ以来、亮にはちゃんとおばあさんの家に行くことを伝えていて、睦月は亮と翔真に見送られて寮を出た。

 おばあさんの家まで来た睦月は、家の近くに何台か車が停まっているのに気が付いた。停車の仕方からして、彼女の家に用事があって来ていることは推測できる。
 それは先日、バイトに行く途中にも見かけた光景だ。
 そのときより台数は減っているものの、睦月がこの家に来るようになってから、こんなこと1度も見たことがなかったから、一体何事かと思ってしまう。

 おばあさんは一人暮らしだったけれど、子どもさんとか親戚とかはいるだろうから、そうした人たちがやって来ているのだろうか。
 でもそういうのってお盆とかお正月とか、そういうときなんじゃないの?

 睦月は家の前を通り過ぎる振りをしながら、中の様子をそっと窺ってみるが、玄関のドアは閉まっていて、いつもどおりに見える。
 いつもはドアを開けて『ごめんください』をして、おばあさんに挨拶をしてから、三郎さんを散歩に連れて行くのだが、今は、もしドアを開けて知らない人が出てきたら怖いので、それも出来ない。

(どうしよう…。おばあちゃん……三郎さん…、いないのかな…?)

 家の前をウロウロしながら中を覗いている姿は、はっきり言って不審者にしか見えなくて、睦月自身もヤバいなぁ、とは思う。
 これで誰かに通報されたら、とんだ騒ぎだ。

「三郎さーん…」

 睦月は小声で三郎さんを呼んでみた。
 もしかしたら、犬小屋の中にいるかもしれない。



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もうさようならの時間 (11)


「三郎さーん、いないのー…?」
「わぅ?」
「あっ、三郎さんっ」

 睦月の声に反応して、犬小屋の中からのそのそと三郎さんが顔を覗かせた。
 それだけで睦月はホッとして、屈んで、そばに寄って来た三郎さんの頭を撫でた。

「ねぇ三郎さん、おばあちゃんどうしたの? 誰か来てんの?」
「わふ?」

 睦月が小首を傾げれば、三郎さんも同じほうに首を捻る。
 どうやら分からないらしい。
 ゴメン、と三郎さんは少し情けない顔をした。

「三郎さん、お散歩行くー? でもおばあちゃんに言わないとだよねぇ?」
「わふわふっ」

 睦月の『お散歩』という言葉に反応して、三郎さんが睦月にじゃれ付いて来た。
 雨が続いたせいで、ずっと散歩していなかったから、行きたくて仕方ないのだろう。

「やっぱじゃあ、ちょっと言ってくるね?」

 ドアを開けて知らない人が出てきたらどうしよう…とは思ったが、これも三郎さんのためだ。
 睦月は、三郎さんのためなら、人見知りだって克服する意気込みなのだ。

「――――あの…どちら様ですか?」
「ひぅっ…!」

 三郎さんに語り掛けていた睦月は、おばあさんの家から人が出て来たことに少しも気付かなかったから、急に声を掛けられて、ビックリして竦み上がった拍子にバランスを崩し、尻餅をついてしまった。

「あ…大丈夫? ゴメンなさいね、驚かせちゃって」

 睦月に声を掛けてきたのは、ちょうど睦月の母親くらいの年齢の女性だった。
 当然ながら女性は、睦月に対して不審げな態度を取ったが、親切にも、尻餅をついた睦月に手を差し伸べてくれたので、慌てて立ち上がった。

「えと、俺…」

 さっきまで、知らない人が出てきても、ちゃんと話をする! と思っていたのに、逆に相手のほうから先に登場され、すっかり動揺してしまった睦月は、うまく口が回らない。
 これじゃあ、ますます不審者だ。

「わぅ」
「あ…三郎さん…」

 どうしていいか分からずにいる睦月の手を、三郎さんがペロッと舐めた。
 ちゃんとしなきゃ、と睦月は気を取り直す。

「あの、俺、」
「あなた、もしかして…」

 睦月が自分の素性を話そうとすると、女性はハッとした顔で話を遮った。

「三郎さんのこと、散歩……あなたが? いつも散歩に…」
「あ、はい! 俺、あの、睦月です、上原睦月!」
「そう、睦月さん…。あなただったの…」

 どうしてこの女性が、三郎さんの散歩のことを知っているのかは分からないが、少なくともこれで不審者とは思われないだろうと思って、今の勢いで睦月は自分の名前を名乗った。



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もうさようならの時間 (12)


「あの、えっと…何かあったんですか? 俺、あの、ここんとこずっと雨で、雨の日はお散歩お休みだから来れなくて、でもずっと来れてなかったから、今日っ…」

 何だか急に不安に駆られて、睦月は早口で捲し立てた。
 何かあったのか、それを聞きたくて女性に尋ねたのだけれど、でもその答えを聞くのが怖い気がする。

 嫌な予感?
 そんなバカなの、あるわけない。当たらないで。

 お願い。

「…お母さんね、亡くなったのよ、先週」
「え…」

 女性の言葉は、ストンと睦月の中に滑り込んで、胸の奥のほうにまで落ちてきた。
 けれど。
 それでも、睦月はすぐには理解できなくて、呆然と女性を見つめた。

「足を悪くしてからも、ずっと元気だったんだけど、先週急に…」
「…」

 急に。
 …急に死んでしまったの。

「…睦月さん、中…お入りになります? お葬式も終わって、残ってるのは私たちと、お母さんの兄弟が…。でも今出掛けてて、私とお父さんだけだから」

 女性にそう言われても、睦月は首を横に振った。
 だって、そんな。
 睦月は今日、ずっと三郎さんの散歩に来れないでいたから、久々にここにやって来て、おばあさんに挨拶をして、三郎さんの散歩に行くつもりだったのに。
 死んじゃったなんて、知らない。

「お母さんに、会っていって?」
「…」

 睦月はもう1度首を振る。
 いつも睦月がドアを開けて、『ごめんください』をすると、おばあさんは杖を突きながら出て来てくれて、睦月と三郎さんが散歩に行くのを見送ってくれる。
 家の中に上がってまで、会いに行ったことなんかない。

「わぅー」

 睦月が女性と話していたら、三郎さんが睦月の足元にすり寄って来た。
 さっきは何も知らない、て顔をしていたのに、今はこの女性の話を理解したような顔をしている。…睦月ですら、まだ全然何も分かっていないのに。

「わぅわぅ」

 睦月は三郎さんに視線を落とした。
 会ってあげて? おばあちゃんに会ってあげてよ、むっちゃん。
 そう言うように、三郎さんは優しい目をしていた。

「…じゃあ、少しだけお邪魔しま…」
「えぇ、どうぞ。…三郎さんは後でお家に入れてあげるから、ちょっと待っててね。足拭くタオル出さないと…」
「わふー」

 玄関のドアを開けると、知らない靴がいくつかある以外は、いつもどおりだった。
 かすかに、お線香のにおい。



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もうさようならの時間 (13)


「お邪魔します…」

 睦月が靴を脱いでいると、中から女性と同じくらいの男性が現れた。先ほどの話からすると、彼女の旦那だろう。

「あなた。この方ね、ずっと三郎さんの…」
「あぁ、それは…。いつもありがとう」

 極度の人見知りに加え、かしこまった空気にも慣れていない睦月は、お礼の言葉にうまく返事も出来ず、頭を下げるしか出来なくて、何だか情けない気持ちだった。

 靴を脱いでこの家に上がるのは、本当に初めてのことだった。
 いつも、玄関まで。
 時々おばあさんはお礼にお茶を淹れてくれたが、散歩に行く日は天気がいい日と決まっていたので、それはいつも裏の庭でいただいていた。

 通されたのは座敷で、部屋の奥には質素ながら立派なご仏壇があった。
 おばあさんは、そこにいた。

「……」

 モノクロの写真の中でおばあさんは笑っていて、その横には白布に包まれた箱が置いてあった。
 睦月はその前で、ただ立ち尽くしていた。
 急にじわっと涙が溢れてきて、それは頬を伝って床へと落ちた。

「おばあちゃん…」

 何だか急に足の力が抜けたみたいになって、睦月は座布団の上にペタンと座った。
 ご仏壇のそばには、のし紙の付いた線香などが上げられていて、あぁ、こういう席には手ぶらで来るものではないのだと、睦月はようやく気が付いた。
 挨拶も全然うまく出来ないし、何も持たずに来てしまうし、……だってこんなこと、全然想像していなかったから。

