恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2016年10月

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君のことが好きだっていう話! (1)


「むぅ~~~~~……」

 テレビの画面を睨むように見つめていた和衣は、唸りながら顔を顰めた。その手にはスマホ、机の上にはパソコン。和衣は渋い表情のまま、その3つを見比べていた。
 表示しているのはどれも天気予報。
 先ほどから天気予報を探しては、少しでもいい予報を見つけ出そうとしているのだが、当然ながら、どれを見ても大差などなく、和衣を苦々しい思いにさせているのだ。

「あ~~~ダメだぁっ!!」

 和衣は椅子の背凭れに思い切り体を預け、大きく仰け反った。
 これが睦月だったら、持っていたスマホをそのまま放り投げているところだが、そこまで乱暴な性格をしていない和衣は、ちゃんと手にスマホを握っている。

「だ…大丈夫? カズちゃん…」

 心配そうに声を掛けたのは、この部屋の主であり、パソコンの持ち主である蒼一郎だ。
 相変わらずパソコンを持っていない和衣が、パソコンでインターネット接続したいとなったら、誰かから借りるしかないわけで、本日その標的となったのが蒼一郎だったのだ。
 いや、もともと和衣がパソコンを借りようと思っていたのは翔真だったのだが、来てみたら不在だったので、同室の蒼一郎から借りることとなったのだ。

「ねーししょー」

 これまた相変わらず、和衣は蒼一郎のことを『師匠』と呼んでいるが、何も蒼一郎が和衣のパソコンやインターネットの師匠ということではない。男同士でエッチするのに、和衣よりも先に経験のあった蒼一郎のことを、和衣が勝手に師匠と呼んでいるのである。

「見て、雨…」
「え? 天気予報?」
「雨なの…。テレビの天気予報も雨てゆってるしね、スマホで見ても雨なの」
「そりゃまぁ…」

 天気予報の発信元、つまり元データはは気象庁のもので、それに各社が独自のデータを加えて発信しているわけだから、それをテレビで見ようがネットで見ようが、予報が大幅に違うと言うことはないだろう。
 そもそもネットの天気予報は、見るサイトが同じなら、パソコンで見ようがスマホで見ようが内容は同じなのだが、和衣にはその辺りの仕組みが分かっていないように思われる。

「どっか、晴れ! て言ってる天気予報ないのかなぁ。俺、晴れてほしいのに…」
「カズちゃん…、晴れって言ってる天気予報を見つけ出したからって、晴れるわけじゃないんだから…」



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君のことが好きだっていう話! (2)


 自分に都合のいいこと天気予報を見つけ出そうとしている今の和衣は、いい結果が出るまでおみくじを引くとか、いいことを言っている占いを探すとか、それに近い。
 いや、おみくじや占いは、自分の気持ちの問題でもあるから、いい結果が出て気が済むならそれでいいが、天気予報の場合、他が雨と予報している中、晴れだと言っている天気予報を見つけたところで、実際の天気がそのとおりになるわけではないのだから、おみくじや占いよりタチが悪いと言える。
 蒼一郎にしては、至極まっとうな突っ込みだった。

「だって、晴れないと星見えない~」
「星? 星見たいの? 星て、空の星だよね?」
「そー。師匠、星見たくない? 七夕さま」

 だんだんと和衣の言うことが見えてきた。
 ロマンチストの和衣は、せっかく七夕なんだから星が見たい、いや見て当然だと思っているのだ。

「カズちゃん、どこに星見に行こうとしてんの?」
「え? どこ、て…」

 テレビの画面に映る天気予報も、パソコンに表示されている天気予報も、この寮がある付近のものだから、やはり和衣はこの辺りで星を見ようとしているのか、それとも単にいつもの癖でこの辺りのものを表示しているのかは分からなかった。

「いや、この辺じゃ、晴れてたって星見えなくない?」
「!」
「あ、いや、そんなはっきり確認したことあるわけじゃないからよく分かんないけど、普段、星が見えるとか思ったことないし、晴れてても」

 和衣ほど星空に対して情熱のない蒼一郎は、はっきりとこの目で、星の1つもまったく見えないかまで確認したことはないが、ふと見上げた空に星座を認識した覚えはない。
 七夕に星が見たいと言う和衣は、何となくうっすら星の1つが見えればいいということではないだろうから、たとえ晴れていたとしても、和衣の望むような星空は拝めないに違いない。

「そ…そっか…、見えない、か…」
「ちょっ! そんな悲しそうな顔しないで!」

 まるでこの世の終わりのような顔で遠くを見つめる和衣に、蒼一郎は大いに慌てる。
 七夕に天気が悪いのも、この辺りで晴れても星が見えないことも、蒼一郎のせいでは全然ないのに、ものすごい罪悪感…!

