恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2013年02月

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小さいのに大きいところ (5)


「つか、何でお前、そのこと喋っちゃうんだよ、睦月に」
「だってむっちゃん、すごい気迫なんだもん。俺、マジで殴られんのかと思ったし! しかも、教えてくんないなら絶交! とか言うし」

 ムカつくとつい手を出てしまうのは睦月の悪い癖だが、そんなにも怒っているのに、言うことは『絶交』とか…。
 手を出すこと自体、子どもだけれど、言うことはもっと子どもだ。

「だからゴメン……話しちゃった。だって俺、むっちゃんに殴られたくないし、絶交されたくない…」
「いや…、まぁいいけど…」

 亮が本当に悪さをして、それを睦月に隠そうとしていたのなら、何で話したんだよ! ともっと翔真を怒りたくなるが、実際は何もしていないし、疾しいことは何もないから。
 ただ、睦月に余計な心配を掛けたくなかったし、知らなくていいことを知って傷付けたくなかったから、出来れば言わないでおいてもらいたかっただけだ。

「で、噂を信じないで、て言いに行ったて誰に? まさか芽衣に? いや…信じないで、て言うてことは芽衣じゃないか。つか、何でそんなことになるわけ?」
「…芽衣の話聞いたら、むっちゃん、すっげぇ怒っちゃって。最初は芽衣んトコ行く、て言い出したんだよ。芽衣に会って、そんな嘘つくな、て言ってやる! つって」
「マジで?」
「マジ。でもそんなことしたら、今度はむっちゃんが何されるか分かんないし、そう言って説得したら、今度は、じゃあその噂を聞いた人に、誤解だって言ってくる、てなっちゃって…」

 芽衣のところに行くのを止めるのにも、かなりの時間と労力を費やした翔真は、何とか説得された睦月にホッとしたが、今度は噂を聞いた人に会うと言い出したから、ますます頭を抱えた。
 翔真は芽衣の連絡先を知らず、だから呼び出すことは出来ない、と説得する中で睦月の伝えたのだが、睦月はそれを逆手に取って、「なら、ショウちゃんの知ってる人で、誤解している人のトコに行く!」と言い出したのだ。
 そんな人はいないと嘘を付くことも出来たが、噂を知っている翔真が、それを聞いた相手の連絡先を知らないのは不自然だと追及されて、あえなく失敗に終わった。

「それで行って来たわけ? 何でもっと全力で止めねぇんだよっ」
「止めたよ! でもむっちゃん、そんな嘘の噂、言われっ放しで悔しくないの!? つって泣いちゃうし…」
「え…」
「むっちゃんがどんなふうに話持ってくか分かんねぇし、最悪、事態が悪化するかもしんねぇから、じゃあ俺も一緒に行くつって……で、今日」
「…………」

 初めは、1人で行くと言って聞かなかった睦月を、何とかそこまで譲歩させたのだ。
 亮に話したほうがいいとも言ったのだが、亮だって睦月に黙っていたのだから、と言われてしまうと、何も言い返せなくて、結局2人で行ってきた。



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小さいのに大きいところ (6)


「どうやって亮に黙って行くのかと思ったら、お風呂行く、つってくるとか言うから、冗談かと思ったらホントだし。風呂行くのにコート着てくるとか、亮マジでそれに納得したのかよ」
「睦月、前に風呂行くのにブランケット被ってったことあるし…。つか、俺としては、あの格好でホントに外に行ったことのほうが驚きだけど」

 コートは着ていたけれど、その下は完全に部屋着にしか見えないジャージだったし、パンツとタオルも持っていたのだ。風呂に行くと言われたほうが、納得できる。

「あー…パンツなら、俺の部屋に置いてったわ。つか、どうしよう、て言うから、置いていきな、て言った」
「…そう。で、誰んトコ行って、どうなったわけ?」

 亮が尋ねると、翔真は亮の知っている友人の名前を2人挙げた。
 2人とも、亮と芽衣の噂については半信半疑だったようだが、翔真に事の次第を聞き、睦月に『亮のこと信じて!』と言われて、その噂が嘘だったと納得したらしい。
 わざわざそんなことを言いに来てくれるくらいの友だちがいる亮が、そんなことをするわけがない、と。

「まぁ、アイツらも、芽衣の性格知ってるしさ、変だとは思ってたらしいよ。でも、性格知ってるからこそ、亮が愛想尽かして捨てちゃったんじゃないか、とも思ってたみたいで」
「…………」
「あんまむっちゃんのこと責めんなよ? めっちゃ人見知りのくせに、直に会って話するとか言っちゃうくらい、お前のこと思ってやったんだから」
「…分かってるよ」

 斗真の話では、噂は結構広まっているらしいし、この2人の誤解を解いただけでは、事態は収束しないかもしれない。
 でも亮のために、亮自身が、もうどうでもいいや、て諦めていたことのために、睦月がそんなに一生懸命になってくれていたなんて、それだけで気持ちが救われる。

「悪かったな、ショウ。サンキュ」
「そんなの俺に言うんじゃなくて、むっちゃんに言えよ、バカ亮!」

 笑って足を蹴っ飛ばされて、亮は部屋を出た。



 どのくらい翔真の部屋で話をしていただろうか、けれどそんなに長時間では絶対にないはず。
 しかし、亮が自分の部屋に戻ると、風呂から上がった睦月が、もう部屋にいた。

「早っ!」

 亮は思わず突っ込んだが、睦月は、何が? という顔で、頭を拭いている。
 今度こそ本当に、ちゃんと風呂に行っては来たらしい(ただ、行って、頭や体は洗ってきたが、それだけですぐに戻って来たのだろう)。

「睦月、ちゃんとあったまったの?」
「あったまったよ。ちゃんとザブンてして来た」
「それだけじゃ、あったまった、て言わないでしょ。ちゃんと100まで数えないと……ブッ」
「亮、自分で言ってウケないでよ。バーカ」

 だって、これじゃあ亮まで睦月のお母さんみたいだ。
 さっきまで、何てすごいことをやってのける子だろう、と感動していたのに。

 でも、そんなすごいことを、何でもないみたいにやってくれるから、心配かけられても、睦月のこと嫌いになるどころか、ますます好きになっちゃうんだよなぁ。

「亮ー、頭乾かしてー」
「はいはい」



*end*



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大人しいと思ったら寝てるところ (1)


「プリン、プッリン、プッリ~ン♪」

 左手にプリン、右手にスプーンを持ってはしゃぐ姿は、幼稚園児ではないし、もちろん小学校低学年でもない。今年21歳の大学3年生、睦月である。
 その様子に、幼馴染み 兼 保護者の祐介は頭を抱えるが、一緒の席にいる翔真は、「むっちゃん、楽しそうだね~」と傍観している。

「今日はね、このね、このランチね、プリンがおまけなの! プリンがおまけなの!」
「あ、そうなの? つか、何で同じこと2回言ったの?」

 苦笑しながらも、翔真が相手をしてやっているので、祐介は溜め息をついた後、自分の食事に集中した。

「あー、むっちゃんもプリンのにしてるー」

 睦月がご機嫌でご飯を食べていたら(先にプリンを食べようとしたら、祐介に怒られた…)、和衣の声がして、見れば和衣の手にも、睦月と同じランチが。
 おそらく和衣も、プリンにつられて、このランチにしたのだろう。

「ショウ、メシ食わねぇの?」
「後で真大と食うー」

 そして、和衣と一緒にやって来た亮も、なぜかプリンのついたランチを持っている。
 甘いものなんかめったに食べやしないのに、こちらは、それを睦月に上げるために、このランチにしたに違いない――――翔真がそう思っていたら案の定、

「はい、睦月。これ上げる」
「ンぐっ。ホント? いいの? 亮食べないの??」

 お行儀悪くフォークをガジガジしながら、睦月が期待に満ちた目で亮を見る。
 口では、『いいの?』なんて、ちょっと遠慮したようなことを言いつつも、もう気持ちはプリン一直線だ。

「このプリンね、焼きプリンもあるよね。上んトコ、何か皮……膜? みたいになってんの」
「チーズのヤツね」
「チーズ? プリンでしょ?」
「焼きチーズ…の、プリン……みたいなヤツ」
「焼きチーズ…。焼きプリンじゃなくて?」

 このプリンのシリーズ商品を言いたいのだろうけど、睦月も和衣も、商品名までちゃんと分かっているわけではないようで、2人で首を傾げ合っている。
 しかも、2人の頭に思い描かれているものが微妙に違うようで、最終的には2人とも頭の中を「?」でいっぱいにしただけだった。



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大人しいと思ったら寝てるところ (2)


「あ、でも、焼きカレーてあるよね」
「あれって結局、カレーライス焼いただけなんでしょ? オーブンで」
「でも、上にチーズ掛かってるよ」
「何でチーズ掛けんだろうね。普通にカレー食うとき、チーズなんて掛けないじゃん」
「粉チーズ掛ける人、いるよ?」

