恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2015年05月

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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (25)


「ホラっ! どうっ!?」
「あ…、う、うん…」

 アルバムを見せると言うから、単純に1冊だけかと思ったら、遥希は両腕にどっさりとアルバムを抱えて、琉のもとへと戻って来た。
 新しい写真が出るたびに、琉の写っている写真をすべて買っているのだから、アルバムの冊数だって少なくはないと思っていたが、琉が思っていたよりも、ずっと多かった…。

「見て! これ、こないだ買ったヤツ。これ! これ買いに行ってたんだからっ!」

 持って来たアルバムのうちの1冊を広げて、遥希が力説する。
 それは間違いなく、先月発売され新曲のPV撮影風景やそのオフショットの写真たちだ。どれも、くまなく、もれなく琉が写っている。

「別に変なことなんかしてないんだからねっ!」
「う、うん、分かった、分かったよハルちゃん、疑ってゴメン」
「俺、これ見てっ…………はぁ~っ…」
「え、ハルちゃん?」

 一気に捲し立てた後、一息ついた……というにはあまりに艶めいた吐息を漏らした遥希に、琉の動揺はさらに強まる。しかも、まだ話の途中のようだったし…。

「ハルちゃん?」
「琉、かっこいい…」
「………………」

 どうしたのかと遥希の顔を覗き込めば、非常にうっとりとした表情の遥希がそこにはいた。
 どうやら、買ったばかりの琉の写真を見ているうちに、すっかり魅了しまったらしい。
 そこまで遥希が琉のことを好きで好きで堪らないなんて、ちょっとでも遥希の浮気を疑った自分が恥ずかしいし、殴り飛ばしてやりたいくらい腹立たしい――――が。

(今、その本人が目の前にいるんですけど――――!!!)

 それなのに、どうして写真の中の琉に、そこまで心を奪われるのだ。
 写真の中の自分に嫉妬するなんて、ばかげているにも程があるけれど、これが嫉妬せずにいられるだろうか。心が狭いと、笑いたかったら笑え。経験した者にしか分からない苦しみだ。

「ハルちゃん、あの…、ハルちゃん?」
「………………え……? あ、琉…」

 ユサユサと肩を揺らしてみたら、ようやく遥希が若干正気を取り戻した。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (26)


「ハルちゃん、大丈夫?」
「うん…。はぁ~…。あ、琉も写真見る!?」
「えぇっ!? いやっ、俺はいいよ、うん、あの、今はいいやっ…」
「…そう?」

 目を輝かせてとんでもない提案をしてきた遥希に、琉はたじろぎながら遠慮を申し出る。
 遥希は非常に残念そうな顔でアルバムを引っ込めたが、それこそ、遥希の写真を見せてくれると言うなら喜んで見るけれど、自分の写真を眺めて、一体何が楽しいと言うのだ。琉はそこまでナルシストではない。

「はぁ~…、まさかハルちゃんがここまで写真持ってるとは知らなかったよ…」
「…引いた? 引いたよね? ドン引きだよね?」

 ほんの一瞬前まで、興奮気味に琉本人に写真を見せ付けながら熱く語っていたくせに、琉の反応に、遥希は急に弱気になった。

「引きはしないけど、ビックリはしたかな…。置き場所とか……お金とか、大変じゃない?」
「大変だけど、幸せだから平気」
「な…なるほど…」

 真顔でそう言って来る遥希は、無理をしているということもなく、本気でそう思っているのだろう。
 確かにひどく幸せそうだ。

「ねぇ、琉、だから…」
「ん?」
「…これからも、新しい写真出たら、買いに行っていい?」
「えっ、あ、うん…」

 誰か他の男の写真を買うわけでもなく、遥希が自分のお金で購入しようとしているのだから、琉に許可を得る必要などないのだが、今回のこともあったせいか、遥希が尋ねて来る。
 改めてそう問われて、ダメだと言えるはずもなく、琉は焦りつつも頷いた。
 もちろん最初から琉に止める権利はないのだが、本人が目の前にいても、遥希の心を奪っていく自身の写真に対して、いい気はしないのも事実なのだ。狭量な男なのだ。

「…ハルちゃん、」

 積み重ねられたアルバムに手を伸ばそうとしていた遥希の腕を掴む。
 原因は琉の勘違いとはいえ、今回、この写真には散々振り回されたのだ。今だけはもう、写真のことは忘れてほしい。琉も忘れたいから、遥希も忘れて。写真のことは考えないで。

「写真の全買いは許すから、俺がいるときは、そのアルバムは絶対にクローゼットの中から出さないで」
「ぅ?」
「お願い」

 恐らくそんな男心など微塵も分かっていないであろう遥希に、琉は自分勝手なお願いをして、遥希を腕の中に閉じ込めた。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (27)


yamato & chihiro & nanjo

 相変わらず千尋は、自分からメッセージの類は送って来ないし、大和が送ったメッセージも、読みはするけれど返信はしない子だが、それでも、返事を要する内容にはちゃんと返信してくれる性格だ。
 だから、琉に見せ付けられた遥希からのメールに触発されて、楽屋で送ったメッセージに対して、千尋から返事が来たことに、大和はさほど驚かなかった。
 今晩、食事に行かないか、と誘う内容だったのだ。返事は必要だ。

「…は? 南條?」

 しかし、返信があったことには驚かなかったものの、その内容には眉を寄せてしまった。
 何しろ千尋からの返信には、何の悪びれたふうもなく、『今日は南條とメシ』と書かれていたのだ。

 大和は琉ほど器の小さい男ではないから、千尋が自分よりも友だちを優先させても、怒ったりムカついたりはしないが、その相手が南條なんだとしたら、そこは俺のほうを優先してよ、て思う。
 千尋にしたら、南條も友だちだから、そのあたりに対応の差はないのだろうけど、南條は大和と千尋の関係を知る数少ない1人なのだから、他の友だちよりは融通できる気がする。
 というか、南條なんかに負けたくないんだけど。

『南條とご飯行くの?』

 未練がましい…というか、嫉妬丸出しというか。南條とメシだとはっきり書かれているのに、大和はそんな内容を返信する。
 だって、大和は今日帰宅するのに、南條の運転する車で家まで帰って来たけれど、そのとき南條は、今日千尋と食事に行くだなんて、一言も言っていなかった。
 もちろん、南條が誰と食事に行こうと構わないし、そんなこといちいち報告してくれなくていいけれど、その相手が千尋なんだったら、千尋は大和の恋人なんだから、教えてくれてもいいのに。

 …もしかして、だからこそ言わなかったのだろうか。
 でも、千尋がこんなにあっさりばらしてしまったら、南條が内緒にしていた意味が、まったくない。

「は?」

 大和がもやもやと悩んでいたら、千尋からメッセージが送られてきた。
 しかし、その内容に、再び大和は首を捻るはめになる。

『ムカついたから、南條に奢らせんの。大和くんも来る?』

 千尋の傍若無人ぶりを見ている限り、南條が千尋にムカつくことはあっても、その逆はあり得ないと思うのだが、一体南條の何にムカついたというのだろう。
 しかも、南條に『奢ってもらう』のではなく、『奢らせる』のだ。相当強い怒りを感じる。

 ご飯くらい大和が奢るから、出来れば南條抜きがいいなぁ…と思うが、千尋にとっては、南條に奢らせることに意義があるようなので、そうもいかないのだろう。
 とにかく、千尋からお誘いを受けたことに違いはない。邪魔な南條はいるが、行かない手はない。大和は千尋にYesの返信をすると、取るものもとりあえず家を出た。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (28)


「……………………」

 千尋から店の名前が送らてて来たときは、確かに普通だった……と思う。文章は支離滅裂ではなかったし(言葉足らずなのは、いつものことだ)、変換ミスもなかった。
 それから大和が車を飛ばしてここまで来るのに、30分も掛かっていないだろう。それなのに――――

「ひゃはー、大和くん~!」
「バカ、声がデケェ!」

 大和が個室に案内されると、すでに千尋はベロベロに酔っ払っていて、南條が何とかそれを取り押さえる、という光景が、そこには繰り広げられているのだった…。

 一体どうして…などと、考えるまでもない、2人の前にはそれぞれ、中身が半分ほど入ったビールジョッキがあったが、千尋のそばには他に空ジョッキが3つあるのに対して、南條にはそれが見当たらないのだから。
 この酔っ払い具合からして、2人分のジョッキをまとめたのではなく、千尋がすでに3杯飲み干し、4杯目に突入していると思って間違いないだろう(大体、もし2人分をまとめたのなら、南條が自分のほうに寄せたはずだ)。

 少なくとも南條は、大和を家に送り届けてから千尋と合流したはずで、千尋はそれより前から飲んでいたのだろうか。
 大和にメッセージを送っていたときは、ここまで酔っていなかったにしろ、千尋はもうすでに飲み始めていたのだろうか。

