恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2011年07月

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Pinkie Syrup Kiss! (1)


 適度に照明の落ちた、ざわついた店内。
 最近リオが行き付けにしている大きめのバーは、ゲイもビアンもノン気も集まる店で、奥の端にあるボックス席が、リオのお気に入りだ。
 お気に入りとは言っても、自前でこんなところに来る金などリオにあるはずもなく、呆れず見捨てずいてくれる友人の誰かが、いつも同席しているのだけれど。

 そして今日一緒にいるのは、リオの昔からの友人で、金色に染めた髪の毛を弄りながらシャンパンの入ったグラスを傾ける、シュン。
 ソファはそこそこ広いのに、2人はピットリ寄り添ってくっ付いている。

 2人ともそれなりに人目を惹く容姿をしているし、アルコールも入って、幼さの中に色気を滲ませるリオと、そこに寄り添うシュンに、かわいいモノ好きの女やクルージングしてるゲイの連中が、不躾な視線をくれる。

 それに気付いているのかいないのか、2人は額を寄せ合って、話に夢中だ。

「えー、じゃあリオちゃん、その穂積くんて人から1,000円借りたままなの?」
「うん」

 先日、会社まで光彰を迎えに行った際、傘を貸した穂積から帰りの電車代として1,000円を貸してもらったことをシュンに話したら、驚いたような声を出された。

「ダメだよぉ。リオちゃん、人からお金借りても、すぐに忘れちゃうんだから」
「あはは」
「笑ってる場合じゃないって。早く返さないと」

 リオの金銭感覚はゼロに等しくて、外で食べる食事は、基本的に人がご馳走してくれるものだと思っているし、『借りた金は返さなければならない』という観念も薄い。
 それは、光彰が普段リオに金を持たせていないせいもあるだろうが、それよりも、元からリオに備わっている潜在的な気質のせいだろう。でなければ、ここまで無邪気に、金に無頓着にはなれない。

 そのおかげで、過去にもリオは何度か金銭のトラブルを起こしているが、当の本人に悪気がまったくないから、反省もなければ何もない。
 もちろんそのたびに、巻き込まれた友人やら知人はリオから離れていくけれど、来るもの拒まず、去るもの追わずのリオに気にする素振りはなくて。

 シュンも、そんなことで1度はリオから距離を置いたのだけれど、結局放っておけなくて、今もこうしてリオの側にいる。

「でもその穂積くんて、ミツくんの会社の人なんでしょ?」
「うん」
「なら、ミツくんに頼んで返してもらったら?」
「えー嫌だぁ。俺も穂積に会いたい」

 結局は、そこなのだ。
 初めて会ったときから妙に穂積のことを気に入っているリオは、穂積に金を返さなければならないということよりも、単に穂積に会いたいだけのようで。



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 タイトルはロレンシーさまから。thanks!
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Pinkie Syrup Kiss! (2)


「でも、仲よくなりたいんだったら、借りた金はちゃんと返さないと」
「うーん…」

 シュンに窘められて、リオは困ったように眉を寄せた。
 たとえ1,000円とはいえ、光彰に頼まず、リオがその金を用意するのは簡単ではない。他の誰かに頼めば、今度はそちらに返さなければならないのだから。

(しょうがない、光彰に出してもらお)

 自分でどうにかして稼ごうという気は端からないリオは、勝手にそう決めて納得した。

「リオちゃんは、その穂積くんて人の、どこがいいの?」
「んー?」
「だって珍しいじゃん。そういう気に入り方」

 本人に自覚がなくても、リオが誰かに声を掛けるのは、ある程度、打算的なところがあるから(とは言っても、『この人、ご飯ご馳走してくれないかなー』とか、その程度だが)。

「穂積はぁ、何かかわいい」
「かわいい? かわいいの? リオちゃんのかわいい基準、よく分かんないからなぁ」

 穂積に会ったことがないから何とも言えないが、光彰の幼馴染みで同僚ということは、年齢的に20代半ばのはずで、そんな年齢の男に対して『かわいい』という評価を下すリオの感覚は、正直、よく分からない。

 それを言うなら、同じく二十歳半ばのリオをかわいいと思う自分の感覚もどうかしているかもしれないが、彼の場合、見た目に加えてこの奔放な性格もあるから、普通に会社勤めをしている同年代の男とは、単純に比較できない。

「何かなぁ、ギューしたくなる」

 口当たりの良さに任せて何杯かカクテルをお代わりしたリオは、すっかり酔っ払ってしまっていて、舌足らずな子どものような喋り方でシュンに甘えている。

「リオちゃんが、ギューするの?」
「うん」

 コクンと頷いたリオは、グラスに残る淡いピンクのカクテルを飲み干した。

「リオちゃん、ペース速い!」

 明らかに、シュンの倍の速度でグラスを空けている。そんなに強くないものを選んでオーダーしているが、それだって数を飲めば酔いは回る。
 話に夢中になって、シュンはうっかりしていた。

「ちょぉ、お水貰う?」

 リオの顔を覗き込めば、もうすっかり頬は赤いし、目は潤んでいる。けれどリオは、「いらない。違うヤツ飲む」と、ドリンクメニューに手を伸ばした。



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Pinkie Syrup Kiss! (3)


 この分では、シュンの意見を聞き入れて、ソフトドリンクを頼むとは、到底思えない。

「リオちゃん、ちょお休憩しよ? 僕も水飲むし」
「やだぁ……ん、暑い…」

 宥めようとするシュンの手を払って、リオは着ていたシャツのボタンを上から2つも外してしまった。
 肌蹴た胸元から覗くきれいな鎖骨に、シュンは思わず喉を鳴らす。

「ダメ、リオちゃん、ちゃんと服着て」

 その姿に欲情するのが自分だけならまだしも(いや、本来ならシュンだってしてはいけないのだが)、こんな大勢の人、それもあからさまにソレっぽい視線を向けてくる連中がいる中で、その格好はいけない。
 シュンはむずかるリオを無視して、開けたばかりのシャツのボタンを上まで掛ける。

「んー……」
「ちょっ…リオちゃん、くすぐったい!」

 ボタンを掛けるためにリオと向き合う形になっていたシュンの頬やら耳元やらに、リオが唇を寄せてくる。

「リオちゃん、」

 いたずらする子供をたしなめるように名前を呼べば、リオは上目遣いにシュンを見た。

「もぉ……知らない人の前で、そんな顔したらダメだかんね?」

 ホントに何されるか分かんないよ? と念を押すように忠告して、シュンはリオの髪を撫でながら、唇にキスをした。
 ついばむように唇を重ねる2人。
 キスくらい、店内でしているのは他にだっている。けれどやはり、少なからず視線を集めていた2人のそんな姿に、少しだけ周囲がざわつく。

「ん……もっと…」

 唇が離れれば、リオはねだるようにシュンの首に腕を回す。

「ダメ」

 けれどシュンは素っ気なくそれをかわす。
 別に意地悪したいわけじゃなくて、このままでは、シュンの理性が、キスだけで終わらせてくれそうもないのだ。

「シュン~…」
「ッ…」

 甘い声で名前を呼ばれて、もろくもシュンの理性はあっけなく崩壊する。

「リオ、」

 シュンはリオの腕を掴んで席を立つと、支払いを済ませて、リオを外に連れ出した。


 夜は、長い。



*end*



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毒か蜜かも分からない (1)


「サイッテー!!」

 ヒステリックな女の声と、パシッという乾いた音。そして左頬に熱い痛み。
 光彰は、自分の頬を引っ叩いた女を前に、溜め息混じりに頭を掻いた。

「何なのよ、その態度! ホンット、最低ね! バカじゃないの!?」

 口汚く罵る女に、ほんの数分前まで感じていた魅力はもはやない。
 何だかもう面倒くさくなって、光彰が適当に謝れば、女はさらに怒りを露にして、光彰に背を向け出ていった。

 女をここまで怒らせた原因は、光彰の浮気。というか、二股。というか、彼女にした覚えもないけど…………どっちも。

「はー……めんどくさっ」

 もう一方の女に連絡する気にもなれず、光彰は結局帰宅することを選んだ。



*****

「あ、光彰、お帰りー」

 家に帰れば、ちょうど風呂から上がったばかりのリオが、タオルで頭を拭きながら、光彰を出迎えた。

「あぁ」

 リオに素っ気なく返事をすると、光彰は寝室に向かう。乱暴にネクタイを緩めていると、後をついて来たリオがピトッと背中に張り付いた。

「何、リオ。邪魔。着替えられない」
「んふふー、光彰、ほっぺが赤い」

 鬱陶しげにリオを背中から引き剥がせば、光彰の前に回ったリオは、先ほど女に引っ叩かれた左頬に手を当てて、ニヤッと笑った。

「うっさい、どけ」

 振り払おうと思ったのに、リオは細い腕を光彰の首に絡めると、チュウとその首筋に唇を寄せた。

「リオ」
「女の子に振られたの?」
「…リーオ、」

 いい加減にしろと、光彰はリオを制しようとしたが、それより先、絡ませていた腕を離したリオは、その場にペタリと座り込んだ。

「なぁ、光彰」

 上目遣い。
 光彰のベルトに手を掛ける。

「女の子とエッチなこと出来なかったんだろ? 俺が抜いてやろっか?」
「…………お前がやりたいだけだろ?」

 光彰は、自分の足元に屈んでいるリオの髪を撫で付ける。
 リオはジッと光彰を見上げたまま、唇を舐めた。



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 最低男に「最低」と言う空しさ…。
 タイトルは、約30の嘘さまより。thanks!
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毒か蜜かも分からない (2) R18


