恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2011年10月

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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (16)


「あ、そうだ。ハルちゃん」
「はい?」

 南條の運転する車で連れて来られたパスタ屋の、仕切られた奥の席。
 食べるのが遅い遥希が、まだもごもごとパスタを口に運んでいたら、すでに食べ終えていた琉に声を掛けられ、顔を上げた。

 ちなみに南條は、仕事の電話で席を外している。
 車の中での会話で知ったのだが、南條はFATEのマネージャーなのだという。だが、年齢が1つしか違わないこともあってか、2人の雰囲気はあまり堅苦しくなかった。

「ねぇ、ハルちゃんのアドレスとか教えてくれない?」
「ふぇ!? んぐっ、ケホッ、ケホッ…」
「ちょっ、ハルちゃん、大丈夫!?」

 あまりに思い掛けない琉の言葉に、遥希は思わず噎せ返ってしまった。
 琉に水のグラスを渡され、遥希は慌てて水を飲もうとして、今度はそれが気管に入り掛ける。まったく忙しい様子の遥希に、琉が背中を撫でてくれた。

「大丈夫?」
「は…はいっ。え、あの、はい、てか…………え、アドレス?」
「うん。ハルちゃんのケータイのアドレスとか、知りたいな」

 FATEの水落琉に携帯電話のメールアドレスを聞かれるなんて、ドッキリだとしても、そうそう経験するものではなく、遥希はただただポカンとするだけだった。

「え、あの、え、な…何で…???」

 別に嫌だとか迷惑だとかいうわけではなく、本当に単純にどうして琉が遥希の携帯電話のアドレスを知りたがるのか分からなくて、遥希は目をパチパチさせながら聞き返した。

「ハルちゃんともっと仲良くなりたかったから。…迷惑?」
「そそそそんなことないっ! 全然! 全然迷惑じゃないです!」

 正面から琉に顔を覗き込まれ、その仕草が、まるでドラマのように様になっていてカッコいいものだから、遥希の心拍数は一気に跳ね上がった。

「うはは! そんなに力説しなくても。じゃ、交換しよ?」

 すっかり気が動転している遥希の様子に、琉は吹き出しつつも携帯電話を取り出したので、赤外線で電話番号とアドレスを交換した。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (17)


「水落、次の仕事だけど、」

 遥希が、登録したての琉の電話番号を眺めていたら、南條が戻って来たので、別に悪いことをしたわけでもないのに、遥希はパチンと携帯電話を閉じて、カバンにしまった。

「現場、このまま直接向かうから」
「へ? 何で? 俺、1回家寄りたい」
「時間が変更になったんだ。大した用事じゃないなら、ダメ」
「ケチー」

 琉と南條の会話を、パスタを巻きながらぼんやりと聞いていた遥希は、琉が現場まで直行する理由が、遥希とこんなところでのん気にランチなんかしているからだと気が付いて、慌てて席を立った。

「え、どうしたの、ハルちゃん」

 グラスの氷を、子どもみたいにガリガリ噛んでいた琉が、不思議そうに遥希を見上げた。
 その隣で南條も、呆気に取られている。

「え、え、だってあんまり時間ないんですよね!? こんなとこでゆっくりしてたら…」
「あー、大丈夫大丈夫。こっから向かえば全然遠くないから。水落の家が反対方向なだけ」
「ででででも!」

 南條は、気にしなくていいよ、と笑ったが、琉がいったん家に帰りたがっていると分かった以上、ここはやっぱりそろそろ引き上げたほうがいい気がする。

「いいって。どうせコイツの用事なんて、すげぇくだらないことだし」
「…くだらなくねぇよ」

 南條に言われた琉は拗ねた表情を見せ、それすらも遥希の胸をときめかせてしまうが、今はそれどころではない。

「あのホント、もう…」
「でも今はハルちゃんといるほうが楽しいし、ま、いっか」

 どうしようどうしよう、と遥希が1人でオロオロしていたら、琉が満面の笑みでそんなこと言うから。
 日本中の女の子をメロメロにしてしまう、とびきりのスマイルに、遥希は放心したように立ち尽くしてしまった。

「ハルちゃん、とりあえず座ったら?」
「あ、はい…」

 琉の声に促され、遥希は元いた椅子にペタンと戻った。
 顔が熱くて、グラスに半分くらい残っていた水を、一気に飲み干す。心臓がバクバクしている。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (18)


「小野田くんは、どこまで送ったらいいの? 今日、最初に会った場所でいい? そこから家って近いの?」
「え、あ、俺は…」

 送ってもらうまでしなくても、と言おうと思ったのに、そんな遥希の言葉を遮るように、琉が「せめて駅まで送れよ」なんて言ったので、断り切れなくなってしまった。

「…じゃ、そろそろ行こっか」

 遥希が食べ終わって、一息ついたところで、南條が伝票を持って立ち上がった。

「あ、南條さん、あの、お金…」
「ん? いいよ、ケータイ返してもらったお礼だしね」
「でも、ケータイ落としたの、拾ってもらったのは俺も同じだし…」

 それなのに、遥希だけがお礼にランチをご馳走してもらうのは、何だか申し訳ない。
 こうやって琉と一緒に食事が出来ただけでも、遥希にしたら十分すぎるほどのお礼のような気もするし。

「あー…いや実は、ウチの事務所じゃないんだけど、前にケータイ落としたタレントさんがね、そのケータイ悪用されたっていうか……女性関係バレちゃったり、番号が流出しちゃったりしたことがあって」
「えっ?」
「今回も水落がケータイないっつったとき、すごい焦ったんだけど、結局大事に至らず済んだから……そのお礼。小野田くんはそんなに気にしないで?」

 南條が、遥希の知らない怖い事情を話してくれる。
 遥希がまだぐっすり眠っていたころ、きっと琉と南條は必死で携帯電話の行方を追っていたのだろう。

「そうそう。南條さんが全部出してくれるから、ハルちゃんは何も気にしないで」
「おいコラ水落、お前はもうちょっと反省しろ。つか、昨日小野田くんにぶつかったって、ちゃんと謝ったのか? ケガとかさせたんじゃ…」

 口を挟んで来た琉に、南條は突っ込みを入れつつ、しっかりお小言を述べた。
 昨日の件は、遥希も全然前を見ていなかったのから、全面的に琉が悪いわけではないので、南條さん、琉のことあんまり責めないでー、と遥希は思った。



*****

 遥希はもう1度、送ってもらうのは悪いと断ったのに、結局南條の車の中にいた。ここまで言ってくれいてるのに、断りすぎるのも悪いかなと思ってしまって。
 隣に琉が座っているというだけで、また心臓が高鳴ってきてしまう。

「ねぇ、小野田くんちって、どの辺?」
「え?」

 赤信号で停車すると、運転席の南條が振り返った。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (19)


 どうしてそんなことを聞かれるのか分からなかったが、遥希の答えを待っているようなので、へどもどしながら自分の家の最寄り駅を答えれば、さらに遥希を驚かせる言葉が、南條の口から飛び出した。

「じゃあ家まで送るよ」

 ……………………。

「は…はい?」
「ぅん? 家、送るよ?」
「えっ…、…………………え…、えぇ~~~~ッッあっ、ッ…」

 一瞬にして呆けた頭がクリアになった途端、遥希は驚きのあまり大きな声を上げてしまったが、ここが車の中だと気が付いて、慌てて口を押さえた。
 その様子がおかしかったのか、遥希のあまりにも驚くのがおかしかったのか、隣で琉が大笑いしている。

「あははっ、ハルちゃん、驚き過ぎ」
「だだだだって!」
「え、南條がストーカーになって、付け回されたらどうしようって、心配してる?」
「おい」

 琉の笑えない冗談に、運転中の南條がすかさず突っ込んだ。
 もちろん、遥希はそんなことを心配しているわけではなくて、ただでさえ時間がないようなのに、そこまでしてもらうなんてと思ったから。

「現場がそっちの方向だから。ちょうど通り道になるし、送ってくよ」
「は…はぁ…」

 琉の話は相手にせず、南條は呆けたような遥希の返事を同意のものと受け止めたのか、「近くまで来たら道案内してね」と話をまとめてしまった。

(…………。昨日ぶつかって、ケータイ間違えて持ってっちゃったのを返したら、パスタご馳走になって、お家まで送ってもら…)