 会話だけ聞いていると、完全に女子だなぁ…と、隣でランチをつついている亮は思う。
 亮も焼きカレーは知っているけれど、それについて、そこまで思ったことも、友だちと話したこともない。

「焼いたらうまくなんの? 焼くじゃなくて、煮るとかじゃダメなのかな」
「カレーは煮て作るじゃん」
「煮プリン」
「ひゃはは、むっちゃん、ダメだよ、それ。プリンにならないと思う。煮たって固まんないもん!」
「違うの、もうプリンになってるヤツを煮るの」
「すごいまずそうっ」
「茶碗蒸し」
「蒸すんだよ、茶わん蒸しは。『蒸し』て言ってるじゃん!」

 どうして睦月がいきなり茶わん蒸しと言ったかといえば、おそらく見た目とか、卵で出来ているとか、そういうことからだろう。
 しかし一方は おかずだし、他方はデザートだ。それに、和衣の突っ込みどおり、茶わん蒸しは蒸して作るから、先ほどまでの会話の、焼くにも煮るにも該当しない。

 睦月が次から次にアホなことを言うから、和衣が大層ウケて、大笑いしている。
 亮たちも、バカだなぁ…と思いつつ、そのあまりのくだらなさに、思わず笑ってしまう。

「じゃあ、煮ないプリン食べる」
「普通のプリンね」

 律儀に和衣は、いちいち突っ込んであげる。
 食事の最中はずっと2人で喋り捲っていたのに、プリンを食べるときになると、急に黙り込んでしまうから、おかしい。

「ごちそうさまでした!」

 先に元気よく手を合わせたのは、和衣だった。
 和衣も食べるのは遅いけれど、睦月はプリンが2個ある分、遅くなってしまうのだ。

「俺、これこないだ見にいったけど、いまいちだったなぁー」

 すでに食事を終えていた祐介が広げていた雑誌を、隣の翔真が覗き込んで言う。
 最近公開されたばかりの、漫画が原作になっている映画の記事だ。



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大人しいと思ったら寝てるところ (3)


「何かさ、やっぱ原作のほうがおもしろい」
「そうなの? 俺、原作読んだことない」

 食べ終えた和衣も、話に加わる。
 亮も何となくその記事に視線を向ければ、この間、睦月と一緒に見に行った映画だった。そういえば睦月も、原作のほうがおもしろい、とか言って、帰ってから、持っていた原作の漫画を亮に押し付けて来たっけ。
 というか、そのくらいこのマンガには情熱があったはずの睦月が、なぜか今は静かだ。よほど映画がお気に召さなくて、話題にもしたくないんだろうか。

「ショウちゃん、マンガ貸してよ。俺も読みたい」
「俺、むっちゃんから借りたの」
「そうなの? むっちゃん、俺にも貸して? むっちゃん? プッ」

 睦月に声を掛けた直後、なぜか和衣が急に吹き出すものだから、どうしたのかと視線を向けた翔真も思わず吹き出し、亮は苦笑いし、祐介は深い溜め息をついた。

「むっちゃん、寝てる…」

 静かなわけだ。
 2個目のプリンを1口分くらい残して、スプーンを握り締めたまま、睦月は夢の世界へと旅立っていたのだ。

「え…いつから寝てたの…?」
「プリン食い掛け…」
「よくさ、小っちゃい子で、ご飯食べながら寝ちゃう子いるよね…」

 睦月が寝ていると分かって、みんな自然と声が小さくなる。
 しかしまぁ、今映画の話で盛り上がっていたときも目を覚まさなかったのだから、今さらだろうけど。
 それにしても、つい先ほどまで、和衣と一緒にプリンやら焼きカレーの話であんなにはしゃいでいたというのに、まったく、マイペースというか、何というか…。

「…亮、顔にやけてる」
「えっ? そう?」

 祐介の呆れた声に指摘され、亮は慌てて口元に手をやる。
 だって、こんなかわいい睦月を目の当たりにして、にやけずにいられるものか! というか、他のヤツらに見せるのがもったいない…!!

 恋は盲目とはよく言ったもので。
 他人からしたら呆れ返るようなことですら、亮には愛おしく思えてくるのだから、本当に参ってしまう。…好きだなぁ。

「でも何か……むっちゃん、口モグモグしてない?」

 夢の中でも、食事中ですか!



*end*



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嘘つきで照れ屋なところ (1)


 和衣の優柔不断は、今に始まったことではない。
 そして睦月の気の短さも、今に始まったことではない。

 ――――のに。

「あーもうっ、帰るっ!」
「ダメー! むっちゃん帰んないでー!」

 年に数度は見掛ける、この光景。
 もうすぐやって来るのは、祐介の誕生日。そのプレゼントを買うべく意気込んでいた和衣は、何を買うべきか迷いに迷い倒し、そんな和衣に睦月は疲れ果て、キレ始めていた。

「誕生日なんて、年に1回のことなんだから、自分で決めてよねっ」
「年に1回のことだから、なかなか決めらんないんじゃ~ん。むっちゃん助けてっ」

 帰ろうとする睦月の腕にしがみ付いて、和衣は何とか睦月を引き止める。
 睦月ももう学習して、何度かは和衣のプレゼント選びから逃れたことはあるのだが、今日はバイト帰りに、『ちょっと寄りたいトコあんだけど、いい?』と、和衣が何気なく言ったものだから、睦月も油断して付いて来てしまったのだ。

「もぉ~、全然『ちょっと』じゃないじゃんっ」

 ちょっとどころか、もうすでに1時間は経過しているし、店もこれで3軒目だ。
 そりゃ睦月もいい加減、キレたくもなる。

「あのさぁ、いっつも言うけど、ゆっちなんて、カズちゃんがプレゼントしてくれたものなら、何だって喜ぶから!」
「そうだとしても、より祐介が喜ぶものを買いたい~」
「そんなこと言ったって、俺、ゆっちが欲しがってるものなんか知らないしっ」

 何を言っても説得されない和衣に、睦月は頭を抱える。
 優柔不断のくせに、変なところで頑固なんだから!

「はぁ~…。次もう1軒行って、それで見つけらんなかったら、今日は諦めて別の日にしようね。俺もう眠い…」
「えぇ~…」
「それがヤダったら、一生懸命探す!」
「はいっ!」

 普段だったら、バイトが終わったら、すぐに帰って、ご飯食べてお風呂入って寝る、というのが睦月の行動パターンなのだ。
 それなのに、その途中に、和衣の買い物に1時間も付き合わされる、というのを挟まれたのだから、疲れるし、眠くもなる。



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嘘つきで照れ屋なところ (2)


「ん~…やっぱ、お財布かなぁ…。むっちゃん、どう思う?」
「あのさぁ、カズちゃんてさぁ、結局何だかんだ言って、最初に選んだヤツに戻って来るよね。だったら今度から、最初に目に入ったヤツにしたら?」
「えー? だっていろいろ見たら、もっといいのがあるかもしんないじゃん」
「そう言って、いっつも最終的に選ぶの、最初に選んだヤツじゃん。今だってホラ」

 財布という候補は今日も何度か登場しているのだが、今和衣が手にしている財布は、最初に入った店で、『これどうかな!?』と和衣が睦月に見せ付けて来たものだった。
 これで、デザインの違うものを選んだのならまだしも、まったく同じものなのだから、ここまでに費やした時間は一体何だったのだと詰め寄りたい。

「でもやっぱプレゼントなんだし、いろいろ見て決めたいじゃん?」
「そーだね」

 言うことだけは立派な和衣に溜め息を零しつつ、睦月は別のコーナーへと移動する。
 和衣がその財布に決めたというならそれでいいが、まだ迷うつもりなら、睦月も少しは何か提案しないと、本格的に決まらない方向に行く。嫌だ、もう帰りたい。

(――――あ、)

 祐介てあんまりアクセしないしなぁ…と、アクセサリーコーナーを通り過ぎようとした睦月は、ふと2連になっているレザーバングルに目を止めた。
 何か……亮が好きそう。

(いやいやいやいや、今はゆっちの誕プレ…。つか、何で俺が、ゆっちの誕生日プレゼントなんか選ばなきゃなんないの? でも誕生日までに決めらんなかったら、カズちゃん泣いちゃうし…)

 睦月は、まだ財布で悩んでいる和衣と、そのバングルとを交互に見る。値段も2,000円と、わりと手ごろだ――――て、そうじゃなくて。
 ここにいると、余計なことを考えてしまいそうだから、と睦月はさっさと別のコーナーに移る。