*性的な表現を含むため、18歳未満の方やそういった表現の苦手な方はご遠慮ください。

 ピチャリ…。

 壁に背中を預けて立っている光彰の足元、膝立ちのリオは、光彰のスラックスの前を寛げると、うっとりとした表情でそこに舌を這わせた。

 髪を撫でていた光彰の手が、ぐっとリオの後頭部を押し付ける。口いっぱいに光彰のモノを捻じ込まれ、リオは一瞬苦しげに眉を寄せたが、すぐに唇を窄めて頭を動かした。
 しっかりと舌を絡めて、根元の部分は添えた右手の親指で裏筋を刺激する。

「ん…リオ、上手…」

 顔が見えるように前髪を掻き上げると、リオはチラリと視線を上げた。光彰を見上げながら、リオは頬の内側でその先端を擦ったり、亀頭を舌先でグリグリと舐めたりして。
 唾液と先走りで口元をベタベタにしながら、リオは夢中で光彰を咥える。

「ッ…」

 噛み殺し損ねた吐息が光彰から漏れたのを感じ取ったのか、リオは少し笑みを零し、その下の双球に手を伸ばす。
 舌で括れを刺激しながら、右手で根元を擦り、左手は袋を揉んでくるから、光彰はそのまま持っていかれそうになって。
 奥歯を噛み締め、リオの後頭部を押さえると、腰をグラインドさせた。

「ぅうんっ…!!」

 突然のことに呻くような声を漏らしたが、リオは口を窄めて必死に舌を絡める。

「ふぅ…う、んっ…」

 クチュクチュと濡れた音と、リオの苦しげな声と吐息。加減もされずに喉奥まで突っ込まれて腰を動かされ、リオの目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。

「ぅぐ…ん、んぁっ」

 ずっと咥えていて顎がだるくなってきたのか、半開きになったリオの口からは、だらしなく涎が零れる。
 光彰に奉仕していたはずなのに、リオはいいように口内を光彰に犯され、いつの間にかトリップしてしまっていて。
 リオは床についている膝を擦り合わせ、添えていた片手は自分の胸をまさぐっている。

「んんっくっ……みつっ…」

 切羽詰まったような、リオの声。
 視線を向ければ、ねだるような顔のリオと目が合う。



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毒か蜜かも分からない (3) R18


*性的表現が含まれます。18歳未満の方、そういった表現の苦手な方はご遠慮ください。

「…うっ……」
「んんー…!」

 リオの前髪を掴んで固定すると、光彰は果て、リオの口の中に精液を流し込んだ。
 ゴクリとリオの喉が動くのを見てから、光彰は自身をリオの口から抜き出した。開きっ放しになっているリオの口は多少白く汚れているけれど、その大半を飲み込んだらしい。

「ぁ…あぁ…」

 ペタンと力が抜けたように、リオがその場にへたり込んだ。
 鼻をグズグズさせながら、リオは汚れた口元を拭っては、赤い舌で舐め取っていく。

「…………サイッアク……」

 だいぶ呼吸が整ったところで、リオが恨めしげに光彰を睨み上げてきた。

「何が?」

 スラックスの前を直した光彰が聞き返せば、リオは「せっかく風呂入ったのに…」とか言う。
 見れば、リオがモジモジと閉じようとしている太ももの内側、灰色のスウェットパンツの色が変わっていて。

「イッた…」

 別に直接的な刺激を加えていたわけではない。
 光彰のモノを咥えていただけなのに、激しく口の中を犯されているうちに、リオはそのままイッてしまったらしい。

「変態」

 光彰に見下されるように言われて、けれどその言葉にも視線にも感じてしまうなんて、やっぱり自分は変態なんやなぁと、リオは頭の片隅でぼんやりと思う。
 そんなことよりも、今はただ、光彰が欲しい。

「みつあき」

 クイッと、光彰のスラックスの裾を引っ張る。
 欲しいの。
 光彰が欲しい。
 ねぇ。

 光彰は口の端を少し歪めて笑う。

「さっさと脱いで、後ろ向け」

 光彰の、不遜な言葉に、けれどリオは満足そうに、従順に従った。



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カテゴリー:愛じゃない、恋でもない

1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (1)


 亮や翔真ほどの派手さはないけれど、整った顔立ちをしているし、真面目で誠実な性格をしているものの、固くて取っ付きにくいというわけでもない。
 実は絶叫マシンだとかホラー映画だとか大の苦手で、ヘタレな部分はあるけれど、勉強が出来て、明るくて、男にも女にも優しい。

 このキャラで、女の子にモテないはずがなく、祐介は、実は密かに女の子に人気がある。

 しかし残念ながら、祐介本人にその自覚はまるでなく、ずっと自分はごく普通、特別女の子にモテるわけではないが、かといって毛嫌いされるほどでもない、と思っている。
 それは別に謙遜でも何でもなく、本気でそう思っているのだが、それが逆に男女問わず好感度を上げているとは、祐介自身、やはりあまり分かっていない。

 大体、祐介がそういうことに鈍感なのは、もともと彼が一途な性格で、好きになった子以外にそれほど関心が向かないから、ということが言える。
 自分が好きになった相手が、自分のことも好きでいてくれたら、それで十分。
 『恋人』と称する人が何人も欲しいわけではないし、携帯電話のメモリに、女の子のアドレスがたくさん入っている人を羨ましいと思ったことなどないのだ。

 そんなわけで、祐介は恋愛において、今は恋人である和衣しか見えていないから、やはり相変わらず、自分の人気には無自覚だった。
 だから今も、授業の後に声を掛けてきた女の子に、何を疑うでもなく、1人でのこのこと付いて来てしまった。

「あのね…祐介くん」

 人気(ひとけ)のないところに2人きりになると、彼女が足を止めたので、祐介も立ち止った。
 祐介のことを、苗字でなく下の名前で呼ぶところからして、彼女はそれなりに祐介のことを知っているのだろうが、残念なことに祐介のほうは、彼女の名前を知らなかった。
 もしかしたら、同じ授業を取っているかなぁ…という気はするのだが、それは200人から入る大きな教室で受ける授業なので、祐介が今思い浮かべているのと、目の前の彼女が同一人物かと言われると、ちょっと自信がない。

「あの…」
「えっと……何でしょう…?」

 まさかここまで来て名前を尋ねるわけにもいかない。
 こんなことなら、声を掛けられたときに、ちゃんと名前を聞いておけばよかった。
 あのときは、『アイス食いたいー!』とごねる睦月と、『真大にメールすんの忘れたー!』と慌てる翔真と、『ちょっとトイレ』とか言っている亮のせいで、祐介も何だかバタバタしていたのだ。



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 いったん休憩で、「君といる~」番外編です。お題はTOYさまから。thanks!
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1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (2)


「あの、私…」

 今さらながら、失敗したなぁ…なんて反省をしていた祐介は、俯きがちに何か言いたそうにしている彼女に、ようやく、ここまで来て本当にようやく、今自分が置かれている状況を理解した。
 名前を聞きそびれたことを後悔している場合ではなかった。

「あの、私、祐介くんのことが好きで…、その…付き合ってくださいっ…!」

 あぁ、だから彼女はあの場ではなく、こんなところまで祐介を連れ出して、話をしたかったのだ。
 彼女は愛の告白をするために、祐介に声を掛けたのだ。

「えと、あの…」
「私じゃ、ダメ…?」

 困ったように口籠る祐介を、彼女は必死な表情で見つめていた。
 yesかnoか。
 二者択一の答えを待つ瞬間は、いつだって、誰だって、心臓が痛くなるくらい緊張する。

「あの、俺は…」

 出来れば、彼女のことを傷付けたくはないけれど、祐介には和衣がいるから、どうしたってこの子とはお付き合いできなくて。
 その揺るがない答えは、やはりどうしても、彼女を傷付けてしまうのだろう。

「…ゴメン」
「ッ…」

 まっすぐに祐介を見つめる彼女の瞳が揺らいだ。

「気持ちは嬉しいけど、俺、付き合ってる人がいるから、その…お付き合いは出来ない、です…」

 言い終わると、彼女はとうとう俯いてしまった。
 長いまつ毛が、濡れていた気がする。
 こればかりは祐介が悪いわけではないのだが、やはり女性の涙を見ると、どうしても罪悪感に駆られてしまう。