「あー、えっとー…、どっか星の見えるところに行くとか? あ、プラネタリウムとかはっ?」
「ぷらねたりゅーむ?」

 蒼一郎が自分なりの精一杯の知識で提案したところ、『プラネタリウム』の言葉に和衣が反応した(発音はかなり怪しかったが)。



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君のことが好きだっていう話! (3)


「プラネタリウムなら、天気関係なく星見れるよ?」
「! ぷらねたりゅーむ!」

 まるで言葉を覚えたての子どものように、和衣は顔を輝かせて繰り返す。

「ぷらねたりゅーむ! 見る! どこで? どこで見るの!?」
「えっ!? いや、調べて、調べて、カズちゃん。パソコンあるから。俺もそこまで詳しくない、プラネタリウム」

 それを調べるための文明の利器が2つも目の前にあるというのに、和衣が興奮気味に問い詰めてくるから、蒼一郎は慌ててパソコンを示してやる。

「そ…そっか。ぷ…ぷ…ぷら…ら…ね…た…りゅ…りゅ…りゅー……」
「カズちゃん、カズちゃん、リウム、リウム」
「ん?」
「プラネタリウム」
「ぷらねたりゅーむ」
「リウム。プラネタリュームじゃなくて、プラネタリウム」

 たどたどしい発音で『プラネタリウム』と言っていると思ったら、和衣は本当に『ぷらねたりゅーむ』と発音していて、しかもそれが正解の単語と思っていたらしい。
 発音のままに『ぷらねたりゅーむ』と検索しようとしていた和衣を、蒼一郎が止めた。

「ししょー、お願いしますー…」

 しばらくキーボードと向き合って固まっていた和衣は、結局その後1文字も入力しないまま、蒼一郎を振り返った。
 だから、別に蒼一郎は和衣のパソコンの師匠でも何でもないし、もちろん性生活の師匠でもないのだが、和衣の縋るような目に勝てず、検索窓に『プラネタリウム』と打ち込んであげた。
 というか、和衣のこのパソコンの使えなさっぷり、これから先、社会に出てやっていけるのかと、ちょっと心配になってくる。パソコンの操作が必須ではない業種も多くはあるだろうけど、これほど使えないと、職業選択の幅はだいぶ狭まるだろう。

「カズちゃん、レポートのときどうしてんの? その打ち方じゃ、めっちゃ時間掛かんない?」
「めっちゃ時間掛かる」

 蒼一郎の質問に、真っ正直に素直に答える和衣に、次の言葉が続かない。
 レポートの作成にめっちゃ時間が掛かるのは、恐らく大層困ることだろうが、それをどうにかしようという気はないのだろうか。

「師匠、ぷらねたりゅーむ、どこにあった」
「あのさカズちゃん、俺のこと『師匠』て呼ぶの、いい加減やめてくれる? それと、『プラネタリウム』ね」
「何で? ぷらねたりゅーむ? ね、どこにある?」



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君のことが好きだっていう話! (4)


 何を言っても効果なしの和衣に溜め息を零しつつ、蒼一郎はパソコンの画面を覗いた。
 人気の、趣向を凝らした新しいプラネタリウムが上位にあるが、昔からある公立の博物館や文化センターにあるプラネタリウムもヒットしている。
 どれがいいかと言われても、そこは好みの問題だから、蒼一郎は何とも言ってみようがないのだが。

「何見るかにもよるんじゃない? 場所によってやってるのも違うだろうし。あんま知らないけど」
「どれが師匠のおすすめですか?」
「…………。ゴメンね、カズちゃん。師匠、大人になってからプラネタリウム見たことないから分かんないよ…」

 プラネタリウムがデートスポットの1つであることは蒼一郎も知っているけれど、そこまで星に興味がなかったせいで、子どものとき以来、行ったことがなかったし、詳しく調べたこともなかったので、おすすめなんてまるで分らない。
 和衣にそんな期待の籠った視線を向けられても、正直、困る。

「カズちゃん、どんなの見たいの?」
「星」
「いや…、そうだけど…」

 蒼一郎の頭のネジの抜け具合も相当なもので、同室の翔真にも、恋人の郁雅にも突っ込まれ放題なのだが、その蒼一郎を以てしても、カズちゃん大丈夫かな…? と思うくらい、和衣の天然具合はちょっと心配になる。

「カズちゃんは祐介くんと行きたいんでしょ?」
「え? え、う…うん…」

 突然蒼一郎に問われ、和衣は頬を染める。
 蒼一郎はもちろん和衣が祐介と付き合っていることを知っているし、和衣に勝手にそっち方面の師匠に認定されているくらいなのに、なぜ和衣は蒼一郎に、祐介と付き合っていることを言葉にされただけで、顔を赤くしているのだろう。羞恥のポイントがちょっと違う…。