「ふぅ…これで一安心」

 ベルトとかがたくさん下がっているコーナーまで来て、睦月はわざとそんなことを言ってみる。
 睦月的には、面倒くさい、という理由で、ベルトはあんまり好きではない。

「ベルトかぁ…、ベルトねぇ…」

 興味がないから、見ていても、いまいちピンと来ない。

「あ、」

 プレゼントにベルト…………いいのかどうかも、よく分からない。
 そんなことを思いながら、店内をウロウロしていた睦月は、気が付くと、再び先ほどのアクセサリーコーナーに舞い戻って来ていた。



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嘘つきで照れ屋なところ (3)


「うむぅ~…」

 これはもう、買えということなのだろう。
 きっと、ここで買わなかったら、後悔する(多分その後悔も、数日で忘れはするだろうけど、でも)。

 和衣を見ると、最初にいいと言った財布と、別のデザインの財布を手に持って、じっくりと見比べている。
 今なら大丈夫。

「よし」

 睦月はパッとそのバングルを取ると、和衣に気付かれないようにサッとレジへと向かった。



*****

「で、結局カズ、最初に言った財布買ったわけ?」
「買ったわけー」

 祐介への誕生日プレゼントも決まり、ようやく寮に帰って来ることの出来た睦月が、グッタリしながら事の顛末を語ると、亮は苦笑いしながら、「お疲れさま」と睦月の頭を撫でてやる。

「まったくさぁ、どうせ最初にいいて言ったヤツ買っちゃうんだから、そんないろいろ見なくたっていいのにさ! なのに、いろいろ見て決めたい、とか言うんだもん!」
「まぁー…アイツらしいけど」

 子どものころからの付き合い、和衣の性格をよく知っている亮には、睦月の苦労が手に取るように分かる。
 昔から、出掛けると、何をするにも和衣が最後まで迷っているのだ。で、それに真っ先に嫌になるのが亮。だからいつも、翔真が仕方なく最後まで面倒を見てやるのだ。

「睦月、何か落ちたよ」
「ん? え、それ俺のじゃないし。亮のでしょ?」

 睦月がカバンを部屋の隅に放った拍子に何かが落ちたので、亮がそう言ったら、あっさりとそう返された。
 いや、明らかに睦月のカバンの中から出て来たし。

「俺のじゃないよ?」
「亮のだよ。だって俺、そういうアクセ、しないもん」

 睦月が否定するのは、レザーのバングルだ。
 確かに睦月の趣味ではなさそうだ。



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嘘つきで照れ屋なところ (4)


「でも、今睦月のカバンから落ちたよ?」

 亮が不思議そうにそれをつまみ上げても、睦月は「違うってば」と言って、ベッドに上がってしまう。
 包装もされていなければ、タグも付いていないけれど、そのバングルは、明らかに新品だ。

「睦月のじゃないの?」
「違うってば。亮のなの!」
「はぁ?」

 なぜかそう無理やり決め付けて、睦月は「お風呂行って来よー」とパンツを探している。
 …何だか妙に、落ち着きがない。いや、睦月に落ち着きがないのはもともとだけれど、今は普段のそれとは違って、何となくソワソワした感が漂っている。

「睦月、」
「何、もうっ。俺、お風呂行くの! 今日、カズちゃんに付き合って、すごい疲れてんだから!」
「そうなの? じゃあこれ、明日、学生課に届けよっか? それとも交番?」
「はっ? 何でっ!?」

 ノブに手を掛け、部屋を出て行こうとしていた睦月は、亮の言葉に、慌てて駆け戻って来た。

「だって、俺のじゃないし、睦月のでもないんでしょ? 知らない人の、勝手に持ってたらマズイじゃん?」
「知らない人のじゃないよっ、亮のだよっ?」
「睦月、ホントのこと言って?」
「………………」

 必死に縋ってくる睦月がかわいくて、思わず頬が緩みそうになったけれど、亮は必死にそれを堪えた。
 もう何となく事情が飲み込めて来たけれど、やっぱり睦月にちゃんと言わせたい。

「睦月」
「べっ…別に、亮に似合うとか思ったわけじゃないけどっ、でも何か好きそうだな、て思って、だからっ…」
「だから、買ってきてくれたの?」
「違っ…、だってカズちゃん、いつまでも全然プレゼント決めらんないからっ、何か待ってるときっ…」

 焦ると自分でも何を言っているのか分からなくなる、というのは、和衣ではよく見るけれど、睦月がそんな状態になるのは珍しい。
 心なしか、頬も赤いし。

「…ありがと。すっげぇ嬉しい」
「だからそのっ、そんな…」

 …いや、心なしかでなく、真っ赤になった。
 照れ屋な睦月が、どうにかしてこのプレゼントを亮に渡そうとして考えた、苦肉の策。大胆にも程があるけれど。

 プレゼントを選ぶのは得意だけれど、渡すのが下手くそなんて。
 あぁホント、好きだなぁ。



*end*



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背中を向けられるのが苦手なところ (1)


「ね、いいでしょ、亮~」
「ダメ! ダメったらダメ!」
「何で~、お願いっ!」

 いつもだったら、睦月のお願いなら、まぁそれなりに聞いている亮だが、こればかりは譲れない! と、睦月がどんなにかわいくお願いしてきても、キッパリと拒絶した。

「なぁんでぇ~、ね~え~」
「ダーメ!」

 しかし睦月もめげずに、しつこく亮の腕を掴んで揺さぶる。まるで駄々を捏ねる子どものようだが、紛れもなく成人男子だ。
 亮は一瞬だけ心が揺らぎそうになるが、心を鬼にする。

「亮のケチィ!」
「ケチと言われても、ダメなものはダメなの!」

 …このやり取りが繰り返されて、一体どのくらいの時間が経過したか。
 いい加減、折れてくれればと亮は思うのに、今日の睦月はいつにもまして頑固だ。いや、それは睦月も同じことを思っているに違いないが。

 ちなみに、この激しい応酬の発端は、今夜のテレビ番組にある。
 祐介や和衣はもちろんのこと、睦月にわりと寛容な翔真でさえ、思わず「は?」と言ってしまいそうな理由だが、亮と睦月にしたら、冗談ではない。
 今日の深夜、テレビで放送されるホラー映画を見たい睦月と、絶対に見たくない亮との間で繰り広げられた、まさしく真剣勝負なのである。
 以前、同じようにテレビで放送された際は、どうにか亮が競り勝って、睦月は翔真の部屋で見たのだが、今日はその翔真が不在のため、睦月には行き場がないから、部屋で見たいと言っているのに、それを亮が許してくれないのだ。

「ショウがいなくたって、蒼がいんじゃん! 行ってきなよっ」
「蒼ちゃんがヤダて言うんだもんっ」
「俺だってヤダよ! 何で蒼がヤダて言うのは聞いてくれんのに、俺のはダメなの!?」
「だって蒼ちゃんの部屋だもん、蒼ちゃんの言うことは聞くもんっ。でもここは亮の部屋だけど、俺の部屋でもあるもんっ。だから見るっ」

 だからそれは譲れない! と睦月は言い募る。
 それはまさに正論で、亮は思わず言葉に詰まった。マイペースで、わりと自分本位のところがある睦月だが、こんなときに限って、そんなことを言うんだもの。



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背中を向けられるのが苦手なところ (2)


「カズちゃんトコも、部屋の人がダメだって言うし、俺に行き場はないのに…」
「そんな顔したってダメ!」
「チッ…」

 ちょっと悲しそうな顔をしてみせた睦月だったが、亮にあっさり作戦だと見破られ、舌打ちをした。

 この寮の中で、睦月が気軽に遊びに行けるのは、和衣と翔真と祐介の部屋だけなのだが、和衣と翔真は同室者が、祐介は本人がホラー系が苦手なので、その人たちが部屋にいる以上、ダメなのである。

「でもそんな時間、睦月どうせ起きてらんないでしょ? 12時過ぎてんだよっ?」
「だーかーらー、録画する、つってんじゃん! そんならいいでしょ!? 亮のいないときに見るからっ!」
「ヤダってば! 録画すんのもヤダ!」

 …もう、睦月だけが子どもとは言い切れない、亮も十分小さな子どものごとく、駄々を捏ねる。だって、嫌なものは嫌だ。亮は昔から、お化けとジェットコースターと注射は大嫌いなのである。
 しかし、亮の嫌いなもののうち、少なくとも2つは睦月の大好きなものだから、こうした対立はしょっちゅう起こり得る。
 それでも今までこれほどの衝突がなかったのは、それなりにお互い譲歩してきたからなのだが、今日ばかりはどちらも譲れないものだから、こんなことになっているわけで。

「何で録画すんのもダメなんだよっ」
「だってハードディスクに残ってたら呪われそう!」
「呪われねぇよ!」

 あぁ~~もぉ~~! と、睦月は地団駄を踏む。
 どうしても見たいのに!