「そんなふうに思っててくれたのに、…ゴメン。応えること、出来なくて…」

 彼女は下を向いたまま、緩く首を振った。
 こういう結末は、何となく予想していなかったばかりではないから。祐介はごまかしているつもりだろうけれど、声を掛けた瞬間、『え、誰?』ていう雰囲気だった。
 見ず知らずの子に告白されて、簡単にOKをするような人ではないだろうと、誰に聞かされたわけではないけれど、祐介はそういう人だろうと、彼女も分かっていたから。



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1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (3)


「うぅん、私のほうこそ…、あの、こんなトコまで来てくれて、ありがとう。じゃあ…」

 彼女は顔を上げないまま、足早に去って行った。
 その背中が消えるまで見つめていた祐介は、人知れず溜め息を零した。
 祐介の答えは間違ってはいなかったし、彼女も一応は納得してくれたけれど、やはりこういうのは、あまり後味のいいものではない。

「はぁ…」

 早くみんなのところに戻ろう。
 いつもみたいにくだらない話で盛り上がって、このことは早く忘れてしまおう。

 そう思って祐介は、来た道を戻ろうと振り返った――――。

「えっ!? かずっ…ケホッケホッ」

 ビックリしすぎて、むせた。
 振り返った祐介の視線の先には、恋人である和衣が立っていたのだ。

 ここは学校の敷地内だから、和衣がいること自体は別に何の問題もないし、不思議でもないのだが、それにしても、どうしてこのタイミングで?
 しかも、和衣の眉間は寄りまくっているし、口はアヒルさんみたいになっているし、眉もコイル巻になっている。

(えーっと、これってもしかして…)

 今の、見られた?

 いくら祐介が鈍感だろうと(祐介のことを鈍感と言うのは睦月くらいで、祐介にしたら、睦月だけには言われたくないのだが)、今の和衣の表情を見れば、そのくらいのことは想像がつく。
 何の疾しいこともないのに、なぜか『ヤバイ!』みたいな気持ちになって、サーッと血の気が引いていく気がした。

「あの、えっと、和衣、」

 祐介は慌てて和衣のもとに駆け寄った。

「…別に、覗くつもりで来たわけじゃないから。むっちゃんに、祐介、こっちに行ったって言われたから、来ただけだから。祐介が女の子と一緒とか知らなかったから…」

 …来ちゃっただけだもん、と和衣は、だんだん小さくなる声で、何とか最後まで言い切った。
 授業の後、祐介が先ほどの彼女に声を掛けられたとき、和衣は、聞きたいことがあると言って、教授のところに行っていて、その間に祐介はここまで来ていたのだ。
 睦月が和衣に何と伝えたのか知らないが、ただ何となく、『ゆっちなら向こう行ったよー』くらいしか言っていない気がする。



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1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (4)


「あの、えっと…ゴメン、和衣」
「…何で謝んの?」
「いや、何か…、…何でだろ」
「…バカ」

 和衣はスンと鼻を啜って、先に歩き出した。
 突然のことに思わず謝ってしまったけれど、確かに今のは『バカ』と言われても仕方ないよなぁ…と、祐介は、自分のどうしようもない返答に呆れた。

「和衣、ちょっ…待ってよ」

 祐介は焦りながらも、急いで和衣の後を追った。
 いつもより絶対早足で歩いている和衣に声を掛けても、返事はない。
 確実に機嫌の悪い和衣に、祐介はもう1度謝りたい気分だったが、謝ったところで、『何で謝んの?』となるのは目に見えているので、何も言うことが出来ない。

 大体、謝りたいと言っても、祐介が和衣に謝らなければならない理由など何もない。
 女の子に告白され、タイミング悪く和衣に見られはしたものの、告白はちゃんと断ったし、別に何の悪いことをしたわけでもないのだから。

 でも、何だか謝らずにはいられないのは、和衣の機嫌を悪くさせているのが、間違いなく祐介だからだろう。
 それこそ、和衣が怒る理由なんてどこにもないのだが、恋人が他の誰かに告白されるのを目撃して、平静でいられるわけがないのは、祐介にだって分かる。
 だからこそ祐介は、和衣に見られたと分かって、『ヤバイ!』と思ったのだ。

「和衣、」
「…何?」

 2人、何も喋らないまま寮に戻って来て、和衣は祐介にバイバイも言わないまま自分の部屋に行こうとするから、祐介はその手を掴んで引き止めた。

「何、ゆぅ…、俺の部屋、向こう」

 まだ眉を寄せたまま、唇を尖らせたまま、和衣は儚い抵抗をするが、祐介は構わず和衣の手を引いて、自分の部屋に連れて行った。
 部屋に同室者の姿はなく、祐介は鍵を閉めると和衣と向き合って、その顔を覗き込んだ。

「和衣、…ゴメン」
「だから、何で謝んの? 俺、別に怒ってない」

 非常に拗ねた口調でそう言って、和衣はプイと顔を背けた。

(…あぁ、そっか)

 そこで祐介は、気が付いてしまった。
 和衣のこの表情は、怒っているんでもないし、拗ねているんでもない――――嫉妬心を必死に隠そうとしている顔だ。



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1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (5)


 和衣は、実はすごく嫉妬深くて、些細なことにもヤキモチを妬いてしまうタチだから、先ほど祐介が告白されるのを見て、怒ったというより、嫉妬心がメラメラッと燃え上がってしまったようだ。
 しかも和衣は、自分の嫉妬深い性格を何とかしようと日々奮闘中なのに、その努力もむなしく、また1人で勝手にヤキモチを妬いてしまったので、自己嫌悪。
 そのうえ、何も悪くないのに祐介が謝るから、『俺が勝手にモヤモヤしてるだけなのに、何で祐介謝るの~~!? 謝るのは俺のほうなのに~~~!!』と、ご機嫌は斜め方向に向かって行ってしまったのだ。

「かーず」
「ぅ゛ー…」

 和衣が本当に怒っているんでないと分かって、祐介は内心ホッとしつつ、でもこのご機嫌斜めのかわいい子を笑わせるには、どうしたらいいんだろうと思う。
 ただ機嫌が悪いだけなら何とでも宥め賺せるが、和衣は祐介に対してというより、自分自身へのモヤモヤで機嫌が悪くなっているので、ちょっと厄介かも。
 そんなに自分を責めなくても…と思うのだが、基本的にマイナス思考の和衣は、一度悪い方向に考え出すと、どんどん落ちて行ってしまうので。

「和衣、顔上げてよ」
「ん゛ぅ~…やぁだ…」

 俯いている和衣を抱き寄せて、ふわふわの髪を撫でながら言ってみても、和衣はイヤイヤと首を振って、祐介の胸を押し返すばかり。
 それでも祐介は腕を解かず、そっと和衣のつむじや耳や頬にキスを落としていく。
 甘やかすようなキスも、和衣は首を振って逃れようとするけれど、祐介はそれが本気で嫌がっているんじゃないと分かるから、やめない。…だって和衣が本気の力を出せば、この腕の中から抜け出せないことはないから。

「ヤダ、ゆぅ…」

 和衣がどうしても顔を見せてくれないから、祐介は、片手で和衣の顎を捉えて上を向かせれば、やはり和衣は、拗ね拗ねの声を上げて抵抗を試みる。
 でも全然うまくいかなくて、思うようにいかないことが、余計に和衣の機嫌を損ねてしまうみたいだけれど、祐介は構わず、和衣のアヒルみたいになっている唇にキスをした。

「ぅ゛ー…」
「かぁず」

 唇を合わせたまま名前を呼んで、再びキス。
 何度も唇を触れ合せていたら、いつの間にか和衣の眉は、カタカナの「ハ」みたいに下がっていた。

「も…、ゆぅ、俺のこと、甘やかしちゃダメ…」
「何で?」

 さっきまでの機嫌悪い顔じゃなくて、今はもう、ちょっと泣きそうな表情。
 自分が悪い、て思っているのに、祐介が和衣に優しくしてくれるから。そんな優しい人にひどい態度を取ってしまったから、和衣はますます自分が嫌になる。



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1. ヤバい! もしかして、今の見られた!? (6)


「…俺が悪いから。も…俺こんななのに、きっとあの子のほうがずっといい子で、俺なんか…」

 ネガティブ和衣が発動したのか、泣きそうな顔で、唇をアヒルさんみたいにして、和衣は自分のこと卑下する。
 しかも、自分で言っていて余計に悲しくなってきたのか、和衣はせっかく上げてくれた顔を、また俯かせてしまう。

「俺は、あの子じゃなくて、和衣のことが好きなんだけど」
「何で…。俺なんかこんな…、」
「こんなでも」

 祐介は、和衣が大変嫌悪している自分の嫉妬深さを、実は結構嫌いではない。…いや、嫉妬深いのが、というより、それをがんばって隠そうとしている和衣がかわいいから、好きなのかな。
 でもとにかく、和衣が自分で嫌いだと思っている部分もみんな引っ括めて、祐介は和衣のことが好きなのだ。

「今日のこともさ、別に和衣じゃなくたって、あーゆー場面見て、普通でいられる人なんて、そんなにいないと思うし」

 祐介だって、和衣が他の誰かから告白されている現場を目撃したら、平静でなんかいられない。
 いや、目撃しなくたって、そんな話を聞くだけでも嫌だ。
 だから、和衣に見られたと分かって、『ヤバイ!』と焦ったのは、和衣に嫌な思いをさせちゃったな、て思ったから。疾しい気持ちが何もなくても、やっぱりそれは焦る。