 しかも相手はFATEの水落琉だ。
 …もしかしたら、まだ夢を見ているのだろうか。昨日、琉に似たカッコいい人にぶつかったから、ドキドキのしすぎで、都合のいい夢を見ているのかもしれない。
 頬をつねるとか、そういう古典的なことをすれば、夢か現実かハッキリするんだろうか。

「ハルちゃん? ハールちゃん、大丈夫?」
「ぁい!?」

 物は試し…と遥希が自分の頬に手を掛けたら、呆然としている遥希を心配したのか、琉が顔を覗き込んで来たので、遥希はビックリして変な返事をしてしまった。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (20)


「ハルちゃん、おーい」
「何か…………夢…?」
「えぇ? いやいや現実だから」

 何してんの? と、頬をつねろうとしている遥希を、琉は首を傾げつつ見ている。
 ここまでリアルな夢なんて、やっぱりないよね…と、遥希は頬をつねるのをやめた。

「ははは、ハルちゃんて、おもしろくてかわいいね」
「か…」
「コラ水落。男の子に向かって『かわいい』はないだろ」

 かわいいだなんて言われて、ビックリして遥希が言葉を詰まらせたら、南條が琉を窘めた。
 別に遥希は、かわいいと言われて気を悪くしたわけではなくて、琉にそんなことを言われて嬉しいやら恥ずかしいやらでドキドキしただけなので、そんなに責めないであげてほしい。

「ゴメンねハルちゃん。つい。…怒った?」
「ちちち違います! あの、ビックリして…」

 顔が赤くなっているんじゃないかと思って、遥希は両手で頬を挟む。
 …熱い。
 隣で琉の笑っている気配がする。

「…ビックリしただけ? ホントに怒ってない?」
「ひゃっ、ひゃいっ!」

 琉に耳元で尋ねられ、掠めた吐息に遥希は肩を竦ませる。
 裏返った声で返事はしてみたものの、一体何事かと、ゆっくり琉のほうを向く。

(かかかか顔が近いっ…!)

 キレイな琉の顔が、あまりに近くにあり過ぎて、琉のほうを向いたのは失敗だったと後悔した。
 ずっと見ていたいけれど、心臓に悪い。

 そんな遥希の様子に、琉はただ笑っているだけだった。



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「ここでいい?」
「あ、はい…」

 しばらくして南條が車を停めてくれたのは、遥希の住んでいるボロアパートの前。
 生活費以外は、バイト代の殆どをFATEに充てている遥希は、それ以外にお金を掛ける気はあまりなく、ボロくとも家賃が安いなら…と、今どきの大学生なら敬遠しそうなこのアパートに喜んで住んでいる。
 お金遣う優先順位、間違えてんじゃない? と千尋にはよく言われるが、もともと遥希はファッションやインテリアにそんなに興味がないから、構わないと思っていた――――今の今まで。

(こんなボロいとこ住んでんの、琉に見られんの、恥ずかしいな…)

 まさか人生において、自分の住まいを、大ファンのアイドルに見られる日が来るとは思ってもいないから、仕方がないのだけれど、ちょっと恥ずかしい。

「じゃあね、ハルちゃん」
「あ、はい…」

 これでもう会えないなんて残念だな、なんて思う欲深な自分が心のどこかにいたけれど、こんな夢みたいな時間を過ごせただけでも神様に感謝しなきゃだなー…と、遥希は「仕事がんばってください」と言って車を降りた。

「ありがとうございました。ご馳走になったうえに、家まで送ってもらっちゃって…」
「いいって、いいって。こっちこそ、付き合わせちゃってゴメンね?」
「そそそそんなことないです! ホントにありがとうございました!」

 琉の仕草は、どれ1つ取っても遥希をドキドキさせて、笑い掛けられるたびに遥希は心拍数を上げてしまうので、何が何だか分からなくなる前に、遥希はとにかく深々と頭を下げた。

「ふはは、ハルちゃん、ホントかわいい」
「ッ! ぁ、う…」

 また、かわいいと言われてしまった…!

「水落、小野田くん、困ってるぞ」
「いやっ…あの…」

 遥希が真っ赤になって固まっているから、南條が心配したのかフォローをしてくれる。
 遥希も、困っていると言えば困っているが、それは、男のくせにかわいいと言われるのに腹が立つとか困惑するとかでなくて、大好きな琉に(冗談でも)そう言ってもらえるのが嬉しくて…。

「ゴメンね、ハルちゃん。気ぃ悪くしないでね?」
「そ、そんな! 全然そんなことないです!」
「そっか。じゃあ、またね」
「え、あ、はい! え?」



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 勢いで返事をしてしまってから、アレ? と思う。
 だって、『またね』て?

「ハルちゃん、いつでもメールしてきてね?」

 いろいろありがとうございました、と下げていた頭を上げたら、手を振ってる琉の反対側の手には、遥希と同じ機種の携帯電話。
 え? え?

「じゃね」
「あ、はい!」

 笑顔で手を振っている琉に、とても同じように手を振り返すなんて真似は出来なくて、遥希はビシッと気を付けの姿勢をしたまま、もう1度頭を下げた。

 ゆっくりと車が動き出す。
 琉が去って、遥希は気が抜けたみたいになって、しばらくそこから動けなくなっていたが、何とか足を動かして、自分の部屋まで行った。

「は、あ…」

 中に入って玄関の鍵を閉めたら、急に足の力が抜けて、遥希はそのまま土間の部分にへたり込んだ。
 大きく息をつく。

 ……琉。
 琉、リュウ、りゅう。

 嘘みたい。
 あのスーパーアイドルの。日本中の女の子を虜にしてやまないFATEの琉と出会って、一緒にご飯食べて、メアドも交換しちゃった…。

『ハルちゃん、いつでもメールしてきてね?』

 そう言って笑った琉。
 向こうからメールアドレスを聞いて来たくらいだから、その言葉も、単なる社交辞令ではなさそうだが、しかしそんなに簡単にメールなんてしてはいけない相手だということは、遥希にも分かる。

「ふぁ…」

 ドサリ、玄関先に転がる。
 火照った頬に、冷えた床が気持ちいい。

「メール…」

 今日のお礼をするくらいなら。
 そのくらいならいいよね? 家まで送ってもらったんだし、何も言わないのも失礼だよね? ――――ね?



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (23)


 遥希は自分自身にそう言い聞かせて、ポケットから携帯電話を取り出すと、メール画面を開いた。
 琉のアドレスを表示させると、自分の指が震えてるのに気付く。

(…たかが、お礼のメールするだけじゃん)

 大きく深呼吸をして、当たり障りのない文章を打つ。
 変に思われないように。ウザいとか思われないように。
 全部打ち終わって、何度も読み返して、もう1度深呼吸してから、琉に宛ててメールを送信した。

 返事なんか期待していない。
 そんなつもりで送ったんじゃない。
 別に悪いことをしたわけでもないのに、遥希は何度も何度も心の中で言い訳をした。

 いつまでも玄関先に転がっているわけにもいかないから、重い体を起こそうとすれば、床に置いたままの携帯電話がFATEの新曲を流した。

(メール…)

 メールと電話で着信音を分けていて、これはメールの受信を告げるものだ。
 呆けた頭を振って、携帯電話を開く。

「誰…もぉ、こんなときに…………て、えぇっ!? りゅりゅりゅりゅ琉!?」

 今は何も考えられないし、メールなんて……と面倒くさい気持ちでメールを開けば、送信者は確かに『琉』になっている。
 いつもの癖で、『水落琉』とフルネームで登録しようとしたら、『万が一何かあったら大変だから、せめて下の名前だけにして』と琉に言われた。
 初めて、名前だけで登録した人。

 遥希は何度目になるか分からない深呼吸をしてから、本文へと視線を移す。
 先ほどの遥希のお礼メールに対する返事と、最後には『またメールしてね』の一言。

「なななな何で…??」

 琉と会ってから、一体何度ビックリすれば気が済むのかと言うほど、遥希は驚きっ放しだけれど、今もまたこんなに驚いている。
 携帯電話を持つ手も震えている。

(琉……このメール、どういう意味…? またメールして、て…。俺、バカだから本気にしちゃうじゃん…)

 ねぇ…。



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ryu


「あ、ハルちゃんからメール来た」

 遥希をアパートの前で下して、琉と南條の2人きりになった車内。
 しばらくしたら琉の携帯電話が震えて、メールの受信を告げる。ドキドキしながらメールを開けば、それは遥希からで、早速メールくれたんだ、と嬉しくなって、琉は思わず口に出して言ってしまった。