「なら、星座の解説みたいな学習系とか、子どもとかファミリー向けより、一般向けで、何かこう…ロマンチックな感じのがいいでしょ? ヒーリング系とかさ」

 和衣たちが簡単に行けるような距離にあるプラネタリウムのサイトをいくつか開き、そのプログラムを見ながら、蒼一郎が確認する。
 蒼一郎が予想していたとおり、場所によってプログラムはいろいろだが、大体が子ども・親子向けと一般向けを用意しており、平日の日中を学校や保育園などの団体向けにしているところもあった。
 和衣の性格からして、一般向けの中でも、天体の真相に迫ろうとか宇宙の謎に迫ろうとか、そういったものより、ロマンチックなストーリーのほうが好きそうだ。
 祐介がどんなものが好きなのかは分からないが、それこそ彼の性格からして、和衣が見たいと言ったものを拒むことはないだろう。



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君のことが好きだっていう話! (5)


「どうしよう…。ねぇどうしよう、師匠、どれがいい?」
「いや、俺に決めさせないでよ」

 プラネタリウムを勧めたのは蒼一郎だが、見に行くのは和衣と祐介だ。蒼一郎が決めてどうする。
 しかし和衣は、そんな突っ込みを気にしたふうもなく、「だってどれがいいか分かんない~」とジタバタしている。

「こっちかな? 何かすごい大ヒットて書いてある。あ、でもこっち、ヒーリングだって。そのほうがいい? 海? 海の何か? プラネタリウムなのに、海なの? 師匠、どう思う?」
「どう、て…」

 一緒にサイトを見ろと言わんばかりに腕を引く和衣に従い、蒼一郎はプログラム紹介を見るけれど、すでに和衣には、プラネタリウムに詳しくないことを言ってあるはずなのに、『どう思う?』と聞かれても…。
 というか、それ以前に、どうして和衣は蒼一郎と一緒に、どこのプラネタリウムに行くかを決めようとしているんだろう。こういうものは普通、恋人同士で決めるものだろう。行き先を決めるところから、楽しみが始まっているというか…。
 少なくとも、先ほど『俺に決めさせないでよ』と言った友人と決めるものではない。

「師匠、どれがいいか決まった?」
「いや…、いやいやいやカズちゃん、何言ってんの?」
「何が?」
「何が、じゃなくて!」

 だから、『どれがいいか決まった?』は、蒼一郎でなく、祐介に向かって言うべきものだから!
 というか、ここ数分内のセリフすべてが、和衣と祐介の間で交わされるべきものだいうところから、蒼一郎は改めて突っ込んだほうがいいのだろうか。

「それ、俺じゃなくて祐介くんに言いなよ。何で俺と決めようとしてんの?」
「え~、だってそんなの…、祐介に何て言ったらいいの?」
「何て、て…。普通に『プラネタリウム見に行こ』でいいんじゃない?」
「それでそれで?」
「えっ…えー……」

 目を輝かせて詰め寄って来る和衣に、蒼一郎は突っ込むどころかたじろいで言葉が続かない。
 そんな…、好きな子を初めてデートに誘うわけでもなし、もう付き合ってだいぶ経つのに、今さら祐介のデートの誘い方を蒼一郎に聞いてどうするのだ。
 そう思うものの、和衣は冗談でも何でもなく、本気で蒼一郎に相談しようとしている。

(マジか、カズちゃん…!)

 蒼一郎が和衣から『師匠』と呼ばれるようになった例の件のときもそうだったが、和衣はどうしても何かを1人で決められないタチらしい。
 改めてそれを思い知った蒼一郎は、頭を抱えたくなった。



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君のことが好きだっていう話! (6)


「だって、何て言っていいか分かんないもん…。てかさ、そもそも祐介ってプラネタリウム好きかな!?」
「それ、俺に聞く!?」

 プラネタリウムを提案したのは蒼一郎だが、それは、和衣が星を見たいと言ったからだ。祐介が星を見るのを好きかどうかは知らないが、それこそそれは蒼一郎でなく、祐介に確認することだ。

「だってさ、祐介優しいからさ、ホントはそんなに好きじゃなくても、俺が行きたい、て言ったら、付き合ってくれそうだし…」
「でも、じゃあ、祐介くんが星見るのそんなに好きじゃないって分かったら、カズちゃん、ホントは一緒に星見に行きたいのに、我慢するの?」
「ぅ…」

 相手が嫌がることを無理強いさせるのはよくないが、まだ好きかどうかも分からないことなら、誘うくらい誘ってみても、悪くはないだろう。
 和衣の言うとおり、確かに祐介は優しい男だから、和衣が行きたいと言ったところを拒むことはそうなさそうだが、彼にだって意志がないわけではないから、本当に嫌だったら、嫌だと言うはずだ。