「ホントにヤなんだってば! 睦月だって嫌いなもんあるでしょ? それ押し付けられたらヤでしょっ?」
「ぅ、ぐ…」
「ね? そう考えたら、俺の気持ちも分かるでしょ?」
「わっ…分かんねぇよっ、んなもん! 亮、怖がり過ぎだし!」

 本当は、分からないでもないんだけれど。
 分かると答えてしまったら、形勢が不利になると思って、睦月はつい、そんなふうに返してしまった。



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背中を向けられるのが苦手なところ (3)


「…分かったよ、もう」

 亮が、はぁ~…と大きく溜め息をついて、肩を落とす。
 やった、これで俺の勝ちだ! と、睦月は目を輝かせたが、しかしそれも、束の間のことだった。

「…ぅ? 亮?」

 夜に起きていられるように、今のうちに昼寝をしておこう、なんてことを本気で思っていた睦月は、なぜか上着を手に取った亮を見て、小首を傾げた。
 急に、どこに出掛けるというのだろう。

「亮? どこ行くの?」

 どこに出掛けようと、いちいち睦月に断りを入れる必要はないのだから、別に亮がどこに行こうと構わないんだけど、あんまりにも突然のことだったから、睦月はビックリして思わず尋ねてしまった。
 だって、今の今まで睦月と喋っていたじゃない。

「ちょっと出てくる」
「え…、何で? 亮、怒ったの?」

 睦月に背を向けたまま上着を着ている亮に、睦月は不安そうに声を掛けた。
 実のところ、睦月は亮が本気で怒っているところを見たことがないから(つまらないことでは、しょっちゅう怒られているけれど…)、もしかして今がそういうことなの? とドキドキしてきた。

「ねぇ亮。怒ったの? ねぇ亮?」
「…別に怒ったわけじゃないけど」

 心配になった睦月が亮の側に行って、その上着の裾をクイと引っ張ったら、やっと亮がこちらを向いてくれた。

「怒ってないなら、何で急に出掛けんの?」

 急に、そんなふうに突き放されるのは苦手だ。
 睦月は自分の声色が、まるで泣き出しそうな子どものようだということに気付いていたけれど、それよりも亮を引き留めたくて、必死だ。

「ねぇ何で?」
「だから、さっきから言ってんじゃん。俺、怖いの見たくないの。でも睦月、ここで見んでしょ? だからちょっと出てくるだけだって。別に怒ったわけじゃねぇから」



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背中を向けられるのが苦手なところ (4)


 亮は『怒ったわけではない』と言い、部屋を出ていく理由をそう説明するが、それが本当のことなのか、口先だけのことなのか、睦月には分からない。
 でも亮に出て行ってほしくない。

「ヤダ、ダメ」
「何が?」
「出てくの」
「そう言われたって」

 睦月は、行かせまいと亮の腕を掴む。
 亮が怖いの苦手なのは知っているから、亮にホラー映画を見せたいわけではないが、だからって出て行かなくても。あ、でも睦月がここで見るということは、亮が部屋にいる限り、一緒に見るということになるのか。でも。

「でもダメ」
「んなこと言ったって、俺、見たくねぇんだってば。俺が一緒じゃなくたって、睦月1人で見れんだろ? ならいいじゃん、俺がいなくたって。俺まで巻き込まないでよ、マジで」
「でも…」

 きっと亮は、睦月が無理に亮にホラー映画を見せようとしている、と思っているのだろう。睦月の主張だけ聞けば、そうとしか思えないんだけれど、別に睦月はそういうことをしたいわけじゃなくて。

「でもヤなの、亮が行くの」
「俺だってヤダよ、怖いの見んの」
「見なくていいから、行かないでよ!」
「見なくていい、て言ったって、睦月が見てれば見えちゃうじゃん。寝てていいから、とか言われたって、寝れねぇし!」

 どうやっても、平行線の会話にしかならない。
 確かに睦月はどうしてもそのホラー映画を見たいけれど、亮が出て行ってしまうのは嫌だし、でももし他の部屋で見せてくれる人がいるなら、睦月はそこに行こうとしていたから、同じことのような気もするし、でも、でも…。

「別にもう2度と帰って来ないわけじゃないんだから、いいじゃん。映画終わるころか……朝には帰って来るし」
「ダメ」
「何で」

 亮は呆れて睦月に背を向けようとしたが、その背中に睦月がキュッとしがみ付いてきたので、思わず1歩踏み出してしまった。



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背中を向けられるのが苦手なところ (5)


「ダメ、行っちゃ」
「あのね、」
「ダメなの。俺も映画見ないから。亮も見なくていいから、行っちゃダメ」
「は?」

 まさか睦月が自分の意見を折るとは思ってもみなかったのか、亮は本当にキョトンとした顔で振り返った。

「いや睦月、ホント、俺マジ怒ってるわけじゃないよ? 映画やってる間、ちょっと出てくるだけだよ?」

 さすがに亮も、睦月の様子がいつもと違うことに気が付いて、宥めるような口調で睦月の顔を覗き込んだ。
 確かに亮は怒っていたわけではないが、ちょっと苛ついていたのは事実で、出てくる、と言ったときの口調が思ったより素っ気なかったなぁ、と思っていたせいか、やけに優しい声色になった。

「睦月?」
「行ったらダメ。ダメなの!」
「…………」

 プクッと頬を膨らませたまま離れようとしない睦月に、亮はようやくその真意に気が付いた。
 どうやら睦月は、亮がいきなり出ていくと言って背を向けたことが、相当嫌だったらしい。

「…分かった。じゃあ出掛けんの、やっぱやめる」
「えへへ」

 亮がそう言うと、途端に睦月はホッとした顔をして笑うから、つられて亮も口元を緩ませた(でも、先に笑ったのは睦月なのに、「何笑ってんだよ」と、腹パンチは食らった)。

「まったくもう、亮はホント子どもなんだから」

 亮が出掛けないと分かって、睦月はわざとそんな口振りで言いながら、亮から離れる。
 確かに、ホラー映画を見たくないと言って駄々を捏ね、見るなら出ていく、とか言うなんて、どう考えても子どもだけれど、それを、同じくらい子どもな睦月に言われたくない…。
 でも、亮がちょっと背中を向けただけで不安がっちゃう睦月を、かわいいとか思ってしまう亮のほうが、やっぱり子どもなのかな。

「…睦月、」
「んぁ?」
「じゃあさ、今日寒いしさ、一緒に早く寝ようね?」
「はーい」

 何とも素直に返事をした睦月を、今度は亮のほうからギュッと抱き締めた。



*end*



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バレンタインの魔法使い (1)


 バレンタイン小説、更新中の「一応説明させてもらうと」が切れがよくなったらアップしようと思ってたら、今日になった…。へたくそか!
 てことで、今年のバレンタインは、「君といる~」の隼人くんと湊くんです!


 隼人の前に現れた翔真は、言いました。

「実は俺、魔法使いなんだよね~」

 笑顔ですが、本気で言っているようでした。服装はいつもどおりですが、手には、先にハートの飾りの付いた棒を持っています。魔法のステッキでしょうか。
 それを見た隼人は、訝しむことも、呆れ返ることもせずに答えました。

「そうなんだ。俺、ショウが童貞だって知らなかったわ。女に不自由してるようには見えねぇけど、そうだったんだぁ」

 その言葉に、翔真の笑顔は一気に曇りました。

「んなわけねぇじゃんっ! しかも俺、まだ30過ぎてねぇしっ!」

 30歳まで童貞を守り抜くと、魔法使いになれるのです。
 でも翔真はまだ21歳だし、もちろんもう童貞ではないから、この方法で魔法使いになるには、条件を満たしていません。

「なら、何だよ」

 今度こそ隼人は、眉を寄せて聞き返しました。
 友人のつまらないボケに付き合うのには、体力と気力が削られます。

「だから~、魔法使いなのっ! バレンタインの魔法使い! 恋に悩める隼人くんを助けるために現れたのですっ!」
「現れたのです、て……昨日も会っただろ」
「まぁそうなんだけどっ…、つか、何でそんなに突っ掛んのっ!?」
「イテテッ…やめろっ」

 翔真は、魔法のステッキで、隼人の腕をペシペシと叩いてきます。
 地味に痛いです。

「隼人、いい加減、ミナトと付き合いたいでしょっ?」
「うっさい」

 ミナトこと福原湊は、2人と同じカフェでバイトをしている男の子で、隼人の片想いの相手でもあります。
 隼人は、それこそ女の子を切らしたことがないくらい恋の経験値は高いのですが、湊を前にすると、まるで思春期の中学生のようになってしまいます。
 そして、湊は湊でスーパー鈍感なものですから、好きな子ほどいじめてしまう小学生男子のような隼人のアプローチは、さっぱり伝わっていないのです。
 そのせいで隼人の片想い歴は長くなるばかりで、そんな隼人を見兼ねて、バレンタインの魔法使いである翔真はやって来たのです!