「だから和衣、もう顔上げて?」
「…ん」

 今度こそ素直に顔を上げてくれた和衣に、祐介はキスをする。
 そして、甘い甘いキスを受け入れながら、やっぱりヤキモチ妬きな性格は治さなきゃ! と和衣は、改めて心に誓ったのだった。



*END*



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楽園にガラスの靴 (1)


*「ローンシャークと5つのお題」の続編になります。初めにあらすじみたいのがあるんで、前作を読まなくても通じるとは思うんですが、ネタバレにはなるのでお気を付けください。

s i d e : n a o


 借金の形(かた)に、500万円で徳永さんに売り飛ばされてしまった俺は、とりあえず手に入れた500万円を徳永さんに返済して、これで晴れて自由の身! て思ったのに、徳永さんから『俺が直央くんのこと買ったんだから、直央くんは俺の言うこと聞かなきゃダメなの』て言われて、結局俺は、今でも徳永さんから逃げられないでいる。

 …うん。
 何だかすっごくややこしい。
 ややこしいけど、これが俺の現実だ。

 要は借金取りの徳永さんに500万円で買われてしまった俺は、受け取った500万円を、借金してた張本人の徳永さんに返済するというアホみたいなことをしたわけで、でも結局は徳永さんに借金を帳消しにしてもらったようなもんだから、逆らえないのも事実だ。

 最初は、俺のこと買うとかって、一体何させられんだ? て、超ビビってたけど、今のところ変なプレイとかは要求されてない(しょっちゅうキスはされるけど)。

 つか徳永さん、俺なんかにキスして、何がおもしろいんだろ。
 欲求不満?
 でも徳永さんなら、ちょっと甘い言葉を囁けば、ぶっちゃけ女の子なんて、いくらでも寄って来そうだけど。

 でもそう言うと、徳永さんは『俺は直央くんのことが好きだから、キスすんの』とか言うから、ちょっと困る。
 だってさ、『キスする好き』は、『LOVEで好き』てことでしょ? 徳永さんが好きとか言って俺にキスしたら、徳永さん、俺のこと、LOVEで好きみたいじゃん。
 自分で言うのも何だけど、徳永さんに惚れられる要素、皆無なんだけど。

 それに俺、徳永さんのことは嫌いじゃないけど、だからって、キスしたいくらい好きかって言われると、そうかなぁ…? とか思っちゃうわけ。
 いや、今まで徳永さんのキス、拒んだことはないけど。だって俺、徳永さんに買われた身だし、拒否権はないのかなぁ、とか思って。
 でも、そういう上下関係でも、本当に嫌な相手だったら、こんなすんなり受け入れないだろうから、やっぱ好きなのかな?

「ぅー…ん…」

 てか俺、自分の気持ちなのに、全然分かってない…。
 徳永さんの『好き』が本気か冗談かは知らないけど、もし本気なら、俺がしてることがめっちゃ失礼だってことは分かってる。
 それは分かるんだけど、分かってんだけど、自分の気持ちがどうなのかは、何だかピンと来ない。
 だって俺は今までずっと借金返すためだけに生活してて、恋だの愛だの言ってる暇なかったんだもん(徳永さんに指摘されたとおり、童貞ですけど、何か!?)

「…ケータイ、鳴ってる」

 バカでかいリビングのソファの上で、膝を抱えてちっちゃくなってたら(居心地が悪いわけじゃない。ただの癖)、テーブルの上に放り投げたままの携帯電話が音を立てた。



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タイトルは約30の嘘さまから。thanks!
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楽園にガラスの靴 (2)


 俺のケータイ。
 徳永さんと暮らすようになって、買い与えられたヤツ。
 今までは携帯電話なんて買う余裕も、電話代払う余裕もなかったから持ってなかったんだけど、あったほうがいい、て徳永さんが(半ば無理やり)持たせてくれた。
 でも俺、友だちいないから、電話掛けてくんのは徳永さんだけ(一応、バイト先の店長には教えたけど、掛かって来たことない)。

 鳴ってる電話に手を伸ばせば、相手はやっぱり徳永さん。
 電話のね、表のトコにね、『徳永仁』て名前が出るの。すごいね、携帯電話。

「もしもし?」
『あぁ、直央くん。よかった、あんま出ないから、また電話の出方、分かんなくなっちゃったのかと思った』
「分かるよ、そんなの。ピッてすんの」

 最初のころ、電話が鳴っても出ていいのか分かんなくて、そのままにしてたことが何回かあったから、いまだに徳永さんは、俺がすぐに電話に出ないと、そんときのことを言う。
 もう全然大丈夫なのに。

『俺、もうすぐ帰るけど、帰ったら出掛けるから、準備してて』
「出掛けるの? ご飯は? 今日ね、じゃこと何とかのパスタだよ」
『何とか、て何?』
「忘れた」

 大体、パスタを作ったのは俺じゃない。
 何と徳永さんちには家政婦さんがいて、週に3回くらいやって来ては、ご飯作ってくれたり、部屋の掃除とかしてくれたりすんの(ドラマみたい!)
 今日は俺、バイト休みだったから(借金のためにむちゃくちゃな働き方をしてたときと違って、今は週に1回は休んでる)、お手伝いしようとしたのに、家政婦の純子さんに『これは私の仕事ですから、直央さんは休んでてください』て言われて、結局、全部純子さんがやっちゃった。

 ちなみに徳永さんは、純子さんのことを『純ちゃん』て呼ぶ。純子さんはもう72歳だから、多分ホントのおばあちゃんくらいの年齢だと思うけど。
 でも72歳て言っても、純子さん、ケータイで電話もメールもバンバン出来るし、パソコンもめっちゃ出来んの! 完全に俺よりすごいね。

『純ちゃん、もう帰ったの?』
「帰ったよ」
『じゃあご飯は後。予約の時間があるから。帰ったら、あっためて食べよ? つーことで、支度しといてね』
「えー」

 俺はまだ反論したかったのに、徳永さんは勝手に喋って、勝手に電話を切った。
 ねぇ、徳永さんが帰って来るまでの間に、俺だけ食べてちゃダメ? じゃこのパスタ…。



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楽園にガラスの靴 (3)


 とりあえず着替えるだけ着替えて、徳永さんを待ってたら、さっき一体どこから電話してたのか、10分もしないうちに徳永さんが帰って来た。

「直央くん、出掛けるよ。続きは車の中で。はい立って」
「んー」

 練習のために純子さんのケータイにメールしてたのに、思いがけず徳永さんが早く帰って来ちゃったから、まだ半分しか完成してない。
 徳永さんは『車の中で』て言うけど、車の中でケータイ弄ってると気持ち悪くなっちゃうから、せっかく打ったメールだけど、諦めて閉じる。

「ほら行くよ」
「はーい」
「…」

 急いでるみたいだし、すぐにケータイ閉じて立ち上がったのに、なぜか徳永さんがジッと俺のことを見てる。
 何? 俺、変な格好してる?
 だって支度してろ、て言ったけど、どこ行くのか教えてくんなかったから、どんな格好していいか分かんなかったんだもん。

 俺は服なんて基本、何でもいいんだけど、なぜか徳永さんがいっぱい買ってくれたから(変な格好で隣歩かれると、恥ずかしいのかな)、一応それを組み合わせてみたんだけど…。

「徳永さん。ダメ? この格好」

 ドレープTシャツの上にカーディガンを重ねて着てるんだけど……どうだろ。
 そんなに変な格好とも思わないけど、徳永さんと出掛けるトコは、ちゃんとした格好じゃないとダメなトコもあるから(面倒くさい!)、もしかしたらこの格好、ダメなのかな。
 だったら、どんな格好がいいか、最初に教えててくれたらよかったのに!

「ちが…直央くん、めっちゃかわいい!」
「はい?」

 徳永さんて、よく「かわいい」て言うんだけど、俺なんかのどこ見てかわいいとか思うのかな。
 これでも一応、23歳男子ですけど、俺。

「うぐっ」

 かわいいって何だよー、て思ってたら、徳永さんにギュッと抱き締められた。
 苦しい…。

「すごい似合ってるよ、直央くん」

 きっと女の子はメロメロになっちゃうんだろうなぁ、ていう甘い声で、徳永さんが俺の耳元に囁く。
 何か耳に息が掛かって、擽ったいよ。



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楽園にガラスの靴 (4)


「徳永さ……んーっ」

 離して、て言おうと思ったのに、それより先に唇を塞がれてしまった。
 何で? 何で? 出掛けるんじゃないの? 急いでたんじゃないの? なのに何でキス……く…口の中に舌がっ…!
 これから出掛けるはずなのに、そのためにケータイしまって立ち上がっただけなのに、何でこんなことになってんのー!?