 蒼一郎は星にそこまで興味がないから、郁雅にプラネタリウムに誘われたら、もしかしたら難色を示すかもしれないが、その場合、郁雅の性格からして、こういうプラネタリウムがあるとプレゼンのようなことをして、蒼一郎をその気にさせるかもしれない。
 そして、蒼一郎も単純だから、すぐにその気になってしまうのだ。

 だが、例えば祐介がそれほど星やプラネタリウムに興味がなかった場合、和衣が郁雅のような真似が出来るかといえば、残念ながら難しいと言わざるを得ない。
 そもそも、どのプラネタリウムを見たいのか、和衣自身が選べないのだから。
 それを考えたら、やはりプラネタリウムを見たいと祐介に打ち明け、一緒に調べるのがいいだろう。もしかしたら祐介は星がすごい好きで、プラネタリウムでなく、本当の星を見に行こう、と言ってくれるかもしれないし。

「誘いなよ、プラネタリウム。見たいんでしょ?」
「…見たい」
「どのプログラム見たいか自分で決められないなら、祐介くんと一緒に決めてさ、それで2人で見たいと思ったのを見るのがいいと思うよ? 俺が決めたヤツ、カズちゃんと祐介くんで見るとか、絶対変じゃん?」
「…ん」

 グルグルと頭の中では色々と思い悩んでいるのかもしれないが、蒼一郎に言われて、和衣はこくりと頷いた。



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君のことが好きだっていう話! (7)


「何でそんな顔してんの? そんなに祐介くんに言いづらいの? 自分の行きたい場所に祐介くん誘うの」
「そうじゃないど…。いっつもね、お出掛けするときね、祐介が決めてくれるからね、今回はね、俺が星見たい! て思ったから、俺がしっかり決めて、祐介を誘いたかったの」
「いっつも祐介くんが決めてんの? カズちゃん、自分が行きたいとことか、祐介くんに言わないの?」
「言わなくはないけど、何か全然決めらんなくてね、結局、最終的に祐介が決める」
「なるほど…」

 『どうやって祐介のこと誘ったらいいかな!?』と本気で悩んでいる和衣が、先ほど蒼一郎に見せたような姿を祐介の前で晒すとは思えないが、行き先を決められなくて唸っている姿なら、想像に難くない。
 そういえば睦月が時々、和衣の優柔不断さについてぼやいていて、それを聞くたびに、大袈裟な…と思っていたのだが、存外そうでもないようだと、蒼一郎は今回、身を以てそれを知った。
 1人で何も決められないくせに、人の意見にすんなり従うかといえば、『それもいいけど、こっちも捨てがたい』みたいな感じで、延々と悩み続けるタイプだ。
 あの気の短い睦月が、よく付き合ってやっているものだ。

「まぁ、カズちゃんが自分で決めて祐介くんを誘おう、てのを止めるつもりはないけど、だったら、お願いだから自分1人で決めてね」
「あぅ…」

 和衣の優柔不断ぶりに嫌気が差して、一緒に探すのを拒んだわけではない(…わけでもない)が、もし蒼一郎が一緒に探してくれるとなったら、結局和衣は最終的な決断を蒼一郎に委ねるような気がするのだ。
 別に選んでやってもいいけれど、それを和衣と祐介が見に行くというのは、やはり違う気がして。蒼一郎が自分で体験したことがすごくよくて、2人に勧めるのとは違うし。
 しかも、蒼一郎が選んだのが2人の好みでなかったら…、それこそ2人とも優しいから、そのことで何か言うことはないだろうけど、蒼一郎の気持ち的にもやっぱり嫌だ。

「や…やっぱ祐介に言おっかな、ぷらねたりゅーむ見たい、て…」
「そのほうがいいんじゃない? そのほうが、祐介くんの好みも反映できるじゃん」

 やはり1人で決められる自信はないようで、和衣は眉を下げてそう言った。
 もしかしたら、結局いつもどおり、最後は祐介が決めることになるかもしれないけれど、それが2人の自然な姿なのなら、それを無理に変える必要なんてない。
 蒼一郎が思うに、和衣が気にするほど、祐介は和衣の優柔不断に付き合わされるのを嫌がってはいないだろう。

(何ていうか…、そういうところも含めて好きになった的な?)

 何か俺、今うまいこと言った! と蒼一郎が1人満足気な顔をしているのに気付かず、和衣は「師匠、ありがとう!」と言いながら、部屋を飛び出していった。
 蒼一郎と和衣は、最後まであまりうまく噛み合わないままだったのかもしれない。



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君のことが好きだっていう話! (8)


 和衣が心配していた、祐介が本当はあんまり星に興味がないんじゃないか問題は、まったくの杞憂に終わった。
 和衣が思っていたよりもずっと、祐介は星が好きだったし、プラネタリウム行きも積極的に賛成してくれた。
 一口にプラネタリウムと言っても様々なプログラムがあるのだと、蒼一郎のパソコンで調べた情報を打ち明ければ、祐介は言われるまでもなくそんなことも知っていたし、結局どこのプラネタリウムの、どのプログラムを見るか決め切れない和衣に代わって、いろいろ調べて、全部決めてくれたのだ。
 和衣にしてみれば、思っていた手順と何か違うぞ? という感じだが、最終的に祐介とプラネタリウムを見に行けることになったから、まぁいい。

(えへ、祐介とぷらねたりゅーむ、ぷらねたりゅーむ!)