 いろいろなことが頭をよぎるが、考えたところで始まらない。
 現実は変わらない。
 千尋が泥酔している事実は変わらない。

「大和くん、大和くん、大和くん~」
「だから、うるせぇっつの」

 パタパタともがきながら大和のほうに手を伸ばす千尋は非常にかわいいが、いくら個室とはいえ、従業員や他にもお客がいる中で、あまり大和の名前を連呼するのもまずい。
 酒を飲んでいても、千尋にどれだけ絡まれても、そのことをきちんと気に掛ける南條は、確かな腕を持つマネージャーだ。

「………………」
「………………」

 大和が若干呆気に取られていると、南條が無言のまま目で訴え掛けて来た。早く千尋を何とかしろ、と言っているのだ。
 言われるまでもなく、どうにかするつもりだ。千尋と南條にしたら深い意味はまったくないだろうが、体勢的に、千尋が南條に寄り掛かっている感じなのが、ムカつく。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (29)


 というか、千尋が酔っ払うとかわいくなるのは知っているが、もしかしてそれって大和相手だけでなく、南條にもなんだろうか。遥希と一緒に飲んでいる千尋はわりとそんな様子だから、考えたくはないけれど、そうなのかもしれない。
 前に千尋から聞いた話では、外で飲むときは、南條がいれば最終的には家に帰っているから、酔い潰れるほど飲むことはあるけれど、そうでなければ潰れたことはないらしいから、他の男の前ではそんなことはないと信じたい。

「大和くん~」

 大和が隣に来ると、千尋は南條の腕を抜け出して、大和に抱き付いて来た。
 ようやく千尋から解放されて、南條は清々した顔でジョッキを手に取る。まぁ…、大和は千尋のことが好きだから、こうしてくっ付かれれば嬉しいけれど、南條にしたら絡まれて鬱陶しいだけだろうから、それも仕方がない。

「あい、大和くんも頼んで。いっぱい。いっぱい頼んで」
「え、いっぱい?」

 大和に抱き付きながら、手繰り寄せたメニューの束を大和にドサッと渡す。
 すでにテーブルの上には、結構な量の料理が乗っていて、3人で食べるには十分な気もするが、千尋のセリフが冗談でないのなら、ビールの1杯くらい頼んだだけでは済まないだろう。
 千尋の『いっぱい』は本当に本気でいっぱいだし。

「と…とりあえずビール…」
「と?」
「え?」
「びーる、と? 後は?」
「………………」

 やはり、ビールだけでは済まなかった…。
 千尋が期待に満ちた目で、大和を見ている。

「びーると、後、何と何と何と何と何と何?」
「いやいやいやいや、そんなには」
「これとこれとこれとこれとこれにする?」
「だからね、そんなには、」

 これとこれと…と言いながら、指はズルズルとメニューの上を滑っていて、特にどのメニューがいいと選んでいるわけでもなさそうだ。
 しかし、とにかくたくさん頼まなければならないことだけは確かだ。

「俺はねぇ、びーるとぉ、これとこれとぉ」
「ちーちゃん、まだここにビール残ってるよ?」
「でも飲むもん」
「飲むけども」



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (30)


 大和は、どれだけ千尋に絡まれても全然平気だし、もっとデロデロに甘やかしてやりたいけれど、それを南條に見られていると思うと、さすがに恥ずかしくて出来ない。
 南條がわざとらしく目を逸らしているのも腹立たしいし。

「今日はねぇ、南條の奢りなんだから、いっぱい飲むの。ねっ?」
「そうなの? 南條が奢ってくれんの?」
「あんだけメーワク掛けたんだから、奢って当然でしょー?」

 千尋の言う、南條のした迷惑というのが何なのかは分かりかねるが、メッセージにあったとおり、南條に奢ってもらう…いや、南條に奢らせることは決定事項らしい。
 南條は承知のことなのかと大和が視線を向けると、予想どおり、南條は非常に嫌そうな顔をしていた。

「お前…、ちーちゃんに何の迷惑掛けたわけ? ここまで言わせるって」
「何もしとらんわっ。そして俺の奢りとか勝手に決めるな、奢るかっ」

 南條が奢るという決定事項は、どうやら…というか、予想どおり南條の了承など何も得ていなかったようだ。しかも、南條自身は千尋に何かしたという自覚などないらしい。
 まぁ、大和も思ったところだが、今日もすでに酔っ払って絡んで南條に迷惑を掛けている千尋ならまだしも、南條が千尋に何の迷惑を掛けることがあるだろう。

「言っとくけど、俺、ハルちゃん説得すんの、ちょ~~~~大変だったんだからっ。何で俺が水落のバカに振り回されないといけねぇんだよっ」
「バカ、シッ! てかそれは……いや、だから何で俺なんだよっ」

 千尋が思いのほか大きい声で琉の名前を出すので、大和も南條も少し慌てたが、それよりも、どうしてそのとばっちりを自分が受けないといけないのかと、南條はさらに焦る。
 確かに、遥希が女性と歩いているのを目撃したことによって、琉は嫌になるくらい凹んでいたけれど、だったら千尋が奢ってもらう相手は、南條でなく琉という気がする。

「らって、お前がそのとき、あれ俺のねーちゃんだってちゃんと言っときゃ、こんなに拗れなかっただろ、バーカ!」
「へ…?」

 こんなベロベロの酔っ払いにバカ呼ばわりされて、普通だったら南條も言い返すところだっただろうが、千尋の言い放った一言にポカンとなってしまって、そうは出来なかった。

「は? え? 姉ちゃん? お前の?」
「他に誰のねーちゃんがいんだよっ、お前、俺のねーちゃんの顔知ってんだろっ、何でちゃんと言わねぇんだバカッ」
「いやだってっ…、は? お前の姉ちゃんだったの? 小野田くんと一緒にいたの。なっ何で? つか、お前の姉ちゃんの顔知ってるけど、まさか一緒にいるとか思わねぇしっ」



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (31)


 事実を知った南條は、動揺のあまり、言い返すのと質問がごちゃ混ぜになって、わけが分からなくなっている。もちろん大和だって、わけが分からない。
 千尋の言うとおり、あのとき遥希が一緒にいたのが千尋の姉だとして、南條が気付いてちゃんと説明してくれたら、こんなに拗れなかったかもしれないが、どうして遥希が千尋の姉と一緒にいるのかという疑問は残るのでは。

「バカッ、ハルちゃんが俺のねーちゃんと一緒にいる理由なんて、1個しかねぇだろっ」
「あっ…………あー…………」

 バンッとテーブルを叩いてジョッキをあおる千尋に、南條は何かを察したらしく、反論もせずに納得している。
 遥希と千尋の姉が一緒にいる理由が1つしかないのだとして、そのたった1つの理由が分からない大和は、2人の顔を見比べるが、南條はただただ唖然としているし、言いたいことを言った千尋は満足そうな顔をしているだけだ。

「えっと…………ハルちゃんがちーちゃんのお姉ちゃんと一緒にいる理由て…?」

 ここにいない2人の話だし、もしかしたら関係のない大和には秘密のことなのかもしれないけれど、大和だって振り回されたうちの1人なのだから、聞くくらいは聞いても構わないと思う。

「……………………」
「……え、」

 やっぱり聞いたらまずかったのだろうか、千尋がジロッと大和を見た。

「大和くん、ちゅーもん」
「え、あ、はい」

 大和の質問には答えず、千尋は有無を言わさない口調で、大和に注文を促す。しかも、千尋が勝手に店員を呼ぶためのボタンを押すから、注文しないわけにはいかなくなってしまう。
 とりあえず、やって来た店員にビールと告げると、やはり千尋はそれだけでは不服らしく、「他には!?」と喚く。

「まだ食べるのいっぱいあるから。ね? 食べてから頼も?」
「じゃービールぅ。俺もぉ一杯。南條も。5杯」
「何でだ」

 1人1杯ずつなら3杯だから、南條だけは5杯飲めということなのか。
 しかし5杯は、考えるまでもなく多いので、南條に代わって大和が突っ込んでおく。ここで南條が5杯も飲んで酔い潰れてしまった日には、目も当てられないので。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (32)


「じゃあ大和くんが5杯」
「とりあえず1杯ずつで」

 出来れば千尋にはもう飲んでもらいたくないけれど、恐らくそれでは千尋の気が済まずに、余計に厄介なことになりそうなので、千尋の分も含めて注文しておく。
 店員さんも、さすがに料理が大量に乗ったテーブルを見て、それ以上の追加注文を聞かずに個室を出て行った。

「もぉ~! 大和くんいっぱい飲めばいいのにぃ」
「…南條の奢りだから?」
「いっぱい飲んで、記憶なくなるくらい酔っ払ったら、教えたげようと思ったのぉ! ハルちゃんと俺のねーちゃん!」
「えぇっ!!」