「うぅんっ…! ふぁっ」

 徳永さんの腕の中でジタバタもがいてたら、ようやくキスから解放された。

「直央くん、こういうキスするときはね、鼻で息すんの。分かった?」
「ぅー…」

 いやいや、ちょっと待ってよ。
 何で俺、こんなとこでキスのレクチャーとか受けてんの?
 確かに俺、何回キスしても、全然うまくなんないけど…。

「徳永さん、出掛けるんじゃないの?」
「出掛ける出掛ける。だって直央くんがかわいかったから。似合ってるよ」

 そう言って徳永さんは、俺のほっぺにキスをした。
 …こういうときは、鼻で息しなくてもいいのかな?

「徳永さん、どこ行くの?」

 ポテポテ徳永さんの後ろをくっ付いてって、エレヴェータに乗り込む。
 そういえば、まだどこに行くか聞いてなかった。

「俺の行き付けのテーラー」
「…………。てーらー」
「テーラーていうのはね、スーツとかの仕立てをしてくれるところ。直央くんのスーツ作ってもらおうと思って」

 俺が『テーラー』の意味が分かってないと思ったのか(いや、分かってなかったけど)、徳永さんがわざわざ説明してくれる。
 それにしても、スーツを作る? 俺の?
 スーツって、出来上がってるの、買って着るんじゃないんだ??

 よく分かんない…て思ってる間に、車に乗せられる。
 徳永さんの車、左ハンドルでかっこいいんだー。多分、外車(車種とかよく分かんない)。

「でも何で急にスーツなんて? 俺のスーツ? 俺、スーツ着るの?」

 俺にスーツを着る用事なんかない。
 仕事だって、コンビニとガソリンスタンドだから制服あるし、仕事に行くまでだって、別にスーツじゃなくていいのに。



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楽園にガラスの靴 (5)


「今度のパーティー、直央くんも連れて行きたくて」
「パーティー?」

 え? はい?
 パーティー?

 …………。
 ……………………。

「え、パーティー?」

 あまりにも『パーティー』て言葉と俺が結び付かな過ぎて、ポカンとなっちゃう。
 何で俺がパーティーに連れてかれんの? とも思うけど、それ以前に、お金持ちの人って、普段の生活の中にパーティーとかがあるわけ?

「関連会社のね、創立10周年パーティー」

 俺が、はわー…て、あんまりにもポカンと口を開けてたら、徳永さんがそう教えてくれた。
 そんなことでパーティーとかすんだ。すげぇ。
 てか、そんなとこに、俺なんかが行っちゃっていいわけ? 全然関係なくない?

「俺も行かなきゃいけないの? 関係ないのに」
「招待客の俺が連れてくんだから、全然問題ないよ。いいの。俺が連れて行きたいんだから」
「うー…」

 だとしても、何か気乗りしない。
 だってそんな、パーティーなんて、どんなふうにしてたらいいか分かんないし、絶対に場違いすぎる!
 …ヤダなぁ。
 でも俺、徳永さんに買われたわけだし、やっぱ言うこと聞かなきゃダメかな。

「でも直央くん。パーティーに行けば、おいしいご飯が食べれるよ、タダでね」
「えっご飯!? タダで!?」

 口には出さないけど、あーヤダヤダ…て思ってたのに、徳永さんの『おいしいご飯』て言葉に思わず反応してしまう。
 しかもタダとか!
 俺、『タダ』て言葉には弱いんだよね。貧乏が長かったせいかな。
 よく、『タダより怖いものはない』て言われるんだけど、それは分かってるんだけど、でもやっぱ、タダ飯の魅力には敵わない。

「行く? 直央くん」
「行く行く!」

 タダでおいしいご飯!
 徳永さんのおかげで、今は毎日ちゃんとご飯食べれてるけど、つい、食べれるときにはちゃんと食べとかないと! て思っちゃうんだよね。

「グフフフフ」
「直央くん、パーティー楽しみになった?」
「うん、ご飯!」
「……ご飯。まぁ…、直央くんが楽しみなら、俺も嬉しいけど」

 純子さんのご飯もおいしいけど、でも! でもでも!
 パーティーのおいしいご飯、楽しみっ!



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楽園にガラスの靴 (6)


 駅近くのでっかいビルの地下駐車場にやって来て、でもなぜか徳永さんは駐車スペースじゃなくて、車寄せみたいになってるところに車を停めてしまった。

「はい、直央くん、降りて」
「え、うん」

 車、ここに停めんの? ここ、車停めるトコじゃなくない? て思いつつ、徳永さんに促されるまま車を降りる。
 混んでるけど、空いてるスペースならまだあるのに、何で?
 てか、俺が頭の中、「?」でいっぱいにしてるのに、徳永さんは何も言わないまま、さっさと歩き出してるし。

 俺、付いてったほうがいいの? それともここにいたほうがいいの?
 徳永さんにはいつものことかもだけど、俺は全然分かんないんだから、さっさと行かないで、どうしたらいいか教えてくれたらいいのに!

 そんな俺の気も知らないで、徳永さんはビルの入り口じゃなくて、そのそばの受付みたいなトコで何かしてる。
 何だよ、もぉ。

「行くよ、直央くん」

 わけ分かんなくて、俺が1人でプンプンしてたら、戻って来た徳永さんは、もう車をほったらかしで、ビルのほうに進んでっちゃってる。
 車、あそこに停めとくの? いいの? て思って車のほうを振り返ったら、スーツ姿の男の人が、徳永さんの車に乗ってた。

「車、何であんなトコ停めたの? あの人、乗ってっちゃった」
「バレーパーキングって言ってね、代わりに駐車してくれんの」
「は?」

 …代わりに?
 代わりに車停めんの?
 はい?

「でもだって、あの車、自分で車停めてるよ?」
「こっちはセルフなんだろ? バレーの駐車スペース、向こうだし」
「へ…へぇー…」

 つーか何、徳永さんのこの落ち着きよう。
 俺、めっちゃ驚いてんだけど。これって全然驚くトコじゃなかった?

「でも何で、代わりに停めてくれる人がいんのに、みんなそうしてもらわないの?」
「何でだろ。お金掛かるからかな?」
「えっ、お金掛かんの!?」
「掛かるよ、1回1,000円だけど」
「…………」



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楽園にガラスの靴 (7)


 い…1回1,000円…。
 徳永さん、今すっごいサラッと言ったけど、わざわざ1,000円払って、車停めてもらうの? え、1回ごとに1,000円払って、車停めてもらうの?
 あ、ビビりすぎて、おんなじこと2回言っちゃった。
 いや、だってビビるでしょ、そりゃ。
 1,000円払って、代わりに車停めてもらうって、何それ!

 それは徳永さんの車庫入れが下手とか、そういう問題じゃないよね? 普段は普通に駐車してるし。
 てか、サービスとして成り立ってるわけだから、他にも利用してる人がいるってことだよね?
 何だそれ! セレブ、意味分かんねぇ!

「直央くん? 行くよ」
「…………」
「なーおくん」
「うわぁっ」

 意味分かんな過ぎて呆然としてたら、徳永さんにグイって肩を抱かれた。
 ちょっちょっちょっ。
 慌ててジタバタしてみても、その手は緩まらず、結局エレヴェータのほうまで引っ張られていった。

「せっかくだから、フルオーダーにしようね。どんなデザインが似合うかな」
「はぁ…」
「やっぱブラックスーツかな。まぁそんな堅苦しいパーティーでもないし、カジュアルめでもいっか。ね?」
「…………、はぁ…」

 …ゴメンなさい。
 何か適当に頷いたけど、徳永さんの言ってることの、半分も分からないです。とりあえずスーツ、作るんだよね? それさえ分かってればいいよね?

 ていうか徳永さん、何でさっきから俺の前髪撫でたり弄ったりしてんだろ…。
 エレヴェータの中、2人きりだからいいんだけど、……寝癖、付いてた?

「あの、徳永さ…」
「はい、着いたよ」

 俺が前髪のこと言おうとするより先、エレヴェータが目的の階に到着したみたいで、扉が開いてしまった。
 ま、もういっか。

 勝手の分かんない俺は、徳永さんの後ろをただ付いてくだけ。あんまキョロキョロしてるとカッコ悪いかなぁ、なんて思ってたら、どうやらお店に着いたみたい。
 ここがテーラー? ショーウィンドウ越しに、スーツを着た頭がないマネキン人形がいっぱい並んでこっちを向いてる。

 いかにも高級そうな雰囲気に、さっそく怖気付きそうなんですけど…。
 だって、こんなカジュアルな格好で入るお店じゃないっ!



