恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2012年02月

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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (134)


『大体さぁ、俺が水落なんかのこと好きになるわけないじゃーん。考えなくても分かるでしょ?』
「なっ…何その言い方! そんなの分かんないじゃん、好きになるかもじゃん!」
『なんないよ。ハルちゃん、俺の好みのタイプ、知ってんでしょ? 俺はマッチョが好きなの。ムキムキの。水落なんて、何かちょっと腹プヨってんじゃん』
「…………」

 別に琉の体型が、一般的な20代男子に比べて太っているというわけではないのだが、『アイドル=鍛えた体』と信じて疑わない、筋肉大好きの千尋からしたら、琉はまったくもって眼中に入らないらしい。

『そんでハルちゃん、結局何の用なの~? 惚気話なら聞きたくないんですけど~』
「あ、そうだ、琉が話…」

 元はと言えば、琉が用事があって千尋に電話したんだった、と遥希が思い出したと同時に、琉が遥希の手から携帯電話を奪い取った。
 千尋の声が大きいから、受話口に耳を当てていなくても話は筒抜けだったのだが、電話越しで本人を前にしていないからとはいえ、よくあれだけ好き勝手に言えたものだと思う。

『おぅおぅ水落~、ハルちゃん泣かせちゃダメだろ~! 何してんだよぉ』
「そりゃお前だろ! 何してんだよ、つか何なんだよ、お前!」
『うひゃひゃひゃひゃ、ねぇねぇ南條ぅ~、水落が怒ってる~』

 怒られているという自覚はあるようなのに、千尋はとっても陽気に南條に絡んでいる。
 一体いつから飲んでいるのか知らないが、千尋は随分と出来上がっているようで、このまままともに話が続けられるとは到底思えなくて、琉は困ったように遥希を見た。
 琉は最初から千尋のことが苦手なのだ。うまい扱い方が出て来ない。

『はいっ、南條も出て、電話!』
『はぁ? 何で俺が…』

 受話器の向こう、なぜか千尋は南條に電話を代わった。
 南條に用事はないが、千尋だと話にならないので、代わってくれたほうが有り難いと言えば有り難い。

『…もしもし?』

 すごく嫌そうな南條の声。
 南條は酔っているようでもないから、まさか素面であのテンションの千尋に付き合っているのだろうか。

『で、うまくいったのかよ、お前』
「まぁ…おかげさまで…」

 本当は、千尋に文句を言うつもりで電話をしたのに、どうしてマネージャーの南條に、結果報告をするはめになっているんだろう…。

 南條の話によると、千尋は南條にも内緒で遥希に大嘘の芝居をしたのだが、水落に告白すると言ってファミレスを出た後、車の中でネタばらしをしたのだという。
 高校来の友人が、まさかここまでの名演技を披露するとも思っていなかった南條も、もちろん千尋にすっかり騙され、本気で水落に告白しに行くのだと思い込んだらしい。



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映画のような恋がしたい。(だって最後は決まってハッピーエンドだ。) (135)


『俺、千尋の話聞きながら、どうやって千尋のこと説得したらいいのかと思って、超悩んだんだぜ?』

 はぁ~…と南條の深い溜め息が聞こえる。
 琉や遥希も、千尋には随分振り回されたが、南條は南條で相当な被害者と言えるだろう。

『南條、南條~、ハルちゃん何て~?』
『いや、違ぇ、水落だって、電話出てんの』

 勝手に南條に代わっておきながら、千尋は電話中の南條にちょっかいを出しているらしい。
 酔っ払いだから仕方がないけれど、何かもう…嫌だ…。

「…もう切るぞ?」
『え、あ、ちょっ水落っ!』
『ハルちゃん、バイバ~イ』
「……」

 千尋に一言言ってやるつもりが、結局肝心なことは何も言えないまま、千尋のペースに巻き込まれただけで、電話は終わってしまった。

「信じらんねぇ、アイツ…」

 琉は呆然としながら、遥希に携帯電話を返した。
 南條は、千尋と高校のときから友人のようだが、一体何がよくて一緒になんかいるんだろう…(でも、それを言うなら遥希もだが。きっと琉には理解し得ない魅力があるのだろう…)。

「琉、結局ちーちゃんに何も言えてないし」
「もぉー、俺、アイツ何か超苦手!!」

 遥希は、千尋の『琉のことが好きだから、慰めて告白する』という嘘を真に受けたようだが、いくら千尋の演技がうまくて、それを信じたとしても、琉が千尋の告白なんか受け入れると、本気で思ったのだろうか。

「だって、ちーちゃんかわいいし、すごく魅力的でしょ? 俺なんかより」
「いや、それは人それぞれの好みだと思うけど…」

 いくら琉が千尋のことが苦手でも、千尋の親友である遥希の前で、『そんなこと、全然ない!!』と全否定は出来ないので、がんばってオブラートに包んで答えた。

「ていうか、『俺なんかより』て何、ハルちゃん」
「ん?」
「俺にしたら、アイツよりも、ハルちゃんのほうがよっぽど魅力的だよ? 俺のこと、こんなにメロメロにしといて、一体どこが魅力的じゃないって言うの?」

 キスできそうなくらい近くまで顔を寄せられて、遥希は返事に詰まった。
 褒められ慣れていないので、こんなことを言われると、何と返したらいいのか分からなくなる、というのもあるが、琉の顔があまりにも近すぎて、ドキドキしてしまい、うまく思考が働かない。

「俺には、ずっとハルちゃんが一番だよ? 一番大好き。ずっと。…ハルちゃんは?」
「俺も…。俺も、琉のことだけが好き…」

 未来のことは誰にも分からないけれど、今、相手のことを好きだと思うこの気持ちに嘘はつきたくない……と、2人は初めて唇を重ね合せた。



*****

 ちなみに、千尋が琉に名前を呼ばれるたびに微妙な顔をしていたのは、『千尋くん』なんて、今までに呼ばれたこともないような呼び方をされたので、気持ち悪かったのだという。
 何とも千尋らしい理由を平然と言ってのけた千尋に、琉は唖然とし、やっぱりコイツとは仲良くなれない気がする!! と改めて思ったのだった。



*END*



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苦労人・南條馨の憂鬱 (1)


 「映画のような~」おまけ番外編。ちーちゃんと南條さん、最後、ハルちゃんたちから電話を貰った後くらいのお話です。

 南條馨(なんじょう かおる)は、自分自身の性格をよく理解している。
 ヘタレで、ビビり。無用なトラブルは御免だし、石橋はじっくり叩いてから渡りたい。ドラマチックな人生なんてまったく憧れていなくて、平凡な毎日が続けばそれでいい。
 そんな性格。
 にもかかわらず、南條は、FATEという押しも押されもせぬスーパーアイドルユニットのマネージャーという仕事を仰せつかっているのだから、人生とは不思議なものだ。
 まぁ、この就職氷河期に、何とか採用まで漕ぎ着けたのが今の会社しかなかった、というだけのことなのだが。

 そして、マネジメントするFATEの水落琉が、男である小野田遥希に惚れたというから、南條は本当に禿げ上がるほど悩んだのだが、琉が本気なのだと分かり、応援する気になった。
 相手の遥希は、FATEのファン(…というか、まさしく琉ファン)なのだが、まったくミーハーでないし、寧ろ過ぎるくらい遠慮がちな子で、それゆえ、互いに好き合っているにも係わらず、琉から離れることを選んだくらい。
 そのせいで、琉は眠れなくなるくらい悩んでしまうものだから、ますます南條の悩みは尽きなかったのだが、ビックリするぐらいに大胆で強引で無謀な計画により、結局2人はハッピーエンドに収まった。

 これから先、2人のことで、もしかしたら大変なことはあるかもしれないけれど、今はこれで落ち着いて、当分は南條も、いい仕事を獲得するのに奮闘すること以外に頭を悩ますことはなくなった…………はずだった。

 しかし南條は今、憂鬱な思いで頭を抱えていた。
 そしてその原因は、南條の目の前にいた。

「ひゃははは、南條、もっと飲めぇ~」

 南條を悩ます原因は、酒の力によりスーパーハイテンションとなり、南條の肩をバシバシ叩きながら酒を勧めて来るのだから、堪ったものではない。
 その名は、村瀬千尋。
 南條の、高校来の友人である。

「飲むっ、飲むから叩くなバカ! イテッ」

 千尋は、その華奢でかわいらしい見た目と違い、筋肉大好き、鍛えるの大好きなのもだから、力はかなりある。
 それに加えて、今は酔っ払っているから、まったく力の加減が出来ていなくて、本気で痛い。

「んもぉ~、せっかくハルちゃんたちがうまく行ったお祝いなんだから~」
「お祝い…て、お前、結果が分かる前から飲んでるだろうが!」

 琉と遥希が何とかハッピーエンドを迎えられた、無謀な計画を実行した張本人が彼であり、その計画がうまく行ったお祝いと称して、今南條の家で2人して飲んでいるわけだが……南條の言うとおり、2人がうまく行ったかどうか分かる前から千尋は飲んでいた。

 ちなみに千尋が実行したのは、遥希には『琉のことが好きだから告白する』と、琉には『遥希のことが好きだから告白する』と言って、2人をけしかける作戦。
 千尋の迫真の名演技によって、2人はまんまと騙され、結果、気持ちを通じ合わせることが出来たのだが、もしどちらも動かなかったら…。

「はぁ? 結局うまく行ったんだから、いいじゃ~ん。俺が何もしなかったら、どうせくっ付かなかったんだから、もし失敗したって、何も問題なくね?」
「バカ! もしうまく行かなかったら、2人のこと傷付けただけで終わるんだぞっ!」
「でもうまく行ったんだから、いいじゃん~。南條しつこい! 今さらつべこべ言うなぁ~!」
「いや、ちょっ…」



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苦労人・南條馨の憂鬱 (2)


 絶対に南條の言っていることのほうが正しいのに、千尋は手足をバタバタさせて南條に当たり散らすものだから、痛いわ、酒は零れそうになるわで、もう最悪。
 確かに結果オーライではあったものの、一歩間違えば大惨事だったのだということ、千尋は本気で分かっていないのだろうか。

(分かってないよなぁ…、絶対にいきなり思い付いて、やっちゃったんだろうなぁ…)

 遥希に、もう1度琉と会うよう頼んだファミレスで、残念ながらお断りされてガックリしていたら、隣にいた千尋が突如、『琉のことが好きだから、これから慰めて告白しに行く』と言い出したものだから、遥希だけでなく、南條も飛び上るほど驚いた。
 それは、仕事柄、多くの役者や芝居のシーンを見てきた南條ですら、演技だと見抜けなかったくらいだから、遥希が簡単に騙されるのも無理はない。
 確実にショックを受けているのを必死で隠す遥希(こちらは、全然隠し切れていなかった)と別れ、唖然と千尋を見ていたら、千尋は、琉の家に送っていくよう南條に言うものだから、本気なのだと確信した。