「え、アドレス交換したのか!?」
「ちょっバッ…何振り返ってんだ、前見ろ、バカ!」

 浮かれている琉とは対照的に、遥希とメールアドレスを交換したという事実に驚いた南條が、運転中にもかかわらず、後ろを振り返るから、琉は慌てて運転席の背中を蹴飛ばした。
 冗談でも南條と一緒に、事故になんか巻き込まれたくない。

「え、おい、水落、どういうことだよ!」

 琉に怒鳴られて、慌てて前を向いた南條は、ハンドルを握り直したが、チラチラとルームミラー越しに後ろの琉を見ている。

「したよ」
「何で!?」
「え、メールしたいから」
「アホか、お前はー!」

 琉的には、至極当たり前の答えを述べただけなのに、南條は火を吹くほどの剣幕で怒り狂っている。

「何でだよ、いいじゃん。メール、ご飯ご馳走さまでした、て。送ってくれてありがとう、て。ハルちゃん、超いい子!」
「そういう問題じゃ…、いや、確かにいい子だったけど…」

 琉の大ファンだと言うくせに、握手だのサインだのと騒ぎ出すミーハーな感じでもないし、琉に対してすごく気を遣ってくれるし、でもファンと言うのは間違いないのか、琉の一言一言にビックリしてアワアワしている。
 実のところ、そんな遥希に虜になってしまったのだ、琉は。

「お前、何でそんなウキウキしてんの?」
「何が?」

 南條の低い声に顔を上げれば、ルームミラーに南條の呆れ顔が映っていた。

「お前、彼にかわいいかわいい言い過ぎだから」
「え、ハルちゃん、かわいくなかった?」
「そうじゃなくて! お前が誰のことかわいいって思おうが構わないけど、小野田くん、男よ?」
「そんなの、見りゃ分かるし」

 南條、何を今さら? と琉が首を捻れば、南條は「分かってないー!」と喚き出す。
 驚こうが興奮しようが琉の知ったことではないが、運転中にあまり取り乱さないでほしい……と、自分が南條の血圧を上げているとは思ってもいないのか、琉はのん気に遥希からのメールを読み返している。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (25)


 きっと一生懸命に言葉を選んでくれたのだろう。
 遥希のメールが、このところの琉の荒んでいた心を、少しだけ癒してくれた。

(またハルちゃんに会いたいなー…)

 見た目の派手さほど、琉の女性関係は派手ではないのだが、まさかFATEの水落琉が、仕事が終わったら毎日家に直行して、犬の世話で癒されています、では記事にもならないから、少しの夜遊びを100倍にも書かれてしまう現実。

 記事にいちいち反応するのも疲れて、最近では見て見ぬ振りをしているけれど、やはり事実とは違うよくないことを書かれれば、気分のいいものではない。
 きっとファンは、琉の何倍も嫌な思いをしているだろうし。

 だから、笑顔を振りまく一方で、琉の苛立ちも募っていたのは事実。
 昨日の夜も、友人と飲んでいたところをタチの悪いファンに見つかって、追い掛けられて。ようやく撒いたと思って逃げ込んだ路地、いきなり飛び出して来た遥希と正面衝突した。
 最悪な日は最悪なことが続くものだと、関係のない遥希にまで苛立ちをぶつけそうになったが、それは人間としてよろしくないから、ちゃんと謝った。

 琉の苛立ちに気付くはずもない遥希は、ぶちまけてしまったカバンの中身を必死に拾い集めていて、琉もそれを手伝ったのだが、ふと見たら、荷物の中には琉の写真。
 男で、琉の写真を持つほどのファンというのは珍しいが、暗がりのせいか、まさかこんなところでぶつかるとも思っていなかったのか、幸いにも騒ぎ立てられることなく、別れたのだけれど。

(何か運命の出会いみたい…)

 そんな乙女主義な性格ではなかったはずだが、あの出会い頭の衝突は、運命の正面衝突なのでは? と琉は、らしくもなく思ってしまう。
 琉の乾いた心を潤してくれる、救世主。

(……恋、か…?)

 とりあえず今のところ、男に対して恋心を抱いた経験はないが、遥希を想う気持ちは、今まで好きになった女の子たちへのものと似ている気がする。
 恋かな。
 恋だったらいいな。
 …恋は琉にパワーをくれるから。

 もうすぐ現場に着くし、早めに返事だけはしておきたいから、遥希のお礼に対する返事と、またメールしてね、というメッセージを送って、琉は携帯電話を閉じた。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (26)


 時間が押して、結局夜中の2時まで掛かった仕事を終えて、琉は大和と車に乗り込み携帯電話を確認するが、電話もメールも着信はない。遥希からの返事も期待していたのだが、それもなかった。
 またメールしてね、とは言ったけれど、もしかしたら遥希は遠慮しているのかもしれない。話した限りでは、遥希はそんな性格だ。

(学生さんだって言うし、こんな時間にメールとかしたら迷惑かなぁー…)

「ふぁ…どうした、琉」
「…何でもね」

 隣の大和が、あくび混じりに聞いてくるが、琉は適当にしか返事をしない。
 念のため、メールが来ていないか、センターに問い合わせてみたけれど、やはり何も来ていなくて、琉をヤキモキさせる。

「何、メール? 彼女?」
「違ぇ」
「かわいい子?」
「ちが………………いや、かわいい」
「んだよ、惚気んなよ」

 琉がメールを待っている相手を、勝手に彼女か女の子と決め付けて、大和が追及してくるが、琉がメールを待っているのは彼女でも何でもなく、昨日会ったばかりの遥希だ。

「水落ー、その『かわいい』って、もしかして小野田くんかー?」

 運転席から、南條の低い声。
 またお小言か? と琉は身を小さくする。

「…オノダ? 小野田『くん』?」

 南條の言葉の中にあった『小野田くん』という部分に大和が反応して、不審げに琉の顔を覗き込んできた。
 誰なんだよ、それ、と聞きたそうな顔。

「男?」
「何が?」
「…。その『小野田くん』」
「そう」

 別に遥希のことを隠すつもりもないので、琉は素直に頷いた。
 かわいいのも事実だし。

「何つーか…よく分かんねぇんだけど。男? かわいい??」

 大和は、頭の中クエッションマークだらけという感じで、訝しげな顔をしていたが、時間が時間なだけに、さすがに仕事の疲れが出たのか、「…眠い」と言って、考えるのをやめて目を閉じた。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (27)


「…水落」

 遥希からのメールがないことにガッカリしつつ、携帯電話をカバンの中にしまったところで、南條に声を掛けられた。
 どうやら大和が寝たのが分かって、そのタイミングを見計らったらしい。

「別にお前の交友関係をとやかく言うつもりもないし、小野田くんのことを悪く言うつもりもないけど、まだ1回しか会ったこと…」
「2回目だよ」
「…まだ2回しか会ったことない相手に、浮かれてやたらメール送ったり、会いたがったりして、迷惑掛けるなよ?」
「分かってるよ」

 だから今だって、メールするのをやめたのだ。
 こんなに傷心なのに。

「まったく、どうしてまだ2回しか会ったことない男に、そこまで執着するんだか」
「執着なんかしてねぇよ」
「してるだろ。お礼にご馳走するくらいならまだしも、メアド交換して、返事が来なくて凹んで、かわいいかわいい連発して。…さっきも言ったけど、小野田くん、男だよ?」
「分かってるっつーの」
「分かってねぇよ。かわいい女の子に一目惚れしたならまだしも……いや、水落が女の子に一目惚れなんて、そんなの、」

 南條が勝手に、想像の世界でヤキモキし出した。
 基本、過ぎるくらいに心配症の南條は、先の先まで読みすぎて、グジグジ考えすぎて、どうしようどうしよう、と1人で慌てるタイプだ。
 週刊誌やスポーツ新聞が、好き勝手に琉や大和の恋愛話を作るたび、寿命を縮まらせるほど頭を悩ませているのだから、そんな性格になるのも止むないのだが。
 しかし琉も、アイドルとはいえ人形ではなく人間なので、かわいい恋人だって欲しいのは事実だ。

 あぁ。

(ハルちゃんからのメールで癒されたい…)