「ふぇっ…」

 だってそんなの、全然知らなかった。
 今日は晴れたから、久々におばあさんに会って、三郎さんの散歩に行って、それで、『また来るね』て約束して帰るはずだった。
 こんな……家の中にまで、上げてもらうはずじゃなかったのに。

「うぅっ…うぇっ…」

 涙が止まらなくなって、睦月は一生懸命にそれを手で拭ったけれど、でも止まらない。
 ずっとずっと、泣き続けた。
 それでもおばあさんは、写真の中で笑い続けている。いつもの笑顔。

「うわぁーんっ…」

 睦月が知っているおばあさんは、睦月が訪ねると、杖を突きながらゆっくりと出て来て、散歩に行く睦月と三郎さんを見送ってくれて、散歩が終わったら、今度は寮に帰る睦月を見送ってくれる。
 こんな写真の中のおばあちゃんなんか、ずっと笑顔で、ずっと黙っているおばあちゃんなんか知らない。

「くぅん?」

 もういい加減、泣き止まなきゃ、て。
 全然知らない人たちの前で、一体いつまで泣いているつもりなんだ、て自分に言い聞かせても、涙がとめどなく溢れてきて、睦月が途方に暮れていたら、三郎さんがそばにやって来て、睦月の手を舐めた。
 そういえばさっき、後で家に上げてあげる、て言われていた。



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もうさようならの時間 (14)


「三郎さん…。ヒック…おばあちゃんね、死んじゃったんだって」
「わぅ」

 三郎さんの頭を撫でたら、涙に濡れた頬を舐められた。
 三郎さんは、おばあさんの最期のときまで、一緒にいられたのかな。

「おばあちゃん、ここにいるんだよ?」
「わふー」

 大人しくしている三郎さんを撫でていたら、ようやく少し気持ちが落ち着いてきた。
 まだ、何だか信じられない気持ちではあるけれど。

「…睦月さん、お茶でもいかがですか?」
「あ…」

 睦月が三郎さんと戯れていたら、睦月が泣き止んで落ち着いたのに気が付いたのか、女性が声を掛けてくれた。
 彼女はおばあさんのことを『お母さん』と呼ぶから、娘さんなんだろうか、それともあの旦那さんが子どもで、お嫁さんなんだろうか。顔とか雰囲気が少し似ているから、親子かな。

「わふー」

 お茶にしよ? お茶飲もう? と三郎さんが睦月の袖を銜えて引っ張る。
 睦月は戸惑いつつも立ち上がり、女性が勧めるようにちゃぶ台のほうへと向かい、三郎さんもその後を付いてきた。

「あの…すいません…」

 散々泣いた後で、何だか顔が上げづらい。
 彼女は、睦月が三郎さんを散歩に連れて行っていたことは知っているようだが、一体どこまでおばあさんから聞いているのだろう。
 こんなに泣いてしまったこと、変に思ってるだろうか。

「…生前は、母が大変お世話になりました」
「えっ…あの、いえ…」

 改まった挨拶をされ、睦月は慌てて顔を上げた。

「あの…、…おばあちゃんは、ずっと具合が悪かったんですか?」

 まだ鼻をグズグズさせながらも、睦月は勇気を出して、自分から話を切り出した。
 足が悪い以外は元気そうに見えたけれど、実は体の調子もずっと悪くて、でも睦月が来るから、気を遣って隠していたんだとしたら、どうしよう。そのせいで悪化しちゃって、それで…。

「そんなことないのよ、そうじゃない、本当に具合なんて悪くなくて、…本当に急なことで、」

 女性は大きく息を吐き出して、目を伏せた。

 おばあさんが体調に違和を感じたのは今から2週間ほど前で、実の娘である彼女への連絡は、『大したことないとは思うんだけど』という言葉から始まった。
 話を聞きながら、彼女もまた、そんな大ごとだとは少しも考えていなかった。季節の変わり目だから、そのせいで少し体調を崩しているだけだと思っていた。

 だから彼女は、おばあさんが元気を取り戻すまでのほんの少しの間、自分の生まれ育ったここで、一緒に過ごすつもりでいたのだ。



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もうさようならの時間 (15)


「…お盆にはまた来るわね、て言って、お母さんの具合がよくなったら、そう言って私、帰るつもりだったのよ…」

 けれど、その言葉を伝えることのないまま、彼女がこの家に来て5日後に、おばあさんは静かに息を引き取った。
 一緒にご飯を食べて、テレビを見て、話をしていたら、いつの間にかおばあさんは目を閉じていた。おばあさんの足元に蹲っていた三郎さんは、まっすぐにおばあさんを見つめていた。

 睦月が来れないでいた、ほんの少しの間の出来事。

「…お母さんから、あなたの話も聞きました。三郎さんを散歩に連れてってくれる子がいるって」
「…」
「お母さん、すごく嬉しそうで…、来てくれるの、本当に嬉しい、て…」

 おばあさんと女性の間に、そんな会話があったことを、睦月は知らない。
 睦月はただやりたくて三郎さんを散歩させていただけだけれど、もしかしておばあさんには気を遣わせていたのかな、と思ったこともあって、…でもおばあさんが、今女性が言ったふうに思っていてくれていたんだったら、すごく嬉しいな。

「…これ、私に見せてくれて、」
「あ…」

 女性はご仏壇のそばの引き出しから写真を持って来て、睦月に差し出した。
 それは以前、睦月とおばあさんと三郎さんの3人で写ろうと、睦月が携帯電話のカメラでがんばって撮った写真だ。
 三郎さんが、初めて見る携帯電話に興味津々で、じゃれたり舐めたりするから、大変だった。うまくいかなくて、『もぉー』とか言っている睦月に、おばあさんはずっと笑っていた。
 翔真に頼んで現像してもらったのを、おばあさんに上げたのは、つい先月の話。

「お母さん、ずっと1人だったでしょ? 私が何か言っても、三郎さんがいるから寂しくないって言ってたけど、本当は…。だから、あなたが来てくれて…」
「別に俺は、そんな…」

 睦月は別に、おばあさんのために、何か特別なことをしてあげたことなんかない。
 おばあさんに挨拶して、三郎さんの散歩に行って、それでまた挨拶して、帰るだけ。ただ、それだけのこと。

「…それでもお母さんは、嬉しかったと思う…。足を悪くしてから、あんまり外に出なくなって、人付き合いもしなくなっていたから」

 睦月とおばあさんの話の中心は、やはり三郎さんのことで、睦月は散歩中にあった出来事をおばあさんに話したし、おばあさんは、睦月が来ない間のことを話してくれた。
 それから、足を悪くしてから、子どもがよく電話をくれるようになったとも言っていた。
 すごく心配して、気を遣ってくれて、でも私、まだそんなにおばあさんじゃないのに、て笑っていた。

「そうなの…。…話せば、ケンカばっかりだったのに…」

 女性は小さく鼻を啜って、何度も瞬きをした。
 睦月も、話をしていたときのおばあさんの様子が思い起こされ、涙がまた溢れそうになったので、何でもない振りで、そばで丸くなっている三郎さんを撫でた。

「…三郎さん、こんなに仲良くなったのに、あなたに会えなくなっちゃったら、寂しがっちゃうわね」
「えっ?」

 睦月と三郎さんの様子を見ていた彼女が放った言葉に、睦月は驚いて顔を上げた。



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もうさようならの時間 (16)


 睦月があまりにもビックリした様子なので、彼女も少し驚いたようだった。

「え…三郎さん…?」
「この子だけ、ここに置いていけないから…。私たちが帰るとき、一緒に…」

 睦月は突然の話に呆然となったが、それは考えてみれば当たり前のことだった。
 飼い主がいなくなった家に、三郎さんだけが残るわけにはいかない。誰かが引き続き、飼い主になってやらなければ。
 けれど、寮で犬を飼うことは出来ないんだし、そうでなくても、今の睦月に犬を飼えるだけの金銭的な余裕はないのだから、睦月にその役目を果たすことは出来ない。
 睦月はおばあさんとだけでなく、三郎さんともお別れをしなくてはいけないのだ。

「…三郎さん、新しいお家…行くの? これからは新しいトコ、お散歩するんだね」
「わふ?」

 女性の言葉に、どんなふうに返事をしていいか分からなくて、睦月は困ったように三郎さんに話し掛けた。
 けれど三郎さんは、分かっているような、分かっていないような顔で、睦月のことを見つめているだけだ。