「とにかくっ! 隼人と湊の距離を縮めてやるっつの!」
「頼んでないわっ!」
「あー! そんなこと言っていいの!? せっかくいいこと教えてあげようとしたのにっ!」

 翔真の不遜な態度にムッと来て、隼人が突っ撥ねれば、翔真は拗ねたように魔法のステッキを振り回します。
 それにしても、先ほどからそんなに魔法のステッキをブンブンして、その間に魔法は掛かってしまわないのでしょうか。



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バレンタインの魔法使い (2)


「もういいもんっ。他の人んトコ行っちゃうもんねっ」
「あぁ、そうしろよっ」
「湊が誰かとくっ付いちゃって、後で泣いたって知らないかんねっ」
「はっ!? ちょっ待っ…」

 翔真の最後の不吉な一言に、隼人は慌てて翔真を引き留めました。

「おま…今のどういう意味やだよっ」
「どういう意味も何も、そのままの意味だけど? まさか隼人、この世の中で、湊のことが好きなのは自分だけだとでも思ってんの? 俺は魔法使いだけど、隼人だけの魔法使いじゃないもん。隼人以外の人の願いも叶えますー!」

 翔真は、ベー、と舌を出した後、そっぽを向いてしまいました。
 これには隼人も慌てます。翔真が魔法使いかどうかはともかく、確かに、湊を好きなのが自分だけだなんて、そんなことはあり得ません。何しろ湊はかわいいし、鈍感で天然だけれど、人を優しい気持ちにさせる魅力を持っているので。

「嫌だ…、湊が他の男のモノになってしまうなんて…」
「いや、そこは男じゃなくて、女でしょう」

 湊はかわいいけれど、男の子です。翔真も恋人は男だし、好きになるのに性別は関係ないけれど、一般的には男と女がくっ付くものなのですが…。
 しかし隼人の脳裏には、湊が、誰か知らぬ男と気持ちを通じ合せ、仲睦まじくしているシーンが浮かんだらしく、頭を抱えてへたり込んでしまいました。

「ちょちょちょっ隼人! そんなに落ち込まないでよっ。俺が助けてあげるってば!」

 翔真は最初から、隼人を助けるために現れたのです。隼人の態度があんまりだから、ちょっと強く出ただけなのに、そんなに本気にされたら困ります。
 翔真は慌てて、「どーせ俺なんて…」と凹んでいる隼人を慰めます。

「隼人っ、だーいじょうぶっ! 俺を誰だと思ってんの!?」
「…ショウ」
「そうじゃなくてっ! バレンタインの魔法使いだだってば! ちゃんと隼人と湊の心の距離を縮めてあげるからっ!」
「…どうやって」

 落ち込んでしまった隼人にとって、翔真の高いテンションは、鬱陶しいだけです。
 しかしそんなに隼人の気持ちには気付かず、翔真は、魔法のステッキを振り上げています。やっぱり、すごく鬱陶しいです。

「やっぱバレンタインつったら、チョコでしょうがっ!」
「…は?」

 バレンタインにチョコを贈るという風習なら、別に翔真に言われるまでもなく隼人は知っていますし、これまでのバレンタインで、幾度となくチョコは貰って来ています。
 それを今さら強調されても…と、隼人は白けた目で翔真を見ます。



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バレンタインの魔法使い (3)


「違うのっ、隼人が湊にチョコ上げんのっ!」
「はぁ? それのどこが魔法なんだよ。めっちゃ一般的な方法じゃねぇか」

 バレンタインは愛の告白をするのに打って付けの日だから、隼人もそれに便乗しろということなのでしょうか。それは別に、魔法でも何でもない気がします。

「大体、この時期に男がチョコ買いに行くて……死ぬほど恥ずかしいじゃんか。だったらお前、買って来い」
「魔法使いをパシらせないで!」

 友チョコや逆チョコがブームになっているご時世ではありますが、それでもこの時期のバレンタイン特設コーナーは、女性客で独占されているのです。
 そんな中に、家族の付き添いでもなく、男が1人でチョコレートを買いに行く様を考えたら、隼人はおぞましさに寒気がしそうです。

「でもまぁ…、チョコじゃなくても、バレンタインに乗っかって、何かプレゼントして、そんで告白…」
「ダメーーーー!! チョコじゃなきゃダメなのーーーー!!!」
「はぁ? 何でだよ。そしてうっさいわ」

 突然声を大きくした翔真に、隼人は嫌そうに顔を顰めます。
 やはり翔真は、バレンタインの魔法使いだから、チョコに拘りたいのでしょうか。

「あのねぇ、隼人! チョコ上げんのには意味があんのっ! チョコにはね、恋愛化学物質が含まれててね、人が恋に落ちるときにね、」
「お前、魔法はどうした。おもっきし『化学物質』言ってんじゃねぇか」

 力説している翔真の言葉を遮って、隼人は冷静に突っ込みます。

「とにかくっ! チョコを上げることに意味があんの! つべこべ言わずに、バレンタインにチョコ上げて、湊に告るのだぁ~~~~!!!」

 翔真は、魔法のステッキを持った右手を高く掲げ、左手は腰に当てるという、よく分からない決めポーズで、まるでお告げのようにそう言うと、高笑いとともに消えてしまいました。





「という夢を見たんだけどな、昨日」
「…………はぁ?」

 バイトしているカフェでの仕事を終え、帰りに寄った居酒屋で、隼人の話を黙って聞いていた翔真は、そう言って話を締め括った隼人に、ものすごく呆れた視線を向けた(シフトが代わって、翔真は隼人と帰りが一緒になることがあるのだ)。
 隼人がどんな夢を見ようと勝手だが、人を、そんなよく分からない頭のイタいキャラにしないでもらいたい。



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バレンタインの魔法使い (4)


「しょうがねぇじゃん。俺だって、好きで見たわけじゃねぇよ」
「大体さぁ、何その恋愛化学物質て。女の子とか、そういうの好きそうだけど、まさか隼人にそんな乙女思考があったとは…」
「違うんだよ! 俺、昨日テレビ点けたまま寝ちゃって、そんとき番組でそんなんやってたんだよ。テレビの内容が夢の中に出て来たんだな」

 隼人はそう分析したけれど、テレビの内容が夢に出てくるのは、あり得なくないから別にいいとして、チョコレートに恋愛化学物質なんて、きっとバレンタイン特集の番組だろうに……そんな番組、見てるの?

「じゃあ隼人は、その魔法使いの俺のアドバイスに従って、湊にチョコ上げて告んの?」
「上げるかい」
「何で。そんな夢まで見といて! チョコ上げなよ! 上げて告んなよ!」

 翔真が、箸を持ったままの手を、ブンと振り上げる。
 …お行儀が悪い。しかしその姿は、まるで夢に出て来た魔法使いの翔真にそっくりだ。

「そんなこと言ったって。上げるためには、まず、チョコ買わなきゃなんねぇじゃん。俺が買うのか? この時期に? 無理だろ」

 バレンタイン間近のこの時期に、男がチョコレートを買いに行くことへの抵抗感は、やはり隼人にもあるようで、大変渋い顔をしている。それは、去年翔真も経験しているから、よく分かる。
 けれど、上げたら絶対に喜ばれることも、経験から知っている。そしてそれは、何ものにも代えがたい。

「上げたほうがいいのに~、隼人の意気地なし~」
「何でだよっ」
「だってそうじゃ~ん。違うんだったら、湊にチョコ上げて!」

 隼人のことなのに、翔真は、プクッと頬を膨らませて怒り出す(そんな…ちょっとかわいい感じになっているのは、アルコールが入っているせいだろう)。
 しかし、真剣に考えてくれているのだと考えれば、いい友だちだと思えるが、面倒くさいと言えば面倒くさい。

「嫌だ、恥ずい」
「店に行くのがってこと? だったらネットで買ったらイイじゃん」
「ショウ…、お前ホントに、俺にチョコ買わす気だな」
「うん。だって隼人、そんな夢見といて、渡さないつもり? じゃあ何でそんな夢見たんだよぉっ!」
「知るかっ。ちょっ、やめろよ!」

 バシバシと翔真がテーブルを叩くので、先ほど届いたジョッキの中のビールが飛び散る。
 翔真は特別酒が弱いわけではないが、今日は、人並み以上に強い隼人と同じくらいのペースで飲んでいたから、酔いがかなり回ってきているようだ。
 結構クールだとか冷静だとか、そんな印象を持たれることが多い翔真だが、酔うとちょっと幼い感じになって、それが夢に出て来た魔法使いと重なるからおかしい。

「だから隼人っ、チョコ買って、湊に告りなさいっ! ねっ?」

 夢の中同じく、お告げのようにそう言った翔真は、アイドル顔負けのとびきりの笑顔で、首をコテンとした。



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バレンタインの魔法使い (5)