 南條は、琉が遥希に本気だったから、男同士だとしても仕方がない…と折れたが、そうでなければ、出来れば男の恋人なんて反対だ。ビジネス的な意味で。
 勢いで車を琉の家に向かわせていた南條だったが、到着する前に、どうにかして千尋に琉のことを諦めるよう説得しなければ…と考え込んでいたら、助手席の千尋が、ジトーッと見つめていることに気が付いた。
 何だ? と思ったら、千尋はすごーく嫌そうに口を開いたのだ。

『…あのさぁ、お前が超深刻そうな顔してるから念のため確認しとくけど、南條、お前までさっきの話、信用してないよな?』
『うぇっ!? え? え? 信用て…。え、まさかさっきの話………………嘘?』
『嘘だよ』

 千尋の言葉に激しく動揺しつつ、しっかりとハンドルを握りながら南條が恐る恐る尋ねれば、千尋はあっさりと、そう答えてくれた。
 ここまで南條を慌てふためかせておきながら、どうしてそんなに冷静なんだ。

『え……嘘…?』
『嘘に決まってんじゃん。何で俺が、水落なんか好きになるよ』
『…………』

 いや、嘘であってくれて嬉しいんだけれど、自分がマネジメントするアイドルが、『水落なんか』と言われると、ちょっと複雑な気持ち…。

『ていうか! お前、何そんな大嘘ついてんだよっ!! 水落んち行くとかっ、俺、マジで水落んちに向かってたんだぞっ!!』
『向かってくれていいよ。水落んちに行くつもりだもん。てか、前見て運転して』
『は…?』

 千尋に騙されたと分かった南條は、カッとなって声を大きくしたが、千尋は変わらず冷静に言ってくるから、わけが分からず、キョトンとなってしまった。

『水落んちにも行くってば。そんで、今度はアイツに言ってやるんだから』

 と千尋は、唖然としている南條に、にんまりと笑ってみせた。



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苦労人・南條馨の憂鬱 (3)


 思えば、それが悪魔の微笑みだったのだ。
 水落家に向かう車の中で、千尋は、琉にも一芝居を打つのだと南條に明かし、さっき遥希の前で見せたような深刻な顔をしていろ、と厳命してきたのだ。
 遥希のときは、南條も何も知らなかったから、素で驚いた表情が出来ていたけれど、千尋が何をするか知ってしまった今となっては、南條がうまく深刻そうな顔をしてくれないと、琉に嘘がバレてしまうから。

『お…おま…』
『南條、水落の前で、さっきみたいな顔出来ないなら、ずっと下向いてろ』

 琉の家に到着すると、千尋はかわいい顔で、とっても男前なことを言って車を降りた。

 琉は当然、千尋の突然の訪問を歓迎しなかったし、南條が一緒にいることも訝しんだ。
 南條はそのときになってようやく、千尋のこの計画を知りながら、どうして止めることが出来なかったのかと悔やみ始めていた。この計画は、あまりに無謀だった。
 本当に、ただ単に、2人を傷付けるだけで終わってしまうかもしれない。
 とんでもない大嘘つきの千尋が、遥希と琉の両方を裏切るだけ裏切って、それでおしまいかもしれない。

 千尋には、先ほどのような顔が出来ないなら下を向いていろと言われたが、南條はもう、自分がどんな顔をしているか分からなかったし、千尋にそう言われたからでなく、絶望でずっと俯いていた。
 南條がどんな気持ちでいるか知る由もない(…し、知る気もない)千尋は、琉に向かってサラッと嘘をつくと、南條を連れて琉の家を出た。

 それから、意気揚々と南條の車に乗り込んだ千尋は、南條にこの後の仕事がないことを確認すると、コンビニに向かわせた。
 南條は、何で俺、こんなに素直に千尋の言うこと聞いてんだろ…と思いつつ、望みどおり、千尋をコンビニに連れて行けば、千尋は昼間だというのに、しこたま酒を買い込み、

 そして。

『祝杯、挙げようぜ?』

 ニヤリと、南條の顔を覗き込んだのだった。



*****

「ひゃははは、あんときの水落の顔、今思い出しても笑える~」
「笑えない。つか千尋、缶持ったまま引っ繰り返るなっ、零れるっ!」

 全然まったく笑い事ではないのに、千尋は楽しくて堪らない様子で……もう手が付けられない。
 もともと千尋は酒も弱くないし、外で飲むときは気を付けているようだが、今は南條の家、よぉく見知った南條しかおらず、喜ばしいこともあったとなれば、タガが外れるのも無理はない――――ただ、タガの外れ方が半端ないというだけで。
 飲み始めてから大した時間も経っていないというのにのに、すでに相当の本数が空いており、恐ろしいことにその9割が千尋の体内に収められているのだ。

(小野田くん、コイツとすげぇ仲いいみたいだけど、一体何がよくて一緒にいるんだろ…)

 床に引っ繰り返って、グデングデンになっている千尋を見ながら、南條は思った。
 手は掛かるし、突拍子もないし、気まぐれだし、酒癖は悪いし…。



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苦労人・南條馨の憂鬱 (4)


「何らよ~、お前らって嬉しいんだろっ、ハルちゃんとアイツがくっ付いてー!」
「イテッ」

 南條の反応がおもしろくないのか、千尋は手元にあった空き缶を掴まえると、南條に向かって投げ付けて来た。
 酔っ払っているくせに、こんなときに限って絶妙なコントロールで空き缶は見事に南條に命中する。しかも、微妙に中身が残っていたのか、南條のシャツにアルコールが飛び散った。最悪だ。

「千尋、お前っ」
「ヤなのかよぉ~っ! ハルちゃ、泣いて、ヤなのっ? うぅ~ん…」

 南條のシャツに何が掛かろうがどうしようが知ったことではない千尋は、琉と遥希がうまく行ったことを喜んでくれない南條への不満が大きいようで、ジタバタしながら次の缶を手に取っている。

「ヤじゃない、ヤじゃないからっ。あの2人がうまく行ってくれてよかった、て思ってるってば」

 また空き缶を投げ付けられては堪らない、と南條は慌ててフォローする。
 そうは言っても南條はFATEマネージャーで、やはり無用なトラブルは避けたいから、出来れば琉に男の恋人なんて…とは思うが、琉は遥希と離れるとダメになってしまうのがつくづく分かったので、今回の結果はよかったのだと思う。
 ――――けれど。

「らったら飲めよぉ~! 南條ぅ~」
「飲んでるって」

 2人がうまく行ってくれたのはいいが、それはそうと、どうしてそのことで千尋はこんなにデロデロになるまで酔っ払い、南條もそれに付き合わされているんだろう。
 そう思って、そこでようやく南條は、先ほどの遥希への疑問が、自分自身にも当てはまることに気が付いた。

(俺もホント、何がよくて、コイツと友だちなの…?)

 高校で同じクラスになって以来、もう7, 8年の付き合いだ。
 こんな性格の千尋に呆れ果て、嫌になってしまったのなら、疎遠になってもおかしくないほど時間は経過している。しかしそれでも南條は、ずっと千尋の友人なのだ。

(何でなんて……考えるだけ無駄か)

 結局のところ、千尋はそういう人間なのだし、何でかは分からないけれど、不思議と離れられない縁なのだ。
 それでいい、と思い直して、南條は缶に口を付けた。

「南條~…」
「何だよ」

 先ほどまでとは打って変わった控えめな声で呼んで来るので、南條がふと視線を向ければ、千尋が真っ赤な顔でボンヤリとこちらを見ていた。
 ようやくこの傍若無人の振る舞いを、反省する気になったのだろうか。

「どうした?」
「…気持ち悪い…」
「ちょっ」

 まさかここに至って、そのセリフとは。
 あぁもうっ! と南條は苛立ちながらも、千尋の体を起こしてやる。

「水飲むか? 今持って…」
「吐きそう…」
「マジかっ!」

 やはりこれからも千尋との付き合いは続くのだろうし、これからも千尋には悩まされ続けるのだろう――――そう予感しつつ、南條は千尋をトイレへと連れて行ってやるのだった。



*END*



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 ちーちゃんと誰をくっ付けようか、いまだ思案中…。南條さんじゃ、ちょっと無理かな(笑)
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Honey Bunny Baby! (1)


 2011年好きカプアンケ投票ありがとうお礼小説。
 第1弾は、ダントツの1位となりました、ゆっちさん×カズちゃん小説です! (投票結果はこちら→「投票結果を発表しちゃったり、攻めっ子とか受けっ子にいろいろ質問しちゃったりするぞ企画」)
 第1弾ということは第2弾もあるわけで、予定としてましては、第3位のカプまでお礼小説をアップしようかな、と。
 でもこういうのって普通、3位から順にカウントダウンしていくんですかね? でも1位のカプから書き始めちゃって、まだこれしか書き上がってないです。すいません。
 ついでに言うと、書き始めたのが12月の頭だったんで、季節感がクリスマス前です。すいません。



 視界がふわりと歪んだ瞬間、和衣はすぐに、ヤバい! と感じ取った。
 ヤバい、ヤバい、ヤバい。


 ――――――――飲み過ぎた。




 12月に入り、世間がクリスマスシーズン、忘年会シーズンとなれば、普段から何かにつけて飲み会を催している大学生が、それに乗っかるのも無理はない。
 和衣は、そんなに友人関係が派手なほうではないから、同年代の大学生に比べたら、飲み会の回数は少ないほうだけれど、それでも今月はすでに4回目の飲み会だ。

 和衣は特別お酒が弱いというわけではないが、やはり人に迷惑は掛けたくないから、外で飲むときはそれなりに気を付けているのだが、今日はいつものメンバーの他、愛菜や眞織といった気心の知れたゼミの仲間ばかりの集まりだったので、少し気が緩んで、キャパ以上に飲んでしまった。

「…ぅ、ん…」
「和衣?」

 このままじゃ零しちゃう…と思ってグラスを置こうとしたら、酔っているせいで距離感を見誤って、和衣は思い切りグラスをテーブルに叩き付けてしまった。
 みんな酔っ払って騒いでいるから、誰も和衣の暴挙には気付いていなかったが、さすがに隣に座る祐介だけは、心配そうに和衣の顔を覗き込んだ。