 嬉しさのあまり、バイトの帰りに、祐介と一緒にプラネタリウムに行くことを睦月に自慢したら、本気の本音で『全然興味ない』と返されて、和衣が凹んだのが5日前のこと。
 そして週末、ようやく待ち望んだ祐介とのプラネタリウムデートの日がやって来た。

 ちなみに前日、いつものように睦月をファッションチェックに付き合わせたら、いつの間にか睦月が寝ていて、どうやっても起きないし、肩を貸すなり引っ張っていくなりして部屋に連れ戻そうとしてもうまくいかないし、そんな日に限って亮は飲み会でいないしで、結局睦月と一緒に寝るはめになってしまった。
 寝起きの悪い睦月は、和衣が出掛ける時間になっても起きないから、今度こそ部屋に亮を呼びに行こうとしたら、寮の集合玄関で待ち合わせしようとしていた祐介と鉢合わせして、結局祐介が睦月を部屋まで連れて行ってくれた。
 細くても腕力には自信のあった和衣は、自分に出来なかったことをあっさり祐介がやってのけたことに少しばかりショックを受けたし、祐介、そんなにむっちゃんにくっ付かないでよ…と余計な嫉妬心を芽生えさせてしまったし、待ち合わせもうまくいかなくて、落ち込み掛けたのだけれど、それも、これから祐介と一緒にプラネタリウムを見に行けると思ったら、消し飛んだ。

「次の回の、まだチケットあるみたいだけど、どうする? 夜の回のにする?」
「へっ!? あ、えっと、」

 ぼんやりと幸せに浸っていたら、急に声を掛けられて、和衣は我に返った。
 和衣たちが訪れたプラネタリウムは、平日の午前中は幼児向けや学習投影が中心で、午後から一般向けとなるが、土日は投影回数も増え、午前中にも一般向けのプログラムが投影される仕組みだ。
 和衣的には、祐介と一緒に星が見れたらそれで満足だったのだが、和衣の性格をよく分かっていると思われる祐介が、こういうヒーリング系のもおもしろいよね、とさり気なく提案してくれたので、和衣がすぐにそれに飛び付いたのだ。
 夜に来るのもすてきだと思ったけれど、早く見たい気持ちが勝って、結局すぐ次の上映を選んだ。蒼一郎とプラネタリウムを調べたときに、星なのに海てどういうこと?? と和衣が首を傾げたプログラムだ。



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君のことが好きだっていう話! (9)


「はいっ」

 祐介が財布を出すより先に、和衣は券売機にお金を突っ込む。何もかも祐介任せにしたくないのだ。
 隣で祐介の笑う気配がしたけれど、和衣は構わずチケットを2枚買った。

「ありがと」

 こんなことくらいで得意げになってもどうしようもないけれど、ちょっとは格好いいところが見せられたかな、と思う。
 チラッと横目で祐介を見たら、祐介と目が合って、やっぱり笑われた。 

 それほど待たないうちに、上映中だったプログラムが終わり、中からお客が退場してくる。和衣が思っていたより、結構多い。想像以上に、プラネタリウムというのは人気があるようだ。

「あそこ、笹あるね」
「ぅ?」

 和衣が出て来る人たちに気を取られていたら、祐介がプラネタリウムの入場口とは少し離れたところにある七夕飾りを見つけていた。
 そういえば和衣は、七夕だから祐介と星が見たいと思っていたんだっけ。

「何かめっちゃ人いる」

 遠目で見ても大きな七夕飾りとはいえ、意外なほどに人が集まっている。

「あれ、短冊書いて飾れるんじゃない?」
「えっ嘘、書きたい!」

 どうも和衣は注意力というか観察力が足らないのか、同じところを見ているのに、そんなことにも気付けていない…。
 でも確かに、笹の周囲に集まっている人たちは、七夕飾りを見ているだけでなく、何かテーブルのようなところに頭を寄せ合っている。

「え、今?」

 気持ちのままに、七夕飾りのほうに向かおうとした和衣は、祐介のちょっと驚いたような声に足を止めた。

「え、ダメ? ヤダ?」
「じゃなくて。すぐ書ける? あと15分くらいで入場だけど…」
「あ、………………無理かな」



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君のことが好きだっていう話! (10)