 その作戦て…と思いつつ、これだけ酔っ払っていても、一応遥希のことを気遣ってやるだけの気持ちはあるのはすごいとは思う。しかし、遥希と千尋の姉の関係は知りたくても、そのためにビール5杯は飲めない。
 今日、琉は遥希に呼ばれたけれど、そのタイミングで千尋がこのことで南條に奢らせようとしているということは、琉も恐らく遥希から事実を聞くのだろう。だったら後で琉に聞けばいい。

「まぁ、すっげぇくだらないことだけどねっ!」
「くだらない言うな。小野田くんにしたら大事だろうが」
「だからおめぇがちゃんと水落に説明すりゃーよかったんだよっ、俺の手を煩わせんなっ!」
「わっぷ!」

 大和に凭れ掛りながらジタジタしていた遥希は、手の届く範囲に遭ったおしぼりを掴むと、南條目掛けて投げ付けた。
 なるほど…、こういうことをするから、南條は千尋と飲むのを嫌がるのか。
 けれど、今まで大和は何度か泥酔した千尋に出くわしているが、こんな目に遭ったことないし、あんなに千尋と飲みたがる遥希も恐らく無事だろうから、この暴挙は南條限定なのだろう。

 暴れる千尋を抑えているうちに、注文した3つのビールが届く。
 南條はあれから多少飲んで、ジョッキの中身は減っているが、千尋にいたっては、飲む飲むと言いながら殆ど飲んでいないから、まだ飲み掛けのビールが結構残っている。
 それなのに、新しいビールが届いたら、そちらに手を伸ばしているし…。

「ちーちゃん、まだこっちあるよ」
「ん~…」
「いや、ちょっ、両手は…」

 飲めないなら無理に飲まなくていいし、飲むなら飲むで、飲み掛けのほうを先に飲んだほうがいいと思って言ったのに、千尋はなぜか空いていた左手で先のジョッキを掴むものだから、両手にビールジョッキを持っている状態になってしまった。
 そんなの、マンガじゃないんだから…。



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どうせ伝わらないのなら、言葉なんていらない (33)


「大和くん、らいじょーぶ」
「は? 何が?」

 いや、全然大丈夫じゃないでしょ?
 それとも、『大和くん、大丈夫?』と尋ねてくれたんだろうか。だとしたら、大和は全然まったく大丈夫だ。心配なのは千尋のことだけだ。

「俺は大和くんの写真なんか全然欲しくないから、らいじょーぶっ…」
「……………………。はぁっ!?」

 両手にジョッキはさすがに腕が疲れるのか、零す前に千尋はちゃんと両方ともそれをテーブルに置いたけれど、それと同時にとんでもないことを言い出すものだから、一瞬の間を置いて、大和は声を大きくした。
 間を置いたのは、千尋が言ったことをすぐには理解できなかったからだ。

「ちょっ…それどういう意味!?」

 大和の写真を欲しくない、て……それのどこが大丈夫!?
 しかし千尋は、大和に体を預けたまま、一生懸命テーブルの上の端に手を伸ばしていて(あと数センチ届いていない…)、まったく聞く耳を持っていない。
 南條を見れば、何だか笑っているし…。笑い事か!? と突っ込んでもいいんだよな?

「ちょっちーちゃん、ねぇ、どういう……て、ちょっと! 寝ないで!」

 だが、大和には、南條に突っ込みを入れている暇などなかった。結局手にすることの出来なかった箸を諦めて、千尋は大和に寄り掛かったまま、ウトウトし始めているのだ。
 早い! 早い早い早い!
 確かに千尋はすでに何杯も飲んでいるかもしれないが、大和はようやく飲み物が届いたところで、まだ1口だって飲んでいないのだ。せっかく千尋に会えたのに、寝てしまうなんて…!

「ちょっちーちゃん、起きて! ねぇちょっと!」

 大和の写真は欲しくないというセリフの意味を知りたいし、それ以上に、千尋が寝てしまって、南條と2人で向き合って飲むという状況が嫌なんだけど!

「ちーちゃ~~~んっ!」

 大和は千尋の肩を揺さぶるが、残念ながら起きる気配はない。
 そんな哀れな男を見つめつつ、南條は思う。
 恐らく千尋は、自分は遥希と違ってショップに写真を買いに行くことはないから、今回のように見られて疑われたり凹ませたりすることはない、と言いたかったのだろう。
 しかし、酔っ払ったせいで、いつも以上に言葉足らずだった千尋の真意は、微塵も大和に伝わっていないわけで。
 こんな思いをさせられるくらいなら、いくら高くともご飯を奢らされるほうがまだマシだ、と南條が密かに思ったことは、誰も知らないところだ。



 男はいつも、かわいい恋人たちに振り回されるのである。



*END*



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タイトルは「明日」から!
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明日死んでもいいなんて、嘘 (1)


「あれ、雨?」

 翔真は、交代のシフトで入って来た瑞帆(みずほ)を見て、首を傾げた。
 服は制服だから乾いているけれど、長い髪がしっとりとしている。

「途中で降って来たー。ドライヤーとかないよね?」
「ない…。結構降ってんだ?」
「降ってる。翔真くん、傘ある?」
「俺はあるけど…………隼人はなさそうだねぇ」

 翔真の隣で、隼人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 これは完全に、傘を持っていない表情だ。

「傘ないの? 隼人くん、これでバイト上がりでしょ? タイミング悪いね」
「…………」

 うるせぇっ、と言ってやりたかったが、女の子相手にそこまでキレるのも格好悪いし、彼女もまた雨に濡れた被害者なのだから…と、隼人は押し黙った。

「あ、湊は?」
「え?」

 そばでポワンとしていた湊は、急に話を振られて、キョトンとした。
 どうやらそばにいただけで、話は聞いていなかったようだ。

「湊も今日これで終わりでしょ? 傘あんの? 雨降ってるよ?」
「あ、はい。お母さんが持って行けって言ったから」
「お母さん…」

 う~ん、この年でお母さん天気予報に頼ってるのか…と、翔真と瑞帆は苦笑する。
 男はみんなマザコンだという名言が無きにしも非ずだけれど、湊の場合、それとはちょっと違う気もするが、けれどお母さん大好きであることには違いない。もしかして、髪もお母さん美容室だろうか。

「あ、じゃあ隼人、湊に入れてってもらえばいいじゃん、傘」
「はぁっ!? ッ、ン、」

 名案とばかりに、翔真が笑顔でそう言えば、隼人は驚いて声を大きくしたが、ここがバイト中のフロアであることを思い出し、慌てて口を噤んだ。
 隼人の慌て振りに、翔真はニヤリと口元を歪める。最初から、こういう展開に話を持って行くために、湊に声を掛けたに違いない。翔真は、隼人の中学生のような片想いを懸命に、そしておもしろがりつつ応援しているから。



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カテゴリー:Baby Baby Baby Love

明日死んでもいいなんて、嘘 (2)


「2人とももうこれで上がりでしょ? だったら駅まで一緒に行けばいいじゃん。ね?」
「はい」

 隼人が声にならない声で慌てふためいているのに気付かず、素直な湊は、翔真の言葉に頷いている。
 同じ方向に向かう2人、1人が傘を持っていてそれを差しているのに、もう1人は濡れて歩いているのもおかしな話だから、翔真の言うことは尤もだし、湊も言われるまで気付かなかったが、言われなくても、店を出たところではさすがに気付いて隼人に傘を差し出したはずだ。

 ごく自然な流れで、当然の展開に話は進んでいくが、隼人は唖然としたまま固まっている。
 だって………………湊の傘に入れて行ってもらう!? そっ…それは、俗にいう相合傘というヤツなのでは…!?

「じゃ、お疲れ」
「お疲れ様でーす」

 固まる隼人に気付いていないのか、手を振る瑞帆に湊はペコリと頭を下げて、スタッフルームに向かう。
 動揺しつつも、隼人は後を追おうとするが、背後からその肩を掴む手があった――――翔真だ。

「隼人、ガンバ」

 隼人の耳元で、隼人にしか分からないくらいの声で囁く。
 しかし、その言葉とは裏腹の、ニヤついた顔。隼人はギリッ…と奥歯を噛んで、無言で翔真の頭を引っ叩き、さらには乱暴に腕を振り払って、スタッフルームへと向かった。

「雨、嫌んなっちゃいますよねー。俺の傘、普通の、ビニルのヤツですけど、大丈夫ですか? ? 隼人くん? 早っ!」
「…お前が遅ぇんだよ」

 スタッフルームで湊は、ごく一般的な世間話を隼人に振りながら帰り支度をしていたのだが、振り返ったら、ほんの少しだが後からやって来た隼人が、もうすっかり支度を整えて、そこにはいた。

「すすすすいませんっ」

 湊は慌ててシャツのボタンを留めるが、どうにもモタモタしている。
 確かに湊は、こうしたところでモタモタしがちではあるが、それ以上に、隼人の帰り支度は早すぎる。それが彼のモットーみたいなところもあるから仕方がないが、湊は大変焦る。

「ちょっと待ってくださいね、隼人くん、まだ帰んないでくださいねっ」
「帰んねぇよ」

 これでは、隼人が傘を持っていて、湊がそれに入れてもらうようだが、実際はその逆だ。



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カテゴリー:Baby Baby Baby Love

明日死んでもいいなんて、嘘 (3)


 隼人は面倒くさそうに答えるが、内心はソワソワ、ドキドキ落ち着かない。同じ駅に向かうから、同じシフトのときは一緒に帰るんだけれど、相合傘なんて初めてだ。
 ニヤニヤしているのにムカついてド突いたけれど、ありがとう、ショウ…!