*****

 どうも待っても遥希からはメールが来ないような気がして、次の日、琉のほうからメールを送ることにした。
 今日は雑誌の取材だが、撮影までにはまだ少し時間がある。

(9時半…)

 遥希は大学生だと言うから、今ごろは学校に行っているのだろうか。
 昨日は、平日の昼間だったけれど、時間は大丈夫と言っていたのは、たまたま授業がなかっただけなのかもしれない。
 とりあえずメールなら、送っておけば、今見れなくても、後で気付いて返事をくれるかもしれない…………し、くれないかもしれない。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (28)


「俺も、その噂の小野田くんに会いたい」
「おわっ!?」

 遥希に何とメールしようか考え込んでいたら、急に携帯電話の液晶画面に影が落ちて、琉が「ん?」と思う間もなく、大和の声。
 驚いた拍子に、琉は携帯電話を落っことしそうになった。

「何だよ大和、ビビらせんなよ」
「会いたい」

 琉の正面に回り込んで覗き込んでくる大和の顔は、唇をアヒルみたいに突き出して、何だか拗ねたような表情だ。

「誰に?」
「だからー、その噂のかわいい小野田くん」
「噂って何だよ。何の噂にもなってねぇよ」
「でも昨日、車の中で南條とずっと喋ってたじゃん」

 …寝てなかったのかよ。
 別に隠すつもりもないから、寝たふりなんかしないで、起きて話を聞いていればよかったのに。

「寝てたよ」
「嘘つけよ」
「ウトウトしてたら、聞こえてきた。てか、それよりも! 俺も会いたい」
「何で」
「だって琉が気に入るくらいかわいいんでしょ? 見たい」

 大和のミーハーぶりに、琉は嫌そうに眉を寄せた。
 それがいいか悪いかはともかく、大和はあまり他人に興味がないタイプなのに、一体どうして今回は。

「ねぇねぇ、どこで会ったの? ナンパしたの?」
「しねぇよ」
「…されたの?」
「されねぇよっ」

 どうしてそういう発想になるのか、琉が見かけほど軽い男でないことは、一緒にユニットを組んでいるだけでなく、親友としても長い付き合いの大和が、一番よく分かっているはずなのに。

 しかし、大和が「何で? ねぇ何で?」としつこいので、琉は遥希と出会った経緯を簡単に説明してやったら、なぜか今度は、「えぇー…」という顔で固まっている。

「え、じゃあ琉、初対面でいきなりメシ誘って、メアド交換したわけ? それってナンパじゃねぇの?」
「初対面じゃねぇよ、2度目だよ」
「でも1回目は、暗がりでぶつかって、ちょっと話しただけなんだろ? そんなのノーカウントじゃん」
「はいはい」

 大和はそう力説するが、琉にしたら、最初の出会い運命を感じてしまったのだから、そこをカウントからは外せない。
 でも適当にでも頷いておかないと、大和がうるさいので、とりあえず返事だけはしておく。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (29)


「つか、そこでメアド交換するあたりがスゲェ。琉が男ナンパした」
「してねぇっつの。何でナンパになんだよ。ダチになれば、メアドぐらい聞くじゃん」
「でも、男の友だちに『かわいい』とかは言わない。少なくとも俺は、琉から『かわいい』なんて言われたことないっ」
「いや何で大和に『かわいい』とか言わなきゃなんねぇの?」

 大和も、『超』が付くほどのイケメンで、確かに多少は女性的な甘やかさを持った顔立ちではあるが、親友として一緒にいる時間が長すぎて見慣れてしまったのか、琉は今さら大和をかわいいとは思わない。
 というか、男にかわいいだなんて、冗談でも思わない。
 遥希だけが特別なのだ。

「琉。お前さ…、それは恋心と言うものなのでは…?」
「やっぱそうかな? 恋かな?」

 さっきまで大和を鬱陶しがっていたのに、大和が、琉のこの想いを『恋』だと言ってくれた途端、琉はコロッと態度を変えて、嬉しそうに大和に聞き返した。
 そうだったらいいな、と琉は昨日からずっと思っているから。

「いやいや、そんな嬉しそうな顔されても。え、お前いつから男に走るようになったわけ?」
「男になんか走ってねぇよ」
「でもその小野田ナントカくんは男なんだろ?」
「男だよ」
「はぁ~? じゃあお前の言ってること、普通に矛盾してんじゃん! 何だよ、男には興味ねぇけど、その小野田くんだけは特別、とか言ってんのかぁ!?」

 シレッとした顔で言ってのける琉に、大和はキレたように声を荒げる。
 矛盾しているかもしれないが、でもそれが事実だ。男を恋愛対象としては見れないけれど、遥希のことは、今までの彼女たちを愛したのと同じような気持ちで、好きだと思う。

「えぇー…。いやまぁ、別にお前が誰好きになろうといいけどさぁ、でも少なくても、その小野田くんが男を好きじゃなきゃ、両想いにはなれねぇじゃん」

 それだけではない、琉はスーパーアイドルで、週刊誌にあることないこと書かれているとはいえ、ただでさえ恋愛ネタは御法度なのに、相手が男となればそのリスクはさらに大きくなるのに。

「でも、好きになったもんはしょうがない」

 見た目や噂と違って、琉が実は一途だということは、今こうして一緒に話をしている大和が何より分かっている。
 それなのに、その大和が、琉の恋心を止められるわけもなくて。

「…とにかく気を付けろよ、いろいろと。その小野田くんに迷惑かかんねぇようにすんのもだけど、…………俺は、お前が傷付いたりすんの、見たくねぇから」
「分ぁーってるよ、大和。サンキュ」




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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (30)


haruki


「…はい?」

 バイトまでの時間、千尋を家に呼んで、遥希が今までのことを話して聞かせた末に、千尋の口から出たのは、たったそれだけの言葉だった。

「え、ちーちゃん、話聞いてた?」
「聞いてたよ。え、で、何? FATEの琉がどうしたって?」
「だからー、アドレス教えてもらったけど、どうしようって!」
「………………。あのさぁハルちゃん。いくらFATEのファンで、琉のこと大好きだからって、そんな妄想…」
「妄想じゃない!!」

 心底呆れた表情で言って来る千尋に、遥希は声を張り上げた。
 今まで散々説明してやったというのに、この期に及んで妄想扱いなんて!

「だって…。バイトの帰りに琉に似た人にぶつかって、その拍子にお互いのケータイ間違えて持って来ちゃって、次の日にそれ取りに行ったら本物の琉がいて、ご飯ご馳走になったうえにメアドも交換したって……今どきマンガでもそんなのなくない?」
「グ…」

 千尋に、ご丁寧に一から説明するように言われ、遥希は言葉を詰まらせた。
 確かにこんなの、一昔前の少女マンガのようだとは、遥希だって思う。もし遥希が千尋の立場で、こんな話を聞かされても、絶対に信じない。

 けれどこれは、遥希自身の身に降り掛かった現実だ。
 大ファンの琉をたまたま見掛けたとか、運よく話が出来ちゃった! とか、そんなレベルではなく、琉とメールアドレスまで交換してしまったのだ。
 こんなこと、きっと他の誰かに話したらマズイのだろうけど、とても1人では抱えておけなくて、散々悩んだ末に千尋に相談したのに、この反応…。
 相談する相手、間違えた?