「三郎さん…」

 いつ彼女たちがこの家を離れるのかは分からないが、もう足の悪いおばあさんと一緒なのではないから、睦月が三郎さんを散歩に連れて行く必要もなくなってしまった。
 言ったら、散歩に行かせてくれるかもしれないけれど、そんなことをしたら、余計に離れ難くなってしまう気がする。

「…これから、ここはどうなるんですか?」
「私たちが帰ったら、空き家になっちゃうわね…。しばらくは、このまま残しておくつもりだけど…」

 今後のことは分からない、と言われ、睦月は目を伏せた。
 誰もいない家を、遠くに住んでいて管理するのは大変なことだ。そう遠くない将来、ここはおばあさんが住んでいたという痕跡すら、なくしてしまうのだろう。

 お互い、まだ話し足りないような、でももうこれ以上話を聞くと、切なさが募ってしまうような、そんな気持ちだった。
 睦月は口が達者だけれど、人見知りでもあるから、こんなときうまく話を持っていけない。どうしよう…と思いながら三郎さんを撫でていたら、玄関のほうからチャイムの音がした。
 きっと誰か弔問に訪れたのだろう、彼女の旦那さんが出迎えに行く音がする。

「あ…俺、じゃあ、これで…」

 新たな弔問客が来たのなら、睦月はもうお暇すべきだろう。
 名残惜しいけれど、このタイミングを逃したら、睦月は帰れなくなってしまう。

「…そうですか」

 彼女もまた、名残惜しそうだったけれど、そうも言っていられず、2人は立ち上がった。
 ご仏壇のある座敷へと通されたのは、亡くなったおばあさんと同世代くらいのご夫婦で、女性が2人に頭を下げたので、睦月も何となく会釈をした。
 睦月なんて、飛び入りできたようなものだから、そこまで気に掛けてくれなくてもよかったけれど、女性は玄関まで睦月をお見送りに来てくれた。三郎さんも一緒だ。



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もうさようならの時間 (17)


「睦月さん、これ…」
「え?」

 女性は睦月に、紙袋に入った包みを差し出した。
 のし紙の掛かったそれは、おそらく香典返しだろうと睦月には想像が付いたが、ふと、自分がそれを受け取っていいものかとも思った。
 だって睦月は、手ぶらでこの家に上がり込んだのだ。ご仏壇に手を合わさせてもらったけれど、香典も何も持って来てはいない。

「そんな、だって俺、何も持って来てな…」
「いいのよ。今までのお礼です。お菓子だから、お友だちと一緒に食べて?」
「でも…」
「どうぞ、受け取ってください。本当に、感謝して…」

 おばあさんに聞かされていた、睦月のこと。
 睦月が話してくれた、生前の母親のこと。
 いろいろな思いが蘇ったのか、彼女は声を詰まらせて、目を伏せた。

「あの、えと…、あの、…はい。あ、えと…ありがとうございます」

 これ以上拒み切れず、睦月は女性から包みを受け取った。
 最初はうまく返事も出来ず頷くだけだったけれど、今度こそ睦月はちゃんとお礼を言った。

「今まで、本当にありがとうございました。母のことも、三郎さんのことも…」
「…」

 もうこれ以上は泣かないと思ったのに、女性の声に涙が混じっているから、つられて泣きそうになってしまう。
 三郎さんは、くるくると女性の周りを回った後、女性に向かって「わんっ!」と元気よく吠えた。
 もう泣かないで? 僕がいるから、泣かないで?

「…三郎さん、ちゃんとそばにいてあげてね?」
「わふっ」

 睦月は身を屈めて三郎さんと目線を合わせると、しっかりとそう言い聞かせた。

「それじゃあ、あの…」

 睦月は、ゆっくりと立ち上がった。
 もう、さようならの時間だ。

「…じゃあ、三郎さんも――――」

 バイバイ、と言おうとして、睦月は思わず口を噤んだ。
 女性は不思議そうに、睦月を見た。

「…三郎さん、じゃあ…またね」

 帰るときはいつも、『じゃあまたね』て、次の約束をして帰るから。
 バイバイなんて、言ったことない。
 そんなこと、これからも言わない。

「じゃあ、あの、お邪魔しました…」
「いえ、こちらこそ…。来てくださって本当にありがとう。本当に…」

 最後にもう1度、三郎さんの頭を撫でてから、睦月は女性と三郎さんに背を向け、ドアを開けた。

「わんっ!」
「うわっ!? え、三郎さん!?」

 背後で三郎さんが吠えた、と思ったら、睦月が振り返るより先、女性の足元に座っていた三郎さんが、突然睦月のほうに飛び付いてきて、その足にじゃれ付いた。



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もうさようならの時間 (18)


「ダメだよ、三郎さん。さっき足拭いてもらったんでしょ? お外はまた今度だよ?」
「わふわふっ」
「ね? 三郎さん、お家入ろ?」
「わふー」

 女性も慌てて三郎さんを押さえたが、三郎さんは、睦月の足にくっ付いたきり、離れようとしない。
 睦月はしゃがんで、三郎さんの首に腕を回して、ギュウと抱き締めた。

「三郎さん、ちゃんといい子にしてなきゃダメだよ? お散歩は……また今度、ね?」
「わふ」

 しっかりと三郎さんの目を見て言ったら、三郎さんはペロッと睦月の頬を舐めてから、睦月から離れた。
 三郎さんも、きっと全部分かってる。
 いい子で、賢い子だから。

「じゃあ、またね、三郎さん」
「わふ」

 三郎さんは玄関の土間のところに戻ると、女性の足にすり寄った。
 睦月は心の中で、おばあさんにも『またね』を言うと、頭を下げて玄関のドアを閉めた。

『わんっ!』

 またね、むっちゃん。
 また今度、お散歩行こうね?

 ドアの向こうから三郎さんの声が聞こえて、睦月は大きく息を吸い込むと、ダッシュで家の前から駆け出した。
 上体ばかりが前のめりになって、足が縺れそうになって、でも睦月は走るのをやめない。

「ふぇっ…ック…」

 走りながら、睦月はまた泣いていた。
 涙なんて、ほとほと枯れ果てたと思っていたのに。
 泣きながら走るのって、息が苦しい。

 寮までって、結構遠いんだなぁ。

 涙でグチャグチャで前もよく見えなくて、でもそれでもよくて、ただ突っ走る。
 息が苦しい。苦しい苦しい苦しい。

「ッ、はぁっ…」

 いつもの帰り道。
 寮までの、見慣れた景色。
 見慣れた、建物。

 それが寮だと分かって、睦月はようやく足を止めた。
 呼吸がもうメチャクチャになっていて、肺が痛いくらいで。ずっと走っていたせいで、足も痛いし。

「…おかえり、むっちゃん」

 寮の集合玄関の前には、亮が立っていた。
 亮は、睦月が泣きながら全力疾走してきたことに少し驚いていたけれど、何も言わなかった。



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もうさようならの時間 (19)


「亮、何してんの?」
「バイト終わったからさ、待ってた、むっちゃんのこと」

 睦月は涙を拭わないまま、亮のほうに歩み寄った。
 ずっと走っていたせいで、睦月の髪はもうボサボサになっていて、亮はその頭を撫でて直してあげる。それから、濡れている睦月の頬を、そっと拭ってやった。

「部屋、戻ろっか」
「ん」

 亮は睦月の、何も持っていないほうの手を取って繋いだ。
 今日は晴れたし、もう暖かいと言える時期なのに、日が傾きかけた時間帯、ずっと走ってきたせいか、睦月の手は冷たくて、それが何だか切ない。

「むっちゃん、ちゃんと歩いてよ」
「んー」

 素直に手を繋がれている睦月は、しかし階段を1つ飛ばしで上がったり、時々立ち止まったり、変なふうに歩くから、亮は歩きづらくして仕方ない。
 でも睦月は構うことなく、繋いだ手を引っ張る。