 職場の義理チョコというのは、非常に厄介なものだ。
 友チョコやら逆チョコが流行っているとはいえ、女性から男性へ贈るのが主流の中で、3月14日にはホワイトデーが待っている。お返しは3倍とか、いかにもな販売戦略どおり、義理チョコですらお返しのほうが高上りだから、面倒くさい。
 最近では、職場でのバレンタインやホワイトデーはセクハラだなんて言われ始めているけれど、まだまだ職場内の義理チョコは、なくなる気配がない。

 …しかし。
 もともとイベントごとに興味のない隼人が、義理チョコを面倒くさく思っているのとは対照的に、甘いものが大好きな湊は、義理とはいえチョコを3つも貰って、ご機嫌だ。

「…お前、めっちゃ嬉しそうだな」
「そうですかぁ?」

 仕事が終わり、バックルームで帰り支度をしている湊は、鼻歌でも歌い出さんばかりの機嫌のよさで、隣で着替えていた隼人に突っ込まれても、何だかヘラヘラしている。
 しかしそんな湊を前に、隼人は実のところ、内心穏やかではなかった。
 この間、クリスマスイブを一緒に過ごした隼人と湊だが、夢の中と現実世界の翔真が、湊に告白しろ、と言ったとおり、2人はまだ付き合っていない。
 翔真のアドバイスに従い、隼人はバレンタインに湊に気持ちを伝えたいとは思っているが、そのためには、湊が現在フリーでなければならないわけで。
 湊に彼女が出来たとは聞かないが、今機嫌がいいのは、チョコがたくさん貰えたからではなく、この後に彼女と会う約束があるからだったらどうしよう…!

「な…何でそんな、機嫌いいわけ?」

 着替え終えた隼人は、まだモタモタと支度をしている湊に尋ねる。
 返答次第では、隼人のハートは粉々に砕けてしまうわけだが、もちろんそんなことを知る由もない湊は、キョトンと隼人に視線を向けた。

「え、だって今日、バレンタインですよ?」
「ッ…!」

 当然のごとく返された湊の言葉に、隼人は息を飲んで固まった。
 やはり湊は今日、彼女と約束があって、きっとバレンタインのチョコを貰うのだ。いやでも、いつの間に彼女が出来たん? もしかして今日、本命のチョコで告白されたとか!?
 いくら湊でも、義理チョコだけでこんなに喜ぶはずがないのだ…と、隼人が絶望の淵に立たされた次の瞬間、湊は笑顔で言葉を続けた。

「バレンタイン、チョコいっぱい貰えて、嬉しくないですか?」
「……………………はい?」

 今、隼人が脳内で消し去った可能性について、あっさりと湊は肯定してくれた。
 …どうやら湊は本当に、チョコがたくさん貰えて嬉しいから、機嫌がよかったらしい。

「えと…、今、お前の機嫌がめっちゃいいのって、今日、チョコがいっぱい貰えたから…?」
「はいっ。コレ! 3つも貰っちゃいました!」

 湊がわざわざカバンから取り出して見せてくれたチョコなら、隼人もまったく同じものを貰っている。それ以外に湊が貰っていないのなら、その中に本命チョコはないということだ。
 しかし湊のこの喜びよう…。



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バレンタインの魔法使い (6)


「それ…義理チョコじゃねぇの?」
「そーですけど…、でもチョコはチョコだし」

 湊は、それを義理とも思わず喜んでいると隼人に思われた、とでも思ったのか、チョコをしまいながら、拗ねたように唇を突き出した。

「どーせ俺は隼人くんと違って、義理チョコくらいしか貰えませんし」
「ちょっ、そんなこと言ってねぇじゃん! そんくらいで怒んなよ」

 別に隼人は湊をからかうつもりなんかないし、自分だって義理以外のチョコは貰っていない。湊が本命チョコを貰っていないのか、とってもとっても気になっただけだ。
 でも、今の湊の言い方からして、今年は本命チョコを貰う予定はなさそうだと分かり、隼人はホッとした。湊はつまらない嘘をついたり、見栄を張ったりする子ではないから。

「お前、ホントにチョコ好きなんだな」
「はいっ」

 湊は、ほんの一瞬前まで拗ねた顔をしていたのに、チョコの話題を振ればすぐに笑顔になるから、単純だな、と思うが、そんな湊の笑顔を見れただけで和んでしまう自分も、相当単純だと隼人は思う。

「…なら、これもやるわ」
「へ?」

 さりげなく。
 ドキドキしすぎているのがバレると格好悪いから、なるべくさりげなく、普通な感じを装って、隼人はカバンから取り出したチョコを、湊のほうに差し出した。
 けれど、湊の反応が怖くて、まともに顔が見れない。

「え? チョコ?」
「好きなんだろ? やるわ」

 なかなか受け取ろうとしない湊にチラリと視線を向け、隼人はチョコをさらに湊のほうに押し付ける。
 いらないならいらないとさっさと言ってくれたら、ショックは受けるが、気は楽になるのに。この待っている間の時間が、ひどく重たくて苦しくて、心臓が痛い。

「いいんですか!?」
「いいつってんだろ、しつこいっ」
「だって」

 照れ臭さのあまり、言い方がちょっとぶっきら棒になったことを気にしていたら、湊がピントの外れたタイミングで驚くから、隼人はつい声を大きくしてしまい、それでまた自己嫌悪に陥ってしまう。バカな負のループ。
 大体、普段の隼人だったら、ここまで相手に伝わらなかったら、『もうええわ!』とか『いらんのなら返せ!』とか言ってキレているところなのだが、そう言って、湊に本当にチョコを突き返されたらショックで立ち直れそうもないので、その言葉はグッと飲み込む。

「ありがとうございますっ! 俺、チョコ大好きだから、嬉しいなっ」
「そ…そうか、ならいいんだけどっ」

 とりあえず湊がチョコを受け取ってくれて、それにホッとした隼人は、肝心の返事を聞きそびれていることにも気付かず、やり遂げた感満載で帰宅したのだった。



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バレンタインの魔法使い (7)





 義理とはいえ、チョコが貰えるバレンタインは、湊にとっては嬉しい年中行事だ。
 まぁ、お返しは倍返しとか言うが、それも仕方がない。女性とはそういうものなのだろう。

「えへへ、チョコいっぱ~い」
「バイトで貰って来たの?」
「うんっ」

 帰宅した湊は、いい年をして、お母さんからもチョコを貰って、ますますご機嫌になりながら、バイト先で貰ったチョコをカバンから取り出す。
 普通、バイト先で貰った義理チョコを、こんなに嬉しそうに母親の前で広げたりはしないだろうが、そこはそれ、これが湊の性格なのだ。

「あら、こんな高いチョコくれるの? バイトの人」
「え?」

 母親が不思議そうに言って手に取ったのは、隼人がくれたものだ(先に貰った3つのチョコはもうカバンの中にしまっていて、隼人のはカバンの外側のところに入れたから、間違いない)。
 隼人は甘いものが好きではないから、貰った義理チョコが食べ切れないと、湊に分けてくれたのだと思っていたが、そんなにいいチョコを分けてくれたのだろうか。

「これ、そんなに高いヤツなの?」
「高級高級。義理チョコに贈るレベルじゃないわよ。湊、知らないの?」
「知らない…」

 それでもと思って、女性陣から貰った3つのチョコを取り出してみるが、その中に、隼人がくれたものと同じものはない。
 隼人だって、湊と同じ義理チョコを貰っていたのだから、その中から1つを湊にくれたのなら、どれか1つと一致するはずなのに。

「じゃあ本命!? 本命チョコ!? 彼女から貰ったの!?」
「違うよっ! 何で!」

 自分の息子のことなのに、女子高生みたいなノリで、目を輝かせて聞いてくる母親に、湊は焦って言い返す。
 だって、これをくれたのは隼人だ。彼女ではない。

「だって普通、こんな高いチョコ、義理でくれないでしょ。お母さん、お父さんにこんないいの上げたことないし」
「いや…そんなのバラさなくていいけど…」

 お父さんの分がそうなら、きっと息子の分も同じだろうに、なぜそれをわざわざ明かす…。

 それにしても、それならどうして隼人は、そんなにいいチョコを湊にくれたのだろうか。
 義理チョコのレベルでないなら、母の言うとおり、本命チョコということになるが、隼人がそれを湊にくれる意味が分からない。

「もしかして隼人くん…」

 湊はハッとした。
 あのときは、深く考えずに隼人からも受け取ってしまったが、今になって気が付いた。隼人は、単に自分が食べない義理チョコを湊にくれたわけではないのだ。

 こんないいチョコ――――――――隼人が、彼女から貰ったチョコに決まっている!