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楽園にガラスの靴 (8)


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、徳永様」

 何か怖くて徳永さんのシャツの裾に掴まってたら、お店の人から声が掛かって、ビックリして肩が跳ね上がった。
 声を掛けてきたのはスーツ姿のオッサンで、それ以外にも店内には、徳永さんくらいの年齢の男の人とか、それよりもうちょっと年上っぽい人とか、女の人もいる。
 スーツ作るお店の店員さんだから、みんなビシッとスーツを着こなしてるけど、スーツ姿は、徳永さんのほうがカッコイイかな。

「今日はこの子のスーツ選びたいんだけど。パーティー用に」

 徳永さんに、両肩に手を置かれ、クルリと店員さんのほうを向かされる。
 うっ…オッサンと目が合った(いや、オッサンて言い方は失礼だけど、でも名前分かんないし)。

「どのようなパーティーになりますか? すでにスーツのタイプはお決まりで?」
「んー関連会社の10周年記念パーティーなんだけど、そんな堅苦しいパーティーでもないから、カジュアルめでもいいかなぁ、て話してたんだ」
「さようでございますか。ビジネスとの兼用はお考えですか?」
「いや、パーティーオンリーでいいよ」

 …何かこのオッサン、こないだテレビでやってた執事喫茶の店員さん(執事さん?)みたいな雰囲気だな。
 つか徳永さん、お客様だから別にいいかもだけど、タメ口…。そういうもんなのかな?

「では、生地選び等に移りますので、どうぞこちらへ」

 オッサンがめっちゃスマートに俺らのことを案内してくれる。
 てか、店の中には出来上がってるスーツもあるのに、わざわざ一から作るんだ…。しかも今、生地選ぶとか言ったよね? そっから!?

「…………、…え?」

 …ていうかね、俺ね、今めっちゃ怖いモン見た。
 テーブルに平積みされてたワイシャツ、値段のプレートに12,600円て書いてある…。
 出来上がってるワイシャツの値段がそんなにすんの、生地選んでスーツ作って、て……もしかしてすんごい値段なんじゃ…。

 …………………………。

 ちょっ…待って!
 俺、そんなにお金なんか持ってない!

 借金は一応全部返済して、生活費もほぼ徳永さん持ちだから、俺の今の稼ぎは全部貯蓄してんだけど(ある日突然、ホームレスになるってことを経験済みなので)、だとしても、コンビニとスタンドのバイトだけじゃ、高が知れてる。
 そんな高いモン、買えるわけがないっ!!!



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楽園にガラスの靴 (9)


「直央くん、何? おいで?」

 急に足を止めてしまった俺を振り返って、徳永さんが手招きするけど、そんなことされても、俺は立ち竦んだまま首を横に振るだけ。
 だって無理だもん。
 無理無理無理無理。ぜぇーーーったい無理!!

「直央くん?」
「俺、やっぱ帰る…」
「は? 何言ってんの?」
「だ…だって、スーツ作るとか、絶対高いし…! 俺、そんなの買うお金ないっ…」

 カッコ悪いけど、正直に言うしかない。
 だってこのまま付いてって、話がどんどん進んじゃえば、絶対に断れなくなるに決まってるから。
 ――――今だったら、まだ逃げられる!

「お金って……スーツの代金のこと?」

 逃げようと思ったのに、執事みたいな店員のオッサンに聞こえないよう、徳永さんが小さい声で聞いてきたので、コクリと頷いた。

「そんなの俺が払うから、直央くんは何も気にしなくていいよ」
「…………はい?」

 えーっと…。
 徳永さん、今何つった?

 …………え?

「ちょっ…徳永さん、それって…」
「だから、スーツは俺が買うんだから、直央くんは心配しなくていいってば」
「は? え? 俺の着るスーツじゃないの??」

 ぅん?
 徳永さん、自分で着るスーツ、買いに来たの??

「直央くんの着るスーツだよ」
「なのに何で徳永さんがお金払うの??」
「え、俺が着せたいから。つか、俺がパーティー連れてきたいって、直央くんのスーツ買いに来て、そのお金直央くんに出させるとか、そんなのむちゃくちゃでしょ」
「徳永さんの言ってることがむちゃくちゃだよ」

 大体、関係ない俺をパーティーになんか連れてかなきゃ、スーツだって買わなくて済むのに…。

「むちゃくちゃじゃないよ。別にスーツくらい、何百万もするわけじゃないんだし」
「そうだけど…」



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楽園にガラスの靴 (10)


 何百万はしないけど……でも今の言い方からして、多分10万以上はするよね、スーツ(何たって、ワイシャツが1枚12,600円だもんね)。
 何百万とは言わないけど、結構いいお値段がするはずのスーツを、俺に買ってくれんの? パーティーに連れてくために?
 こんなの、冗談で済む話じゃないよぉ…。

「いいから。はい、おいで」
「ぅー…」

 俺はまだ納得いかなかったけど、でも結局のところ俺に拒否権はないから、渋々徳永さんに腕を引かれて、連れて行かれた。

 でも!

 執事みたいなオッサン(高瀬さんて名前だった)が、いっぱい生地を見せてくれんのはいいんだけど、はっきし言って、意味分かんない。
 いや、めっちゃ丁寧に説明してくれんだけど、だって俺、何の知識もないから、何がいいかなんて分かるわけがなくて、2人が喋ってんのを、とりあえず黙って頷いててみる。

 きっと高瀬さんは、俺が何にも全然分かってないことなんて、お見通しなんだろうな。
 そんなヤツにスーツ着られるなんて、ホントは不本意だろうなぁ。

 ……つか、自分の分かんない、興味のない話をずっと聞いてると、ホントに眠くなってくるんだなぁー。
 うぅー眠い……けど、ここで眠そうな顔したり、あくびしたりとか、絶対ダメ。それは分かってる。分かってるけど、どうしよう……本気で眠い。

「…くん、直央くん」
「うぇい!?」

 眠くてボーとなってたら、急に肩を揺さぶられて、ビクッてなった。しかも変な声出たし。
 …もしかして半分寝てたの、バレた?

「採寸するよ、立って」
「さいすん?」

 さいすん……採寸て、サイズ測るってことだよね?
 え、今?

「えっと…」

 …俺、こんな服着てるけど、それでもいいの?
 そんな、こんなことになるんだったら、最初からシャツとか着て来ればよかったんじゃ…。
 徳永さん、このお店でよくスーツ作ってるみたいだし、そういうの分かってんだったら、来る前に教えてくれたらよかったのに!

「ん? だってシャツも買うつもりだったし。試着して、それで採寸してもらえばいいかなぁ、て思って」

 俺が恨めしげに徳永さんを見てたら、徳永さんは悪びれたふうもなくそう言った。

「今度はシャツも作ってもらおうね」
「えっ!?」

 シャツも一から作るとか、そんなのあるの!?



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楽園にガラスの靴 (11)


s i d e : j i n


 親や親族が(それなりに大きい)会社を経営していると、何だかんだで、小さいころから会社を継がせるために、いろいろ教え込まれてくる。
 いわゆる帝王学とでも言おうか。

 俺もまさしくそのとおりに育てられたけれど、でも他の兄弟に比べて厄介な性格だったせいで、大学を出た後、すんなり親父の会社に入りたくないとか思っちゃって、でもそんなことが許される環境でもなかったから、結局、関連の金融会社に納まった。

 世間勉強したい、なんて見え透いた言い訳、多分あのタヌキ親父、見抜いてないわけがなかっただろうけど、(表面的には)快くOKしてくれた。
 まぁ、最終的には本社に戻ることが条件だったんだけど(いつかはいつか、て思ってる)。

 ちなみに金融会社もいろいろあるけど、俺が働いてんのは消費者金融の関係。
 しかもやってる仕事は、いわゆる取り立て。借りた金を返さない人に、返せー! て言うアレね。

 でも取り立ての仕事て、みんなが想像してるような、怖いモンじゃないんだよ。
 暴力行為はもちろんだけど、大声上げたり、乱暴な言葉使ったりすんのも違法行為だから、やっちゃいけないの。それ以外にも、深夜の取り立てはダメ、頻繁に行き過ぎるのもダメ、勤務先に行くのもダメ、て結構制限が多いから。

 そういうことすると罰金とか業務停止命令とかになっちゃうし、それ以前に、企業イメージが悪くなって、借り手がつかなくなっちゃう可能性もあるから、業界全体で改善傾向。
 違法業者じゃない限り、取り立て業務はそんなに怖いもんじゃない。

 けど、やっぱ取り立て仕事は、精神的にタフじゃないとやってけないと思うし、正直、本気でやりたくない! て思ってるヤツもいる(残念ながらウチの会社にも)。
 幸いにも俺には向いてたみたいで、成績は今のトコ好調続き(だからこそ、親父や兄弟の働いてる本社に戻らなくていい口実になってる)。

 …そんな中で出会ったのが、瑞原直央くん。
 まだ23歳だってのに、600万近い借金があって、お友だちと2人でコツコツ返し続けてた子。

 お人好しな性格が災いして、そのお友だちくんには逃げられちゃうし、なのにその友だちを恨んだり絶望したりすることなく、本気で1人で返済してく! て言い切っちゃうし。
 仕事柄、いろんな人を見てるけど、直央くんの、あのちょっと抜けててお人好しな感じはクセになる。

 そんでついつい、直央くんトコは多めに仕事してしまいました! (公私混同厳禁! て、ウチの桜子(さくらこ)お姉さんから言われるので、内緒で。つーか、違法行為のようなこと、若干したのも、内緒)

 ちなみに桜子さんは、ウチの会社で、社長の次くらいに偉い立場の人。
 てか社長は俺だけど。
 でも俺は基本、現場に出て仕事してるから、会社の中では桜子さんが一番偉いって言っても過言じゃない。



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楽園にガラスの靴 (12)


 で、桜子さんには、残り500万もあった直央くんの借金が一気に返済されたことが切っ掛けで、直央くんの存在がしっかりバレてる。
 だってその500万を払ったの、俺だから。

 別に、会社の金を遣い込んだわけでも、勝手に借金を帳消しにしたわけでもなくて、俺が自分の金を直央くんに上げただけだから、何も問題ないんだけど、「何で徳永くんがその子に500万上げなきゃなんないのー!?」て、桜子さんに詰め寄られ、自分の、直央くんに対する気持ちを打ち明けるハメに…。

 いやまぁ、そういうことですよ。
 500万の借金肩代わりしてもいいとか思えるくらい、好きになってたわけですよ。直央くんのこと。
 もちろん、ただで肩代わりしたわけじゃなくて、ずっと俺のそばにいてね、て交換条件は付けたんだけど。

 いやいや、金で愛を買ったとか言わないで!
 借金抱えたままじゃ、直央くん、絶対に誰のことも好きになんないと思っただけから!