「ねぇ亮ー、あのね、これね、お菓子」
「ぅん?」
「貰ったの。お友だちと食-べてね、て言われたの。だから後で食べようね」
「…ん、そうだね」

 亮がそっと盗み見た睦月は笑顔で、それは何だか無邪気なようにも見えて、……少し胸が痛む。
 睦月と手を繋いだまま、亮は器用に片手で部屋の鍵を開けた。

「ただいまー、おかえりー」

 いつもみたく、睦月は1人で2役の挨拶をする。
 ドアを閉め、後ろ手に鍵を掛けると、亮は睦月を抱き締めた。

「亮? どうしたの?」
「…んーん、何でもない。何かむっちゃんのこと、ギュッとしたくなっただけ」

 ただ、それだけのこと。
 今日睦月に何があったかなんて、おばあさんと三郎さんのところに行った睦月が何を知ったのかなんて、そんなの、亮は何も知らない。

「亮ー、今日もね、三郎さんに『またね』して来たよ?」
「うん」
「『じゃあ、またね』て言ってきた」
「うん」

 腕の中でポツリポツリと話す睦月の頭を、そっと撫でる。
 睦月は、亮の胸に顔を押し付けたまま、その表情を見せてくれない。

「あとね、おばあちゃんにも『またね』て言った」
「…ん」
「またね、て…」

 『またね』は、次の約束の言葉だから。
 三郎さんにも、おばあちゃんにも、ちゃんと言ってきた。
 さようならじゃなくて、また会うための、また今度、一緒にお散歩するための、またね。

「だから、今度三郎さんのお散歩するときは、亮も一緒にさせたげるね」
「…ん」

 ようやく顔を上げてくれた睦月は、まだ目元が濡れていたけれど、穏やかな笑顔で。
 それはもう、痛みを感じるような笑顔じゃなくて。

 亮はその唇に、そっとキスを落とした。



*END*



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そうねそれは幸せ


 地面からのジワジワとした暑さ。
 コンビニまで、あと少し。
 互いの湿っぽい手のひらに、悠也のほうが先に手を放した。

「やっぱ、あちぃね」
「あぁ」

 どうせコンビニに着いたら、放さなきゃいけなかったんだし。

「ふぁ…涼し」

 自動ドアが開いて、ふわと冷たい風が頬を掠める。

「拓海ー、プリン買お、プリン」
「メシ買うんだろ? 先にそっち選びなよ」
「2個ね、プリン」

 …………聞いてないし。

「てか、2個も食うの? プリン」

 デザートのコーナーで、普通のプリンにしようか、クリームが乗ったちょっと豪華なヤツにしようか迷ってる悠也に声を掛ける。

「え? だって拓海も食べるでしょ?」

 当たり前のように悠也がそう言ったので、拓海は少し言葉に詰まった。
 別に悠也が自分勝手な人間だとは言わないが、おいしいものを目の前にして、人の分の心配までするとは思わず、驚いたのだ。

「やっぱこっち!」

 結局悠也は、クリームの乗っているほうを選んだ。

「じゃあ、ご飯買って帰ろうね」
「ん。―――あ、肉まん」
「ゆーうーやー」

 弁当のコーナーを通り越し、今度はレジ前にある肉まんのほうに行ってしまった悠也に、拓海は呆れる。まぁ、いつものことだけれど(てか、暑いのに肉まん?)。

「肉まん食べたい」
「プリンは?」
「プリンも」
「ご飯のほかにそんなに食べれるの?」
「うー……」

 どっちも欲しい! って目で訴えてみるけれど、今日の拓海は、どっちかにしなさいと、少し厳しい。

「拓海ー」

 お・ね・が・い! って、飛び切りの上目遣い。
 何もこんなコンビニで安売りしなくたっていいのに。

「わーかった! 分かったから、お弁当も選んじゃいなさい!」
「はーい」

 結局は、悠也のなすがまま。
 カゴいっぱいに悠也の好物。
 その分、拓海の財布の中身は軽くなるわけで。

「拓海ー、手、繋いで帰ろっか?」

 蒸し暑く、生温い夏の夜。
 湿っぽいてのひらを重ねて、家までは、まだ遠い。



*END*





 お久しぶりの悠ちゃんたちでした。タイトルはlis様より。thanks!
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愛じゃない、恋でもない INDEX


↑OLD ↓NEW

■18時3分に未知との遭遇 (tittle:赤小灰蝶さま)
 (1) (2) (3) (4) (5)

■果たして馬鹿で愚かでしょうか (tittle:約30の嘘さま)
 (1) (2) (3) (4)

■ハイカロリーハニー (tittle:約30の嘘さま)
 (前編) (後編)

■お空が泣くから (tittle:約30の嘘さま)
 (1) (2) (3) (4) (5) (6)

リネンの小鳥 (tittle:約30の嘘さま)

■Pinkie Syrup Kiss! (tittle:ロレンシーさま)
 (1) (2) (3)

■毒か蜜かも分からない (tittle:約30の嘘さま)
 (1) (2) (3)
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18時3分に未知との遭遇 (1)


「あ、ミツ。お前、前言ってたDVD、いつになったら貸してくれるわけ?」

 就業時間近くなって光彰(ミツアキ)に声を掛けたのは、同僚であり幼馴染みの穂積(ホヅミ)だった。
 それに対しての光彰の反応といえば、『そんなん何か言ってたっけ?』みたいな顔で穂積を見ることくらいだったから、穂積はわざとらしく大きな溜め息をついた。
 もう長い付き合いの光彰が、時折すぱっと記憶力を欠如させてしまうことを、よく知っているからだ。

「え、何のAV?」
「いや、何でお前からエロDVD借りないといけないわけ? お前と兄弟になりたくねぇんだけど。ライブのヤツ! 前に貸してくれるつったじゃん」
「あぁ!」

 そう言われて、ようやく思い出したと、光彰は穂積を指差すから、穂積は嫌そうにその手を叩き落とした。

「ずっと待ってたのに持って来ないから、忘れてんだろうなぁとは思ってたけど」
「今思い出した」

 まったく悪びれたふうもなく、光彰はそう言ってのけるから、穂積は、今度こそ本気で溜め息をついた。
 もともと光彰とは音楽の趣味は合わない。
 なのに数週間前、穂積が欲しがっていた音楽DVDを、なぜか光彰が持っていると言い出して。それならば貸してくれ、という運びになったのだが。

「ホントにお前は……なぁ、今日取り行ってもいい?」

 このまま光彰が持って来るのを待っていたら、いつまで経っても埒が明かないと判断し、面倒くさいとは思いつつ、穂積はそう提案した。

「いいよ、おいで」

 光彰が了承したところで、就業のチャイムが鳴った。

 メシ食って帰る? と言った穂積に、光彰が、「ここんとこずっと外で食ってたから、今日は帰って来いって言われたし……やめとくわ」と、普通に返してきたので、穂積はギョッとした。

「…お前、1人暮らしじゃなかったっけ?」

 光彰が、とっかえひっかえ女の子と仲良くしているのは知ってるが、わざわざ家に来て夕食の支度までしてくる彼女がいたとは初耳だ。

「んー?」
「いや、彼女いんのに、俺行ったら迷惑じゃね?」
「あぁ、別に気にしなくていいし。何なら穂積もウチで食ってけよ?」
「え、いや…」

 極端なほど人見知りの激しい穂積にとって、知らない人がいる空間で食事なんて滅相もない、仕事のときだけで十分だ。
 DVDだって、光彰が1人暮らしだからこそ、家まで取りに行くと言ったのに。

 何となく憂鬱になりながらも、当初の予定どおり、穂積は光彰の家へと向かうことになってしまった。



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 ちょこっと新シリーズ。タイトルは赤小灰蝶さまより。
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18時3分に未知との遭遇 (2)


 光彰の住んでいるマンションの前まで来てもまだなお、穂積は心の中で渋っていた。
 だいたい、光彰も光彰だ。穂積の激しすぎる人見知りをよく知っているくせに、どうして彼女が家にいることを教えてくれなかったのか。
 確かにDVDは見たいけれど、知らない人がいる家に行くくらいなら、まったく頼りない光彰の記憶力に縋ったほうが、まだマシだ。

「穂積?」
「あー……うん」

 気乗りしない声で返事をしつつ、エレヴェータで8階まで上がる。

「なぁー、ミツー」

 やっぱりここで待ってるからDVD持って来て、と穂積が続けるよりも先、光彰に「ここじゃ暑いだろ? 入れって」と入室を勧められ、仕方なしに穂積は中に入った。
 もう6月も半ば。
 日が暮れてもまだなお、外の空気は蒸し暑い。
 入室を勧めたのは、光彰なりの気遣いなのだろう。

