恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2016年08月

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その手なら離さないでね (9)


「お前、飲まないの?」

 睦月がミズキに飲ませてあげられればいいんだけれど、残念ながらジュースは未開封で、今の状態の睦月は、どうがんばっても開けることが出来ないから、無理だ。
 お姉さんがもう1つジュースを用意して、そばで待機しているが、ミズキはそちらを見向きもしない。

「むちゅき、飲んで」
「開いてないから、飲めませーん」

 一応、口元に持って行って飲む真似はしたけれど、飲めないものは飲めないのだから、そう言って睦月は鼻先をミズキの顔に近付けた。
 何がおもしろいのか、それだけでウケてくれるのだから、睦月としても大変助かる。

「ミズキ!」

 何度か顔を近付けてミズキを笑わせていたら、遠くからミズキの名を呼ぶ女性の声がした。その声のほうを向くと、若い女性がこちらに駆け寄って来た。

「あ、ママー」

 なるほど、この女性がミズキの母親のようだ。

「はぁっ、はぁっ、よかったっ…」

 アナウンスを聞いて、ここまで走って来たのだろう、彼女は肩で息をしながら、両膝に手を置いた。

「ミズキくん、よかったねー、ママが来てくれて」
「ん」

 お姉さんに頭を撫でられ、ミズキはコクンと頷いた。
 ミズキと女性の様子からして、彼女が母親で間違いないのだろうが、子どもを引き渡す前に身分確認をさせてほしいとサービスカウンターのお姉さんが女性に声を掛けた。
 このショッピングモールではないが、以前、迷子センターに母親を装って迷子を引き取りに来た女が子どもを連れ去ったという事件があり、それ以来、身分確認を徹底するようにしているのだと、お姉さんが申し訳なさそうに女性に説明している。
 母親にしてみれば、一刻も早くミズキを抱き締めたいところだろうが、これは仕方がないことだろう、と睦月は思った。

「ミズキ…」

 身分確認の手続きが終わり、晴れてミズキは母親のもとへと引き渡された。
 レジやサービスカウンターのお姉さんがどんなに抱っこしようとしても、ミズキは頑として睦月から離れようとしなかったが、やはりそこは母親だ、ミズキはすぐに母親の腕の中に移った。
 母親は、もう2度とミズキを離さんばかりに、ギュッとミズキを抱き締めた。



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その手なら離さないでね (10)


「本当にありがとうございました」

 彼女は何度もそう言って頭を下げた。サービスカウンターのお姉さんたちは、『再会できてよかったです』と笑っている。
 母親として、子どもから目を離し、迷子にさせてしまった申し訳なさや罪悪感から、何度謝罪や感謝しても足りない気持ちだろうが、何よりも2人が再会できたことを喜ぶべきなのだ。

「ホラ」

 睦月は、母親の腕の中のミズキに、持っていたジュースを差し出した。
 これは睦月がミズキから貰ったものではあるけれど、もともとはミズキが貰ったものだし、先ほどまでは睦月とのやり取りがおもしろくて、その中の1つの遊びとして睦月にこれをくれたのだろうが、ジュースがいらない子どもなど、いるはずがないのだ。
 しかしミズキは手を伸ばさなかった。

「ダメ、むちゅきの」

 どうしてもそのジュースは睦月のものだと譲らない。
 いや、くれると言うなら貰うが、2歳児でさえ受け取らないジュースを、21歳の大学生が貰っていいものなのかと、ちょっと悩む。

「ミズキくん、こっちのジュースあげるね」

 睦月の困っている様子を感じ取ったのか、サービスカウンターのお姉さんが、ミズキにもう1本のジュースを渡した。
 母親は大層遠慮したが、お姉さんが何度も勧めたので、恐縮しながらも受け取った。

「むちゅき、バイバーイ」
「つか、呼び捨てかよ」
「きゃはは」

 ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていたのは、もちろん最初に呼ばれたときから分かっていたが、敢えて最後の最後に突っ込んでみた。
 子どもが見つかった安堵感から気付いていなかったのか、母親も睦月のその突っ込みで、ミズキが睦月のことを呼び捨てにしていると気が付いて、「むつきさん、て呼ばないとっ」と慌てて諭した。
 別に睦月はミズキに呼び捨てにされたからといって、それに対して怒りなどはなく、ただ言ってみただけなので、母親に慌てられて、逆に申し訳ないと思ってしまった。

「バイバイ」

 最後にもう1回だけ、さっきミズキが喜んでくれたように、鼻先を近付けてそう言った。
 母親は何度もサービスカウンターのお姉さんや睦月たちに頭を下げて、去って行った。

「お客様、大変有り難うございました」

 ミズキと母親の姿が見えなくなったところで、お姉さんが睦月に声を掛けた。

「あ…、いえ…」

 改まって頭を下げられて、睦月はどう返していいか分からず、戸惑った。
 ミズキを介して彼女とも何度か言葉は交わしたが、人見知りを解消するほどのことでもなかったので、この状況となって、どう話していいか分からなくなったのだ。



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その手なら離さないでね (11)


「えっと…、じゃあこれ…」

 睦月は手にしていたジュースをお姉さんに差し出した。
 ミズキから貰ったものではあるが、睦月がこのまま貰うのも何となく変な気がしたのだ。まだ封は切っていないし、また迷子がいたときに渡すのに使えるだろう。

「いえ、どうぞ、お持ちください。ミズキくんがどうしてもあげたかったみたいですし」
「はぁ…」

 そう言われると、何だか返しにくくなる。睦月が一番好きな飲み物はコーラだが、こうしたジュースだって嫌いではないから、ではここは貰っておくとするか。
 そういえば睦月は、最初に亮とはぐれたところに(いや、はぐれてないけど!)留まっていなければならなかったんだ、と思い出して、「じゃあ、どうも…」とお姉さんに頭を下げた。

「むっちゃ……睦月!」
「は?」

 睦月が1歩も踏み出さないうちに名前を呼ばれて、その声は聞き覚えのあるもので、慌てている様子が伝わって来たのだけれど、サービスカウンターのお姉さんがそばにいる状況で、大きな声で名前を呼ばれたのが恥ずかしかったから、わざと『何だよ、うるせぇな』という雰囲気で返事をした。

「もー、何迷子になってんの!」
「は? なってねぇよ、何言ってんの亮」

 別に睦月は迷子になんかなっていない。
 睦月が食玩を見ているうちに亮が先に行っちゃって、睦月がスマホを持って来るのを忘れちゃったから、連絡が付かなくなっただけだ。迷子じゃない。

「あ、どうも、すみませんでした」

 迷子じゃないと言っているのに、亮は勝手に睦月が迷子になったと決め付けて、サービスカウンターのお姉さんに頭を下げている。
 バカ。本当に睦月が迷子で、亮が迎えに来たんだとしたら、亮は身分確認のための手続きとかしないといけないんだから。

「違う、つってんだろ!」
「何が違うの」

 歩き出した亮を慌てて追い掛け、睦月は再度否定する。
 だって、だって、違うもん!

「いなくなったと思ったら、サービスカウンター行って、ジュース貰って、それのどこが迷子じゃないんですかー? 電話も通じないし」
「ぅぐ…」

 睦月は手の中のジュースを、サッと背後に隠した。
 そんなことをしても、もう亮には見られているし、何の意味もないんだけれど。
 でも。

「違うのっ!」

 向きになって亮の足を蹴っ飛ばす睦月の後ろ姿を、サービスカウンターのお姉さんたちが微笑ましく見送っていた。



*END*


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 タイトルは明日からでした。
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