「大丈夫?」
「ん…」

 本当はあんまり大丈夫ではないけれど、祐介に『大丈夫?』と聞かれ、和衣は返事とともに頷いたら、頭がガクンとなってしまった。
 やっぱり、全然大丈夫ではなかった。

(う゛ーに゛ー…、頭、ぽわーてなる…)

 和衣はギュッと目を瞑ったり、頭をプルプルしてみたりするが、あまり効果はない(というか、頭を振ったせいで、余計に酔いが回った)。
 あぁ、もういっそ、睦月のように寝てしまったら楽になれるのに……と和衣は、祐介がいるのとは反対側の隣で、転がって気持ちよさそうに寝ている睦月に視線をくれた。

 ちなみに睦月は、何も酔い潰れて寝てしまったわけではない。
 今日は祐介が一緒なので、あんまり酔っ払うと怒られる…! と思って、最初の1杯以外はコーラを頼み、時々亮の飲んでいるものをちょっと舐めていただけなのだが、もう時間的におねむで、堪えられなかったのだ。

「カーズちゃん! 大丈夫っ?」
「…ん、にゃ?」

 も…無理、寝る…と和衣が瞼を落としそうになった瞬間、突然目の前で声がして、ビックリして和衣が目を開ければ、赤い顔をした眞織が覗き込んでいた。
 顔は赤いが、眞織は明らかに和衣よりもしっかりした様子だ(絶対に100%間違いなく、彼女のほうがたくさん飲んでいるはずなのに)。

「眞織ちゃ…」
「もう次行くけど、カズちゃんも行く?」
「つぎ…」

 次に行くなんてとても無理だけれど、とりあえずこの席がお開きになってくれてよかった。
 それにしても、何でみんな、そんなに元気なの…??



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Honey Bunny Baby! (2)


「むっちゃんはー? 次行く~?」

 眞織は、和衣の隣で寝ている睦月にも、元気よく尋ねているが、ただでさえ寝起きの悪い睦月は、起きる気配がない。
 次に行くにしても、もう帰るにしても、起きないわけにはいかないのに。

「むっちゃーん」
「んー…」
「むっちゃん、アイス食べに行こ~?」

 次はアイス…。
 どうやら女性陣の多い今回は、甘いデザートが締めになるらしい。
 でも、それにしたって、ここまで爆睡している睦月を誘って、本当に行くと思っているのだろうか。やはり、しっかりしているように見えて、眞織も相当酔っているのかもしれない。

「睦月、アイスだって。行く?」

 最終的には睦月を寮の部屋まで連れて帰る役目になる亮が、睦月の肩を揺さぶっている。

「ん…にゃ…たこ焼き…」
「たこ焼きじゃねぇよ、アイスだってば」

 一体何の夢を見ているのか、睦月はむにゃむにゃと口元を拭っている。
 その様子にウケて周りは爆笑するが、寝惚けている睦月は自分が笑われているとも思っていないのか、起きようと一生懸命に目をこすっている。

「アイス…食べる…」

 寝惚けていても、お菓子の誘惑には素直に従うらしい。
 睦月は頭をフラフラさせながら起き上った。

(むっちゃん行くの…、俺も行かなきゃかな…?)

 変なところで義理堅い和衣は、今はアイスよりもお布団なのに、せっかく誘ってくれているのに断るのは悪いかも…なんて考えてしまう。

「むっちゃん、厚着すぎない? それ」
「らって、寒いんだもん」

 亮にコートを着せてもらって、マフラーも巻いてもらった睦月は、手袋をして、ロシアの人が被るみたいなもこもこ・ふわふわの帽子を被って、完全防寒体勢だ。
 ここまでなのに、アイスを食べに行くとか…。

「で、カズちゃんはどうすんの?」
「眞織ー、カズちゃんは無理でしょ、絶対」

 眞織の隣に座っていた愛菜が、お会計の千円札を纏めながら笑っている。
 そういえば和衣はお財布出していないけれど、お会計は?

「カズちゃん、お酒弱いんだねー、かわいいかわいい」
「…ぅ?」

 どうして和衣は、愛菜に頭をよしよししてもらっているんだろう。
 また『かわいい』とか言われてしまって、何だか腑に落ちないけれど、お酒、弱くはないが、決して強くないのも事実なので、何も言い返せない。



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Honey Bunny Baby! (3)


「カズちゃん、次行かないの? でも、1人で帰すほうが心配じゃない?」

 確かに和衣が次に行けそうもないことは眞織にも分かるが、こんなに酔っ払っている和衣を1人で寮まで帰すほうが、よっぽど心配な気がする。
 しかし愛菜はニッコリ笑うと、その笑みを和衣でも眞織でもなく、和衣の隣にいた祐介に向けた。

「だいじょーぶ、カズちゃんは、祐介くんが一緒に帰るからっ」
「ぅん?」

 こんな状態の和衣を放っておけないのは祐介も同じで、もちろん一緒に帰るつもりだったけれど、それは祐介が心の中で思っていたことであって、誰にも言っていないのに、どうして愛菜はそんなにしたり顔で言ってくるんだろう。
 何となく見透かされているような気がして、祐介は愛菜から目を逸らした。

「あ、そっか。じゃ、祐介くんも次行かないね?」
「まぁ…うん」

 愛菜の言葉に素直に納得した眞織に、祐介も素直に頷くしかない。
 どうもこの2人の元気の良さは、自分の妹たちを彷彿とさせて、何となく居心地が悪い。

「じゃあね~、カズちゃん」
「…ん」

 それぞれに身支度をした連中が、順に席を立っていく。
 和衣がすっかり酔っ払っているのは誰の目にも明らかなので、無理に次の会に誘おうとする者もおらず、和衣は少しホッとした。

「和衣、立てる?」
「…ん」

 あんまりにも無理そうなら、金は掛かるがタクシーを呼んでもらおうと思ったが、和衣は目をこすりながらも、コクンと頷いた。

「祐介…お金…」
「え、何が?」
「おかいけー…」

 酔っ払っていても、そういうことには生真面目な和衣は、ノロノロとカバンの中を漁っている。
 和衣の分のお会計は、きっと誰かが立て替えてくれたに違いないが、何となくその誰かは祐介かなーと思ったので。

「後でいいよ。立てるならもう帰ろ?」
「んー…じゃ、後でちゃんとゆってね…?」

 和衣は掴んだ財布をカバンの中に戻すと、今度はコートに手を伸ばす。
 しかし、本人は素早くやっているつもりだろうが、一つひとつの動作が緩慢で、身支度を整えるまでには相当時間が掛かりそう…と、祐介は、うまくコートのボタンを留められないでいる和衣に代わって、丁寧にボタンを留めてやると、マフラーも巻いてあげた。

「ゆぅ…ゴメンね…?」
「何が?」
「俺、すご…酔っ払…」

 迷惑は誰にも掛けたくないが、特に祐介には迷惑なんて掛けたくなくて、気を付けていたはずなのに、結局この有り様だ。
 情けなくて、何だか泣けてくる。



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Honey Bunny Baby! (4)


「いや、別にいいけど……ホントに立てる?」
「…立てるもん」

 あんまり言われると、ついムキになるというか、意地になってしまうタチの和衣は、足元フラフラだったけれど、がんばって1人で立とうと、足に力を入れる。
 祐介も最初は黙ってその様子を見ていたけれど、最後は堪え切れずに手を貸した。

 忘年会シーズンの金曜日、まだまだ混雑して賑やかな店内を、和衣は祐介に手を引かれながら出入り口へと向かう。

(あれ…、俺、祐介と手繋いでる…?)

 前に、酔っ払った睦月を寮まで無事に連れて帰るのに手を繋いだことはあるけれど、祐介とは、すごくコッソリとしか、人前で手なんか繋いだことはない。

「ゆ…ゆぅ…?」
「ん?」

 和衣が戸惑って声を掛けたら、祐介は何でもない顔で振り返るから、やっぱり何でもないことなのかなぁ、と酔っ払った頭はそう考える。
 いつもだったら恥ずかしくて仕方がないのに、今は何だかふわふわ幸せ気分だ。

「ぅわっぷ、寒っ!」

 外に出た途端、冷たい風が吹き付けてきて、和衣は思わず声を上げた。
 お店の中は暖かかったけれど、やはり、12月の外の空気はひどく冷たい。

「ぅ~…寒いぃ~~~~…」
「寒いね、平気?」
「うんー…、にゃっ!?」
「ちょっ」

 寒いのはまぁ平気だけれど、足元のほうが全然大丈夫でなかった。
 自分ではまっすぐ歩いているつもりなのに、和衣は先ほどからずっとフラフラしていて、今もビルの敷地を囲う縁石に突っ掛って転びそうになってしまった。

「和衣、大丈夫? ちょっと休む?」
「平気」
「全然平気じゃないし」
「平気だもん」

 酔っ払いが、酔っているのに『酔っていない』と言い張るのと同じく、酔いの回った和衣は、全然平気でないのに、平気だと主張して聞かない。
 祐介は、帰り道とは少し逸れるけれど、通行人の邪魔にならないように大通りを1つ曲がると、生垣の縁石のところに和衣を座らせた(もう言って聞かせるのは諦めた)。

「何、ゆぅ…、お家帰んないの?」
「ちょっと待ってて。お茶、あったかいのでいいよね?」
「ぅん…?」

 お茶? 何で? と思いつつ、和衣は素直に祐介の言うことを聞いて、座って祐介の背中を見つめながら待っている。
 でも、さっきまで手を繋いでいたのに、離れてしまって寂しい。



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Honey Bunny Baby! (5)


「はい」

 ぽつんと座っていた和衣が、よほど寂しい子に見えたのか、祐介はお茶のペットボトルを和衣に渡すと、その頭をポンポンとしてから、隣に座った。
 握ったペットボトルから、じんわりと温かさが染み込んでくる。

「飲まないの?」
「飲む~」

 和衣はフニャフニャになりながらも、ペットボトルのキャップを開けようとするが、力加減がうまく出来ず、手が空回りしているだけで、キャップは全然開かない。

「う、にゃー」
「和衣、貸してみ?」
「…ん」

 見兼ねた祐介が、和衣からペットボトルを受け取って、代わりにキャップを開けてやる。
 しかし和衣はなぜか、差し出されたペットボトルに手を伸ばさない。

「和衣?」
「ゆぅ…」

 どうした? と祐介がその顔を覗き込めば、和衣は口を半開きのまま、ポワンと祐介を見つめていた。
 だって。

 …だって。

(祐介が…、祐介が……カッコいい!! アーンド、超優しい~~~~~~~!!!!!)