「あーもう、そんな顔しない! だって話が突拍子なさ過ぎて……そんなの普通、いきなり信じないでしょ?」
「でもホントだもん…」
「分かった、分かった。ハルちゃんがそんな嘘つくような子じゃないの、知ってる」

 大きく溜め息をついて、千尋は途中で買ってきたアイスココアをコクコク飲んだ。

「で、だから何なの?」
「は?」

 一息ついて、千尋はようやく落ち着いたのか、いつもの千尋らしい口調で遥希に尋ねて来た。
 だから何、と言われても、今までに説明したとおりなのだが。

「水落琉からメアド教えてもらって、『またメールしてね』とか言われて、それの何が困んの?」
「え、だって」
「水落のこと、ずっとファンだったんでしょ? 好きだったんでしょ? アドレス教えてもらって、ラッキー! これからもっと琉と仲良くなれる! て、悩むとこないじゃん」

 千尋は事もなげにそう言ってのけるが、それがずっと遥希を悩ませているのだ。




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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (31)


 だって、琉はまたメールしてとは言ったけれど、そこで調子に乗ってメールをしたら悪い気もするし、第一、琉のようなスーパーアイドルが、遥希のメールの相手なんてしている暇はないと思う。

「そうかなぁ。だったら、自分からメアド交換しようとか言わないと思うけど」
「まぁ…そうだけど」

 確かに、千尋の言うことも一理はある。
 アドレスを先に聞いて来たのは琉のほうで、驚いている遥希に、『もっと仲良くなりたい』て言ってくれた…。

「普通に、新しい友だちが出来たと思ったらいいんじゃない?」

 千尋の言葉に、遥希はようやく顔を上げた。

「友だち…」
「そう、友だちだよ、友だち。何も悩むことないでしょ? それともハルちゃん、それ以上の関係、望んでんの? ダメだよ、友だち以上に好きになったら」
「…分かってるし」

 千尋に念を押すように繰り返され、遥希は何とか声を絞り出した。
 いつもなら、こんなにしつこく言われたら、遥希はすぐに『分かったってばぁ!』と投げ遣りになるのだが、今だけは素直に頷いた。…千尋の言いたいことが、よく分かるから。

 遥希はゲイで、恋愛対象は男の人だから、ずっとファンだったFATEの琉と出会えて、憧れだった想いが恋愛感情になってしまうのを、千尋は心配しているのだ。
 芸能界の事情は詳しくないけれど、少なくとも、FATEの琉の恋人が男だなんてスキャンダラスなことは許されないだろうし、第一、琉はゲイではないだろうから、いくら仲良くなったところで、男の遥希を恋愛感情で好きにはなってくれない。

 …つまり、遥希の気持ちが恋心だったとしても、それは叶わぬ想いなのだ。

「ハルちゃん、ホント気を付けなよ? ノン気の男、好きになったって、ロクなことないんだから」
「だから分かってるってば! 別にそういう意味で琉のことが好きなわけじゃないもんっ。ファンなだけだもんっ」
「ならいいけど。好きになったって、ツライ思いするの、ハルちゃんなんだからね」

 たとえば遥希が女の子で、こんなふうに出会って恋に落ちたところで、相手はFATEの琉だ。恋人になんかなれるわけがない。
 それに加えて遥希は男なのだから、万が一にも気持ちが通じ合ったとしても、友だち以上の関係にはなれないし、なったらいけないのだ。

(…そんなの、分かってるよ)

 千尋に言われるまでもなく、そんなこと、遥希自身が一番よく分かっている。




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「うぅー…むぅ…」

 遥希はドタッとそのまま後ろに引っ繰り返って、両手と両足をうんと広げて伸びをする。
 ウンウンと唸っている遥希を、千尋は冷ややかに見ていた。

「…そうやって悩んでる時点で、片想いしてるみたいだよ、ハルちゃん」
「違う、悩んでないっ」
「だったら普通にメールしなよ。今度遊ぼ、て」
「そ、そんなのっ、メーワクかかるからダメ!」
「だから何でだって」

 わけ分かんない、と千尋もゴロンと寝転がった。
 千尋のキレイな顔が、遥希の目の前にある。結構近い位置。

(でも、ちーちゃんにはドキドキはしないんだよなぁ…)

 目の前にある千尋の顔を見ながら、遥希はボンヤリとそう思う。
 千尋の顔が特別好みとかけ離れているわけでもなく、性格も知り尽くしていて、嫌ではないから、こうしてずっと一緒にいるのに。…けれど琉に感じたようなドキドキはない。

(でもでも、別に琉には恋してないしっ!)

 琉は憧れ。ファン。
 今までにお付き合いした人に対して思っていた、好き好き大好きー! の気持ちと、今の琉に対するドキドキは違うから。

 ――――だからきっと、琉に対する想いは、恋じゃない。

「…ハルちゃん、さっきから何1人で百面相してんの? 変な顔」
「ッ、変なっ…、どうせ俺はブサイクですよー!」
「そんなこと言ってないでしょ?」
「いひゃい!」

 プクッて膨らませた遥希の頬を、千尋が両手で引っ張る。
 やめてよ、これ以上ブサイクになったらどうすんの!? と遥希は慌ててその手を剥がした。

「そんなことないよ、ハルちゃん、かわいい」
「……ちーちゃんに言われても…」

 拗ねた遥希の頬を、千尋は今度は優しく撫でてくれた。

「ハルちゃんは、かわいいよ。だから、水落のことでなんか悩んでないで、早く新しい恋しよ? 彼氏作ってさ。そしたら水落のこと、ただの友だち、て思えるよ」




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 バイトが終わって帰って来て、ご飯を食べたり風呂に入ったりしていたら、もう夜中の1時半を過ぎていた。
 土日は学校が休みだから、その前の夜は、ちょっと遅めの時間帯までシフトを入れているのだ。

(ホント俺、バイトと学校ばっか…)

 頭を拭きながらふとんに転がって、遥希はボンヤリと思う。
 いくら貧乏学生とはいえ、やはりこれはよくない状況だ。千尋の言うとおり、カッコいい彼氏を見つけて、恋くらいしないと(あ、千尋は『カッコいい』とは言ってなかった)。

「…ぅん?」

 視界に何やらチカチカと入って来て、見れば枕元の携帯電話の着信ありを示すランプが光っていた。
 バイト中は携帯電話をしまいっ放しなので、着信があっても分からないから、終わった後はチェックしているはずなのに、今日は気付かなかったのだろうか。

(それとも、こんな時間にメール? 電話?)

 きっと、いわゆる『今どきの若者』なら、こんな時間にメールや電話のやり取りもするのだろうが、どちらかと言うと友人関係が大人しめの遥希にしては、珍しいことだ。
 急用かな? なんて思いながら携帯電話を広げれば、メールが1通来ている。

「…………え……?」

 送信者の名前を見て、遥希はそのまま固まった。

「りゅ、う…?」

 ななななな何で!?
 思わず、『えぇーーーーー!!!』と大声を上げそうになった口を、近所迷惑! と、慌てて自分で塞いだ。

「何で琉、メール…」

 しかし確かに送信者は、琉。
 遥希は1度大きく深呼吸してから、メールを開いた。

「…」

 たあいもない内容。
 元気? とか、真面目に勉強してる? とか。それと、今が撮影の休憩中だという、琉の状況とか。
 それだけのことなのに、何だかすごく嬉しくなる。

 何となく返事を期待しているような内容で、ちょっとドッキリはするが、時間はすでに夜中の2時になるところで、返信するには、いくら何でも遅すぎる。
 見れば、メールを受信したのは夜の8時過ぎで、やはりバイト中のことだ。終わってすぐにメールに気付いていれば、返信できたかもしれないのに。
 今日に限って、バイト後のメールチェックを怠った自分を、激しく悔んだ。




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 朝になったら、すぐにメールを送ろう。
 バイトに行くギリギリまで寝てようと思っていたけれど、絶対に早く起きる。6時? ううん、それじゃいくら何でも早すぎる。7時……8時くらいかな? いや、7時半!
 琉にメールなんて…と悩んではいたけれど、来たメールに返事をしないのは、やはり悪いと思うし、すぐに返信できなかったことも謝ろう。

 ゴロリ、携帯電話を片手に持ったまま、寝返りを打つ。
 早く寝なきゃ…と思うのに、琉からメールが来たことで、興奮してドーパミンがいっぱい出てしまったのか、全然寝付けない。
 遥希は冴えてしまった目を、それでもギュッと瞑った。


 そして、一体何時に眠りに就いたのかは分からないが、とりあえず、目が覚めたらもう9時半だった…。

「全然早くないし!」

 目覚まし時計を見た瞬間、遥希は思わず口に出して、自分自身に突っ込んだ。
 7時半にはメールをしようと思っていたのに、寝ぎたなく眠っていた自分が恨めしい…。
 とにかく琉にメールをしなければ。

(琉、もうお仕事してんのかな? それとも、芸能人さんは、まだ寝てんの?)