(でも、知らない人がいるんだったら、暑くても外で待ってるほうがマシ。汗だくのほうがマシ。でもマジ倒れそうなくらい暑いし。でもやっぱ、)

「リオ、ただいまー」

(リオ? リオて、彼女の名前か? 『ただいま』て言ったってことは、同棲してんのか。そんなトコに俺が上がり込んだら、めっちゃ気まずいじゃん。ミツのアホ)

「おー、光彰、お帰り」

(うーわ、いたいたいた! いや、そりゃいるだろうけど! 光彰て呼んでんだ。そりゃ彼女だもんな、そう呼ぶよな…………て、)

「男じゃん!」

「…………は?」

 思わず穂積が声を上げてしまったので、光彰と、光彰に『リオ』と呼ばれた男が同時に穂積のほうを見た。
 2人の視線をいっぺんに集めた穂積は、その場に固まってしまう。

「お客さん?」

 ソファの上で丸くなっていたリオが、光彰に尋ねた。

「あぁ、会社の。ていうか、ガキのころからの知り合いだけど」
「ふぅん。名前は?」

 今度は、穂積に向かって聞いてくるが、初対面の人間にそんなに気易く声を掛けられても、すぐには答えられない。
 穂積が戸惑っていると、見兼ねた光彰が、「穂積」と、助け舟を出した。



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18時3分に未知との遭遇 (3)


「へぇ、穂積っていうの。よろしく~」

 持っていたリモコンとクッションを適当に放って起き上がると、リオは屈託のない笑顔を浮かべた。
 見たところ、同年代だろうなと思えるリオだったが、その表情や仕草からは、ずいぶん幼い印象を受けた。

「俺のことは、リオって呼んでいいよ?」
「リ、オ…」

 何とか声を絞り出す。
 その『リオ』という呼び名が本当にこの男の名前なのか、あだ名か何かなのか、それは知らないけれど、いかにも人懐こそうな顔をして、前にもう何度も会っているかのように声を掛けてくるあたり、自分とは根本的な性質が違うのだろうと穂積は思った。

「なぁそれよりリオ、お前、あのライブのDVD、どこやった? 穂積が借りてぇんだって」
「えー? 知らないよぉ」
「あんなん、お前しか見ねぇだろ」
「うぅー…」

 テレビ下のラックを適当に漁っている光彰に言われ、リオは困惑したように眉を寄せた。
 やはり光彰の趣味ではない音楽のDVDは、どうやらこのリオという男のためのものらしい。

「じゃあ、ちょぉあっち見てくる」

 ソファを降りて、リオは奥の部屋に消えた。ドアを開けたとき、ベッドが少し見えたから、おそらく向こうは寝室なのだろう。

「ミツ、ミツ!」

 2人きりになった隙に、穂積は声を潜めて、慌てたように光彰を呼んだ。

「んー? 何?」

 やっぱないなぁ、なんて言いながら、光彰が振り返った。

「何? 何なん、アイツ。お前、彼女と同棲してんじゃねぇの?」
「彼女て……アイツが女に見えるか?」
「見えないから聞いてんじゃねぇか! 何だ、アイツ」

 光彰とは古くからの付き合いで、下に2人の弟がいることは知っているが、まるで顔が違うし、名前も違う。第一、光彰の弟なら、今さら穂積のことを紹介するまでもないわけで。

「養ってんの」

 ……………………。

「………………は?」

 たっぷりの間を置いてから、穂積はようやくそう聞き返した。



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18時3分に未知との遭遇 (4)


「やしな……は? 何? 養う?」
「うん」
「…えっと……親戚の子か、何か?」

 いくら昔からの顔馴染みとはいっても、別に光彰の親類関係をすべて把握しているわけではない。
 自分の知らない、誰か親戚の子でも預かっているのだろうか、いやそうに違いない、と半ば無理やり穂積は結論付けようとしたが。

「あー。そういう関係で言ったら、赤の他人かな」

 …………………………。

 いやいやいやいや、それ、ないから。
 赤の他人とか。
 しかも養ってるて!

「…赤の他人を、養ってらっしゃるの?」
「らっしゃるの。あー、やっぱここないわ!」

 ラックの中身を全部出して、それでも見つからなかったDVDに、光彰はお手上げ状態で引っ繰り返った。
 ひどい散らかしようだな、と穂積が思っていた矢先。

「何してんだよ、光彰! お前、散らかし過ぎ!」

 寝室から戻って来たリオが、光彰が引っ張り出したDVDのパッケージを目敏く見つけて、その額にペチンと突っ込みを入れた。

「穂積、あった。これだろ? デッキの中に入れっ放しになってた」

 リオが穂積に見せたのは、確かに穂積が借りたがっていた音楽のDVDではあったけれど…………なぜか、それはパッケージに入っていない、DVDディスクのみ。
 リオは中心の穴になっている部分に人差し指を入れた状態で、穂積にそれを見せているけれど、もしかしてこのまま貸す気でいるのだろうか。

「リオ、お前パッケージは? 何でディスクだけ持ってきてんだ」
「あ、ない。もっかい見てくる。穂積、これ持ってて」

 光彰に言われてようやく気が付いたのか、リオはディスクを穂積に預けると、再び寝室に行ってしまった。
 もう勝手に呼び捨てで呼ぶようになっているリオに、穂積はわずかに苦笑する。こうもすんなりと人の懐に入っていけるヤツなら、光彰に同居(いや、光彰の言うところの、『養う』)を頼むのも難しくはなかっただろう。

「あった。ベッドの下にあったよ。はい」

 少しして戻って来たリオが、穂積の持っていたディスクをパッケージの中に収めた。



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18時3分に未知との遭遇 (5)


「あ、ありがとう。じゃあ俺、これで…」

 いくらリオに親しげに声を掛けられたとしても、こちらはそんなにすぐに打ち解けられる人間ではない。
 相手に不愉快な思いはさせたくないから、出来るだけ素っ気ない態度はとらないように心掛けてはいるけれど、今のところはさっさと帰ってしまいたい。

「え、穂積、帰るの!? メシは? 食って行ったら? なぁ、そうしてよぉー」

 穂積のシャツの袖を掴んで、リオは、駄々を捏ねる子どものように穂積の腕を揺さぶる。

「リオ。穂積には穂積の事情があんだから、また今度にしろよ、な?」

 光彰にそう宥められ、リオは唇を尖らせながらも、穂積のシャツから手を離した。

「じゃあ、また今度な? 約束だかんね?」

 勝手に小指を絡められ、指切りげんまんをさせられて。
 隣で光彰が笑っているのが気になったが、その手を振り払えばリオがへそを曲げかねないので、穂積はおとなしくそれに付き合った。

「じゃあねー、バイバーイ」

 わざわざ玄関先まで見送ってくれたリオに手を振り返して(光彰は、部屋でDVDを片付けていて、出て来なかった)、穂積は光彰のマンションを後にした。





「光彰ー、穂積、また来るかなぁ?」
「あぁ? さぁな。アイツ、めっちゃ人見知りだし。リオ、また穂積に会いたいのか?」
「うー? さぁ?」

 リオはいたずらっぽい笑みでその質問をかわして、キッチンへと行ってしまった。
 光彰も、元より答えを聞くつもりもなかったのか、着替えるためにクロゼットのある寝室へと向かった。

「光彰ー、ご飯しよー?」

 その背中、リオの声がして、光彰は口元に笑みを浮かべた。



*end*



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果たして馬鹿で愚かでしょうか (1)


 『ケータイ欲しい』とか高等なことを抜かしやがるから、一発ど突いてやったけど、結局買ってやったリオの携帯電話。



果 た し て 馬 鹿 で 愚 か で し ょ う か




『肉まん食いたーい。買ってきて?』

 ……………………。

 何ですか。
 仕事の終わりに、脱力させられるようなこのメールは。

 光彰は、受信したメールに返信することもなく、即行で削除してやった。
 差出人は言わずもがな、光彰の帰りを……否、肉まんの到着を待っているリオだ。

 携帯電話を買ってくれとしつこくせがまれて、2世代くらい前の、格安の携帯電話を買い与えてやったのが10日ほど前。すぐに、無理やり電話番号とメールアドレスを交換させられた。

 リオの交友関係は知らないし、そんなに興味もないが、今まで携帯電話を持たなくても済んでいたくらいなのだから、大したことはないのだろう。
 いったい何のための携帯電話なんだか……なんて、光彰は呆れ半分に思っている。