 祐介の顔はいつもと同じだし、ペットボトルのキャップが開かないのを手伝うのも特別なことではないのだが、酔っ払った和衣は、その様子に、祐介LOVE!! のテンションを一気に上げてしまった。

「和衣? え、どうした? 気持ち悪い?」

 そんな和衣の内心など分かるはずもない祐介は、反応のない和衣を心配して、その顔を覗き込む。
 しかし、それが却って和衣を舞い上がらせてしまうなんて、もちろん知る由もなく。

「ゆぅすけ~~~~!!!」
「うわっ!」

 ポーッと祐介のことを見つめていた和衣は、お茶のペットボトルを受け取らず、祐介の胸に飛び込んで思い切り抱き付いた。
 まさかいきなり抱き付かれるとも思っていなかった祐介は、そのまま後ろに引っ繰り返りそうになったが、何とか堪えて体勢を立て直した。

「ゆぅ~…」
「え、何、和衣??」

 恋人に抱き付かれて嬉しくないということはないけれど、あまりに突然のこと過ぎて、祐介はまったく付いていけない。
 とりあえず、ギリギリお茶を零さずに済んでよかった。

「ゆぅ、ん~…好き…」
「あ、そう…??」

 一体どこで、どんなスイッチが和衣に入ったんだろう。
 祐介は、キュウキュウと抱き付いてくる和衣の背中に腕を回しつつ、お茶を零してしまわないようキャップを閉めた(出来れば飲んでもらいたいけれど、何となく無理そうなので)。



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Honey Bunny Baby! (6)


「ん…ゆぅ…」
「どうしたの、急に」
「ん~…ダメぇ…?」

 思い切り屋外なんだけれど……周りには誰もいないし、仮に人が通り掛かったところで、抱き合っているのが誰なのか、わざわざ確認していく人もいないだろうから、まぁいっか。

「ゆ…ダメ…?」
「ダメじゃないけど…、ここで寝るなよ? 外なんだから」
「らいじょーぶっ、ねにゃ~い!」

 さっきまであんなに眠そうにしていたくせに、でも今は何だかすっかりテンションが上がっているようで、確かに寝そうな雰囲気ではない(にゃんにゃん言葉にはなっているけれど)。

「んふっ、んふふ」
「和衣、何でそんなご機嫌なの?」

 祐介の肩口に額をすり寄せている和衣は、まさに夢見心地といった表情だ。
 確かに今日は楽しい会だったし、ご飯もお酒もおいしかったし、機嫌が悪くなる要素は皆無なんだけれど、ここまで機嫌がよくなるほどのことも、果たしてあっただろうか。

「らってぇ、も…俺、超~~~~~っっっ!!!」
「………………、……え?」
「ひゃは」

 『超』の後、『嬉しい』とか『楽しい』とか、何かしら言葉が続くのかと思いきや、和衣の言葉はそれきりで、後はただ幸せそうに笑うだけだった。
 …ゴメンナサイだけれど、祐介にはこのテンションはちょっと分からない。

(だって祐介が優しいしカッコいいし俺もう祐介のこと大好き大好き大好きずっとこうしてたい俺ちょ~~~~~~幸せどうしようもうホント幸せ過ぎて死んじゃうっ)

 とりあえず祐介には何も伝わっていないが、和衣の中では、祐介へのLOVEボルテージが上がりっ放しで、1人で勝手に盛り上がっていた。

「ねぇ、ゆぅ~、あそこ、くりしゅましゅがある~」
「は? クリスマス?」

 恋人のことながら、若干理解不能に陥っていた祐介は、和衣のさらなる言葉で、ますます首を捻ってしまう。
 やっぱりこんなところで休まないで、無理にでもさっさと寮に連れて帰ったほうがよかったかな(結局、酔い醒ましのお茶も飲んでないし…)。

「ね、ね、くりしゅましゅ~」

 完全に舌足らずな喋り方で、和衣は祐介の背後のほうを指差している。
 何だかよく分からないが、ひとまず和衣が何のことを言っているか確認しないことには話が進まない…と、祐介は和衣を抱き寄せたまま、首だけ捻って後ろを見た。

「ねっ、あそこ、くりしゅましゅ、あそこぉ~っ」
「あ、ツリー?」

 腕の中でパタパタと暴れる和衣の指差す方向には、遠くのほうにだが、クリスマスツリーのイルミネーションが見える。
 どうやら和衣はあのツリーのことを、クリスマスと言っているようだった(『クリスマス』とは発音できていないけれど)。



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Honey Bunny Baby! (7)


「ね、ゆぅ、くりしゅましゅ、ねっ?」
「そうだね」
「にゃ~」

 頭をポンポンとしてやったら、和衣は嬉しそうに祐介に抱き付く腕に力を込めた。
 外だし、夜だし、寒いし、こんなところで…とは、祐介も頭の片隅では分かっているのだが、その腕を解けない。

(いやだって、何かかわいいし)

 …結局のところ、祐介だって酔っ払っているのかもしれない。

「くりしゅましゅ…」
「うん。………………、…ん? 和衣?」

 つい今さっきまでテンションが高かったのに、急に和衣が静かになって、もしかして寝ちゃった!? と祐介が慌てて顔を覗き込んだら、しかし和衣はちゃんと目を開けていた。
 祐介の肩のところに頭を預け、キュッと抱き付いたまま、遠くに見えるツリーの明かりを見つめていた。

「…2年前、くりしゅましゅのトコで、ゆぅに好きてゆわれた…」
「そうだね」

 今見えるあのクリスマスツリーではなかったけれど、2人で出掛けたあの日、互いの想いを通じ合せたのだ。
 それからもう2年も経つ。

「ゆぅに、しゅき、てゆわれて、そんで、ちゅーされた。ねっ?」
「…はい」

 そんなこと、今さら確認されても照れるだけなんだけれど、そういえばあのときは、我慢できずに、屋外だというのに、つい和衣にキスをしてしまった。
 …いや、実際は、『好き』と言う前にキスをしてしまったのだけれど。

「ちゅーされたっ」
「分かっ…分かった、て、かずっ…」
「ちゅーうー」
「ちょっ、んっ」

 そのときのことを思い出しながら話していたら、また気分が高まって来てしまったのか、和衣は『ちゅ~』とか言いながら、そのまま祐介の唇に自分の唇を重ねてきた。
 アルコール味のキス。

「かず、い…」
「…ん。えへ、ちゅ、しちゃった」

 唇を離した和衣は、すごく満足そうに笑っている。
 その顔を見たら、こんなところで、と怒るに怒れない。

「えーへへー、ちゅっ、した!」
「分かったから、和衣、声おっきいってば」

 いくらこの通りに人がいなくたって、ここから見える大通りは、先ほどから人が行き交っているのだ。
 あまり騒がしくしたら、誰かに気付かれてしまう。



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Honey Bunny Baby! (8)


「和衣、シッ」

 祐介が、子どもにするように、立てた人差し指を口の前に翳して静かにするように言ったら、なぜか和衣もそれを真似して、『シィ~』と人差し指を立てている。
 その様子があんまりにも無邪気でかわいくて、祐介の口元もつい緩んでしまう。

「シィ~、ねっ?」
「そう、シー」

 もう1度祐介が口元に人差し指を持っていったら、何を思ったのか、和衣は今度はその指に唇を寄せるものだから、2人して祐介の人差し指のキスしている状態になってしまった。

「ふっ…何してんの?」
「シィ~んふふ」

 自分で自分の行動にウケたらしく、和衣は顔をくしゃくしゃにして笑っている。
 それを見て、祐介も和衣のことをかわいいと思うのだから、もう本当に切りがない。

「ゆぅ~」
「ん?」
「…しゅき」

 甘えるような声で祐介のことを呼んで、耳元で舌足らずにそう囁くと、和衣は再び祐介の肩に頭を預けたが、その仕草に祐介は思わず声を大きくしそうになって、慌てて息を飲んだ。
 酔っているとはいえ、無防備にそんな表情しないでほしい。祐介だって男なんだから、いろいろと我慢が効かなくなってしまう。

「…ゆ? んっ」

 反応のない祐介を不思議に思って和衣が頭を起こせば、急に顎を掴まれて、唇を塞がれた。
 先ほど和衣が『ちゅ~』とか言いながらしたような、そんなかわいいキスでなくて、油断していたら、舌まで入って来た。

「んっ、ふ…ぁ、」

 外なのに、ベッドの上でしかしたことのないようなキスをされて、でも酔いの回った和衣は、それをヤバいとかマズイとか考えるほどの思考能力も持ち合わせていなくて。
 …キスに溺れてしまう。

「ぅん…」

 長いキス……唇を離すと、和衣は蕩けたような表情で、祐介を見つめていた。
 濡れた唇が扇情的で、再び煽られてしまいそうになり、祐介は「ゴメン…」と言いながら、親指で和衣の唇を拭ってやった。

「ぅん…? ゆぅ、何で謝るの?」
「いや…何かこんなトコなのに…」
「んふふ、いーよー。もっとするぅ?」
「バッ…何言って…」
「らって、ゆぅと、もっとチューしたいんらもん」

 和衣のとんでもない発言に祐介は慌てるが、当の和衣は何でもないふうに、ケラケラと笑っている。
 いつもだったら、外とかでなく完全に2人きりの状態だって、恥ずかしがって絶対にそんなこと言わないのに、酒の力はすごい……というか、ヤバイ。



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Honey Bunny Baby! (9)


「ゆぅ?」

 どうしたの? とでも言うように、和衣はコテンと首を傾けて祐介を見ているが、あぁもう本当に、その仕草がどれほどの威力を持っているか、全然分かってないっ!!