「お待たせしました!」
「お、おぅ!」

 湊なりに大急ぎで身支度を整えて、隼人のもとに駆け寄る。
 何だか彼女と待ち合わせをしているみたいだ…と、くだらないことで心をときめかせているのを悟られないよう、隼人は素っ気なく返して顔を背けた。

「結構降ってますねー。はい、どーぞ」
「おっ…おうっ」

 裏口の出先で湊が空を見遣りながら傘を広げ、半分隼人のほうに差し出すので、隼人はぶっきら棒に返事をして、傘の中に入った。
 2人は雨の中を歩き出す。

「隼人くん、大丈夫ですか? そっち。ちゃんと傘入ってますか?」
「お、おぅ」

 コンビニなどで売られている一般的なビニル傘なので、男性が持つには少し小さめなところに来て、今はそれに2人で入っているのだ、どうしたって互いに少しずつははみ出る。
 気を遣って湊はだいぶ傘を隼人のほうに傾けてくれているが、そうすれば当然湊の半身はかなり濡れてしまうわけで。
 湊がそこまでしてくれているというのに、返す言葉が『おぅ』だけとは…、隼人は表情にこそ出さないものの、心の中では相当の反省と後悔をしていた。
 先ほどから返事が『おぅ』だけだということも、分かってはいる。少なくとも、傘を差し出されたときと、濡れていないか気を遣われたときは、『ありがとう』と言っておくべきだったことも。
 しかし、そんなことを素直に言い出せないのが隼人である。

「お前、ちゃんと差せよ、傘!」

 隼人はガシッと傘の柄を掴むと、自分のほうにかなり傾いているそれを、真っ直ぐに立て直した。
 俺は大丈夫だから自分が濡れないようにしろ、とか、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ、ありがとう。という気持ちを、隼人なりの言葉と態度で表すと、こうなるのである。
 思春期の中学生も真っ青の不器用さだ。

「あ、ゴメンなさい! やっぱり濡れてました?」
「違うわっ!」

 これが経験値が高く、隼人のような性格の男でもうまく扱える女の子だったら、きっと隼人の行動の真意を的確に汲み取って、適切に対応しただろうが、しかし相手は、頭にどれだけ『超』を付けても足らないほど鈍感な湊なのだ。
 やっぱりしっかりばっちり勘違いをして、せっかく隼人が真っ直ぐにした傘を、再び隼人のほうに傾けて来る。



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明日死んでもいいなんて、嘘 (4)


「そうしたら、お前が濡れるだろうがっ」
「え? あ、そっか。あはは」
「あ、はは…」

 天然なのかのん気なのか、湊は言われて初めて気が付いたようで、今度こそちゃんと真っ直ぐに傘を差した。
 そこは笑うところなのだろうか、分からないが、隼人はつられて乾いた笑みを漏らす。

「でも、こんなことなら俺、もっとおっきい傘持ってくればよかったですね。そしたら濡れなかったのに。隼人くん、もっとちゃんと傘入ってくださいね?」
「おっ…お、ぅ」

 傘を傾けない代わりに、湊は互いが濡れないよう、さらに隼人のほうに寄って来る。
 小さな傘に2人が濡れないように収まるには、身を寄せ合うしかないのだ。

(いや、ダメだ! ダメだって…!)

 自分ばかりが傘の恩恵を受け、湊が濡れてしまわないようにと傘をちゃんと差させただけで、まさかこんなことになるとは、隼人自身、まったく想像していなかった。
 別に何の下心もなかった。そんなこと、微塵も思っていなかったのだ。
 しかし、結果、より湊とくっ付くことになった展開は、喜ばしいけれど、心臓が持たない。

 湊の行動は、傍から見れば、男同士でどうした? だろうし、恋する男からすれば、無自覚すぎるわっ! というところだが、2人で1つの傘しかない状況においては適切だ。
 それなのに、1人で勝手に想像して焦っている自分が恥ずかしい。
 それこそ湊には、何の打算も下心もないのに。

(でもダメだっ…!)

 今までに、湊と一緒に帰ったことなど何度もあるが、まさか相合傘が、こんなにドキドキするシチュエーションだったなんて…!
 もういろいろと限界なので、早く駅に着いてほしい気持ちと、ずっとこの瞬間が続けばいいのに…という思いが入り混じって、どうにかなりそうだ。

 しかし、そんな隼人の複雑な心境も、数分と経たないうちに終わりを迎えた。
 駅に到着したのである。

「隼人くんちって、駅からどのくらいですか?」
「えっ駅?」

 雨に当たらないところで、濡れた傘をたたみながら、湊が尋ねて来る。
 湊の左肩が濡れているのに気が付き、あぁ、もっと湊のほうに傘を分けてやればよかった…と反省していた隼人は、突然の質問に、普通に聞き返すつもりが、声を裏返らせてしまった。

「駅から家まで結構あるなら、傘ないと濡れちゃうな、て思って」
「あ、あぁ……えっと、10分掛かんねぇくらいかな」

 湊の質問には、他意などないのだ。それなのに、つい考えすぎてしまう自分が、すごくすごく恥ずかしい。
 隼人は平静を装って、何とか答えた。



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明日死んでもいいなんて、嘘 (5)


「じゃあ、隼人くん、この傘持ってってください」
「はっ? 何でだよ」
「俺んち、駅からだったら7, 8分なんですよ。隼人くんちのほうが遠いでしょ? だから…」
「………………」

 いや、その優しさは嬉しいんだけれど、そんなふうに天然でボケられると、突っ込み方に困る。
 これが翔真なら、『アホか!』と怒鳴って、1発ド突けばいいのだが、相手が湊となると、そうもいかない。なので隼人は、何の面白味もない、真面目な説明をしてやるはめになる。

「あ…あのな、湊」
「はい?」

 隼人は、差し出された傘を湊のほうに押し返す。
 コテンと首を横に倒す湊は、やはり分かっていないのだろう。

「10分掛かんねぇのと、7, 8分て…………殆ど同じだと思わねぇ?」
「………………。あっ」

 隼人に指摘され、ようやく湊は隼人が傘を受け取ろうとしなかった理由に気が付いたらしく、「そうですねぇ」なんて照れ笑いを浮かべる。
 その笑顔に、隼人はまた心臓を鷲掴みにされるわけで…。

「ま、ととにかく、俺はいいわ、降ってたら傘買って帰るしっ…」
「そうですか?」
「もとはお前の傘だっ。おっ…お前こそ濡れて風邪引かねぇようにしろよっ」
「はい、ありがとうございますっ」

 動揺を悟られたくなくて、随分とぶっきら棒な言い方になってしまったが、湊は気にしたふうもなく笑顔のままだ。
 そもそも、このスーパー鈍感な湊が、隼人の繊細な心の動きまで感じ取れるはずもないのだ。

「じゃあ、お疲れ様でした」
「お、おぅ、じゃあなっ」

 隼人は最後まで、傘に入れてもらったことに対して『ありがとう』を言えないまま(むしろ湊のほうが言ったくらいだ…)、2人は改札を抜けて、それぞれのホームへと向かった。
 それにしても、相合傘とはすごくいいものだけれど、大変疲れるものだということが、よく分かった。心臓がいくつあっても足りない。

(でも、いい…! すごく…!)

 隼人は今日の幸せを噛み締めながら、やって来た電車に乗り込む。
 まだ恋人同士でも何でもないのに、相合傘をさせてもらって、こんな幸せなことがあっていいのだろうか。もうこのまま死んでしまっても悔いがないくらいの幸せだ。



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明日死んでもいいなんて、嘘 (6)


(あー…でも、アイツ、結構濡れてたな、肩…)

 駅に着いたときに、ふと気が付いた、湊の濡れた左肩。
 2人で1つの小さな傘に入っていたので、それも仕方のないことだが(隼人の右肩だって、それなりに濡れてはいるし)、しかし隼人にしてみれば、大変悔いが残る結果だ。
 こういう場合、やはり相手を濡らさないように、スマートにリードしてやるのが、男というものではないだろうか。

(だって、アイツ、めっちゃ俺のほうに傘傾けて来るし…)

 ……………………………………。

「ッ…!!!!!!」

 扉に寄り掛かりながら、先ほどまでの出来事を思い出していた隼人は、ふとあることに気が付いて、驚愕のあまり目を見開いた。
 いや、本当は、『あああぁぁっ!!!!』と、あらん限りの声を発しそうになったのだが、それは何とか理性が食い止めた。ここは電車の中で、満員とは言わないが、それなりの乗客がいる。

(ちょっ…、待て、俺…)

 しかし、気付いてしまった事実に、隼人は卒倒しそうだった。
 つい一瞬前までの幸せな気持ちも、すっかり吹き飛んだ。

(何で俺、傘持ってやらねぇんだ…!)