「光彰くーん。今日の夜、暇?」

 携帯電話をしまった光彰のところに、意味ありげな笑顔で近づいてきたのは、後輩の竜巳(タツミ)だ。
 光彰は、この笑顔の意味を知っている。

「…暇じゃない」

 だから光彰は、話を聞くまでもなく、そう言ってやった。

「嘘!」
「どうせ合コンの人数集めだろ? めんどい。そんな気分じゃない」
「えー? 女子大生だよ、女子大生! ホラ、興味出て来たでしょ?」

 案の定、合コンのお誘いを受け、光彰は本当に面倒臭そうに答えるが、竜巳としても、どうしても光彰を連れて行きたいらしく、「なぁなぁ」としつこい。

「穂積連れけよ」
「えー……穂積くん、行きます?」
「行くわけねぇだろ、アホんだら!」

 竜巳に声を掛けられ、穂積は声を荒げた。
 ただでさえ人見知りの激しい穂積が、人数合わせとはいえ、知らない人間だらけの合コンになど参加するはずがない。
 もちろんそれを分かっていて、あえて光彰は話を振ったのだし、竜巳は初めから声を掛けなかったのだけれど。

「だから光彰くん、行きましょ?」
「何が『だから』だ! 行かねぇって……ちょっ、竜巳!」

 嫌がる光彰を引っ張って、竜巳は無理やり光彰の合コン参加を決めてしまった。

「ご愁傷様~」

 そんな光彰を、のん気に手を振って、穂積は見送った。



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 タイトルは、約30の嘘さまから。thanks!
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果たして馬鹿で愚かでしょうか (2)


 別に合コンが嫌いだとか、女の子が嫌いだとかいうことは、決してない。
 というか、どちらかと言えば、大好きなほうだし。

 タバコに手を伸ばせば、隣に座っていた女がライターを差し出す。
 茶色く染めた長い髪に、印象的な大きな瞳。キレイにデコレーションされた爪が、タバコを挟んだ指先に触れた。

 派手だが、嫌いなタイプではない。
 向こうがその気なのは態度で分かるし、口説けばすぐに落ちるだろう。

 計算なのか無意識なのか、女が光彰の膝に手を乗せる。
 顔を覗き込まれて――――恐らくその上目遣いで、今まで何人も落としてきたに違いない。

 光彰は女の、華奢で派手な手の上に自分の手を重ねた。
 目配せ。
 タイミングを見計らって、2人で店を抜け出した。



*****

 リオのことは抱けるけど、別にホモじゃないし、セックスするなら女のほうがいい。
 柔らかい体とか。大きい胸とか。
 いやらしく絡んできて、離さないし。

 甘ったるい匂い。



 2人で果てて、真夜中過ぎ。
 髪を掻き上げながら見上げてくる女の隣、光彰はベッドを下りてタバコに火をつけた。

「…ミツくん?」

 馴れ馴れしい呼び方が、癇に障る。
 ほんの一口二口吸って、長いままのタバコを灰皿に押し付けると、光彰は何も言わず服に着替える。纏わり付く、女の香水の匂いを、少しだけ鬱陶しいと思った。

「ねぇ?」

 女の声。
 最中は耳をくすぐった甘いそれも、今となっては不快にしか聞こえなくて。

「…帰る」
「は!? え、ちょっ…」

 慌てる女をよそに、光彰は表情も変えずに身支度を整えて。金だけ置いて、さっさと部屋を後にする。
 その後ろ、閉まるドアの向こうから、罵る女の耳障りの声が聞こえた。



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果たして馬鹿で愚かでしょうか (3)


 いつまでも、その匂いが纏わりついてくるような、そんな感覚。キツイ、香水の匂い。離れても、その存在を主張してくるようで。
 その匂いも存在も、すべて消し去るように、帰宅した光彰はすぐにバスルームに向かって、頭からシャワーを浴びた。

 風呂から出ると、ソファに身を投げてタバコに火をつける。
 時間も時間だから、リオはもう寝ているようで、静まり返った室内。光彰はぼんやりと、揺れる紫煙を眺めた。
 カチカチと、時計の秒針がうるさい。
 こんなことにすら苛付いている自分に気が付いて、光彰は最後の煙を吐き出すと、タバコを消した。

 いつもは真っ暗にしているはずの寝室で、ベッドサイドの明かりだけがほのかに灯っていた。
 ベッドでは、光彰がいないのをいいことに、リオが真ん中を占領して寝ている。手には携帯電話。

「寝られねぇじゃん」

 熟睡しているリオに、その声は届かない。
 光彰が、リオがしがみ付くように抱き締めている掛けぶとんの端を引っ張って、自分のほうに寄せると、その拍子にリオの体がコロリと転がった。

「……ん…? んーんー…?」

 ぼんやりと意識が浮上してきたのか、リオの睫毛が震えて、薄く目が開く。

「や…寒い…」

 ダブルサイズとはいっても、それまでいいように独り占めしていた掛けぶとんを半分取られて、リオはむずかるように身を捩った。

「リオ、詰めて。入られん」
「ぅうん……みつあ…」

 寝惚けながらも、光彰の存在を確認したリオは、少し体をずらして、光彰のためにスペースを空けてやった。
 光彰は、リオの手から携帯電話を取ると、それをベッドの端に置いて、ふとんを掛け直してやる。

 別にあのまま、ホテルで寝て帰っても良かったけれど。あの女の横では、どうしたって眠れそうもなくて。
 光彰は空いたスペースに体を横たえる。

「ん…」

 またすぐに眠りに落ちたリオが、無意識にか、光彰のほうに擦り寄ってくる。
 光彰はリオを抱き締めると、静かに目を閉じた。



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カテゴリー:愛じゃない、恋でもない

果たして馬鹿で愚かでしょうか (4)


 朝、というより、時間的には昼に近いということを、光彰は知っていた。
 けれどそれでも、光彰に起きる気はなかったのに。

 朝は、唐突にやって来る。

「光彰ぃ、もぉ起きて! 何時だと思ってんのっ!」

 …声がデカイ。
 それこそ、こっちは何時に寝たと思っているのだ。

「みつー?」
「……リオ、うるさい…」
「うるさいて何! 休みの日だからって、いつまでもダラダラ寝てたらダメなんだから!」

 ユサユサと体を揺さぶったり、掛けぶとんを剥がそうとしたりして奮闘しているリオには申し訳ないが、休みくらいもう少し寝かせてほしい。

「光彰ぃ……ホントに起きないのぉ? なぁ~」

 声に、甘えたようなニュアンスが混じってくる。
 この声を、嫌いではないと思った。

「む~……もーいい」

 諦めたような声とともに、上に掛かっていた重みがなくなる。

「光彰のバカ…」
「バカって何だ」
「うわっ!?」

 もう光彰は起きないのだと油断したところに、急に腕を引かれて、リオはそのままベッドのほうに転がってしまった。

「もぉー何すんの、光彰」

 子どものように頬を膨らませて、リオは光彰の額を叩いた。

「リオ、こっちおいで?」
「もう来てる」
「もっとこっち」

 ベッドの端にいたリオを引っ張って、自分の腕の中に抱き寄せた。

「ぬくい、リオ」
「もー……何か光彰、子どもみたいね、甘えんぼで」

 それだけはお前に言われたくないと思いつつ、あえて何も言い返さず、光彰は柔らかなリオの髪に指を通す。
 心地よい体温だ。
 たぶん、今までの中で1番。

「リオー」
「んー?」

 光彰を起こすことはもう諦めたらしいリオは、大人しく光彰の腕の中に収まって、その胸にスリスリと頭を寄せている。

「後で肉まん買いに行くか」
「………………。…………うん!」



*end*



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ハイカロリーハニー (前編)


 リオの朝は、結構早い。
 それは別段、他の一般家庭に比べてとりわけ早いというわけではないけれど、光彰よりは30分も早く起きて、朝ご飯の支度をしたりする。




ハ イ カ ロ リ ー ハ ニ ー




「光彰ー、起きてー」

 朝ご飯の支度が出来たところで、光彰を起こしに行く。まるで母親気分だ。いや、新妻か?
 面倒くさいけれど、別に嫌ではない。

「みつあきぃ、ご飯ー」

 自分が抜け出た後のベッドに、光彰が掛けぶとんを占領して丸くなっている。

「なぁー」

 ユサユサとふとんの上から揺さぶってみても、光彰がまるで起きないから、リオは「起きてー」と、モゾモゾとそのふとんの中に潜り込んだ。
 リオの気配を感じてか、光彰がふとんの中で寝返りを打って、その拍子に光彰の膝がリオの背中にぶつかってしまい、リオはべちゃりと光彰の上に倒れ込んだ。