「…和衣、寒いし、風邪引くとまずいから、もう帰ろっか」

 祐介は、なけなしの理性を総動員させてそう言ったが、途端、和衣は不満そうに唇を突き出した。
 和衣的にはすっかり気分が盛り上がっているのに、まさかそんなこと言われるなんて。自分だって大概空気が読めないくせに、和衣はつい、祐介、全然空気読めてな~い!! とか思ってしまう。

「やら、帰んないー」
「え、何で」
「何でじゃなくて~! やらぁ、2人でいる~! ちゅ~する~!」
「ちょっ、和衣、シーッ!」

 腕の中で暴れ出す和衣を何とか宥めようとするが、和衣は、ヤダヤダを繰り返して、全然静かになってくれない。
 いや、祐介だって、和衣の言いたいことは分かる。
 この状況で、まさか家に帰るとか、そんなの。
 でもこれ以上、こうやってくっ付いていたら、理性を保っていられる自信なんか、悪いが全然ない。結局は祐介だってただの男で、聖人君子でも何でもないんだから。

「やぁだぁ~、ゆぅ~~!!」
「…和衣」
「やぁ~んっ!?」

 やだぁ~! と、史上最強にかわいい仕草でジタバタしていた和衣の唇が、再び塞がれる。
 まだキスするんだもん、とは思っていたけれど、祐介は帰りたそうな雰囲気だったし、なのに突然キスされて、和衣は何が何だか分からなくなってしまう。

「ゆぅ…?」

 唇が離れると、祐介は抱き付いていた和衣の体を離して、立ち上がった。
 もしたかして怒った? と和衣は、今になって心配になる。

 けれど。

「じゃあ、寮じゃなくて、2人きりになれるトコ、行こう?」

 そう言って祐介は、和衣の手を掴んで、立ち上がらせた。



◆◆◆

「ゆぅ…」

 ドアが閉まると、和衣は潤んだような瞳で祐介を見上げた。
 さっきまであんなに大胆に、帰りたくない、こうしていたい、と甘えて駄々を捏ねていたのに、和衣は未だにラブホの雰囲気に慣れないのか、部屋に入ってもまだ、戸惑ったように視線を彷徨わせている。

 …そう。
 寮でなく2人きりになれる場所で、ちゃんと空気を読んだ場所……それは1つしかないのだ。



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Honey Bunny Baby! (10)


「…帰んない、て言ったの、和衣だからね?」

 酔っ払った和衣の腕を引いて連れて来ておいて、その言い方はちょっとズルいかな、と思ったが、祐介の理性を失わせたのは間違いなく和衣だし、帰りたくないと言ったのも和衣だ。
 寧ろ、あの場では踏み止まることの出来た自分を、褒めてほしいくらい(いや、踏み止まり切れてもいなかったけど)。

「ゆったけど…」

 和衣は閉じたドアに寄り掛かり、床に視線を落とした。
 帰りたくないと言ったのは確かに和衣で、それは本心だったんだけれど、でもまさか、そうしたら行き着く先がラブホだったなんて、思ってもみなかったから。

 クリスマスツリーが見えて、チューして、超いい雰囲気なのに、祐介が帰ろうとか言い出して。
 寮に帰ったら部屋は別々なのに、何で帰るの? 祐介、空気読めてない! て思ったけれど、あの状況でちゃんと空気を読んだらこうなるのだと、和衣はようやく気が付いた。
 やはり、空気が読めないのは、和衣のほうだったのだ。

「イヤ?」

 祐介は、和衣の手首を掴むと自分のほうに引き寄せて、冷えた指先に唇を落とした。
 嫌とかじゃなくて、嫌なわけないし、でも心臓がバクバクしすぎて、どうにかなりそう。

「ゆ…」
「…ヤダて言っても、今日はもう帰さないけど」
「んぅ…」

 視線を上げたら、欲に満ちた男の目をした祐介と目が合って、そのまま唇を奪われた。
 唇を舐められたと思ったら、すぐに祐介の舌が口の中に入ってくる。
 最初からこんなに性急な祐介は知らなくて、和衣はちょっと怖く思ったけれど、でも勢いで、背中を預けたドアに後ろ頭をぶつけたら、そっと祐介の手が頭を撫で、キスの合間に「平気?」と尋ねてくれるから、あぁ、やっぱりいつもの祐介だって思った。

「ふ、ぁ…」

 祐介の手が和衣の腰に回り、コートの上からでも分かるくらい細いその腰を抱き寄せられて、そうやってギュッとされるのが嬉しくて、和衣も両腕を祐介の背中に回して抱き付いた。
 止まないキス。
 我慢できなくなって、今度は和衣のほうから舌を差し出すと、積極的な和衣に、祐介は驚いたように少し目を見開いたが、その舌先を甘噛みして絡め取った。
 ここに来るまでに和衣の酔いはだいぶ醒めたけれど、いつもよりも何だか積極的になってしまうのは、やはりまだ酔っているせいだろうか。

「んっ、…」

 祐介の口腔に舌を引き摺り込まれたり、逆に、祐介の舌が蹂躙するように和衣の口腔を這い回ったりして、和衣は、口の中に溜まった、もうどちらのものかも分からない唾液を飲み込んだ。
 体を開いて、本来はそうでない場所に祐介の熱を受け止める行為もそうだけれど、こういうキスて、やっぱり祐介のことが好きだから出来るんだなぁ、と和衣は思う。
 だって、他人の唾液を飲むとか、普通出来ない。

「ゆぅ、もっと…」
「もっと……何? キス?」
「…ん、」

 抱き付く腕に力を込めれば、祐介はさらに深いキスを和衣にくれるし、コートの下に潜り込んだ手は、ジーンズのウエストの部分をなぞり、カットソーの下に着ていたインナーの裾を引き抜く。
 まだ冷えたままの指先が素肌に触れ、和衣はピクッと体を震わす。しかもそのまま脇腹を辿られるから、擽ったさも相俟って、和衣はそれを堪えようと、足に力を入れた。



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 これってR指定入れたほうがいいの…? 私、その判定基準がよく分かんない…。誰か教えてください。
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Honey Bunny Baby! (11)


「んぁっ…」

 そういうつもりではなかったのに、背中をドアに預けたまま、膝が崩れないよう足を突っ張ったら、下腹部を祐介のほうに押し付けるような形になってしまい、羞恥と快感で和衣はカッと体が熱くなるのが分かった。
 慌てて元の体勢に戻ろうとするが、背中は滑るし、キスは気持ちいいし、全然うまくいかない。

 そうしている間にも、祐介の片手は崩れそうになる和衣の体を支え、もう片方の手は、器用に和衣のベルトのバックルを外していく。
 こ…ここ、まだベッドじゃないけど…??
 というか、まだコートすら脱いでいないのに。

「ゆ…ゆぅ…?」
「…ん?」

 戸惑いながら和衣が声を掛ければ、祐介は和衣のジーンズのフロントから手を離して、唾液に濡れた自分の口元を手の甲で拭いながら、首を傾げた。

(今ここで、ベッド…とか言ったら、最高に空気読めてない感じ…?)

 欲に濡れた祐介の瞳を見つめ返しながら、和衣は快楽に流されつつある思考回路で、そんなことを思っていた。
 前に、ベッドに行く前に盛り上がってしまい、和衣は、祐介がよければそのままソファでも…て思って、そう言ったけれど、結局あのときは、祐介が和衣を宥めてベッドに向かったのだ。

 けれど今、祐介に少しの余裕があるようにも見えなくて、もしかしてこのままここで最後までしてしまうんだろうか、と思う。
 和衣的には、祐介がそうしたいのなら、恥ずかしいけれど身を任せたっていいとは思うが、イレギュラーな場所では経験がないから、何をどうしたらいいのかさっぱり分からない。
 変なことをして、祐介が萎えてしまったら、ショックで立ち直れないかも…。

「ゴメ…ちょっと余裕なかった…」

 どうしていいか分からずに、和衣が視線だけキョロキョロしていたら、フッ…と祐介の空気が和らいで、両脇に腕を入れられ、崩れ掛けた体を引き上げられた。
 驚いて祐介の顔に視線を戻せば、いつもの優しい祐介がそこにはいた。

「ゆぅ…」

 和衣の濡れた唇を、祐介の親指が拭う――――その瞬間、和衣の心の芯に火が点いてしまった。
 離れて行こうとした祐介の手首を掴んで、和衣の唾液で濡れたままの親指に、カプと歯を立てる。驚いた表情の祐介の顔から、目を離さない。

 祐介はいつだって優しくて、和衣のことを一番に考えていてくれて、自分でも面倒くさい性格だと自覚している和衣が困らないように、さりげなくリードしてくれる。

 …でも、こんなときまで、そんなでなくていいのに。
 そう思うのは、和衣のワガママなんだろうか。

「…しよ? 続き…」
「ッ、かずっ…」
「でもあの…、その…………ベッド…」

 あぁもう、やっぱり全然うまく誘えない。
 それに、このままここでするのはよく分かんないし、恥ずかしいから、やっぱりベッドがいいと思って付け加えてみた言葉は、やっぱり最高に空気読めてない感じになってしまって、和衣は居た堪れなくなってしまう。



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Honey Bunny Baby! (12) R18


 祐介、早く何か言って! …ていうか、何も言わないのは呆れてるから? ――――と、和衣が被害妄想並みに、勝手にネガティブな方向へどんどん突き進んでいる一方で、祐介が言葉を詰まらせていたのはもちろん、和衣が考えていたような理由からではない。

 和衣はまったく無意識の仕草で、続きをねだる言葉を発したのだろうが、もともとの身長差と体勢のせいで、凶悪なまでにかわいらしい上目遣いになっていたのだ。
 おまけにその直後に、恥ずかしそうに視線を落とすものだから、先ほど何とか立て直したはずの祐介の理性は崩壊寸前だ。
 和衣に限って、そんな計算が出来るわけないとは思うけれど、無意識で無自覚の行動だったら、なおのことタチが悪いと思う。

「も…、ホント勘弁して…」
「ふぇ…?? ゆ…んんっ…!!」

 やっぱり俺、変なことしたんだ~~!! ぎゃあ~~~!!! と和衣が焦るよりも先に、祐介に強く抱き締められ、唇を奪われた。

「…好きだよ、和衣」



◆◆◆

 2人とも何とかコートだけは脱いで、和衣はそのままベッドに押し倒された。
 祐介はいつものように優しかったけれど、余裕がないと言っていただけあって、和衣の着ていたカットソーとインナーはあっという間に剥ぎ取られてしまった。

「ひっ、ん…」

 唇だけじゃなくて、耳とか、首筋とか、…胸とか、そういう場所だって別に初めてキスされるわけでもないのに、祐介の唇が触れるたび、和衣の体はビクビクと跳ねる。
 外の寒さに冷たくなっていたはずの祐介の手は、いつの間にか熱くなっていて、唇とともに和衣の体のラインをなぞっていく。

 胸を弄られて感じるのは、和衣的には不本意……というか、俺だけなの? 俺って変? という和衣お得意のネガティブ思考が働くようなのだが、自分の愛撫で感じてくれるのは、祐介としては素直に嬉しい。