 湊の持ち物である傘なのだから、湊が持っていても何の問題もないのだが、こういう場合は普通、男が持ってやるべきだろう。いや、湊だって男だけれど、でも。
 デートで女の荷物を持ってやる男なんかクソくらえと思っているけれど、でも2人で1つの傘に入っているなら、やっぱり持ってやるべきだった。それが男だ。

 …隼人の『男たる』の基準が世界標準かどうかはともかく、とにかくその事実が隼人を地の底まで凹ませているのは確かだ。
 そのままその場に崩れ落ちそうになるのを、隼人は何とか堪えて、そばの手すりを握った。

(ああぁ…、まだ死ねない、ここままだったら死んでも死に切れない…)

 悔いの残しどころはそこではなく、まだ湊と付き合っていないところなのだが、今の隼人に、そのことに気付く余裕はない。
 次こそは…! と決意を固めた隼人は、今以上に傘を持ち歩かなくなるという、間違った方向性を導き出すのだった…。


 ちなみに、隼人を絶望のどん底に陥れた、傘を持ってやらない男について、当然ながら湊は、気にしていないどころか、気付いてもいないのだった。



*END*



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タイトルは「明日」から!
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カテゴリー:Baby Baby Baby Love

40万hitありがとうございます。& 神がむっちゃんとカズちゃんを作ったよ


 気が付けば、40万Hitしておりました。
 私は、10万Hitごとにお礼の記事を書いているのですが、またこうしてお礼記事を書くことが出来て、すごく嬉しいです。

 数あるサイトやブログの中から「恋三昧」にお出でいただき、ありがとうございます。ご訪問くださるみなさまのおかげです。
 また、コメントや拍手、ランキングのクリックなどをくださるみなさま、ありがとうございます。大変励みになっています。

 忙しさから時々お休みをいただくようになり、ご迷惑をおかけしていますが、これからも恋三昧をよろしくお願いいたします。



*****

 で、 今回も懲りずにお届けしますよ、おまけ。
 もう今さら感満載だけれど、ずっとやりたかったの、タイミングを逃してたので。

 神がむっちゃんとカズちゃんを作ったよ! てことで、創造神ジェネレータより。 



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カテゴリー:notes

心臓だけを狙っている (1)


 このご時世、世の中には便利なネット通販があるから、例えば人に知られたくないようなものであっても、人目を忍んで買いに出掛けずとも、手に入れることは可能だ。
 たとえパソコンを持っていなくたって、スマホでだってそれは出来る。
 しかし、和衣にいたっては、相変わらずパソコンは全然ダメだし、スマホも何とか弄っているものの、それを通じて何か買おうという発想がないのか、未だに買い物はすべて自分の足だ。
 本人がそれで不自由がないのなら何の問題もないのだが、亮と翔真は時々思うのだ、

(コイツ、何でなんの恥ずかしげもなく女性誌が買えるわけ――――!?)

 と。

 内容によっては(ちょっとエッチな感じのヤツとか)、恥ずかしがって亮に買わせるという無茶ぶりをすることもあるが、殆ど自分で書店で買っているのだから、大したものである。
 定期的に購読しているものがあるのかどうかは知らないが、男心に関する記事が載っていると買う傾向にあるのは、2人とも気付いている。和衣は未だに、男心勉強中なのだ。

 そんな和衣は、今日も、買ったばかりの雑誌を熱心に読んでいる――――翔真の部屋で。
 亮もいる。睦月が部屋で怖いDVDを見ているから、避難して来たのだ。
 もちろん亮はやめてくれと懇願したが、『俺が俺のパソコンでDVDを見ることを止める権利がお前にあるのか』と凄まれたので、呆気なく引き下がった。
 前に、テレビでそういうのを見たらテレビが呪われそう…とか、亮がバカで情けないことを言ったので、それ以降、睦月はちゃんと言うことを聞いて、テレビでは見なくなったのだが、最近、パソコンで見ればいいということに気が付き、月に1回くらいは怖いDVDの日がやって来るようになったのである。
 テレビは2人の共有だが、パソコンは睦月の私物なので、亮もそれ以上の口出しが出来ない。
 睦月も出来るだけ、亮がバイトとかでいないときに見るようにしているのだが、夜は見ているうちにおねむの時間が来てしまうので、たまにこうして亮を追い出してしまうときがある…。

「でもさぁ、流行ってるけどさぁ、壁ドンなんて、どんな状況でそんなことになるわけ?」

 雑誌から顔を上げた和衣が、真顔で亮と翔真に尋ねて来た。厄介なことに、記事の中に『壁ドン』という言葉が出て来たらしい。
 亮は、和衣の乙女思考の相手をするのが面倒くさいので、基本的に無視するようにしているのだが、今はたまたま和衣の向かいに座っていて、ちょうどコーラのペットボトルを取ろうと前を見ていたから、目が合ってしまった。逃げられない。

「どんな状況で壁ドンされるの?」

 和衣はクリンと顔を翔真のほうに向けた。
 あまりに唐突な質問に固まっていた翔真も、まんまと和衣と目を合わせてしまった。



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心臓だけを狙っている (2)


 ちなみに和衣は、女性誌を読んでいることを同室者に知られたくないからではなく、こうしたガールズトークを繰り広げたいから翔真の部屋に来ているのだが、亮も翔真ももちろんそんな話に興味はない。
 それは子どものころからずっと一緒の和衣もよく分かっているだろうに、なぜかやめない。どんなに邪険にされても、またやって来るのだ。これが腐れ縁というものか。

「え…、何、お前、壁ドンされたいわけ? 祐介に」

 仕方なく翔真が話に乗ってやる。
 亮はペットボトルを掴んだまま、口をポカンとして動けずにいたので。

「されたい! でも、どんな状況でされるの? どうしたらしてもらえるわけ? タイミングとかさぁ」
「されたいんだ…」
「つか、タイミングて……それはするほうが計るもんだろ? されるほうがどんなタイミングを計るんだよ」

 唖然とした翔真に代わって、今度は亮が口を開く。
 その突っ込みは適切だ。もし、壁ドンされるほうから何か出来るのだとしたら、してくれと頼むことくらいだろう。そんなものにタイミングなどあるのだろうか。

「テレビでさぁ、時々あんじゃん。バラエティとかで、企画みたいな。壁ドンされるヤツ。そういうの見た後に、『俺も壁ドンされたい』て言えばいいんじゃね?」
「えっ……恥ずかしい…」
「いや、されてぇんだろ?」

 壁ドンをされたいと言っておきながら、そこで恥ずかしがってどうする。
 確かに、壁ドンをねだるのはちょっと恥ずかしい気もするが、だからこそ、テレビでそれが流れたタイミングなら、和衣でも言い出せるだろうと思ったのに。

「何かこう……壁ドンしたくなるような雰囲気とか作れないかな? 俺から『壁ドンされたい』て直接言わなくても、祐介が壁ドンしたくなるような状況。そんな空気感ない?」
「ねぇよ!」

 もしそんなものがあったとして、和衣がそんな雰囲気をうまく醸し出せるとは思えない。
 悪いが、和衣にさり気なさなど皆無なのだ。

「まぁそれに、うまいことそんな番組、2人で見れるとも限んねぇしな」
「ねぇ~、何かないのぉ~? 亮、むっちゃんに壁ドンとかしないの? どんなときにした?」
「いや、しねぇし。『しないの?』て質問の答えを聞く前に、話を進めるな」

 流行っているとはいえ、実際に壁ドンをすることなんて、してくれと相手から言われた場合でなければ、なかなかな気がする。
 いや、しようと思えば、例えばキスのときとか出来るけれど、今これだけ騒がれている中でやった日には、絶対に狙ってやったのがバレバレで、そういう意味で恥ずかしい。



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心臓だけを狙っている (3)


「じゃあさぁ! こんなにみんな言ってるけど、実際にはされてないの? みんな、あれってみんな妄想?」
「いや、妄想ではないんじゃない…? 実際にされた人がいるからこそ、こんなに話題なんじゃん?」
「流行りに乗じて、やってくれっつーヤツもいるよな、絶対。だからお前も直接言えばいいんだって。祐介んとこでその雑誌読んでさ、『俺もこういうことされたい~』て言え」
「あー、それならテレビでそういう番組わざわざ探さなくてもいいもんね」

 直接言えないから聞いているのに、亮も翔真も、面倒くさいからか、直接祐介に壁ドンをするよう言う方向で話を進め始めている。
 例えば亮と睦月なら、まぁ睦月は壁ドンしてほしいとか考えなそうだが、もしそうなったら、ハッキリ亮にしてほしいと言うだろうし、亮もそれに乗るだろう。
 翔真と真大の場合も然り。むしろ真大のほうがノリノリでやりたいと言うに違いない。