 何かにつけて優柔不断の和衣は、こういうときも、何を書いたらいいか悩んで悩んで悩みまくって、なかなか書けないのだ。
 それは別に今に始まったことではなく、和衣も十分にそれを自覚しているのだが、分かっているくせにそのことを忘れがちで、今回も祐介に言われて気が付いた。

「見るだけ見て来る? すぐ書けそうなら、書けばいいじゃん」

 和衣の優柔不断ぷりからして、あと15分で書き上げて笹に飾るのは、絶対に無理だ。
 もちろん、開場と同時に入らなくてもいい。上映が始まってしまえば入ることは出来ないが、ギリギリに滑りこむことは可能だから、とすれば、あと30分くらいは余裕があると言える。
 しかし、今日の混雑具合からして、あまり間際に入場したのでは、見やすい席は埋まっているだろう。せっかく来たからには、やはりいい席で見たいと思う。
 それでも、和衣が名残惜しそうに七夕飾りを見ていたのが分かったのか、祐介がそう提案してくれた。

(祐介、かっこいい…!)

 蒼一郎とプラネタリウムのことを色々と調べているうち、和衣がちゃんといろいろ調べて、祐介のことをリードしなきゃ! という気持ちが生まれ、すっかりその気になっていたのに、結局、どこのプラネタリウムに行って、どのプログラムを見るかということまで、祐介が全部やってくれたし、今もこうして、グズグズしている和衣のことをリードしてくれる。
 祐介、何でこんなにスマートで格好いいの!? と和衣は1人でその魅力にメロメロになるのだった。

「みんな、何書いてんのかな…………あ、これ、短冊、人が見ちゃったら、お願い叶わなくなっちゃうんだっけ!?」
「え、そうだっけ?」

 プラネタリウムの上映が終わって退場してきたお客さんたちが、七夕飾りのところに流れたせいで、短冊を書くスペースも結構混雑している。
 その人混みをよけて、笹に飾られた短冊に目を向けた和衣がそんなことを言い出したので、祐介は首を傾けた。そんなの初耳だ。

「あれ? 違ったっけ?」
「違うんじゃない? 人に見られて願い事が叶わなくなるなら、こんなところでみんなに短冊書かせないでしょ」
「あ、そっか」

 この時期になると、ショッピングセンターのような人の多く集まる場所には七夕飾りが設置されるし、訪れた人が短冊を書けるようになっているところも多い。
 それなのに、人に見られたら願い事が叶わなくなるとか…、叶わなくなる率が相当高い。

「あれだっけ、おみくじ見られたらダメなんだっけ?」
「いや、それも聞いたことない。だって、引いた後、見せない? 一緒に行ったヤツに」
「見せる…」



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君のことが好きだっていう話! (12)


「後にする…」
「そんなに凹まなくても」

 そんなに大したことでもないのに、大体いつも和衣はネガティブの沼に沈み込んでいくのだ。
 先ほどの、願い事を人に言ったら叶わないという説、和衣には間違いなく当てはまりそうな気がする…。

「帰りに書けばいいじゃん、時間いっぱいあるし」
「…ん。すぐ書けるように、ちゃんと考えとくね!」
「いや、プラネタリウム見てる間は、プラネタリウムに集中しなよ」

 和衣の妙な方向の勤勉さに、祐介は苦笑する。
 プラネタリウムを見に来たのに、それよりも七夕の願い事を考えるほうに精を出していたのでは、世話がない。

「どこにする…?」

 中に入ると、映画館のように配列された座席には、すでに人が座り始めている。
 早くからポジション取りをしている人の席のそばは、やっぱり見やすいのだろうか。

「あんまり前すぎると見づらいらしいけど」
「そーなの?」
「めっちゃ上向かないと、全体が見えない」
「あ、そっか」

 実際に祐介が上を見上げてくれて、和衣はそのことに気が付いた。
 きっと、本当の星空を見上げるときはこうするんだろうけど、今はそれに拘る必要もないだろう。

「やっぱ、真ん中の列かな?」

 和衣は、見やすい座席のことなんて、全然まったく何にも考えていなかったし、調べもして来なかったけれど、何となく映画と同じで、中央列が見やすいのかなぁ、と思ったのだ。
 それに、何となく真ん中の列から席が埋まって行っているようにも見えるし。

「じゃ、あそこにしよ?」

 でも、真ん中って言ってもどこ? どこがいいの?? と和衣がモタモタしているうちに、祐介が席も決めてくれた。
 2人が席に着けば、すぐに周囲の席も埋まって来る。どうやらこの回の上映も満席になりそうだ。

(ぷらねたりゅーむ…)

 睦月には全然まったく興味がないと言われたけれど、もうすぐプラネタリウムが始まる期待に、和衣のテンションは俄然上がって来る。
 映画を見に行くのもいいけれど、こうして2人で並んでプラネタリウムを見られるのも、すごく嬉しい。



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君のことが好きだっていう話! (11)