 片方の突起を指の腹で押し潰すように弄り、反対を口に含んで舌先で転がせば、和衣の薄い胸が何度も上下し、その呼吸が乱れていくのが分かる。

「んんーっ…んっ」

 妙にくぐもった声がすると思って祐介が顔を上げたら、両手で必死に口を押さえている和衣が目に入った。

「…何してんの?」
「ん、やっ…」

 不思議に思って祐介がその手を掴んだら、思いがけず和衣が抵抗するから驚いたが、どうやら声を聞かれるのが恥ずかしくて、がんばって堪えているらしい。

「ぅー…!」

 声なんて今さらだし、今までこんなに必死になったことなんてないのに…と、祐介が手を外そうとしたら、和衣に恨みがましげに睨まれた。



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Honey Bunny Baby! (13) R18


「和衣、手退かしてよ」
「やっ…」
「だって、キスできないし」
「ん…ふ、ぅ…」

 祐介は別に、相手の感じている声を聞かなければ興奮しない…というタチではないし、嫌なのを無理させる気もないのだが、和衣が自分の手に歯を立てているのが分かったので、それをやめさせたかったのだ。
 和衣は眉を寄せながらも、ようやく口元から手を外したが、やはりその手の甲には、くっきりと歯形が残っていた。

「ちょっ…、手痛くない?」
「らってぇ…んっ」

 祐介はその歯形に舌を這わせてから、和衣の唇を奪った。
 キスしながら、中途半端になっていたジーンズに手を掛けたら、和衣の腰がビクッと震えたが、祐介が「ちょっと腰上げて?」とお願いしたら、意外にも和衣はすんなりその言葉に従った。
 和衣の恥ずかしがるポイントがよく分からない…とは、睦月がよく言っていることだが、実のところ、祐介もその意見には賛成している。

「はぁっ…」

 下着ごとジーンズを足から引き抜けば、和衣は上半身を捩って、枕に顔を押し付けた。
 本当にまったく、今日は大胆なのか、恥ずかしさが勝っているのか、さっぱり分からない。

「ちょっ、やっ、ゆぅ…!」

 祐介の手が和衣の下腹部に触れると、和衣は慌てて足をパタパタさせたが、もちろんそれは間に合わなくて、簡単にその熱を握り込まれてしまう。
 すでに和衣のモノは緩く勃ち上がっていて、まだそんなに愛撫を受けたわけでもないのに……と思ったら、恥ずかしくて和衣はギュッと目を瞑って、枕を握り締めた。

「っん、ん…ふ、っ…」

 感じる祐介の手の動きと、グチュグチュといういやらしい音で、固く目を閉じていたって、自分のものが今どんな状態なのかが分かる。
 自分ばかりがどんどん追い上げられていくのは嫌なのに、すっかり祐介に翻弄されてしまい、結局何も出来ない。

「ひゃっ、えっ!? ちょっ」

 手で擦られていたソレが熱く濡れた感触に包まれて、驚いて目を開けたら、祐介が和衣のモノを口に含んでいる姿が目に飛び込んできて、和衣は慌てて目を閉じ直した。
 今までに、祐介のためにがんばりたぁ~いっ! と、和衣がしてあげることはあっても、和衣が恥ずかしがるから、祐介がしてあげることは実はなかったのだ。

「ゆ、ゆぅっ…」

 上擦った声で名前を呼ばれたが、拒絶の言葉もなかったので、祐介は構わず行為を続ける。
 喉の奥まで銜え込むと、一瞬えずきそうになったが、その行為自体には何の嫌悪感もなくて、和衣のモノを銜えたまま、祐介は顔を上下させた。
 わざとではないんだけれど、自分の唾液と和衣の先走りのせいで濡れた音が立って、何だかひどく倒錯的なことをしている気分に陥る。



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Honey Bunny Baby! (14) R18


「ひっ、ん、もぉやっ…!」
「…ん?」

 切羽詰ったような声を上げた和衣に、急に髪を掴まれて、何事? と視線を上げたら、和衣がガジガジと自分の指を噛みながら、首を振っていた。
 口の中のモノは大きく張り詰めているし、そろそろ限界なのだと祐介は気が付いた。

(…飲むか?)

 和衣は口でするとき、祐介がいいと言っても、何だかんだで結局祐介の精液を飲んでしまうのだ。とすれば、やっぱり自分もそうしてやったほうがいいんだろうか。
 しかし、和衣には大変申し訳ないんだけれど、果たして同じことが出来るだろうか…と祐介は思ってしまう。
 それに和衣の性格からして、祐介がそういうことをすると、ぎゃあ~~~~!!! と、大変な勢いで謝ってきそうだ(自分だって同じことをしているのに)。

「や…、ゆぅ、ヤダ…」
「え?」

 祐介が、どうしたものかと、全然冷静になれない頭で考えを巡らせていたら、和衣が肘を使って少しだけ体を起こして、祐介の顔をそこから引き剥がした。

「え、そんなにヤダった? ゴメ…」
「ちが…」

 何も言わなかったから、恥ずかしいだけで別に嫌ではないのだろうと思っていたのだが、実はそんなことも言い出せないぐらいに嫌だったんだろうか。
 祐介が困って眉を下げれば、和衣は「違うの…」と吐息混じりにそう言って、祐介のシャツの襟元を掴んだ。

「イきそ…だから…」
「ぁ、うん」
「も…ゆぅも脱いでよ」

 目元を赤く染めながら体を起こした和衣は、祐介のシャツのボタンに手を掛け、何とかそれを外そうとする。
 すでに全裸で、こんなにも乱れている和衣と違って、祐介はまだシャツのボタンがいくつか外れているだけで、上も下もきちんと着込んだままだった。
 和衣は、脱いで、と言ったものの、祐介のシャツから手を離してくれず、寧ろボタンを外してくれようとしているようなので、祐介は手を出すのをやめた。

「んっ…んー…」

 しかし、がんばってボタンを2つ外したのに、祐介はシャツの上からカーディガンを着ていて、それもしっかりボタンが留まっているものだから、和衣はもう自棄を起こしたい気分だった。
 そしたら頭上から、何やら笑う気配がして、何? と顔を上げたら、口元に笑みを浮かべている祐介と目が合った。

「何笑って…」
「何でもないよ、ゴメン」

 ごまかすように祐介は和衣の頭を撫でると、半端になっていたシャツとカーディガンを脱ぎ捨てた。
 一生懸命になっている和衣が微笑ましくて、つい笑みが零れてしまった…なんて知れたら、絶対に拗ねてしまうだろうから。



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Honey Bunny Baby! (15) R18


「ね、下も脱がせてくれるの?」
「なっ…じ自分で脱いでよっ」

 絶対にやってくれないと思いつつ、祐介が試しに言ってみたら、案の定、ただでさえ赤くなっていた顔をさらに赤くして、和衣は即行で断って来た。
 もちろん、最初からさせるつもりもなかったので、祐介はこれ以上、和衣を恥ずかしがらせないよう、さっさとすべてを脱いだ。

「ん…」

 互いに一糸纏わぬ姿になって抱き合えば、触れ合う素肌が心地よかった。
 しかし、祐介が押し倒した和衣の中心に再び触れようとすると、和衣は「イヤ…」と首を振った。

「何で? もうイキそうなんでしょ? 我慢しなくても…」
「ヤダ。入れて、ゆぅの」
「いや、まだ何も慣らしてないし」

 男としては大変魅惑的なおねだりを頂いたのだが、そうは言っても、まだ何の準備もしていない状態では、到底祐介のモノを受け入れることは出来ない。

「やぁ、早くぅ…」
「ッ…」

 あぁもう。
 これが酒の力なんだろうか。
 つい今さっきまで、祐介の穿いていたズボンを脱がすことすら恥ずかしがっていたというのに、どうして急にこんなに積極的になれるんだろう。
 本当に、和衣の恥ずかしさのポイントは計り知れない。

「分かったから、ちょっ待って、」

 祐介は、和衣が恥ずかしがらない程度に足を開かせつつ(何度も言うが、和衣の羞恥ポイントは分からないのだ)、枕元にあったローションの小袋を開けた。

「冷たい? 平気?」
「へ、き…」

 シーツに零さないよう気を付けながら、ローションを絡めた指を和衣の秘所に滑らせた。
 そこに指が触れた瞬間、和衣の腰が跳ねたが、さしたる抵抗もないので、祐介は少しだけ指先に力を込めて、少しずつ指を埋め込んでいく。

「はぁっ…!」

 ぐるりと縁の部分をなぞるように指が動くと、堪らずに和衣は体を捩らせた。
 本来は何かを受け入れる器官ではないのに、祐介の指の、たったこれだけのことで、背中をぞわりと快感が這い上がっていってしまうのだ。

 祐介はいったん指を引き抜くと、ローションを足して、今度はもっと奥のほうまで指を進めていく。
 1本だった指を2本に増やして和衣の中を掻き回せば、無意識だろうが、和衣はキュウと祐介の指を締め付けてくるから、そのリアルな感触に、祐介の熱も昂る。

「ひっ…んぁああっ!」

 意図せず祐介の指が和衣の中の一点を突いたら、そこが感じるポイントだったらしく、和衣は甲高い声を上げて体を震わせた。



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Honey Bunny Baby! (16) R18


「やっ、ゆぅ、やらっ!」
「ぅん? や? 痛い?」
「ちが…、も…分かんなっ…」

 和衣が急に暴れ出すから、祐介は少し慌てたが、痛いわけではないのだろう、その場所をもう1度弄れば、和衣は甘い声で鳴き続ける。
 ジタバタすればするほど祐介の指を感じてしまうのに、もうジッとしてなんていられなくて、和衣はその指に翻弄されてしまう。

「んぁっ…あっ、らめっ…俺、もっ…」
「気持ちぃ?」
「い…いぃから、あっ、も…おねが、お願い、ゆぅっ…!」

 2本の指をバラバラに動かされて、激しく抜き差しされて、和衣は背を撓ませた。
 激しく指を動かされて、気持ちいいところだけを刺激されて、冗談でなく、後ろだけで、それも指だけでイッてしまいそうで、和衣は必死に祐介に懇願した。

「…ん、ゴメン」

 さすがにちょっとやり過ぎたかな…と、宥めるようなキスをしてから、祐介はゆっくりと指を引き抜いた。
 その感触にも感じてしまうのか、和衣はビクビクとももを震わせている。

「はっ…あ、あぁっ!」

 足を持ち上げられ、和衣が恥ずかしいと思うよりも先に祐介が進入してきて、その圧倒的な質感に和衣はギュッとシーツを握り締めた。
 中を擦られる感覚に、肌がぞわぞわと粟立つ。

「ゆぅ……気持ちぃ…」
「ッ、」

 人とポイントはずれているが、基本的に和衣は恥ずかしがり屋なので、そういうことを口に出すタイプではないのに、今日はもうすでにタガが外れているのか、蕩けたような表情で祐介を見つめながら、素直に快感を伝えてきた。
 あまりのことに、まだ入れている途中だというのに、祐介は自分のモノがグッと大きくなったのが分かった。いやだって、そんなの仕方がない。