 けれど、和衣と祐介の場合は、そうはいかないのだ。
 がんばって和衣が言ったとして、すんなり祐介がやってくれるとは思えない。それほど究極に難しいことではないから、和衣の願いを聞き入れてはくれるだろうけど、祐介だって絶対に恥ずかしがるだろうし、壁ドンの後、どうしたらいいか分からない。

 いや、そもそも壁ドンというシチュエーションはすごく萌えるけれど、壁ドンには何が待っているのか、和衣には分からないのだ。
 壁ドンされて、一定の時間が過ぎたら、『はい、カットー!』と、まるでドラマの撮影のように声が掛かるわけではないから、和衣か祐介のどちらかが何かしなければならないのに。
 けれど、たとえネタとして、和衣が『壁ドンして』とお願いしたとしても、その後の展開は? 『ありがとう、もう気が済んだよ』て離れてもらうとかではないことは分かるけれど…。

「カズー、やっぱ壁ドンされたいんだったら、お前から言うしかないんじゃね? たとえお前がすごいいい雰囲気を作ったとしても、祐介の性格からして、壁ドンはしなそう…」
「え~?」
「だって、祐介ってこんなタイプか? 見てみ?」

 翔真にダメ押しされた和衣は、不満そうに声を上げつつ、差し出されたスマホの画面を覗き込んだ。
 面倒くさがりつつも、翔真は和衣のために『壁ドン シチュエーション』で検索してくれたらしい。女性が実際にされた壁ドンのシチュエーションを紹介しているサイトだ。

 見れば、放課後に学校の廊下で壁ドンされて告白された、とか、デート帰りに路地で壁ドンされてキスされた、とか、エレヴェータで2人きりになったときだとか…………結構大胆に男は壁ドンしているようだ。
 しかし、翔真の言うとおり、祐介とはタイプがかけ離れている。
 祐介と外でキスしたことがないわけではないし、それこそ告白のときの祐介はかな~り大胆だったから、祐介が絶対こんなことしないとは言えないが、要は、そのくらいの覚悟がなければ、しないということだ。



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カテゴリー:Baby Baby Baby Love

心臓だけを狙っている (4)


「俺、とんでもなくハードルの高いことを望んでたんだね…」
「やっと気付いたか」

 はうぅ~…と溜め息をつき、和衣は記事を読み進める。
 やはり、こちらからお願いしない限りは、当たり前だが、するほうがその気にならなければ、壁ドンはしてもらえなそうだ。

「え…、あれ? 嘘…」
「どうしたー、カズー」

 翔真が和衣の相手をしてやっているので、亮はしばらくほったらかしていたのだが、急に和衣がハッとして顔を赤くしたので、とりあえず尋ねてみた。
 和衣の照れのレベルは、人とはちょっとかけ離れたスイッチがあるものの、かなりハードルが低いので、亮にしたらかなりくだらないことでも照れまくるので、聞いてもこちらが疲れることのほうが多いのだけれど。

「あ、そっか、あのときのって…」
「何だよ」
「顔赤いけど…………思い出し照れ?」

 何かを思い出し、1人で照れては顔をニヤつかせている和衣に、亮も翔真も、多少の興味が出て来たらしい。
 しかし、小突いたり、足先でつついたりしてみても、和衣は思い出の世界から帰って来ない。

「だから、何なんだっつの」

 反応ない和衣にイラついて、亮がその手から翔真のスマホを奪う。
 それを見ていて和衣がこんな状態になったのは確かなので。

「何、何~」

 翔真も、和衣から聞き出すよりこのほうが早いと思ったらしく、照れ照れしている和衣を放り出し、スマホを覗き込んだ。

「電車?」
「電車の中」

 亮と翔真は顔を見合わせた後、和衣のほうを見た。
 和衣が見ていたのは、電車の中での壁ドン経験を紹介する記事で、電車が揺れた拍子に壁ドンになったとか、満員電車で押し潰されないように守ってくれたとか、そんな体験談が載っている。
 確かにこれなら、相手にそこまでのその気がなくとも、壁ドンになる。



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心臓だけを狙っている (5)


 和衣もそれに気付き、これなら自分も祐介に壁ドンをしてもらえそうだと思ったのか、いや違う、和衣はこの記事を読んで何かを思い出し、照れているのだ――――つまり、和衣にも同じ体験があるということ。

「え、まさかカズ…」
「あはははは!」
「お…おおおい、おい、カズ?」

 和衣にまさかの体験を尋ねようとしたら、いきなり和衣が笑い出すので、心配になってくる。
 しかし、急激にテンションを上げた和衣は、ジタバタしながら笑っているだけだ。

「きゃははははっ、ちょぉ~~~~~~いいっ! 壁ドン、超いいよっ」
「そ…そう?」
「それより、大丈夫…?」
「電車! 電車でされた、壁ドン。電車、超混んでてさぁ、何か押された拍子に壁ドンになってた! 祐介の腕がこう……でね、でね、降りるまでね、ずっとこうしてた!」

 翔真を自分に見立て、自分が祐介の役となって、和衣がそのときの状況を、エア壁ドンで実演してくれる。
 祐介の性格と、和衣の(非常に分かりにくい)説明からして、それは偶然の産物だったのだろうが、それでも壁ドンであることに違いない。

「……………………」
「……………………」

 経験者ならではの感想を漏らす和衣に、亮と翔真は何とも言えない気持ちになってくる。
 最初、和衣から壁ドンの話を聞いたときは、全然興味なかったし、やりたいともやられたいとも思わなかったが、何だかすごくいいもののように思えてきた。

「あは、電車だ! 電車なら、また壁ドンしてもらえるかもしれないっ。あははー!」

 思い出だけで、これだけ浮かれることが出来るのなら、無理にもう1度壁ドンをしてもらわなくともよさそうな気もするが、何度でもやりたいと思うくらい、いいものなのかもしれない。

((壁ドンかぁ…))

 幸せそうに転げ回っている幼馴染みを眺めながら、亮と翔真はそれぞれに、自分たちの恋人を思い浮かべるのだった。



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 カズちゃんが言ってるのは、このときとことですね→「in the train :: ゆっちさん&カズちゃん編
 私も書き始めたときは忘れてました。
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心臓だけを狙っている (6)


 何の気なしに帰って、睦月がまだ怖いDVDを見ていたら怖いので、亮は何度も何度も何度も……何度も聞き過ぎて睦月がキレるくらい確認してから、自分の部屋に戻った。

「お帰りー」
「むっちゃん、何つーカッコしてんの…」

 ドアを開けた亮の目に飛び込んで来たのは、床にまさに「大」の字になって、ダランとしている睦月の姿だった。着ているTシャツの裾が捲れ上がってお腹が丸出しなのもお構いなしで、視線だけを亮に向けている(首を動かすのも面倒くさいらしい)。
 手の届く範囲にマンガ本とゲーム機が放り出されているので、やり終えたか、途中で飽きたのだろう。ということは、怖いDVDは結構前に見終えたのかもしれない。

「むっちゃん、お腹出てるよ?」
「知ってるー」
「知ってんなら直しなよ…」

 もう寒い時期ではないから、お腹を出しっ放しにしていても、冷えてお腹を壊すとかはないだろうけど、20歳を過ぎた大学生男子として、その格好でいいのかなぁ…とは思う。
 睦月に動く気配がないので、亮は甲斐甲斐しくその裾を直してやってから、自分のベッドに腰掛けた。
 それからスマホで、先ほど翔真が和衣のために検索してやっていたサイトを開いてみる。何だかんだで、壁ドンが気になっている自分がいるのだ。
 見れば、多くの女性が壁ドンには憧れていて、経験した女性の半数以上がドキドキした答えているらしいが――――

(…………女性……)

 先ほどまで一緒にいて、壁ドンをされたのが『ちょぉ~~~~~~いいっ!』と騒いでいた幼馴染みは、どこをどう見ても、間違いなく男なのだが…。
 和衣の乙女思考は今に始まったことではないからいいとして、問題は、そんなことには一切興味なさそうな睦月だ。もし亮が壁ドンするとして、そのしたい相手は、和衣でなく睦月だから。

 その睦月といえば、今度は這いつくばってリモコンのところまでにじり寄ってテレビを点けているが、絶対に興味なんかない競馬中継にチャンネルを合わせているあたり、見る気ゼロなのだろう。
 だったら無理に点けなくてもいいのに…と思っていたら、急に睦月がクルリと亮のほうを向いた。

「…何、亮」
「えっ?」
「何ジロジロ見てんだ」
「いや…」



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心臓だけを狙っている (7)


 今振り返るまで、全然亮のほうなんか見ていないようだったのに、どうして亮が睦月を見ていると分かったんだろう…。
 とはいえ、何となく睦月を見ただけで、深い理由はないので、亮は適当にごまかして、再びスマホに視線を落とした。

(壁ドン…、壁ドンねぇ…)