「いだっ…。もー、ミツー!」

 いつもだったら、このくらいすれば起きているはずなのに。

「……起きない…」

 何だか妙な敗北感を味わいつつ、リオは光彰の腹を跨いで、そのまま上に覆い被さった。
 ふとんが暖かくて気持ちいい。

 ここで俺まで寝たらダメ…。みつあきのこと、起こさないといけないの。

 なのに、リオはふとんの誘惑に負けそうになって、慌てて首を振る。
 光彰とくっ付いているから、暖かくて気持ちよくて寝てしまいそうになるんだと、リオは名残惜しく思いながらも、光彰から離れた。

「あ、」

 リオが離れるときに、光彰がパジャマ代わりに着ているTシャツの裾が肌蹴て、白い腹が露になってしまった。
 何とはなしに、人差し指の先で光彰の腹をつつく。

 ………プニプニ。

「ふはっ」

 楽しくなってきた。
 光彰の腹。プニプニしてるから。



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 たまにはただのラブで。タイトルは約30の嘘さまより。thanks!
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ハイカロリーハニー (後編)


 リオが光彰を起こすのも忘れて、その白い腹を指でつついたり、手のひらで撫でたりして勝手に楽しんでいると、朝っぱらから尋常でないその感覚に、ようやく意識が浮上してきたのか、光彰が鬱陶しそうに眉を寄せた。

「…………んん……、………………何してんだ……お前…」

 薄く目を開くと、リオが何やら楽しそうに人の腹を弄くり回していて。
 光彰は一瞬、夢の続きか? とも思ったが、顔を上げたリオが、「あはは、光彰の腹、プニプニしてるー」と無邪気に言ってきたので、やはり現実なのだと悟った。

「お前なぁ、朝っぱらから何、人の腹を……そこは触れたらいけない、パンドラの箱だぞ?」
「だって光彰、起きないからー」

 それと、腹を撫で繰り回すのと、一体何の関係があるのか。
 だいたい、彼女気取りの女にだって、こんな起こされ方をされたことはない。

「プニプニ」
「しつこいっ!」
「いだっ!」

 ベチンとリオのおでこを叩く。
 リオは叩かれた額を両手で押さえながら、ベッドを下りた。

「もぉー遅刻するし! 早く起きてー?」

 ガバッとふとんを引っぺがされて、光彰は観念してベッドを下りる。

「何でお前、朝からそんな元気なんだ…」
「んんー? 何?」

 光彰のぼやきは、寝室を出ようとしていたリオには届いていないらしい。光彰は首を振って、先に行ってろと促す。
 ようやく当初の目的を果たしたリオは、ご機嫌で寝室を後にした。




「…………メタボはダメだよな、メタボは…」

 着替えようとTシャツを脱いだとき、うっかり鏡の前に立ってしまった光彰は、先ほど散々リオに弄られた自分の腹を、恨めしげに睨み付けた。



*end*



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お空が泣くから (1)


 3日連続で天気予報が外れて、今日こそは当たるだろうと信じた今朝の予報は、降水確率10%
 なのに、昼を過ぎた辺りで雲が出始め、日が傾くころには雨が当たり始めた。



が 泣 く か ら



「だから俺の言ったの、信じればよかったのに」

 窓を打つ雨粒を見つめながら、リオはそう呟いた。

 3日も外したんだから、今日こそは当たると言ったのは光彰で、3日も外したんだから、今日だって外れると言ったのは、リオ。
 軍配はリオに上がった。

「バッカだなぁ、光彰」

 エアコンも点けずに、勝手にクロゼットから引っ張り出してきた薄手のブランケットに包まっていたリオは、急に思い付いたように起き上がった。
 それから、光彰からきつく言われている火の元と戸締りを確認すると、玄関に置いてある傘を2本持ってリオは家を出た。

(お迎えすんの。俺、エライ子だぁ)

 光彰の会社は、1度だけその前まで行ったことがある。リオが、『光彰の働いてる会社見たいー』と駄々を捏ねたから、買い物に出たついでに光彰が連れて行ってやったのだ。
 光彰の住んでいるマンションからは、電車を乗り換えなしで3駅。
 駅の料金表示の看板を見上げながら、リオはポケットの中に入っている小銭を確認する。

(帰りの分が、足らん…)

 昨日うっかり、コンビニで買い物をしてしまったせいだ。
 夕食の買い物をするときなんかは、お金を預けてもらえるけれど、たいていお釣りは1,000円に満たない程度しかないから、それを取っていても、コンビニでちょっと無駄遣いしたら、リオの手元に残るお金は高が知れてしまう。

 でもまぁ帰りは光彰がいるし、そのときに切符を買ってもらえばいいと、とりあえず行きの分だけ切符を買って、リオはちょうどよくやって来た電車に乗り込んだ。



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 タイトルは約30の嘘さまから。thanks!
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お空が泣くから (2)


「最悪だ…」

 無情にも雨を降らしている空を睨み上げながらぼやいたのは、穂積。

 夕方近くなって、雨が降り出したのは分かっていたが、どうせ小雨だろうと高を括っていたのに、外に出てみれば、思いのほか強く降っていた。
 これが学生のころなら、傘なんていらない、濡れて帰ればいい、で外に飛び出せたけれど、もう社会人。もういい大人。
 出先で突然降り出したというならまだしも、最初から降っているのが分かっているのに、さすがに、傘も差さずに駅まで歩いてはいけない。

 とりあえずあそこのコンビニまで走っていって、そこで傘を買って……と、穂積が算段していると、こちらに歩いてくる見覚えのある顔。

「あー穂積だー」

 会うのはこれで2度目だというのに、こんなに気安く穂積のことを呼ぶのは、そう、リオしかいない。
 自分で差しているほかに傘をもう1本持って、見つけた穂積に手を振る。

 人一倍、人見知りの激しい穂積は、まだ完全にリオに心を許せていないけれど、リオは誰に対してもそうなのか、単にそれに気付いていないだけなのか、もうずいぶん昔から知り合いであるかのように、穂積のほうへ駆け寄って来た。

「あれ? 穂積、1人?」
「そうだけど…」

 穂積はチラリと、リオの持っている傘に目をやった。
 もしかして彼は、光彰を迎えに来たのだろうか。だとしたら、ちょっとマズイ。

「なぁ、その傘…」
「これ? 俺、光彰お迎え。光彰、傘持って行かなかったから」

 やっぱり。
 穂積は、困ったように眉を下げた。

「どうしたん? 光彰、まだ中? 仕事遅くなる? 俺、ここで待ってたら、邪魔になる?」
「いや、あのな、」

 どう告げようか穂積が逡巡していると、リオが不思議そうに顔を覗き込んでくる。

「穂積?」
「あの、いや……ミツ、もう帰っちゃって…」
「へ? 傘ないのに?」
「あー……うん」

 別に穂積は、どこも何も1つも悪くないのに、何だか罪悪感を覚えてしまう――――傘を持参していない光彰が、どうやってもう帰ったかを、知っているから。



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お空が泣くから (3)


「あのな、リオ…、」
「何だー、光彰がいたら、帰りの電車賃、出してもらえるて思ったのに」
「はぇ?」

 何でいないの? と絶対に聞かれると思っていた穂積は、まったくそんな素振りを見せようとしないリオに、拍子抜けしたような声を出した。

「ここまで来るのに、電車乗らないとダメなの。でも切符、行きの分しか買えなくて」
「金……足んないのか?」

 この間、光彰の家に行ってリオと初めて会ったとき、平然と光彰に『養っている』と言われたことを、穂積は思い出した。
 この年の男を『養う』と言うからには、リオはまともに働いてはいないのだろうし、光彰もリオの自由になる金をそんなに多く預けてはいないのだろう。