「あ…、中…入ってくる…、ゆぅの…」
「ちょっ、も、かず…黙ってっ」
「んぅっ…!」

 まだ酔いが醒めていないことも手伝ってか、和衣は、いつもは言わないようなことを普通に口走るから、祐介はもう我慢が効かなくなりそうで、慌ててキスで和衣の口を塞いだ。
 すると和衣が、うっとりと自分から舌を差し出してくるから、逆に余計に煽られてしまう。
 祐介は和衣の舌を絡め取りながら、その細い腰を掴み直した。

「はっあぁあああっ!」

 ゆっくりながらも、しかし逃がすまいとその細い腰を押さえ付け、祐介が一気に奥まで貫けば、さすがに和衣はその衝撃に、声を上げて身を捩らせた。
 ゴメン…と思ったけれど、和衣の中がキツク締め付けてくるから、祐介は声を発する余裕もない。
 和衣の両脇に手を突いて、祐介は上がってしまった呼吸を整える。ポタポタと和衣の胸の上に汗が落ちる――――と、祐介はふと和衣の腹部が視界に入った。



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Honey Bunny Baby! (17) R18


「ぁ…、ゆ…おっきくしないで…」

 和衣の腹を汚していた白いものは精液で、祐介はまだ達していないし、となればそれは和衣のモノで、つまり祐介がすべて入れた瞬間にイッてしまったということで。
 その一連の出来事が頭の中で繋がった瞬間、図らずも祐介のモノは素直に反応してしまい、和衣の中も、それを敏感に感じ取ってしまったらしい。

「んぁ…あ、中、何か変…、変なの…何ぃ…?」
「ッ…、和衣、入れただけでイッちゃったの、分かる?」
「ふぇ…?」

 よく分かっていない様子の和衣に、祐介も頭の中が沸騰しそうなくらいクラクラしていたけれど、頭を撫でてやりながら伝えれば、呼吸も落ち着いてきた和衣は、ようやく自分の体に起こったことが分かったのか、恥ずかしそうに視線を外した。

「和衣、こっち向いて?」
「ゃ…」

 それこそ蚊の鳴くような声で拒んで、和衣は目を閉じてしまった。
 恥ずかしくて仕方ないのだろう、耳まで真っ赤にしながら和衣は身じろいだが、そうされると中の締め付けもキツクなって、祐介的にはちょっとツラいところだ。

「ね…動いてもいぃ?」

 耳元で尋ねれば、その声は思った以上に興奮で掠れていて、祐介は渇いた唇を舐める。
 返事のない和衣の、赤くなった耳にキスしたら、「ひゃうっ!」と引っ繰り返ったような声を上げて、和衣はバッと祐介のほうを向いた。
 見慣れたはずの祐介の顔を、信じられないものを見るような顔で見ている。

「え、何? 和衣」
「…何か、ゆぅがエッチな顔してる…」
「は?」

 やっている最中の自分の顔なんて見たことはないし、見たくもないが、まさにその真っ最中なんだから、『エッチな顔してる』とか言われても…。

「…も、動くよ?」
「あんっ」

 ダメだ。これ以上和衣と会話を続けていたら、本気で理性が焼き切れる。
 そう思って祐介は、和衣の返事を待たずに腰を動かし始めた。

「ひゃうっ…んっ、ゆ…、らめぇっ…!」

 何度か緩く腰を揺すっただけで、和衣は堪らないといった感じで祐介に縋り付いて来る。
 アルコールのせいか、イッたばかりで、まだ体中が敏感になっているからなのか、和衣の中は、いつもよりもずっと熱く、うねうねと祐介に絡みついて来る。

「やっ、あっ、らめっ…、らめなの、ゆぅっ」
「え? 何がダメ?」
「中っ…中変っ…、あぅ、気持ちいっ…」

 膝裏を抱えて、持ち上げた足を広げさせて……多分いつもだったら絶対に恥ずかしがるであろう体勢なのに、今の和衣はそれすらも気付けないようで、甘い声を上げながら、祐介の動きに合わせて揺さぶられている。



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Honey Bunny Baby! (18) R18


 和衣の体が上のほうにずり上がり過ぎてしまったせいで、体が揺れ動くたびに、頭がガツガツとヘッドボードにぶつかっているのに気が付き、祐介はいったん動きを止めた。

「はっ…ぇ、何…? や、もっとぉ…」

 体の奥を突き上げられる感覚がなくなって、和衣は不満そうに祐介に視線を向け、ゆるゆると祐介の背中に腕を回した。
 祐介は、「…うん」と掠れた声で返事をして、いつの間にか口の中に溜まっていた唾液を飲み込むと、和衣の頭がぶつからないように体を少しずらしてやった。

「ゆぅ…」

 祐介が何をしたかったのか分かって、そんな些細なことにも気が付いて、気に掛けてくれることに嬉しくなって、和衣はキュウと祐介に抱き付く腕に力を込めた。

「ゆぅ…好き、好きぃ…」
「…ん」

 体勢的に、ちょうど祐介の耳元で囁くような形になってしまい、吐息が掛かったせいで祐介は擽ったそうに首を竦め、――――しかも和衣の中に収まっているモノも、素直に反応した。
 それが嬉しくもあり、楽しくもあったので、つい和衣は、そのまま祐介の耳をはむっ…と唇で食んだ。

「ちょっ、ぁ、ッ」
「ひゃぅ!」

 ビクッと祐介が体を震わせ、背を仰け反らせた。
 そのせいで、祐介自身が、和衣の一番感じる部分を突き上げてしまったものだから、和衣も堪らずに身を捩った。

「も…ホント…」
「ぁ…ん? んぁ、あっああぁぁっ!!」

 何? 何? と和衣が慌てているうちに、ガシッと腰を掴み直され、驚く暇もなくガツガツと突き上げられた。
 しかも、きっと祐介も分かっていてやっているのだろう、前立腺のところを狙うように腰を打ち付けてくるから、和衣は急激に上り詰めていってしまう。

「あっ、あっ、らめっ、イク、またイッ…」
「かずっ…」
「はぅっ、んっ…」

 和衣の足をグッと折り曲げ、胸と胸を合わせ、顔を近づける。
 唇を重ねて、舌を絡ませれば、和衣は舌の先まで痙攣したように震えていた。

「んっんー…!!」

 ガリ、と和衣の短い爪が祐介の背中に食い込む。
 初めて体を繋げたとき、同じように祐介の体を傷付けてしまって以来、和衣は相当気を付けているようなのだが(別に祐介は何とも思っていないのに)、今日はもうそんなこと気に掛ける余裕もないらしい。

「ひっ…ゆ、んっ、んぁっ、ぁ――――」

 和衣、好き――――と、唇を合わせたまま吐息とともに伝え、互いの腹の間で限界間近になっていた和衣のモノに手を掛ければ、和衣は体を跳ね上げて祐介の手と互いの腹を精液で汚す。
 そのキツイ締め付けに、祐介もそのまま絶頂へと達した。



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Honey Bunny Baby! (19)


*****

(う~~~にゃ~~~~)

 風呂から上がった後、向かいに立つ祐介に丁寧に髪を拭いてもらいながら、和衣はまともに祐介の顔を見ることも出来ないまま、心の中でずっと唸っていた。
 だって、恥ずかしくて。

 行為の最中はいい。
 快感に流されてしまえば、後はもう何も分からないから。

 しかし事が終わって落ち着くと、途端に恥ずかしさがぶり返し、和衣は全然普通でいられなくなるのだ。
 そうは言っても、一緒にいるのは恋人の祐介であり、もう何度も体を重ねた関係なのだから、何を今さら…なのだが、恥ずかしいものは恥ずかしいのだから仕方ない。

 しかも今回は、何だかすごくノリノリで誘ったりしたので、それもギャーという感じだ。
 それもこれも飲み過ぎて酔っ払ってしまったせいだが、それならいっそ、記憶が全部吹っ飛んでくれたらよかったものを、なぜかしっかりバッチリ覚えているのだから参る。

(祐介は……普通、だ)

 結局1度だけでは足りずに2度も愛し合って、それから風呂に入ったのだが、そのときにはもういつもの祐介に戻っていて、恥ずかしがる和衣に気を遣ってか、何事もないように風呂から上がると、甲斐甲斐しくその髪を拭いてくれている。

「祐介ぇ…」

 和衣は俯いたまま、向かい合わせに立っている祐介のほうに身を傾け、額をその肩口に押し付けた。
 もう、いろいろと恥ずかしすぎて祐介の顔を見られないのだが、でも甘えたいことは甘えたいので、額をすり寄せれば、祐介の手が和衣の頭をポンポンしてくれる。

(…石鹸の匂い、する)

 お風呂で汗やら精液やら流して体をキレイにしたのだから当たり前だが、額をスリスリさせていたら、ふんわり石鹸の匂いがして、和衣だって同じものを使ったのに、何だかそれに混じって祐介の匂いもするようで、そんなことを思ったら、また体がぶわっと熱くなってしまった。

「ぅ゛ー…」
「ん? どうした?」
「もぉ~…俺ぇ~…」

 祐介の肩に頭を預けながら和衣がうにゃうにゃとぐずり出したので、宥めるつもりで祐介が抱き寄せたら、なぜか和衣はパタパタと暴れ出した。

「にぃ~…」
「和衣?」
「変…」
「は? 何が?」
「俺が」

 言葉足らずな和衣に祐介は首を傾げるが、こういうとき和衣は大体、頭の中でグルグルと考え込んでいて(それも、何もそこまで…というレベルまで)、でも口に出すときにはいきなり結論だったりするから、伝わり切らないことが多い。
 今も、風呂から上がって髪を拭いてあげていたら、和衣が急に甘えて来て、それは嬉しいんだけれど、なぜか突然、自分のことを変だと言い出したのだ。
 祐介が、頭の中を『???』でいっぱいにするのも、無理はない。



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Honey Bunny Baby! (20)


「何、変て。別に何も変じゃないと思うけど…」

 和衣の両頬を挟んで顔を上げさせたら、すでに真っ赤だった。
 髪を拭いていただけなのに(もちろんそれも初めてのことではない)、どうしてこんなに赤面するのか。

「お茶飲む?」
「…ん」

 和衣がもうすっかりグルグルしてしまっているのが分かったので、祐介はとりあえずそう提案してみた。
 何か飲めば少しは落ち着くかな、と思って。

「はい」

 来る前に買ったペットボトルのお茶を渡すと、和衣は素直にそれを受け取ったが、何だか離れ難そうな雰囲気だったので、祐介は和衣の手を引いて、ベッドのそばにあるラブソファに座った。
 和衣はソファの上に体育座りで座るから、何だかちょこんとしていてかわいい。