 何か勘違いしているらしい和衣は、人に見られたら叶わない何かがあると考えているらしい。
 確かに、寺社でお参りした際、その願いを人に言うと叶わないとか、絵馬を見るのは、神様へのお願いを盗み聞きしているからよろしくないとかいう話は聞く。
 しかし、願い事を人に言うと叶わないというのは、話した相手がその願い事に対して否定的な反応をすると、自分もネガティブになるから叶いにくくなる、という説から来ているらしい。つまりは、参拝者自身の気持ち次第ということだ。
 絵馬のほうも、デリカシーや配慮という点で、人が書いたものを勝手に見るのは気持ちのいいものではないが、起源から考えるだに、見られることを想定しているものだから、見ても構わないとも言う。
 どちらにしても、和衣がここで誰かの短冊を見ようが、神社で誰かの絵馬を見ようが、見られた誰かの願いが叶わなくなるということは、少なくとも、広く世間に広まっている説の中にはなさそうだ。

「どうする? 今書く?」
「あ、え? あ、どうしよう、何書こう、考えてなかった」
「うん、だろうね」

 和衣が短冊を見たばっかりに、その人の願い事が叶わなくなったら大問題だから、七夕飾りの短冊を見てもいいかどうか考えることは重要なことではあるけれど、それよりも今は自分の願い事を考えるほうが先だったのに、そのことは結局何も考えていなかった。
 それを素直に祐介に打ち明けたら、あっさりと頷かれた。やはり祐介は、和衣の性格をよく分かっている。

「てか、短冊見られたら叶わなくなるとかだったら、和衣、書かないほうがいいじゃん」
「だよね!」

 短冊に願い事を書きたくてここまで来たけれど、それを人に見られたら叶わなくなるのでは、書いて飾っている場合ではなかった。
 至極当たり前のことだけれど、祐介にツッコまれて、和衣はようやく気付いた。

「だよねー!」
「どうする? 書かないにする?」
「んーん、書く。大丈夫、人に見れても、叶うよ!」

 自分に言い聞かせるようにそう言う和衣に、祐介は笑った。

「えっと、何書く…、あ、時間! 大丈夫?」
「すぐ書けば大丈夫だと思うけど」
「すぐ書けない! まだ何も考えてない!」

 テーブルのほうへ向かおうとした和衣は、頭を抱えた。
 余計なことばかり考えて、肝心なことが進まなくなるのは、和衣にしたらよくあることだ。



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君のことが好きだっていう話! (13)


 上映が始まるというアナウンスの後、場内が暗くなる。
 メインとなるプログラムの上映の前に、まずは、スタッフによる星空の解説。今の季節に見られる星座を映し出しながら、単なる星座の解説だけでなく、七夕の話や宇宙の話も聞かせてくれる。
 最初和衣は、こういう学習系のは盛り上がらないんじゃないかと勝手に思い込んでいたけれど、スタッフの人の喋りがうまいこともあって、すごく楽しめるものだった。

 スタッフによる解説が終わり、いよいよ本編が始まる。
 静かな音楽とともに、天井に星空が浮かび上がる。落ち着いた声のナレーションが、映し出された星座を紹介していく、波音が聞こえて来て……ここはビーチリゾートらしい。
 次第に空が明るくなり、美しいビーチが見える。漆黒とはまた違う、薄い青色をした空に浮かぶ星。美しい海と心地よい音楽。海辺に咲いていた花が、一気に天空に広がる。そしてまた日が沈み、深い闇に包まれると、壮大な星空が広がる。

(す…すご…)

 きっと本物の星空もうんと素晴らしいに違いないけれど、こんなふうに現実にはない演出で見せられて、和衣はすっかり夢見心地だ。

(こんな…海と星、すごい…!)

 最初は、プラネタリウムなのに何で海?? と思っていた和衣だったが、海がキレイなのももちろんだが、海辺で見る星空というのがロマンチックで、和衣のテンションを上げる。
 祐介と一緒に本物の星空を見に行くときは、絶対に海だ! と和衣は心に決めた。そしてそのときこそ、場所も日程も、全部和衣が決めるのだ。

「はぁ~…」

 和衣が心から感動しているうちに番組は終了し、場内が明るくなる。
 周囲の席の人たちは立ち上がり、出口へと向かっていくが、和衣はまだ呆けていて立てずにいた。

「…大丈夫?」
「え…………?」

 隣の祐介に肩を揺すられて、ようやく若干我に返った。

「あ…? あれ、終わっ…?」
「終わった終わった。出るよ? 大丈夫?」
「だいじょー……ぶ…」

 これは全然大丈夫じゃないな、ということは祐介にも分かったが、次の回の入場が始まる前には出なければならない。
 出入口付近の混雑を避けて席に残っている人もまだいるが、和衣の場合そうではないから、今のうちに声を掛けておかないと、と思われたようだ。