 とりあえず送っておけば、気付いたときに見てくれるはずだと、昨日来た琉のメールに返信する。
 昨日バイト中にメールが来て、気付いたのが夜中だったので、返信するのが悪いと思って、でも今日起きたらこんな時間で…………書けば書くほど言い訳ぽくなってしまい、結局、返事が遅れてごめんなさい、と謝るだけにした。

「はぁ~…」

 緊張しながらメールを送れば、そのまま力が抜けて、遥希はふとんに寝転がった(自分でも気付かなかったが、メールを打っている最中は、なぜか正座をしていた)。

(琉から…琉のほうからメール来た…)

 千尋が言うように、遥希が変に意識し過ぎているんだろうか。琉は、お友だちにはみんなこうなのかもしれないし…。
 …………。

 ♪~~~~♪~~~~♪

「うわっ!」

 ウジウジ考えてるうち、また睡魔に襲われ掛けいてたら、携帯電話からFATEの曲が流れてくる。
 メール。
 千尋が心配してメールを寄越したのかもしれない。

「…て、琉だし!」




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 ウトウトしかけていたのに、一気に目が覚める。
 思わず起き上がって、また正座になった。

『バイトだったの? 遅くまでお疲れ様。今日、学校は?』

 心臓が痛い…。
 琉の言葉1つ1つに、ドキドキする……て、いやいや、別にそういう意味でドキドキしてるわけじゃなくて! だってずっとファンだったんだもん、メールが来ればドキドキするに決まってる!
 遥希は誰も何も責めていないのに、言い訳するように何度も心の中でそう繰り返してから、今日は土曜日だから学校は休みだと返信した。

 すると、メールを送って30秒もしないうちに、また携帯電話が鳴る。今度はメールでなくて電話。
 タイミング的にもしかして…と思ったら、やはり琉だった。

「……もしもし…?」
『あ、ハルちゃん、おはよー』

 心臓をバクバク言わせながら電話に出たら、妙に明るい琉の声。
 朝なのに、元気。

『昨日遅くまでバイトしてたのに、朝早いんだねー』
「え、そんな…早くないです…」

 本当はもっと早く起きてメールするつもりだったのだ。
 全然感心されることではない。

『今日学校休み? バイトは?』
「えと、午後からバイトが…」
『え、昨日も遅くまでバイトしたのに、今日も働くの!? また夜中まで?』
「ううん、今日は7時までです」

 琉が凄く驚いたような声を出すから、遥希は少し笑ってしまった。
 遥希は、そんなにビックリされるほど、働いてはいない。少なくとも、琉のほうが絶対にたくさん働いている。

『7時になれば、バイト終わるの? その後、何か予定ある?』
「バイトの後? え、何もないですけど…」

 何でそんなこと聞くんだろ、と遥希が不思議がっていたら、琉がサラッととんでもないことを言ってのけた。

『じゃ、バイト終わったら、一緒にご飯食べない?』

 …………。

 ………………。

「………………え?」

 今、琉、何て言った?




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『え? ハルちゃん、聞こえてる?』
「き、聞こえてます!」
『うははは、そんなに慌てなくても。ね、ご飯、どう? 一緒に』
「あ、あ、あ、あ……はい!」

 勢いで返事をしてしまった後、一体どうしてこんなことになってしまったのかと、遥希が考えるころにはもう、とっくに電話は切れていた。



*****

 琉とご飯。
 バイトが終わったら、琉とご飯。

 浮かれてちゃダメ、普通にバイトしなきゃ…と思っているのに、どうも顔や態度にウキウキ感が出ているようで、「小野田くん、今日やけにご機嫌だね」と、バイトの先輩に言われた。

「何、今日デート?」
「ふぇ!? 違いますよー」

 琉とご飯なんです、とはもちろん言えなくて、遥希は笑ってごまかす。

「だって今日すごいご機嫌だし、さっきから時間気にしてるし」
「そ…そうですか?」

 女の人は、目敏い…と遥希は思うが、実のところ、単に遥希が分かりやすいだけなのだが。
 でもこれが、ウキウキせずにいられるだろうか。
 また琉に会えるなんて。

「ホラ、7時になったし、上がりなよ」
「あ、はい」
「彼女、待たせちゃ悪いしね」
「だから違いますって!」

 最後まで、これから彼女とデートだと信じて疑わない先輩に苦笑しながら、遥希は挨拶をしてバイトを上がった(大体、遥希に恋人がいたら、『彼女』ではなく『彼』だ。言えないけれど)。

 琉が指定したのは、駅から少し行ったところにある和食のお店だった。
 外観からしてちょっと高級そうだから、友だちと出掛けたときだったら、多分選ばなそう。遥希が普段、外で食事をすると言ったら、ファミレスか、安い居酒屋のチェーン店くらいだから。
 以前、彼氏と別れた後、寂しくてクラブに通いまくっていたこともあるが、バイト代が底を突いてからは、行っていない。

 そこは、穏やかな照明と落ち着いた雰囲気の空間に、静かな音楽が流れているすてきなお店だったけれど、席がすべて個室風になっていて、その中が見えないため、琉の姿を見つけ出せない。
 店員さんに言えば分かるのだろうか、しかし琉の名前を出してしまっていいのかとも思うし、もしかして中に入らないで、お店の前で待っていたほうがよかったのだろうか。




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「えっと…」
「ハルちゃん、こっち」
「え、」

 いらっしゃいませ、何名様ですか? とお決まりのセリフを吐く店員さんに、何と返したらいいか分からず困惑してる遥希の腕が、クイと引っ張られた。
 え、と思ってそっちを見たら、そこにいたのは琉。驚く間もなく腕を引かれて、奥の個室のほうに連れていかれた。

「りゅ、琉…」
「バイト、お疲れ様」
「…ん」

 頭をポンポンてしてもらって、ちょっと照れる。
 反対の手は、遥希の腕を掴んだまま。

「あ、大和も来ちゃったけど、いい?」
「う?」

 ヤマト? 誰?
 琉の友人だろうか。
 遥希は別に全然構わないけれど、逆に2人は、遥希がいてもいいのだろうか。

「来んなっつったのに、どうしてもハルちゃんの顔見たいとか言いやがってさぁ」
「え、俺の!?」

 そ、そんな…琉のお友だちと言うことは、きっとすごくカッコよくて、しかもそういうカッコいい人たちを見慣れているに違いない。
 そんな中に遥希が混じるなんて、もしかしてすごく場違いなのでは…? と思ったが、遥希は琉に連れられて奥の個室に入った。

 中には先客がいて、きっとそれが『大和』と言われた琉のお友だちなのだろう…なんて、ドキドキしつつものん気に構えていた遥希は、その人を見た瞬間、息を詰まらせてフリーズした。

(や…大和がいる~~~~~!!!??? FATEの大和! 友だちって! いや、友だちかもだけど…!!!)

 琉が言った『大和』とは、FATEのもう1人のメンバー、一ノ瀬大和に他ならなかった。
 遥希も千尋と話をするときは、気軽に『大和』なんて気軽に呼んでいるくせに、今は気が動転していて、少しもそんなことに気が付かなかった。

「あ…う…」

 遥希は琉の大ファンで、いつもカッコいいカッコいいと言っているけれど、大和だって一緒にFATEをやっているだけあって、もちろん超が付くほどのイケメンだ。

(キラキラしてる…! ま…眩しい…!!)




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「ハルちゃん?」

 どうした? と覗き込んでくる琉の顔も十分眩しくて、遥希はクラクラしてしまう。
 今、日本中の女の子も、マスコミも、何もかもが注目しまくってる2人が、この一室にいて、そして遥希はその人たちと一緒にご飯を食べようとしてるわけで。

「ハルちゃん、大丈夫?」
「だい…じょー…ぶ…」

 その場に硬直したまま動けなくなってしまった遥希の目の前で、琉が手を振っている。
 だ…大丈夫、意識はちゃんとある。

「どーもー」

 声のするほうにゆっくり目を向ければ、大和がヒラヒラと手を振っていて、遥希はとりあえず、コクンと頷いてみる(なぜ頷いたのかと言われても、遥希自身、自分が何をしたいのかよく分からない)。

 琉と大和のキラキラオーラに圧倒されながら、同じほうの手と足が一緒に出ないように気を付けつつ、遥希は何とか席に着いた。
 隣には琉がいて、向かいには大和がいる。

(何なのコレーーーー!!)

 この状況は、夢でなければ一体何なのだろう。
 妄想?
 この間、千尋に言われたように、琉のこと好きすぎて、とうとう遥希の妄想が行きすぎてしまったのだろうか。
 しかし遥希は、こんな大それた妄想なんかしたことはない。せいぜい、コンサートでいい席が取れたらなぁ…くらいだ。

「あー…確かに琉が言うだけあって、ホントかわいいね」
「っ!?」

 か、かわいい? 俺のどの辺が? つか琉、大和にも俺のこと、かわいいとか言ったの? と、遥希の頭の中はパニック寸前だ。

「俺、一ノ瀬大和ね、よろしく」
「はははははい!」

 フリーズしかけている遥希に、大和は笑顔で挨拶してくるが、わざわざ名乗ってくれなくても、遥希はもちろん、名前も顔も十分すぎるほど知っている。
 琉もそうだけれど、あまりにもフレンドリーな大和に、遥希のほう面食らってしまう。芸能人というのは、みんなこんな感じなんだろうか。それともこの2人が特別?