 記事に載っているのは、実際に壁ドンをされたことがあり、かつ、わざわざそれを投稿するくらいの体験なので、それなりにロマンチックなシチュエーションばかりだ。
 和衣ではないけれど、どうしたらこんな雰囲気になるのかと思う。

 しかし、壁ドンされたいとあれだけ騒いでいた和衣は、恋愛に関しては究極の照れ屋だ。
 以前に電車でされた壁ドンが、両者無自覚のものだったからいいようなものの、この記事に載っているような壁ドンを本気でされたら、そのまま卒倒するのではなかろうか。
 マンガなら壁ドンされてドキッとしたところで終わりだけれど、現実にはその後の展開が待っているわけで、卒倒して終わったのなら、気にし過ぎな性格の和衣はもう立ち直れないかもしれない。

 それに対して睦月は、そうしたロマンチックさとは無縁の性格だから、卒倒はもちろんのこと、照れることすらしないだろう。『…は?』とか言われそうだ。
 むしろ、壁ドンをやった自分のほうがリアクションに困りそう…。

 亮が視線を上げると、睦月は仰向けになって、両手でリモコンを構えて振り回している。
 テレビのチャンネルがゴルフ中継になっているところをみると、ゴルフのスイングの真似なんだろうか。一応はテレビを見ているらしいが、そのままリモコンがすっぽ抜けて飛んで行かないことを願うばかりだ。

「…何見てんだ」
「うぇっ!?」

 リモコンを大きく振り被ったところで、睦月がギロリと睨んで来た。
 そのままそのリモコンを投げ付けてくるわけじゃないよね? てか、だから、いつの間に見てることに気が付いたの?

「ゴゴゴメン、ゴメンね、むっちゃん!」
「…………」

 どう見ても機嫌の悪そうな睦月に、亮は早めに謝っておく。
 ゲームもマンガも放り投げているところからして、退屈さが限界を越えたのが不機嫌の原因だろう。こういう場合、構うと逆にウザがられることがあるから、対応に困る。
 とりあえず今は、亮に見られることさえイライラの原因のようだから、放っておくことにしよう。



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心臓だけを狙っている (8)


「あ゛~う゛あ゛~」
「!」

 あまり見ているとまた睨まれると思い、亮がスマホに視線を戻そうとしたら、睦月が変な声を上げ始めた。やっぱり構ってほしいんだろうか…と、こっそり睦月を見ると、リモコンを置いた睦月は、何だかうにゃうにゃしている。
 果たしてこれはツッコんだほうがいいのか、放っておいたほうがいいのか、止めに入ったほうがいいのか…亮が悩んで固まっているうちに、睦月の声と動きは止まった。
 自分でもバカなことをしていると気が付いたのか……いや、きっと動くのも面倒くさくなったに違いない。

(……うん、壁ドンなんてキャラじゃない)

 似合うとか似合わないとか、『…は?』て言う言わないのレベルではない。
 そういう次元の話ではなかった、と亮は思い知り、溜め息とともにスマホを放った。一瞬でも和衣のノリに乗ってしまった自分が悔しい。別に壁ドンが出来なくたって、他にもっと……

「――――え?」

 テレビはつまらなそうだし、睦月は相手にしてくれなそうだし、暇に飽かせて、亮もダラダラするしかない……なんて思った矢先、視界の隅で、睦月がのそりと起き上る気配。
 今度は何だ? と亮がそちらを見たのとほぼ同時に、目の前には睦月の顔が。

「さっきから、何ジロジロ見てんだ」

 亮のベッドの前に立った睦月が凄んで言うのは、先ほどからと同じセリフだが、亮は咄嗟に言葉が出ない。
 それは、睦月が思った以上に不機嫌なせいでも、睦月の顔がうんと近い位置にあるからせいでもなく、睦月の右腕が、亮の顔の横を通って壁に突かれているからで。

「………………え…………」

 思い掛けない展開に、亮の思考はすっかり停止した。
 いや、確かに睦月は先ほどまで、全然亮を見ていないようでいて、亮が睦月を見ているのにしっかりと気付いていたけれど、だからと言って、亮の頭の中まで悟る力はないだろうに。
 心の声が口に出ていた? いや、だとしたら睦月は、素直に『うるさい』とか言って突っ掛って来たはずだ。

 ――――でなくて!

「ッ、むっ、むっちゃん!」

 まさかの睦月からの壁ドンに、亮はすっかり動揺して、声を引っ繰り返しつつも名前を呼んだら、睦月の眉間のしわがさらに増えた。



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心臓だけを狙っている (9)


「亮、さっきから視線がうるさい」
「す…すいませ…」
「構ってほしかったら構ってほしいって素直に言え」
「ッ…!」

 まるでマンガのような殺し文句を、睦月は照れもせずに言ってのける。
 いやいやいや、多分構ってほしかったのは睦月のほうだろう、とは一瞬頭をよぎらないでもなかったが、この状況でそんな野暮なことを言い出せるわけもなく。

「か…構ってください…」

 亮は別に、睦月に放っておかれたのが寂しくて、構ってほしいと思っていたわけではなく、睦月に壁ドンしてみたいなぁ…なんて思ったり思わなかったりしていただけなのだが、最終的に口を突いて出たのはそんなセリフだった。
 それを聞いた睦月は、先ほどまでの膨れっ面はどこへやら、にぱっと満面の笑みを浮かべて、

「オッケー!」

 と、ピョーンとベッドに飛び乗って、さらにはそのまま亮に抱き付いて来た。
 その勢いに、亮はそのまま後頭部を壁にぶつけるはめになったわけだが、ゴロゴロと喉を鳴らしてじゃれ付いてくる猫のような睦月がかわいくて、痛みなんて吹き飛んでしまうわけで。

(あぁ…、確かにいい…、壁ドン…)

 睦月の、壁ドンからの飛び付きハグに、亮は身も心もメロメロにされてしまうのだった。



*****

「ショウちゃんて、こんなの読むの? 珍しー」
「んー…?」

 翔真がベッドに転がってスマホを弄っていたら、帰って来た蒼一郎が、テーブルの上に投げ出されていた雑誌を目にして声を上げた。和衣が置いていった女性誌だ。

「あー…、それ、カズのー」
「カズちゃん、相変わらず、こういうの見るんだね…。てか、ショウちゃんはめっちゃだらけてるね」
「今日のカズ、めっちゃウザかったぁ…」

 散々、壁ドンをしてもらいたいと騒いだ挙げ句、そういえば電車でしてもらった(…というか、偶然壁ドンになっていた)と気が付いてからの、テンションの上がった和衣を宥めるのに、どれほどの労力を要したことか。
 一緒にいた亮も同じ目に遭ったとはいえ、亮と翔真では危機感が違う。亮は自分の部屋に戻ってしまえば逃れられるけれど、翔真の場合、和衣が帰ってくれないことには、どうにもならないのだから。



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心臓だけを狙っている (10)


「で、カズちゃん、置いてっちゃったの? これ」
「祐介が帰って来た、とかっつって、そのまま出ていきやがった…」

 早く祐介に会いたい気持ちが強すぎて、雑誌の存在を忘れてしまったのか、それとも女性誌を読んでいることを祐介に知られるのが恥ずかしくてわざと置いていったのかは知らないが、結局和衣がいたという痕跡だけがそこに残されたのだ。
 ところで、和衣はあれだけ『壁ドンして、て言うのは恥ずかしい!』と主張していたが、あのテンションのまま祐介に会ったら、うっかり話してしまうのではないかと、老婆心ながら翔真は少し心配している。

「ふーん、へぇ~」
「…て、お前も見んのかよっ!」

 パラパラと紙を捲る音がして、まさかと思って視線を向ければ、興味津々にその雑誌を広げている蒼一郎がいるわけで…。
 翔真は思わずガバッと起き上って、突っ込みを入れてしまった。

「自分ではこんなの買わないじゃん? どんなん書いてあるのかなぁ、て思って」
「あのなぁ…」
「いや、でも、なかなかピンと来ないよ。女の子て、こんなのが面白いんだね」

 乙女思考とは言わないが、蒼一郎も和衣に似たノリを持っているところがあるから、共感するのかと思いきや、女性誌の内容は、そこまで理解できないらしい。

「それ、何か、壁ドンが載ってる?」
「壁ドン?」
「それで何かカズが壁ドンされたいとか言ってウザくて」
「なるほど…」

 和衣の夢見がちな部分は蒼一郎も十分に把握しているので、翔真の言葉だけで、和衣がどんなだったか大体想像できて、思わず苦笑してしまう。

「てか、壁ドンしたいんじゃなくて、されたいんだ?」
「されたいんだって。んで、されたい、されたい、てずっと騒いでて、何か最終的に、されたことあった! て話になって」
「え、されたことあんの? 壁ドン? カズちゃんが? 祐介くんに?」