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バレンタインの魔法使い (8)


 隼人には彼女がいて、その彼女からバレンタインのチョコは貰ったものの、ケンカをでもしてしまい、自棄になった隼人は、貰ったチョコを湊にくれたに違いない。
 特に隼人は甘いものが好きではないから、これがそんな高級チョコであることも知らずに、湊にくれてしまったのだろう。

 …隼人が湊にチョコを上げたのは、もちろん湊のことが好きだからなのだが、残念ながらそれは1ミリも伝わっておらず、湊はまったく見当違いな方向に、そう結論付けてしまった。
 ここまで鈍感なのもかなり罪深いが、チョコを渡すとき、舞い上がって、自分の気持ちを言わなかった隼人も、悪いと言えば悪い。湊の鈍感さは今に始まったことではないのだから。

(そっか、隼人くん、彼女とケンカしちゃったのか。だからバレンタインなのに、ちょっと機嫌悪かったんだな…)

 バイト中、隼人が機嫌悪そうに見えたのは、どうやって湊にチョコを渡そうか考えすぎて、眉間にしわが寄っていたとか、そういうことだったのだが、湊の中では、もうそういうことになってしまっていた。

 仕方がない。
 それが湊という男なのだ。





「あの…、隼人くん」
「何だ」

 バレンタインの翌日、仕事の後のバックルームで湊に声を掛けられた隼人は、口ではぶっきら棒に返しながらも、ドキドキしながら湊を見遣った。
 今日は、会ったときから、湊が何か言いたそうにしていたので、実は隼人もずっと気になっていたのだ。

「これ…」
「え? えっ!?」

 おずおずと湊が差し出して来たのは、1つの包み。
 ホワイトデーは1か月先だし……なんて思ったのも一瞬のことで、それは、昨日隼人が湊に上げたチョコだった。何がいいか分からず、恥を忍んで女友だちに聞いて買ったのだから、間違いない。

「な…何だよ」

 まったく同じものを買って、隼人にくれようとしているのか? いや、さすがに湊でもそんな意味不明なことはしないだろう。だとすると、昨日受け取ったものを、今になって返そうというのか? なぜ? そもそも湊はそれを隼人に返そうとしているのか? こちらに差し出しているだけで、返すわけではないとか?

 突然のことに、隼人の頭の中はパニック状態。
 口にこそ出さないものの、様々な疑問が駆け巡っていく。



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バレンタインの魔法使い (9)


「昨日いただいたんですけど…、これ、やっぱり返したほうがいいかな、て思って…」
「ッッッ…!!!」

 まさかの湊のセリフに、隼人は言葉を失った。
 返す!? やっぱり返すの!? 俺のことが嫌いだから!?
 しかし、どうして今さらなのだ。昨日はあんなに嬉しそうに受け取ってくれたのに。一晩考えたら、やはり隼人のことは、ないな、と思ってしまったのか。何が何だか分からない。

「やっぱり、いくらケンカしたからって、彼女から貰ったの、人に上げちゃうのはよくないと思うんです、俺…」
「、ッ、!? ん? えっ!?」

 湊に嫌われたショックから、脳内がフリーズしていたところに、まったく思ってもみなかったことを言われて、隼人の頭の中はますます混乱していく。
 今、湊は何を言った?
 ケンカ? 彼女? ――――何の話だ?

「だから隼人くん、ちゃんとこれ食べて、彼女と仲直りしてください!」
「はぁ~~~???」

 ちょっと待った。どうして湊の中では、隼人に彼女がいることになっているのだ。そしてどうして、その彼女とケンカまでしていることになっている!?
 しかし、唖然とする隼人をよそに、湊は真剣な表情でチョコを返そうとしている。

「ちょっと待て、お前、何言ってんだ」
「え? だって隼人くん、彼女とケンカしちゃったから、彼女から貰ったチョコ、俺にくれたんでしょ? 昨日」
「……………………」

 内容が内容だから、湊は言いにくそうにしながら、隼人にチョコを差し出してくる。
 しかし、もちろん湊が言っていることは事実無根であり、一体どうしてそんなことを思ってしまったのか…………隼人はポカンと口を開けたまま、固まってしまった。

「待て待て待て、お前、ホント何言ってんだっ。何だ、彼女て!」

 事態はまだ把握し切れていないが、湊が誤解していることだけは確かなので、とにかくそれだけは解かないと……と、隼人は湊を問い詰める。

「だから、隼人くんの彼女…」
「いないわ、そんなんっ!」
「え!? いないって、だって…!」

 彼女がいないことなんて、そんなに力いっぱい言うことではないのだが、今ばかりははっきりと言っておかないと、湊はどんどん勘違いしていってしまう。
 現に湊は、隼人に彼女がいないと言われても、信じられないといった顔をしている。

「あのな、湊。一から確認しようじゃないか」

 恐らく湊はいろいろ……それこそ、隼人が思っている以上にいろいろと勘違いしているだろうから、じっくりと話を聞いてやろうではないか(湊のこの後の予定なんか知るか!)。



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バレンタインの魔法使い (10)


「お前、俺に彼女がいると思ってるよな?」
「思ってますけど…」
「まずそっからだ。何でそう思うんだよ、いない、つーんだよ」

 誰かがそんな出任せを言ったのか、それとも湊の想像の世界なのか知らないが、いつだって湊は、隼人に彼女がいると思い込んでいる節がある。
 悪いが隼人は、湊に恋に落ちて以来、彼女なんか作っていないのに!

「彼女がいないっつーことは…………分かるな? ケンカなんて?」
「するはずがない…」
「よく出来ました」

 湊の勘違いを正すため、1つずつ正解へと導いていく。
 傍から見ればバカみたいかもしれないけれど、隼人だって必死だ。

「じゃあこのチョコは…? 隼人くん、彼女から貰ったんじゃないんですか?」
「だーかーらー! お前、ホント何べん言わせんだっ! いないヤツから貰えるかっ!」

 隼人に彼女がいないということを、どうしても信じようとしない湊に、隼人は頭を掻き毟る。
 ここまで手強い相手は、本当に初めてだ(でも嫌いになれないのが悲しい…)。

「彼女から貰ったんじゃないなら、何なんですか? だって昨日貰った義理チョコ、これと同じの、なかった…! あ、別のところで貰ったヤツですか?」
「いや、ちょっと待て。何でお前、俺が人から貰ったチョコを、お前にやったと思ってんだ」
「え、違うんですか!?」
「違うわっ!」

 心底驚いた顔をしている湊を前に、そもそも湊はそこから勘違いしていたのか…! と、隼人は頭を抱えたくなった。
 このチョコは、隼人が湊のために用意したものであり、誰かから貰ったものを横流ししたわけではない。それなのに、まさかそんなふうに思われていたなんて…。

「だって隼人くん、甘いものあんまり好きじゃないでしょ? チョコ貰っても食べ切れないから、俺に分けれくれたのかと思って…」

 隼人の強い否定に、ようやく湊は自分の勘違いに気が付いたようで、申し訳なさそうに頭を掻いた。

「お前はホントに~…!」
「ゴメンなさい…」
「お前がチョコ好きだって言うから上げたの! 返すな!」

 危うく受け取り拒否の目に遭うところだったチョコを、隼人はもう1度湊に渡す。
 結構強引……押し付けたと言っても過言ではないが、チョコが貰えて嬉しい湊は、嫌な顔もしない。

「ありがとう隼人くん、すっごい嬉しいです!」
「そっ…そうか? そんならよかったわ」

 今度こそ本当に湊に受け取ってもらえて、隼人は心底ホッとしたが、照れくさいのもあって、そっぽを向いて、何でもないように返した。



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バレンタインの魔法使い (11)


「でもこれ、すごい高いヤツなんでしょう? お母さんが言ってました」
「そうだったかな? まぁうまかったら何でもいいじゃん」
「はいっ、ありがとうございます!」

 もちろん、自分で買ったのだから、そのチョコの値段がいかほどだったかを、隼人が知らないわけがない。
 チョコのくせに、こんな値段がするんか! と、買い物に付き合ってくれた女友だちにキレれば、そんなことも知らないでチョコ上げようとしてんの!? と、逆に怒られる始末。
 もう当分、その子とは買い物に行きたくないし、出来ればチョコレートも買いたくはない。

 …でも。

「嬉しいなぁ、チョコ」

 まさに『にこにこ』という言葉がピッタリの、湊の笑顔を見ると、そんなこと全部どうでもよくなってくる。

「今年は隼人くんのも入れて、5個も貰っちゃいました!」
「へぇ……て、5個!?」

 確か、昨日バイトで貰った義理チョコは3個で、それに隼人の分を加えれば、全部で4個のはず。
 昨日は、どうも湊はそれ以外には貰っていないし、貰う予定もなさそうだったのに、残りの1つはどこから…!?