 でも、そこまでして、やっと直央くんを俺のところに引き留めたのに、何ていうか……直央くんに俺の気持ち、伝わってない感、満載…。
 一応、ちゃんと告ったんだけど、直央くんには、金持ちの道楽程度にしか思われてない気がする。
 何で関係ない桜子さんには伝わってんのに、直央くん本人には全然分かってもらえないんだろ…。

 けど、いくら借金を肩代わりしてもらった負い目があるとしても、キスしても、ギュッてしても、そんなに嫌がる素振りがないから、嫌われてるわけじゃないとは思うんだけど。
 とりあえずそこんトコは、時間を掛けてでも、何とか分からせたい。
 俺のこと、好きにさせたい。



*****

 関連会社の創立10周年記念パーティー、親父の手前、時々はこういうのに出とかないといかないから、渋々ながらお呼ばれするはめに。
 気乗りしないパーティーでも、好きな子と一緒なら、いつもよりかは楽しめるかな、ていう下心で、直央くんを誘ったんだけど。

『俺も行かなきゃいけないの? 関係ないのに』

 …直央くんのノリがいまいち悪い。
 今まで付き合ってきた子なら、そんなこと言えば、こっちのテンションお構いなしに喜んだのに、なぜか直央くんは、全然乗り気じゃなくて。

 それでもと思って(連れて行くのは確定なので、出来れば嫌々でなく一緒に来てほしいから)、おいしいご飯を出しにしてみれば、即答でOKの返事。
 いや、喜んでくれるならそれでいいけど…………俺、ご飯以下?
 切なくなりつつも、行きつけのテーラーで、直央くんのスーツを作ってもらったんだけど。



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楽園にガラスの靴 (13)


「徳永さーん…、俺、ホントに行かなきゃいけないの?」

 パーティー当日。
 こないだ仕立てたスーツに着替えた直央くんが、困ったように眉を下げている。
 うん、やっぱそのスーツ、直央くんにすごく似合ってる……て、いやいやいや、何で今更そんな困った顔?

「行くよ? おいしいご飯食べるんでしょ?」
「そぉだけど…。だって俺なんか行ったって、絶対場違いだし。俺、何かそういうマナーとか知らないから、絶対徳永さんに恥かかせちゃう…」

 おいしいご飯で直央くんを釣って、スーツを作るところまではよかったけれど、実際にパーティーの日が近づくにつれ、不安が増して、当日にそれが爆発しちゃったみたい。
 食事は立食だから、テーブルマナーなんてそんなに気にしなくていいし、他の出席者なんて、俺だって半分も分かんないんだから、心配しなくていいのに(パーティーは人脈を広げるチャンスだけど、直央くんはそんなことする必要ないし)。

「やっぱ俺、お家いる…!」
「せっかくスーツ作ったのに?」
「う…」

 寝室に逃げ込もうとする直央くんを捕まえ、腕に抱き寄せる。スーツのことを持ち出せば、直央くんは気まずそうに目を逸らした。
 俺的には、そんなに高い買い物をしたつもりはないんだけど(どんなに高くたって、直央くんのスーツ姿が見れるなら安いもんだ)、直央くんとしては、自分のために金をたくさん使わせてしまったという負い目があるらしい。
 そんなつもり全然ないのに、何だか脅してるみたいでいい気分じゃないけど、そうでもしないと、ホントに直央くんは今日一緒に来てくれなそうだから。

「じゃ…じゃあこのスーツ、返してくる!」
「ブッブー。直央くん、こないだ採寸してこのスーツ作ったの、覚えてないの? オーダーメイドなんだから、返品はきかないの」
「うぅ…」

 逃げ場のなくなった直央くんは、ガクリと項垂れた。

「大丈夫だから。今日のはそんなに堅苦しいのじゃないから、そんなに緊張しないで。俺も一緒なんだし、何も心配しなくていいから」
「ぅー…」

 いまいち納得してないみたいな直央くんの顔を上げさせて、首元のアスコットタイを整えてやる。
 ついでに頬にキスも。
 頬にキスすると、擽ったそうな顔をするのが、かわいい。

「ホラ、行くよ、直央くん」
「ぅんー…」

 嫌だ嫌だと言いながらも、最終的には俺の言うことを聞き入れてくれる直央くん。
 …やっぱ、借金を帳消しにしてもらった以上、俺の言うことは聞かなきゃ、て思ってんのかな。俺は、そういう力関係になりたいわけじゃないのに。



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楽園にガラスの靴 (14)


「スーツ、すごく似合ってるよ、直央くん」

 エレヴェータの中で、またそう言ったら、直央くんは、困ったように視線をキョロキョロさせている。
 直央くんはよく、『何で俺に「かわいい」て言うの?』とか、『俺のどこがかわいいの?』とか言うんだけど、かわいいんだから、仕方がない。

 下に待たせていたハイヤーは黒塗りのベンツSクラスで、直央くんは車種が分かんないのか、「こ…高級車…?」と首を傾げていたので、「ベンツだよ?」と言ったら、なぜか蒼褪められた。
 乗り心地がいいし、車内が静かだから、ベンツのSクラスは結構好きなんだよね。

「こ…これに乗るの?」
「そうだよ、はい、直央くん乗って」

 お客様にドアを開けるのは運転手の役目だけれど、直央くんのために、俺が開けてあげる。運転手が「あ」という顔をしたが、笑顔で返すと、1歩踏み出そうとしていた足を引っ込めて姿勢を正した。
 丁寧にドアを閉めた運転手が運転席に乗り込めば、静かに、滑らかに、車は走り出す。

「そんなに緊張しないで? パーティーこれからなのに、疲れちゃうよ?」

 背筋をピンと伸ばしてシートに座ってる直央くんに声掛けたら、ビクンと肩を跳ね上げて、俺のほうを向いた。
 ものすごい顔が強張ってる…。

 リアシート、真ん中の部分はなかなか座るもんじゃないけれど、俺は少しでも直央くんのほうに近づくために、そっちに行って、直央くんの腰を抱き寄せた。

「ちょっ…」

 焦った直央くんが声を出そうとしたけど、静かすぎる室内では、ちょっとの声も大きく聞こえる。
 それに慌てて、自分の口を自分で塞ぐものだから、かわいくて仕方ない。

 どうせ運転手は、金持ちがアホなことしてる、くらいにしか思ってないだろうし、車内で見聞きしたことを口外しないことも分かっているので、俺は直央くんを抱き寄せる手を止めない。

「徳永さんっ…」
「ん? いや、直央くんの緊張をちょっとでも解してあげようと思って」

 咎めるような直央くんの声に、笑顔で返す。
 かわいいし、本当はキスくらいしたかったけれど、『外でキスするな~!!!』と桜子お姉さんからキツク言われているので、やめておく(しかも今は、緊張してる直央くんが、キスを切っ掛けにブチ切れるかもしれないので)。



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楽園にガラスの靴 (15)


「大丈夫だよ?」

 緊張のあまり、ギュッと握り締めていた直央くんの手を解いて、その目を見ながら言う。片手は直央くんの腰を抱いたまま、もう片方は直央くんと手を繋ぐ。
 これで、向かう先が気乗りしないパーティーじゃなかったら、最高のデートになるのに。

「着いたよ」

 パーティー会場であるホテルの前に車が停まって、ホテルのドアマンがハイヤーのドアを開けてくれる。
 このホテルは何回か利用したことあるけど、施設も接客もいいし、直央くんの気を惹くための料理も最高だから、直央くんが初めて来るパーティーの会場としては、申し分ないと思う。

「う…うぅ~…」
「ん? 何、どうしたの、直央くん」

 さすがにホテルの中にまで直央くんを抱き寄せて入れないから(相手が直央くんだからとかでなくて、いくらそれほど堅苦しくはないパーティーだとしても、マナーとしてよろしくない)、隣を歩かせてたんだけど、いつの間にか直央くんの歩く速度が遅くなっていって、ふと見たら立ち止まっていた。