「帰りは光彰がいるから、切符買ってもらおうと思って」
「あー…」
「でも帰ったんでしょ?」
「帰った、ていうか…」

 …何ていうか。
 会社は出たけれど、光彰が利用する駅とは反対の方向に行ったはず。

 穂積は最後まで見届けたわけではないけれど、帰りしな傘がないと言っていた光彰は、受付係の女の子に『私、傘持ってますから、一緒に帰りませんかー?』とかわいく誘われていたのだ。

 その子とは、光彰とは反対方向の駅に向かう自分と帰りに時々一緒になるから、光彰がその誘いに乗っていれば(というか、乗らないはずがない)、向かう先は自分の家ではないわけで。

「じゃあ穂積、この傘使う?」
「え?」
「傘、ないんでしょ? これ、使っていいよ?」

 光彰のために持って来たであろう傘を、リオは穂積のほうに差し出した。

「いや……だってこれ、ミツの傘だろ?」
「でも、もう光彰いないんでしょ? だったら穂積、使いなよ。濡れたら大変だよ?」
「ありがと…。でもお前、どうやって帰る気なんだよ。電車代ないんだろ? 貸そっか?」
「ううん、歩いて帰るし」
「歩いて、て…!」

 無茶苦茶というか、とんちんかんというか…。
 健康のために電車を使わず歩いてます、なんて人は確かによくいるけれど、光彰のマンションまで歩くとなると、ここからはかなりの距離があるし、今日はこの天気だ。



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お空が泣くから (4)


「ダメだって、むちゃくちゃだな、お前。電車で帰れ」

 穂積はそう言って、千円札をリオに押し付けた。
 リオが本当に電車代すら持っていないのかどうかは分からなかったけれど、騙されたところでこの程度なら。

「ありがとう、今度返すな」
「今度て…」
「出世払い」

 どう考えても出世なんかしなさそうなリオがそんなこと言うから、穂積はおかしくなってしまった。

「穂積、ありがとう」
「こっちこそ、ありがとう。リオ、ホントに電車で帰れよ?」
「うん。じゃーねー」

 穂積から受け取った千円札をポケットの中に捻じ込んで、リオは穂積に背を向けた。



*****

「ホレ」

 翌朝、会社で顔を合わせた穂積に、なぜか1本の傘を差し出された光彰は、訝しげに眉を寄せた。
 4日ぶりに天気予報が当たるか、昨夜の雨が嘘のように晴れ渡った朝。通勤するサラリーマンやOLの中にも、傘を持っている人なんかいなかったはずだが。

「何、これ」
「お前の傘だろうが」

 言われてみれば、確かに自分が持っている傘……に似ている。
 所詮傘なんて、雨さえ凌げれば何でもいい光彰は、ブランドだのデザインだのにこだわりはなく、ごく一般的な無地の黒い傘を持っていたから、穂積にそう言われても、まだピンと来ていなかった。
 ここ数日、自分の傘を持って出掛けていないし、穂積に傘を貸した覚えもなければ、穂積の家に傘を忘れて帰ったということもない。

「何でお前が持ってだ?」

 穂積から傘を受け取って、よく見てみても、確かに自分の傘であるような気もするし、そうでないような気もする。

「昨日、リオから借りだ」
「リオから?」

 穂積の口から思い掛けない名前が登場して、光彰は少し首を傾げた。
 初めて会ったときから、妙に穂積のことを気にいっているらしいリオのことだから、穂積に会ったとすれば、それを光彰に言ってきそうなものなのだが。



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お空が泣くから (5)


「何で? どこで?」

 ますます分からないという顔をする光彰に、穂積は溜め息をついた。

「昨日、お前が傘持って来てないからって、ここまで迎えに来たんだぞ、アイツ」
「マジでか?」

 そんなこと、全然聞いていない。
 昨日は帰りに受付の女の子に誘われて、一緒に飯を食いに行って、でも結局それだけで終わってしまって、気付けば雨も止んでいたから、光彰は彼女を駅まで送って帰宅したのだ。
 時間はそんなに遅くなかったから、リオはまだ起きてテレビを見ていたけれど、そんな素振り、少しも見せなかった。

「とりあえず礼言っといてな。助かったって」
「あぁ……うん」



*****

 仕事が終わって、どこにも寄らずに帰宅すれば、リオがキッチンに立っていた。
 リオはちょうどピーラーでジャガイモの皮を剥いていたところで、光彰が後ろから「ただいま」と声を掛けたら、驚いてジャガイモをシンクの中に落っことしてしまった。

「ビビったぁ~……光彰帰って来たの、全然気付かなかった」
「ビビりすぎだ。どんだけ皮剥くのに夢中になってんだよ」
「だっていつもこんな時間に帰って来ないじゃんかぁー。まだご飯出来てないよ?」

 皮を剥き終えたジャガイモを、今度はまな板に乗せて刻み始める。すでに人参と玉ねぎを切り終えていて、カレーのルウも用意されていた。

「ん? 何、光彰」

 帰って来て、着替えもせずにキッチンに立ったままの光彰を、リオは不思議そうに振り返った。

「いや……お前、昨日、会社まで来たんだって?」
「あぁ、うん。穂積に傘貸してやった」
「助かったって、言ってた」
「穂積が? むはっ、嬉しい」

 笑顔になって、リオは再びジャガイモに向き合う。

「…悪かったな」
「ふぇ? 何が?」
「俺のこと、迎えに来たんだろ?」
「えー別にぃ。でも帰りの電車賃足らなくて、穂積から1,000円借りた」

 手際よく肉を炒め、鍋の中に野菜を入れていく。
 今、どちらかというとリオの気持ちはカレーのほうに向かっているようで、話しながらも、光彰のほうを見ようとしない。

「メールでもくれたら、待ってたのに」

 日ごろは、どうでもいいようなメールを山のように送りつけてくるくせに、どうしてこういう肝心なときに活用してくれないのかと思う。

「思い付かなかったの。…………、あーっ!!」
「何だよっ!」

 いきなり大きな声を上げて振り向いたリオに、今度は光彰が驚かされる番だ。



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お空が泣くから (6)


「穂積に!」
「は? 穂積に1,000円借りたんだろ? さっき聞いた」
「そうじゃなくて! 穂積にケータイの番号とか聞くの、忘れたぁ!!」
「はぁ?」
「あぁん、もう! せっかく穂積に会ったのにぃ! 光彰のバカぁ」
「何で俺なんだよ!」

 リオにとっては、迎えに行った相手が女の子とどこかに行ってしまったことよりも、お気に入りの穂積の電話番号やらメールアドレスを聞きそびれてしまったことのほうが、ずっとショックが大きいらしい。
 一気にご機嫌は斜めに。
 いや、不機嫌というよりも、拗ねているのだけれど。

「分かった、分かったから。今度穂積に、ウチに遊びおいでー、て言っとくから」
「ホントに? 約束だからね?」
「約束す…………リオ! 焦げてる、焦げてる!!」
「うわっ、熱っ!」

 光彰との会話に気を取られていたせいで、せっかく順調に進んでいたカレー作りなのに、具を焦がしてしまって。
 しかも慌てて火を止めようとしたリオは、熱くなっている鍋の縁に手をぶつける始末。

「何してんだよっ」

 リオの代わりに火を止めた光彰は、リオのぶつけたほうの手を取って、すぐに流水につけてやった。

「バカ、気を付けろよっ」
「……ゴメン。平気だから、そこまでしなくても…」
「火傷は後からヒリヒリしてくるから。今のうちによく冷やしとかないと」
「…ん。ゴメンなさい…」
「もう痛くない?」
「うん…………ありがと…」

 手を離されたリオは、シュンとして俯いた。

「カレー……もうダメかな?」
「いや、このくらいなら平気だろ」

 心配そうに鍋を覗き込むリオに、木べらで少し焦げ付いた具を掻き混ぜながら、光彰はそう答えた。

「じゃーこのままカレー仕上げるから、光彰、早く着替えてきて?」
「あぁ」

 キッチンは、多少焦げ臭い臭いがするけれど、もう大丈夫だろう。光彰はキッチンをリオに任せて、クロゼットのある寝室に向かう…………足を止めた。

「リオー」
「んー?」
「昨日はホント…………ゴメン」
「何? そんなに謝るの、いつもの光彰らしくない。雪が降るかも」
「うっせ!」
「別に、時々俺のメシでも食ってくれたら、それでいいよ、俺は。そしたらまた、雨の日は迎えに行ったげるし」

 振り返ったリオが、かわいい八重歯を覗かせて、ニカッと笑った。



*end*



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