「ちょっ、5個て……他にどっから…?」

 先ほどまで浮かれたような気持ちだったのに、今度は焦りでドキドキしてくる。
 まったく、忙しない男だ。

「バイトのときに貰ったのと、隼人くんのと、あとはお母さんから貰いました!」
「お…母さん…?」

 やっぱり本命チョコを貰っていたのか…!? と隼人が、天国から地獄の気分に陥り掛けていたら、まったく予想外の答えが返ってきて、頭が付いていかなくなる。

「お母さん…? お母さんて、お前のお袋さんのことか?」
「そうですけど…、他に誰のお母さんから貰うんですか」

 そう言って湊は笑うが、ここは隼人が笑われるところなのか?
 別に隼人は、誰の母親なのかを確認したくて聞き返したわけではない。この年で、バレンタインに母親からチョコを貰うとは思っていなかったから、聞き間違いかと思って、尋ねたのに。

「そうか…、お母さんか…。よかったな、お母さんからも貰えて…」
「はいっ」

 湊に『よかったな』なんて言いつつ、本当によかったと思っているのは、他ならぬ隼人なわけだが…。

「よかった、よかった」

 とにかくこうして、隼人の今年のバレンタインは、多少の波乱を起こしながらも、無事に終わったのである。



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 すいません、ボーっとしてて、時間過ぎてました…。
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バレンタインの魔法使い (12)





「隼人ー。その顔を見たら聞くまでもないんだろうけど、一応聞くね。バレンタイン、どうだった?」

 後日。
 バイト先のバックルームで、翔真がニヤニヤしながら近づいてきた。
 その言い方からして、きっと隼人がひどく落ち込んでいたら声を掛けないつもりだったのだろうが、ということは、今隼人は、見るからに嬉しそうな顔をしているのだろう。

「おぅ、ちゃんと渡したよ、チョコ」
「で、OKだって? 湊」
「何が?」
「何が、て…」

 だって、バレンタインにチョコを上げて、湊に告白するという作戦だったのだ。
 隼人がそんな表情をしていて、ちゃんとチョコを上げというなら、湊からOKの返事を貰ったのだと翔真は解釈したのに、そんな素で『何が?』とか返されても…。

「隼人、湊に告ったんじゃないの?」
「え?」

 あり得ないと思いつつ、翔真が尋ねれば、隼人はハッとした表情になった後、そのまま固まった。
 まさか…。

「ねぇ隼人…、湊に告ったんだよ、ね…?」
「………」
「ねぇ…、告ったんだよね…?」

 完全に、聞いてはいけないことを聞いてしまった気がしたが、今さら後には引けず、翔真は確認するようにもう1度尋ねた。
 ゴクリと喉が鳴った気がする。

「まさか隼人…」
「告んの、忘れた…」
「…………」

 クリスマスのときだって、そうだったのだ。イブに2人きりで過ごしたくせに、結局それだけで終わってしまったことは、まったくもって何の教訓にもなっていなかったのか。
 一体何のために、あんな夢まで見たというのだ。

「もぉ~~~~、隼人、バッカじゃないのっ!」
「うっさいわ、ボケェッ!!」
「逆ギレしてる場合かぁ~~!!!」





 ――――魔法は果たして効いたのか、効かなかったのか。
 それはバレンタインの魔法使いのみぞ知るところなのであります。




Happy Valentine...?




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*END*




イラストは「ぽかぽか色」さまから。ありがとう!
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愛には逆らえない (1)


 バレンタイン小説、もういっちょ。

 カフェSpicaの朝は、毎日大体8時くらいに始まる。開店の準備のため、オーナー兼フロア係の朋文か、調理担当の譲のどちらかが出勤してくるからだ。
 ちなみに、どちらが先に着いてもいいように2人ともが店の鍵を持っていて、先に来たほうが鍵を開けることになっているのだが、今日のその役目は譲となった。
 …いや、そうなるように、早めに家を出て来た。朋文は徒歩通勤だから、地下鉄を乗り継いでくる譲と違って、出勤時間が微妙にまちまちなので、いつもより2つも早い電車に乗って。

 だって、今日はバレンタインだ。
 いい年した、いかつい坊主頭の男が何を抜かしてやがるだけれど、でもやっぱり朋文にチョコレートを上げたいな、と。まぁ、そう思ってしまったわけで。

 渡すタイミングは、仕事が始まる前か、終わった後のどちらか、2人きりになったとき。
 頭の中でシュミレーションしてみた譲は、仕事の後だと、今日1日、ずっとドキドキしていなければならないことに気付き、仕事の前に渡すことに決めた。
 他のバイト店員が来る前、朋文と2人きりのうちにさっさと渡して、後は仕事に専念すればいい。
 いくら朋文が『THE 空気読めない男』でも、仕事中に、譲からチョコを貰ったことを態度に出すわけがないから、譲も何も気まずくはないのだ。

 よし、これでバッチリ――――――と思っていたのに。

「おはようございま~す…」
「何でおめぇのほうが早く来んだよっ!!」

 ただ朋文を待っているだけだと落ち着かないので、先に開店の準備をしていた譲は、ドアが開いて現れた亜沙美の姿に、思わず声を張り上げて突っ込んだ。
 遅刻するよりは、早く出勤するに越したことはない。
 しかしバイトの出勤時間自体はまだ先で、彼女はいつもそれに忠実にやって来るというのに、今日は一体どうしたというのだ。いや、今日という日だからこそか。

「…………、譲さーん、これをどうぞー…」
「あ゛ぁっ?」

 もともとの性格は優しく情に厚い男なのだが、見た目が見た目なだけに、凄んだら誰もが怯むのが譲なのだが、それに一切動じないのが亜沙美である。
 理不尽にも、非常に不機嫌そうに睨み付けてみたが、やはりそれは亜沙美には何の効果もなく、亜沙美はカバンの中から取り出した包みを、譲に差し出した。

「…何だよ?」
「チョコレートですー。バレンタインなので…」
「お、おぅ…」

 朋文にチョコを上げることに気を取られ、譲は自分も貰えるのだということをすっかり失念していたから、亜沙美にそう言われて、思わず毒気を抜かれてしまった。
 彼女が、こうした慣わしを律儀に実行するとも思っていなかったし。

「悪ぃな、サンキュ…………て、え? マジでこれくれんの?」
「マジですー」

 亜沙美がくれたのは、義理で贈るにはちょっとどころでなく、レベルの高いチョコ。
 譲は、今までに付き合って来た数々の女からだって、こんなチョコ、貰ったことがない。



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愛には逆らえない (2)


「…義理だよな?」
「義理です…。譲さんには、日ごろからお世話に…………私の生きる糧なので」
「は?」

 念のために譲が尋ねれば、亜沙美はこれが義理チョコだと肯定したが………………生きる糧?

「なので譲さん、お返し…」
「――――あぁ、」

 なるほど。お返しを期待しての、この高価なチョコか。
 ホワイトデーは3倍返しとか、未だにそんなバブルっぽいことが流行っているのかどうかは知らないが、その辺は亜沙美も普通の女の子らしい思考があるのか……と思ったのも束の間。

「……は、いりませんから、どうか今日…」
「え?」
「譲さんが店長にチョコを上げるところを、コッソリと覗かせてくださいー…」
「ッッッ、、、バッ…!!」

 お返しを期待しているんじゃないのか? と訝しむ間もなく、亜沙美が言ってきたのはとんでもない言葉で、譲は思わず声を張り上げそうになったが、慌てて口に手をやって、それを堪えた。

「てめぇ…、何抜かしてやがる…」

 動揺を悟られないよう、譲は感情を押し殺しながら、低い声で凄んでやる。
 しかし亜沙美も負けてはいなかった。

「譲さん…、バレンタインというのは、(腐)女子にとって、最も萌…燃える年中行事の1つ…」
「知るかよっ」
「譲さんが、頬を染めつつ恥ずかしがりながらも、ぶっきら棒にチョコレートを店長に渡す姿が見たいのですー…」
「勝手な想像すんなっ!!」

 恐らくは亜沙美の言うとおりな感じの渡し方になってしまうのだろうが、それをいちいち言われたくはないし、ましてやコッソリと覗かれたくもない。
 きっと亜沙美は今日、これが見たくて早く来たのだろうが、そう都合よく彼女の思うようにはさせない。
 仕事が始まる前にチョコを渡すのはやめにして、仕事が終わってから…………何なら店を閉めて、帰る途中にでも渡せばいい。うん、そうしよう。

「ああぁ、譲さんの意地悪…。私が一体何をしたと言うんです。来る日も来る日も真面目に働いてきたというのにー…」
「うるせぇやっ」

 もちろん亜沙美が真面目に働いているのは譲も知っているが、それとこれとは話が別だ。というか、全然関係ない。
 しかし亜沙美は、メソメソと泣き真似をしているから、すごく鬱陶しい。



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