「ちょっ、ちょっと、待って、徳永さんっ」
「ぅん? 待つよ? 何?」

 きっと直央くんが会場の雰囲気とかに慣れるのに時間かかると思ったから、余裕を持って出て来てるから、いくらでも待ってあげられる。
 直央くんが立ち竦んでるところまで戻ったら、直央くんにガシッと腕を掴まれた。

「ちょっ、ッ、緊張して、足動かな、くなった…!」
「え?」

 何それ、て思わず笑いそうになったけれど、直央くんが本気で困惑している顔をしてて、冗談なんかじゃないって分かった。
 そっと、直央くんの頭を撫でてあげる。
 …それは、どっちかって言うと、恋人にしてあげるていうより、お母さんが子どもにしてあげる、みたいな感じだけれど。

「まだ少し時間あるから、ラウンジで何か飲む? 落ち着くよ?」

 しかしそう提案してみても、直央くんは首を横に振るばかり。
 パーティーにマナーがあるとしたって、ここはホテルで、俺らはお客だから、そんなに緊張しなくてもいいんだけれどな(ホテル側も、客にはリラックスして過ごしてもらいたいと思ってるだろうし)。

「じゃ、あそこにちょっと座る?」
「平気っ…!」

 両手を握りこぶしにしてる直央くんは、どうやらそうやって気合を入れてるみたい。
 えっと…だから、そんなにガチガチにならなくても…。



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楽園にガラスの靴 (16)


「行こっ、徳永さんっ――――うわっ!」
「ちょっ直央くん!」

 俺の腕を掴んだまま、さぁ行くぞ、と気合を入れて1歩を踏み出した直央くんは、そのまま足を縺れさせて、さっそくよろけてる。
 咄嗟に直央くんの体を捕まえたので、何とか転ぶことだけは免れたけど…。

「直央くん、大丈夫? 足、挫いてない?」
「ひぅ…」

 直央くんをちゃんと立たせて、その顔を覗き込んだら、眉が下がって、泣きそうな顔をしてた。
 気持ちがすっかり高ぶっちゃってるから、しょうがないんだけど……やっぱり、どっかでちょっと休憩したほうがいいかな。

「もっ…徳永さん、ゴメンなさ…」
「え、何が?」

 急に直央くんに謝られて、何だかよく分かんない。
 それより、こんな無防備な直央くんの顔を誰かに見せたくないから、どこかに連れ込みたいよ。

「俺、全然ダメダメで、まだパーティーこれからなのに、徳永さんに超迷惑かけてる…!」
「え、何で? 何が?」

 別に迷惑だなんて、少しも思ってない。
 俺のほうこそ、直央くんがこんなに緊張するんだったら、無理させなきゃよかった、て……ちょっと反省。

「…直央くん、無理そうなら、やっぱお家……」
「徳永さんっ!」
「は、はいっ」
「俺、パーティーでは絶対がんばるねっ! ちゃんとするからっ!」
「え!? はっ!?」

 無理しないでお家に帰ろっか、て言おうと思ったら、直央くんが、気合たっぷりにそう宣言した。
 いや、行く気になってくれたんなら、それに越したことはないけど、行き先はパーティーであって、戦場じゃないんだから、そこまで意気込まなくても…。

「行こっ、徳永さんっ!」
「あ、うん、えっと…足元、気を付けてね?」

 もう同じ過ちは繰り返さない! とばかりに足を進めた直央くんは、でも右手と右足が一緒に出てる。
 自分でもそれに気付いたのか、直そうとするのにうまくいかなくて、小学校の運動会の入場行進みたいになってる。



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楽園にガラスの靴 (17)


「エレヴェータ、向こうだからね」

 覚束ない足取りの直央くんを、エレヴェータホールへとエスコートする(会場はB1だから、エスカレータで行くほうが簡単だけど、今の直央くんの様子からして、危険な気がしたので)。
 ヒールの高い靴を履いた女の子と歩くときみたいに、速さに気を付けたり、サポートしたり。手が掛かるんだけど、それがいい。

 エレヴェータを降りると、今日は他にもたくさんパーティーが入ってるのか、ロビーは随分混雑してる。
 人の多さに、直央くんはハッと息を飲んだけど、俺は「大丈夫だよ」と、そっと肩を抱いた(キスはダメでも、このくらいは…!)。

「受付するから、ちょっと待っててね」

 物珍しさにキョロキョロしてる直央くんが、迷子になっちゃわないように気に掛けながら、手早く受付を済ませる。
 直央くんには『タダでおいしいものが食べられるよ』てパーティーに誘ったけど、実際にはもちろん会費を払わなくちゃいけない。でも、そんなのはもちろん俺が出すし、直央くんには何も気にさせたくないから。

「さ、行こ?」
「…んっ!」

 実際に会場に足を踏み入れるにあたって、直央くんはもう1度、気合を入れ直した(その姿が、いちいちかわいいんですけど!)。

「うわっ…すご…」

 会場に入るとすぐ、直央くんは感嘆の声を漏らして、足を止めた。
 俺にとっては、見慣れた、いつものパーティー会場なんだけど、直央くんは大いに感動したらしい。
 クロス類が黒で纏められていて、会場全体が落ち着いた雰囲気なんだけど、B1て言っても、建物の構造的に窓があって、外の光も差し込むから暗い感じでもなく、センスがいい。

 …て、俺が会場の様子に感心してたら、何か隣から『きゅるるるる~~~』て音がして、ふと視線を向けたら、えへへ、て笑う直央くんと目が合った。
 あぁ今の、直央くんのお腹の音か。

「ゴ…ゴメンなさ…」
「もうちょっとで始まるから、すぐにご飯食べられるよ」

 恥ずかしそうにしてる直央くんの頭を撫でて、そう教えてあげる。
 時間に余裕を持って出て来たんだけど、何だかんだで結局、会場入りしたのは、開宴の数分前。会長だか社長だかの眠たくなるような挨拶を聞いたら、乾杯だ。

 立食のブッフェスタイルの会場は、中央に料理の並べられたテーブルがあって、その周囲に丸テーブルが配置されてる。
 俺は関連会社の社長て立場だけど、他にも偉い人はいっぱいいるし、直央くんもいるから、主催者に挨拶した後は、あんまり前のステージに近いほうじゃなくて、出入り口付近で、パーティーが始まるのを待つ。



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楽園にガラスの靴 (18)


「人いっぱい…。こんなすごいパーティー開く会社なの、徳永さんすごいねぇ」
「え、いや、俺は別にすごくないよ。すごいのは、この会社でがんばってる人たち」

 パーティーの雰囲気(…と、目の前のご飯)に心を奪われている直央くんは、夢見心地て顔で、ぼんやりとそんなことを言い出す。
 俺は、ただこのパーティーに招待されただけで、別にすごくも何ともないんだけど。

「お飲み物はいかがですか?」
「ぅ?」

 ホワンとなってる直央くんを眺めてたら、接客スタッフがドリンクを持って現れた。
 急に知らない人に声を掛けられた直央くんは、え、何? て感じで首をコテンとしてて、すっごくかわいい…! ――――て、そんな場合じゃなかった。
 俺は、キョトンとしてる直央くんのためにソフトドリンクをお願いして、自分用に白ワインを受け取ると、スタッフを下がらせた。

「これなぁに? もう飲んでいいの?」
「もうちょっとで始まるから、それまでこれ飲んで待ってようね?」
「うん」

 さっきは飲み物すらも喉を通らない、て感じだったけど、ようやく少しは緊張が解けて来たのか、直央くんはグラスに口を付けた。
 その様子に安心して、俺もグラスを少し傾ける。…うん、まぁそこそこうまいかな。

 それから少しして、パーティーを開宴するという司会者の声がする。まずは会長の挨拶。大抵はその後に来賓挨拶があって、下手したら祝電披露なんかあって、それからようやく乾杯だ。
 さっきは『すぐにご飯食べられるよ』て言ったけど、直央くんがご飯にあり付くまでには、もうちょっと時間が掛かりそう。

 直央くん、それまでご飯我慢できるかな、て思って、チラッと様子を窺えば、直央くんは、しっかりとまっすぐに、ステージの上の会長を見てた。
 俺が聞いてても、何言ってんのかよく分かんない挨拶なのに、真剣に聞き入ってるらしい。
 そういえばさっき、『パーティーでは絶対がんばるねっ! ちゃんとするからっ!』て言ってたから、それをちゃんと実行しようとしてるのかな(いいんだけど、無理しすぎないでね)。

『続いて乾杯に移ります…………』

 司会者の声に、専務だかが乾杯の発声をして、ようやく堅苦しい部分は終わり。
 これでしばらくは、気楽に過ごせる。

「じゃ、直央くん、ご飯にしよっか」
「うん」

 立食形式だから、本当は飲食より交流のほうがメインだけど、直央くんをご飯で釣っちゃった手前、やっぱりまずはご飯かな。
 見た目もキレイな料理が並ぶテーブルへ、直央くんを連れて行く。



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