「で、何が変だって?」

 手の中でペットボトルのキャップを弄りながら、祐介は、一気に半分ぐらい飲み干している和衣に再び尋ねてみる。
 いや、『俺が』という返事は先ほど貰ったのだが、なぜ変なのかが分からない。祐介から見て、和衣に変なところは(恋人の欲目とかでなく)どこにもないのだが。

「…………。…だって」

 そう言ったきり口籠った和衣は、「ぅー」と小さく唸りながら、ふるふると頭を振り始めた。
 動きは小動物みたいでかわいいんだけれど、何がしたいのかよく分からない。

 そして最終的に。

「ぅ~…何か頭クラクラする…」

 とか言って、和衣は隣の祐介にぽふっと体を預けた。

「そりゃそうでしょ。何してんの」
「も…、だって俺…………変態?」
「は? 何で?」

 自分のことを変だと言っておいて、今度は変態て…。
 一体どうしてそういう発想が生まれるんだろう。

「だって祐介にキュッてしてただけなのに、何か体熱くなるし、今日、も…2回もシタのに、何で? やっぱり俺、変態…?」

 和衣は至って真面目に、真剣に悩んでいるようで、顔を赤くしながら「どうしよう…」と言っているが、言われたほうにしたら、そんなの誘っているようにしか聞こえない。
 まぁ相手は和衣なので、そんなつもりは少しもないのだろうが。

「…和衣、」
「ゃん、ゆぅ…」

 1人ではうぅ~~~…となっている和衣を抱き寄せると、ころっと祐介の腕の中に細い体が転がって来た。



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Honey Bunny Baby! (21)


 ちょうど祐介の胸の辺りに顔を預ける形になった和衣は、耳まで赤くしている。

「お願いだから和衣、あんまかわいいこと言わないで?」
「ゃ…何、が…?」
「…またシたくなっちゃうから」
「んっ…」

 和衣の熱くなっている耳にキスしたら、ピクッと体が震えて、和衣に涙目で睨まれた。
 これ以上いたずらしたら、抑えられなくなっちゃうかな。…でも。

「かーずい」

 やっぱり我慢できなくて、祐介は、薄く開いている和衣の唇にキスを落とす。
 ぱしぱしと、長いまつ毛を羽ばたかせて和衣が瞬きする。

「祐介も、シたい…?」

 ふ…と、和衣の目元が緩む。
 祐介の羽織るバスローブの胸元を握り締め、小首を傾げている。

 これが全部、計算でなく無意識なんだから、本当にタチが悪い。

「シたいよ」

 素直にそう打ち明けたら、和衣は顔を綻ばせて、「よかった」なんて小さく言いながら、キュウと祐介に抱き付いた。

 …まだまだ、夜は終わりそうにない。



◆ ◆ ◆

「何で亮と祐介くんだけなの? 珍しー。カズちゃんたちは?」

 昼時のカフェテリア。
 今日のランチを持って亮と祐介が空いている席に着いたら、愛菜と眞織がやって来た。

「何食うか選んでる、まだ」

 そう言って亮が出入り口を指差せば、睦月と和衣が、壁に掛かっているメニューを見上げたり、日替わりランチが何なのかを見に行ったりと、チョロチョロしていた。
 睦月も和衣も、一緒にこのカフェに来たのに、2人とも何を食べるかいつまでも決まらないので、亮と祐介だけ先に来たのだ。
 ちなみに、いつも何をするにも優柔不断なのは和衣で、睦月はわりと何でもすぐ決められる子なのに、今日に限って和衣と一緒にいつまでも迷っているのは、すでにバイト代が底を突き始めているので、少しでもお得なメニューを探しているからだった。

「あ、祐介くん、火曜日お疲れ~」
「ん? あーうん、お疲れ」

 愛菜に言われ、祐介はふと何のことかと思ったが、そういえば火曜の夜は、ゼミの仲間で飲み会があったのだ。
 今日は木曜日で、飲み会から今日までには昨日1日を挟んでいるのだが、真面目な祐介にしては珍しく、昨日学校を休んだので、愛菜たちとは飲み会以来、初めて顔を合わせた。



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Honey Bunny Baby! (22)


「つか亮、今日はさすがに復活してるね」
「うっせ。昨日はもうマジ最悪だったし。完全に飲み過ぎた」

 眞織にからかわれ、亮は嫌そうに返す。
 祐介は昨日、亮とも顔を合わせていないが、どうやら相当二日酔いに苦しんだようだ。

「結局何時までやってたわけ?」

 祐介と和衣は一次会でみんなと別れたけれど、帰るときに、アイス食べに行こ~、と睦月も誘っていたのを、祐介は聞いている。
 まぁ、二次会がアイスだけで終わるとは思えないが、それにしても、酒に強い亮がこんなことを言うなんて、相当遅い時間までやっていたのだろうか。

「分かんね。祐介たちが帰ってから、2軒行った気がする」
「2軒2軒。だってむっちゃんが、アイス食ってない、て言い出すから」

 アイスを食べに行こうと誘われた二次会で、しかしいきなりアイスを注文する人はおらず、みんなアルコールを飲んでいたのだが、帰るときになって睦月が『アイス食ってない』とごね始めたのだという。
 二次会の席では、半分寝ていた睦月に構わず、みんな勝手に盛り上がり、アイスのことなんてすっかり忘れていたのだが、実は睦月は、アイスが出てくるのをずっと待っていたらしいのだ。

「そんでその後、4人でもう1軒行った」

 二次会が終わったのが結構遅い時間だったので、もうみんなバラバラで、帰る人もいれば、中にはまた飲みに行く元気な人たちもいた。
 時間的に愛菜も眞織ももう帰ってもいいかな、と思っていたのだが、アイスで睦月を釣って二次会に連れて来たのが自分たちだったので、最後まで責任を持たなければ…と、もう1軒付き合うことになったのだ。

「それで4人でアイス食ったんだ?」
「いや、アイス食ったのは睦月だけ。つーか、最初にアイス食いたいとか言い出したの、愛菜じゃね? なのに何で食わねぇんだよ」
「だってアイスよりお酒のほうがいいもん」
「お前ら、最後、絶対俺より飲んだよな? なのに昨日とか超元気よかったし。何なんだよ」

 確かに最初はアイスを食べに行くはずだったのだが、愛菜も眞織も甘いものよりお酒のほうが好きなので、結局アイスを頼んだのは睦月だけで、他の3人はさらに飲んだらしい。
 祐介が最後にこの3人を見たとき、結構飲んでいるようだったのに、あの後まだ飲んで、愛菜と眞織が翌日普通だったのが、ちょっと不気味だ。底なしにも程がある。

「でも、むっちゃんて、マジどこでも寝るんだねー。かわいー」

 眞織が、ペットボトルをベコベコさせながら笑っていて、その意見には愛菜も同意するのか、頷いている。
 睦月がかわいいと言われるのが死ぬほど嫌いなことは2人も知っているので、睦月がまだ来ていない今だから、そんなことを言って笑っているのだろう。

「つかさ、かわいいのはカズちゃんでしょ。お酒弱くてさぁ」
「いや、お前らが強すぎるだけだって」

 愛菜の言葉を、亮が呆れ顔で否定した。
 うん。確かに和衣はそれほど酒に強くはないけれど、比べる相手が悪い。和衣が弱いのでなく、愛菜と眞織が強すぎるのだ。それは祐介も全力で同意する。
 というか、愛菜と眞織の話題が和衣のことに移ったことに、祐介は若干の脅威を覚えた。



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Honey Bunny Baby! (23)


「かわいいねぇ~、カズちゃん」
「ねぇ~」

 女子2人がかわいらしく頷き合っている横で、亮は睦月を待たずに日替わりランチに箸を付けている。基本的に亮と睦月は、自分の分が来たら先に食べ始めるのだ。
 それに対して祐介と和衣は、相手の分が来るまで待つタイプ。ラーメンとか、伸びるようなものなら先に食べるけれど、そうでなければ大抵待っている。
 だから今日も祐介は、なかなかメニューを決められずにいる和衣を待っていたのだが、今ばかりはさっさと食べてしまいたい気分だった。
 だって、目の前のランチに手を付けないでいるのに、同じ会話の輪の中にいる愛菜たちに相槌を打たないのはおかしいから。でもかといって、この2人と、和衣がかわいい件について、あまり話をしたくない。

「つーか、かわいいか? カズがぁ?」

 唐揚げを口に運んだ亮が、うぅん? という感じに眉を寄せた。
 21歳男子としては、どう考えても『かわいい』の部類に入る和衣だが、小さいころから一緒にいる亮にしたら、そうか? と思ってしまうらしい(それは、みんなが睦月のことを『かわいい』と言うのに対して、祐介が思うのと同じことだ)。

「かわいいじゃん。ねぇ、祐介くんっ?」

 とうとう話を振られてしまった。
 あ、今日は睦月が和衣と一緒にいるから、先に食べてしまおう、と箸を取ろうとしていた矢先のことだった。
 嫌々ながら、祐介が視線をハンバーグ定食から視線を上げると、にっこりと微笑んだ愛菜と目が合った。気のせいでなく、意味深な表情だ。

「…まぁ、」

 2人がどういう答えを望んでいるのか分からず、祐介は適当に曖昧な返事をする。
 和衣がかわいいことを否定するのも嫌だったし。

「いつもかわいいけどさ、酔っ払うとさらにかわいさアップするよね」
「うんうん」

 祐介と和衣が付き合っていることを、もちろん祐介は彼女たちに話していないし、まさか和衣が自分から言うとも思えないが、どう見ても愛菜と眞織は、祐介たちの関係を知っているとしか思えない口振りで話してくる。
 やっぱり気付いているんだろうか。
 いや、別に気付かれてもいいけれど、和衣は相当恥ずかしがるだろうなぁ。

「カズが、酔っ払うとかわいい? そうかぁ? すげぇ面倒くせぇだけじゃね?」

 酔っ払った和衣の面倒を何度か見ている亮が、愛菜たちのかわいい発言に納得いかないのか、眉を寄せて反論しているが、祐介にしたら、睡魔に負けてグダグダになっている睦月を、かわいいと思って甲斐甲斐しく面倒見ている亮に言われたくない。

「かわいいじゃん。酔っ払ってフニャフニャになってた」
「アイツ、すげぇ酔ってたよな。祐介、ちゃんと寮まで帰れた?」
「えっ…」

 亮と愛菜が続いていたので(なぜか、和衣がかわいいか否かという話題だが)、祐介は少し気を抜いていて、だから突然亮に話を振られた瞬間、驚いて言葉を詰まらせた。



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