 暫くポカンとしていた遥希だったが、自分も名乗らなければ…と気が付いて慌てた。

「おおお小野田遥希です!」

 とりあえず自己紹介して、お辞儀して………………―――――ガンッ!
「………………ッッッ~~~~~!!!」

「ハルちゃん!?」
「ちょっ…!」

 琉がいて、大和がいて、何だかもうよく分からないこの状況。
 遥希のテンションも、もう何が何だか。

 そして。



 ………………おでこが痛い。




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ryu


 どうやら土曜日は、大学が休みらしい。
 午後からのバイトは7時に終わると言うので、遥希を夕食に誘ったら、それを大和に見られていたらしく、俺も一緒に行きたいとうるさい。

「いいじゃん、俺もハルちゃんに会いたいー」
「会ってどうすんだよ」
「えー、どうしよっかなぁ~」

 わざとらしく、もったいぶるような言い方をする大和に、琉はとても嫌そうに顔を顰めた。
 本当に一体何をするつもりだ。

「俺、和食がいいな」
「いや別に、大和の食いたいモンとか、聞いてねぇし」

 そうでなくて、出来れば遥希の行きたいところがいいのに。
 駅の近くがいいのかな。学生さんは、どんなところでご飯するんだろう。

「ねぇねぇ、ハルちゃんに和食でいいか聞いてよ、琉。最近お気に入りのお店あんの」
「え、お前マジで来る気?」

 先ほどまでの口調が、何となく冗談ぽかったから、琉は本当に冗談だと思っていたのに、大和は本気で一緒に来るつもりだったらしい。
 というか、まだ会ったこともないのに、大和もいつの間にか普通に『ハルちゃん』と呼んでいて、それがちょっと気に食わない。
 しかも本当に、大和の行きたいお店になってしまいそうだ。

(でもハルちゃんにどこ行きたいか聞いても、遠慮されそうなんだよなぁ…)

 まだ2度しか会ったことがないけれど、感じ取った遥希の性格からして、そんな感じだ。
 今よりももっと仲良くなったら、もっとわがままもいろいろ言ってくれる? もっといろんな顔を見せてくれるの?

 それでも遥希の意見を尊重したくて、何食べたい? どこで食べたい? とメールしたら、しばらくして、普段は殆ど外食はしないし、するとしてもファミレスくらいだと返信が来た。
 それで、結局行き先は、大和のお気に入りのお店に。
 せっかく遥希と2人で食事だと思っていたのに、でもまぁ別にそこまで激しく大和を拒否する理由もないから、いいんだけれど。

「ハルちゃん、バイト何時までだって?」
「7時」

 予約していた店、個室に案内されて、大和は携帯電話をカパカパさせている。
 腕時計に目を落とせば、もうすぐ7時半で、遥希もそろそろやって来るころだろうと、琉は店の出入り口のほうを覗いてみる。
 プライベートで、人に見つかると厄介な職業なのは嫌というほど分かっていて、大和は『"大和"で予約した、てメールすればいいじゃん』と言ったのだけれど。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (40)


 いた。

 遥希は、店に入ってすぐのところに突っ立ったまま、困ったようにキョロキョロしている。
 来店に気付いた店員が声を掛けるが、遥希はますます困惑しているようだ。

「ハルちゃん、こっち」
「え、」

 どうにも埒が明かなそうなので、琉は遥希の手を取ると、店員に「連れです」と告げて、遥希を連れていく。
 遥希はひどく驚いた様子だが、無抵抗で琉に引かれていく。

「バイト、お疲れ様」
「…ん」

 毎日、学校にバイトに忙しい遥希の頭をポンポンとしたら、遥希が恥ずかしそうに視線を落とした。
 すっかり遥希LOVEな琉は、つい好きな子にするときのようにしてしまったが、遥希はまだ恋人でも何でもないのだと、自分に言い聞かせる。

「あ、大和も来ちゃったけど、いい?」
「う?」
「来んなっつったのに、どうしてもハルちゃんの顔見たいとか言いやがってさぁ」
「え、俺の!?」

 コテンと首を傾げた遥希は、顔を見たいと言い出したと言う大和の話を聞いて、目を丸くした。
 こんなに驚かれるなら、やはり先に打ち明けておくべきだったか。いや、もしかしてこの驚きは、琉より大和のほうが好きだから、会えることにビックリしたとか…?
 琉が少しモヤモヤしながら与えられた個室に入れば、携帯電話を弄っていた大和が、琉と、一緒に来た遥希に気付いて顔を上げた。

「ハルちゃん?」

 個室に足を踏み入れた途端、ハッと息を飲んだ遥希は、そのままの状態で固まってしまった。
 一体何事かと、琉はその顔を覗き込むが、遥希は瞬きするのがやっとという感じで。

「ハルちゃん、大丈夫?」
「だい…じょー…ぶ…」

 遥希の目の前で手を振って見れば、遥希は何とか声を絞り出した。

「どーもー」

 硬直してしまっている遥希に気付いているのかいないのか、大和がさものん気そうに手を振っていて、遥希はそれにコクンと頷いた。



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「ま、座って、座って」

 大和がそう言いながら遥希に着席を促したが、琉は遥希が大和の隣でなく、自分の横に座るようにそれとなく誘導した。
 なのに大和は、「確かに琉が言うだけあって、ホントかわいいね」なんて、カメラの前でも見せないようなスマイルを遥希に向けるから、気が気でない。

「俺、一ノ瀬大和ね、よろしく」
「はははははい! あわわわ、えと、おおお小野田遥希です!」

 慌て過ぎて、噛みまくった挨拶をした遥希が、深々とお辞儀をして………………―――――ガンッ!

 そのまま、テーブルに思いっ切りおでこを打ち付けた…。

「………………ッッッ~~~~~!!!」

「ハルちゃん!?」
「ちょっ…!」

 まるでコントみたいなその出来事に、琉も大和も一瞬固まったが、遥希ががおでこを押さえて身を丸くしたから、相当痛いのだと分かって、すぐに我に返った。

「ハルちゃん、ちょっ…」
「うぅ~…」

 ケガでもしていたら大変だと、琉がぶつけたおでこを見ようとするが、遥希が両手でしっかりガードしているから、見ることが出来ない。

「ハルちゃん、ちょっと見せて。ね?」
「ヤ…恥ずかし…」

 遥希はよほど恥ずかしいのか、隠し切れない耳まで真っ赤になっている。
 恥ずかしいのは分かるが、しかし今はそれどころではない。

「ケガしてたら大変だから、ね、見せて、ハルちゃん」
「…」

 言えば、遥希はようやく手を退かして、顔を上げてくれた。
 かなり痛かったのだろう、目には涙が溜まっている。

「大丈夫? 何か冷やすもの貰おうか?」
「だい…じょうぶ、です…」

 大和に心配そうに尋ねられ、遥希は鼻を啜りながら、やっとで返事をした。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (42)


「ホントに大丈夫?」

 無理してない? と遥希の顔を覗き込みながら、ぶつけたおでこを撫でてやる。
 痛がるかな、と思ったが、遥希はされるがままだから、琉も好きなようにする。ここに大和がいなかったら、ぶつけたおでこにチューとかしてあげたいのに。

「も…大丈夫です…ゴメンなさい…」

 ホントに大丈夫になったとは思えないけれど、遥希が琉の手をそれとなく解いたので、追及するのをやめた。
 でも本当に恥ずかしいのか、遥希は俯いたまま、顔を上げてくれない。

「もう痛くない? メニューとか見れる?」
「…はい」

 コクリと頷く遥希に、大和が心配そうな顔をしながら、広げたメニューを差し出した。
 琉はもう1度、遥希の頭をよしよしと撫でてあげた。



*****

 最初は緊張していた遥希も、話しているうちに大和とも打ち解けて、笑顔を見せてくれるようになった。
 しかし、予想どおりというか、予想以上というか、遥希はめっぽうアルコールに弱くて、しかもあまりにも無防備なものだから、琉はいろいろと困ってしまった。