 壁ドンという流行りの萌えシチュエーションにおいて、それをしたいのではなく、されたいと思ってしまうあたり、和衣らしい気もするが、実はもう経験済みだったという事実に、蒼一郎も驚きを隠せない。
 間違っても、ノリで壁ドンをするような2人ではないから。



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心臓だけを狙っている (11)


「何か偶然壁ドンになってた、て。電車で」
「電車で? 揺られちゃって? キャッ! みたいな? ドンッみたいな?」
「いや、分かんねぇけど…」

 楽しげにキャピキャピと聞いて来る蒼一郎の説明が下手過ぎて、どんな状況を言おうとしているのか、全然分からない。
 まぁ…、和衣の説明も大概だったので、これはこれで正解なのかもしれないが。

「壁ドンかぁ……されたことねぇなぁ」
「いや、普通ねぇだろ」
「したこともない。ショウちゃんはあるでしょ? 壁ドンしたこと」
「ねぇよ。勝手に決め付けんな」

 別に悪いことではないんだから、したことがありそうだと言われたって、それほど気を悪くするほどのことではないが、でも何だかそんな少女漫画を地で行くような真似、したことがあると思われるのは恥ずかしい。

「俺…、ショウちゃんみたいにカッコよく壁ドン出来る自信がない…」
「だから、したことねぇっつの。つか、何でお前、壁ドンすることになってんの? 別に無理にしなくてもいいんじゃね?」

 誰も蒼一郎に壁ドンをしろとなんて言っていないし、ここまでの話の流れからして、郁雅に壁ドンしてほしいとねだられたわけでもなさそうなのに、どうして壁ドンすることになっているのだ。
 もしかして、話をしているうちに、蒼一郎もその気になってしまったのだろうか。

「何かすごいいい雰囲気そうじゃん。ドンッ、キャッ、みたいな」
「いや、『キャッ』はねぇだろ。誰に壁ドンする気なんだよ。イクじゃねぇの?」

 蒼一郎の恋人である郁雅が、和衣のように壁ドンをされたがっているかどうかは分かりかねるが、もし壁ドンをして、マンガのようないい雰囲気になったとしても、『キャッ』とは言わないだろう、さすがに。

「こうでしょ? こう」
「お…おぅ」

 まさか蒼一郎と2人のときの郁雅は、そんな乙女ぽい一面があるのだろうか…なんて思っていたら、蒼一郎が、特に誰もいない壁に向かって片手を突き、キメ顔を作るので、翔真は口元を引き攣らせながらも頷いた。
 それでいい気もするが、何か違う気もする…。

「何か変?」
「いや…、何してんの、お前」

 変だとか変じゃないとか、それ以前の話だと思うのだが…。
 しかし蒼一郎は結構真面目にやっていたようで、「だって、いざやってみて上手くいかなかったらカッコ悪いじゃん!」なんて言っている。やはり、もう壁ドンをやる気になっているようだ。



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心臓だけを狙っている (12)


「ちょっとショウちゃん、ここ立って?」
「は?」
「練習練習」
「何の練習だよ!」
「壁ドンの」
「いや…」

 そんな練習してどうするんだ、とか、俺をそんなのに巻き込むな、とか、そういうつもりで言った『何の練習だよ!』に、そんな直球で返されても…。
 別に、本気で蒼一郎が何の練習をしようとしているのか分からずに聞いたわけではない。

「はい立って、ショウちゃん」
「ちょっ…おい!」

 蒼一郎に腕を引かれ、無理やり立たせられた翔真は、仕方なく壁に寄り掛かる。
 今度は翔真を前にして、蒼一郎は先ほどと同じように片腕を壁に突いて、ポーズを決めてみるが…

「…何なの、これ」

 実際に蒼一郎に壁ドンをされ、顔を近付けられても、これといったドキドキ感もなく。
 先ほど和衣と一緒に見たサイトに載っていた体験談では、知らない人や恋人でない人にやられたら怖いなどとあったが、身長もさほど変わらない同い年の男にされても、恐怖感などあるはずもなく。

「なぁ、何だよ、これ」
「う~ん…??」

 やっている蒼一郎自身も、いまいちピンと来ていないのか、壁ドンしながら首を傾げている。
 バカバカしい…と、翔真が蒼一郎の横をすり抜けようとしたら、蒼一郎の反対の手が伸びて来て、ドンッと壁に突かれた。これで翔真は、蒼一郎の両腕と壁の間に閉じ込められたわけだが…

「だから…、何なんだよ、これ」
「壁ドン」
「それは分かってるわ」
「どう? ショウちゃん。胸キュン?」
「アホか」

 何だろう…、蒼一郎は、もしかしたら頭のネジなら数本どこかに置き忘れてきたかもしれないが、顔は悪くないし、スタイルだっていいから、普通なら、冗談で壁ドンされても、ちょっとくらいドキッとしてもよさそうなものを、残念ながら、微塵もそんな気持ちにならない。
 やっぱり、男同士だから、ギャグにしかならないのかな。



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心臓だけを狙っている (13)


「くだらねぇ」

 和衣との話の中で、ちょっとは、壁ドンいいかも…なんて思っていたけれど、相手が蒼一郎とはいえ、実際に壁ドンをされてみたら、それほどでもなかった。
 翔真は蒼一郎の腕を押し退けて壁から離れようとしたが、しかし、それよりも早くドアが開いた。

「ヤッホー、翔真く~んっ」

 ノックもなしにドアが開いて、元気よく真大が飛び込んで来て………………固まった。足を1歩踏み入れたところで、ドアノブを離す前に、最初の笑顔のまま固まった。
 蒼一郎も、翔真も固まった。壁ドン状態のまま。

「……………………」
「……………………」
「………………お邪魔しましたー」

 笑顔を崩さないまま、いや崩せないまま、真大は1歩下がってドアを閉めた。

「……………………」
「……………………」
「………………ちょっ! ちょっ待っ……真大!」

 突然のことに思考が止まっていた翔真は、ドアが閉まって数秒してから、ようやく事の重大さに気が付き、真大を追い掛けるべく、慌てて蒼一郎の腕の下を潜り抜けた。
 ドアを開けても、もうそこに真大の姿はなくて、翔真は集合玄関へと走る。

「真大!」

 真大は寮生ではないから…というくらいの読みだったが、それは正解で、玄関に着く前に真大に追い付いた。
 翔真は取るものもとりあえず走って来たけれど、真大はそうではなかったらしく、それが幸いした。

「真大、ちょっ待…………ッ!」

 声を掛けても反応しない真大に、翔真はその腕を掴んで引き止めようとしたが、それより一瞬早く真大が振り返り、翔真の肩を掴んだから、その勢いのまま少し後退ってしまい、壁に背中をぶつけた。
 何をするんだと咎めるより先に、肩を掴んだのとは反対の真大の手が顔の横に突かれたので、翔真はビクッとなって、言葉に詰まった。



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心臓だけを狙っている (14)


 こんなの…つい先ほど、蒼一郎にされたばかりだ。壁ドン。くだらねぇ、て思った。
 なのに、今こうして同じことを真大にされて、息が止まりそうなくらいになっているのは、なぜなのか。怒りの壁ドンだからか、いや、

「…俺が今こんなにムカついてるのって、俺の心が狭いからかな?」

 真大は静かに、しかし低い声で言った。
 翔真は答えられなかった。答えは分かっていたけれど、何も言えなかった。

「俺は、翔真くんのこと好きなんだよ? 翔真くんは知らないかもしんないけど」
「知ってるし…」
「知ってない。何してんだよ。相手は蒼ちゃんだよ、とか言ったら、本気で怒るかんね?」

 もう十分に怒っているだろうに、真大はそんなことを言う。
 しかし翔真は、そのことについては触れない。もちろん、その直前に言おうとしていた言葉――――『壁ドンて……相手は蒼だよ?』という言葉も飲み込む。
 相手が蒼一郎とはいえ、確かに自分の行動は軽率で、真大が怒るのも無理からぬことだ。

「お願いだから、もうちょっと自覚してよね、翔真くん」
「自覚、て…………何を…」
「言わなきゃ分かんないの?」
「………………」

 もっと警戒心を持てと言うなら、持ってるよ、と反論はしたいが、話は分かる。
 しかし、一体何を自覚しろと言うのか、本当は分からなかったけれど、真大のセリフと口調からして、分かりません、とは絶対に言えない雰囲気で、翔真は思わず押し黙った。

「教えてほしい?」
「べ…別に」

 翔真が何も言わなかったことで、逆に、分かっていないことがばれてしまったようで、真大は目を細めて尋ねて来る。心なしか顔が近付いたようで、焦りが増す。

「真大っ…」
「教えてあげるよ」
「ぇ…」

 まさかこのままキスされるんじゃ…なんてことが、一瞬頭をよぎったけれど、そんなことはなく、フッと真大は手を解いて、翔真から離れた。
 ここは寮の集合玄関で、今はたまたま誰もいなかったけれど、いつ誰が通り掛かってもおかしくはない場所だから、キスどころか、壁ドンだって、している場合ではなかったのに。



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