「ふぅん、じゃあハルちゃん、毎日ガッコ行ってバイトして、忙しいんだねぇ」
「んー…でもぉ、バイトはぁ、みんなしてるー…」

 マンゴーサワーという、琉にしたらジュースみたいのを1杯空けた辺りで、遥希はすっかり酔っ払って、大和の問い掛けに、語尾を甘ったるく伸ばしながら答えている。
 根がまじめなのか、どうでもいいような質問にも一生懸命答えてくれるから、かわいくて仕方がない。

「あのねぇ、でもねぇ、2つバイトしてる友だちもいるんだよ」
「そうなんだ。ハルちゃんはコンビニだっけ?」
「あい。ホントはもっとしたいけどぉ、時間がー…」

 酔っ払っている遥希は、いつの間にか大和にまで『ハルちゃん』と呼ばれているが、気にも止めずふにゃふにゃになっている。

「時間あんまないの? 忙しいんだ?」
「んー…」

 そう言われて、遥希は少し考えてから、なぜか「えへへ」と照れ笑いをして、隣の琉の肩に擦り寄った。
 酔っているとはいえ、急に遥希にそんなことをされて、琉は無駄に心拍数を上げてしまう(こんなところで盛り上がるわけにはいかないことは分かっているのだが)。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (43)


 ちなみに遥希が照れたのは、FATEのグッズやコンサートにお金がいるのでバイトを増やしたいけれど、それで肝心のFATEに費やす時間を削られるのが嫌で、コンビニのバイトだけなのだと、本人たちを前に言うのが恥ずかしかったからだ。

 遥希がFATEのファンであることは琉も知っているが(着信音も聞いたし、琉の写真を持っているのも見たから)、こんなにも思ってくれているなんて知らないので、遥希の天然で無意識な行動は、心臓によくない。

「バイトの帰りに、琉と会ったんでしょ?」

 遥希と琉の出会いに興味津々だった大和は、琉の心境などお構いなしに(いや、分かっていてわざとなのかもしれない)、いきなり核心に踏み込んで来た。

「バイト、終わったらぁ…、琉とぶつかったの。そんで、ケータイ間違えてっちゃった…」

 酔っ払った遥希の説明は、はっきり言って掻い摘みすぎていて、よく分からない。
 でも遥希的には全部説明した気になっているのか、満足そうな顔をしているので、大和も「そっかぁ」と子どもに言うように返すしかない。
 琉にしたら、余計なことを言われずに済んでホッとしたし、いつの間にか遥希が琉のことを名前で呼んでくれていていたので、何だか嬉しくなってくる。

「ハルちゃん、大丈夫? まだ飲める?」
「飲め、りゅ…」

 遥希の2杯目のサワー(今度は巨峰)が届いたころ、琉と大和はすでに数杯のグラスを空にしていたのだが、遥希のほうが遥かに酔っ払っていて、何だか危なっかしい。
 それでも遥希は体勢を立て直し、両手でグラスを持ってコクコク飲んでいる。
 食べ方もそうなんだけど、小動物を想像させて、何だかかわいい…。

「ね、ね、そういえばハルちゃんてさ、FATEのファンなんでしょ!?」
「…ぅ?」

 そういう話はもう終わったとばかり思っていたのに、大和が楽しげに身を乗り出して来た。
 前も思ったが、大和はどちらかと言うと他人にあまり関心がないタイプなのに、なぜか遥希には興味津々だ。
 単に、琉が好きになった子がどんななのか興味があるのか、もしかして琉と同じ想いで興味があるのか、……そうだったら、どうしよう!

「CDとかも買ってくれてんの?」
「…ん。CDもー、DVDもー、全部持ってる、よ?」

 語尾の『よ?』のタイミングで首がコテンと横に倒れ、自分の体を支えるのも儘ならなくなってきている遥希は、そのまま琉に凭れて来た。
 琉的には、再び嬉しいハプニングだ。



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「コンサートは? コンサートは? 来てくれたことある?」
「あい! あのね、琉、カッコよかった…」

 去年ドームで行われたFATEのコンサートを思い出したのか、遥希はふにゃんと表情を崩す。
 遥希に寄り掛かられている琉も、思い掛けない言葉に、口元が緩むのを隠し切れない。
 だって、遥希に『カッコいい』て言われた!

「琉だけ? 俺は? 俺は?」

 酔った遥希が、聞けば素直に思っていることを口にすると気が付いて、大和が楽しそうに質問を続ける。

「大和くん、も、カッコよかったよ?」
「そっかぁ、ありがとう」

 遥希の目には、どうも大和は、琉のおまけ状態にしか映っていないように思えるが、大和は気を悪くしたふうもなく、ニコニコしている。
 やはり大和の興味は、『琉が好きになった相手が、どんな子なのか』ということだったようだ。

「でもねぇ、コンサート…、席ね、すごく遠かったから、今近くてね、…ん、嬉し…」
「俺も、ハルちゃんとこんなに近くで会えて嬉しいよ? ――――イテッ」

 琉が素直に気持ちを伝えたら、向かい側の大和が琉の足を蹴っ飛ばした。

「何すんだよ、大和!」
「自重しろよ、このバカ」

 目の前には大和がいるというのに、のん気に遥希に甘い言葉なんて囁かないでもらいたい。
 しかも、まだ恋人になったわけでもないのに。

「琉も嬉し…の? 俺も…」

 琉に凭れながら、遥希の瞼は落ち掛けている。
 トロンとした瞳に、思わず琉の男心が擽られてしまうが、また大和に蹴られそうだったので、キチンと口元を引き締める。

「ハルちゃん、眠くなった?」
「んーん…」

 目を擦りながら、遥希は緩く首を振るけれど、どう見ても眠いのを我慢してるとしか思えない。

「眠く、ない…。まだ琉と、お話するの…」

 眠いせいか、酔っ払ったせいか、舌足らずな喋り方になっていて、かわいい。
 でも起きていたいという気持ちがあるのは本当らしく、一生懸命に目を開けようとしている。

「ん…」

 ガクリと遥希の頭が大きく揺らいで、またおでこをテーブルにぶつけたら大変だと、琉は遥希の体をもう1度ちゃんと自分に凭れさせてやった。



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 つい今の今まで「眠くない」と言っていた遥希からは、気持ち良さそうな寝息。

「…ハルちゃん、寝ちゃった?」

 起きる気配のない遥希の柔らかい頬をプニプニと突っついていたら、グラスを傾けていた大和に尋ねられる。

「寝た。そんなに飲んでないけど……疲れてたのかな」

 昨日も、バイトが終わるのは遅かったようだし、琉は高校を途中までしか出ていないからよく分からないけれど、大学だってきっと忙しいのだろう。
 こんなに細い体で、よくがんばっていると思う。

「…つーかさ、琉。今自分がどんな顔してるか、分かってる?」
「何が?」

 遥希のかわいい寝顔から、大和のほうに視線を移せば、すごく呆れた顔でグラスを傾けていた。

「琉、何かすごい甘ったるい顔してる。あのさ、お前に凭れて眠ってんの、ハルちゃんだよ?」
「え、分かってるけど」
「分かってねぇよ」

 …同じようなセリフを、南條にも言われた気がする。
 でも遥希がかわいいことは、大和だって認めてくれたはずなのに。

「そういうのは彼女か……せめて女の子にしてやれよ。ハルちゃん、かわいくても男だよ? 何でそんな甘やかしてんの?」
「普通だよ」
「なら琉、俺が酔っ払って寝ちゃったときも、そうしてくれんの?」
「でも大和、こんくらいじゃ酔っ払わないじゃん」
「例えばだよ。お前、俺が酔い潰れたって、ぜってぇそこまで介抱しねぇだろ。南條とか呼んで、それで終わりだろ!?」

 ………………。

 大和に言われた状況を頭に思い浮かべて、琉はシュミレーションしてみた。

 一緒に飲んでて、酔い潰れた大和。
   ↓
 大和が潰れるくらいまで飲んでるってことは、俺だってかなり酔っ払ってる。
   ↓
 早く家に帰って眠りたい。
   ↓
 南條を呼んで助けてもらおう!

「あー…そうかも」
「だろ!?」

 やっぱり! お前はハルちゃん以外の男には冷たいヤツなんだー、と喚きながら、大和はジンライムをあおる。



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