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君のことが好きだっていう話! (14)


「はぁ~~~っ、すごかったね…」
「うん、すごかった。プラネタリウム、こんなに進化してる、て知らなかった」

 和衣はまだ十分には覚醒していなかったけれど、祐介が立ち上がったので、一緒に立ち上がった。

「もうホントすごくて、すごくて、もぉ、ふわぁ~てなった」
「え? うん、すごかったけど…………ふわぁ?」

 感動のあまり、和衣は興奮気味に捲し立てたが、どうも言い方がおかしかったようで、祐介は不思議そうな顔をしている。
 『ふわぁ~』て何? と聞かれても、正直和衣も答えられないのだけれど、今の心境を聞かれたら、それが一番当て嵌まるのだ。とにかくすごかった。ふわぁ~てなったのだ。

「てか、和衣、終わってからもボーっとしてるし、寝てるのかと思った」
「起きてたよー。でも夢の世界に旅立ってた感はあった」
「…それはそれで大丈夫?」

 プラネタリウムがこんなにすごいなんて、知らなかった。
 これじゃ、本物の星空を見ても、うんとすごいのでないと、感動しないかもしれない。大丈夫かな。

「あっ、短冊に書くの、考えるの忘れちゃった!」

 余韻に浸りながらプラネタリウムを出たところで、七夕飾りが目に入り、和衣はハッとして声を上げた。そういえば入場する前、見終わったらすぐ書けるように考えておく、て言ってたんだった。
 けれど結局、そんなこと考えていられないくらい、プラネタリウムに夢中になっていた…。
 まぁ、せっかくプラネタリウムを見に来たのに、短冊に書く願い事を考えるのに集中していたのでは本末転倒だから、これでよかったのかもしれないけれど。

「後もう時間あるし、ゆっくり考えればいいじゃん」
「今日中に書けるかな…」
「いや、閉館するまでには、何としてでも書いて、和衣」

 和衣の性格を知らなければ、つまらない冗談として流されるセリフだったが、それが決して冗談の類でないことを、祐介はよく分かっているから、真面目な顔で答えて来た。
 放っておいたら、本気で和衣は閉館時間になってもまだ、短冊を書き終えずにいるだろう。

「んん…、どうしよ…。祐介、何書く?」
「…秘密」

 七夕飾りのところに向かいながら、和衣はこっそり尋ねた。別にこっそりする必要はなかったんだけれど、つい…。
 そのせいなのか、祐介も声を潜めて答える。しかし、その答えは和衣を満足させてくれなかった。



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君のことが好きだっていう話! (15)


「えー、何でー。まだ決まってない?」
「決まってる」
「じゃあ教えてよー」
「ダメ」

 頑なな祐介に、和衣は頬を膨らませるが、どうあっても祐介は教えてはくれないようだ。
 しかし、短冊とペンを手に取ってテーブルに向かう姿を見る限り、短冊に何を書くか、すでに決まっているというのは、本当なのだろう。

「あぅ…」

 とりあえず和衣も、短冊とペンを持って、テーブルのほうに向かう。
 七夕の短冊は、人に見られても願い事が叶わなくなることはないようだったが、それでも祐介は人に見られたくないのか、左手で短冊の周囲を覆って、周りから見えないようにして書いている。
 まぁ、笹に飾ってから、後で知らない人に短冊を見られるならまだしも、書いているときにその内容を人に見られるのは嫌か…。何となく恥ずかしいもんね。

(願い事…………やっぱ、祐介とずっと一緒にいたい、的な…?)

 それは間違いなく、紛れもない和衣の願い事なんだけれど、こういう場面でかくのは、ちょっと恥ずかしい…。

(でもなぁ~…、でもでもっ)

 和衣はすでに笹に飾られている短冊に目をやる。
 ○○になれますようにとか、泳げるようになりたいとか、そうしたものは、字の感じからしても、小さい子どもの願い事だろう。中には、戦隊モノのヒーローや戦闘美少女アニメのキャラなどになりたいという願いもあって、見ていると楽しい。
 平和や家族の健康を願うものもあれば、彼氏彼女が欲しいというものや、就職の内定が出ますように、という和衣にとっても決して他人事ではない願いもある。

(就職か…。健康で過ごせますように、とか……そうだよね、健康、大事だよね。祐介とずっと一緒にいたいとか、そんなの書くの、あれかな…。でも、彼氏が欲しいとか、そんなお願いもあったし、いいよね、別に…)

 何か参考になれば…と、人の書いた短冊を見た和衣は、やはり自分の性格をいまいち理解し切れていない。いろいろ見れば、それだけいろいろな案が頭に浮かんで、余計1つに絞れなくなるに決まっているのに。

「和衣、書いた?」
「えっまだ! まだまだ! 祐介もう書いた?」
「書いたよ」

 祐介に声を掛けられ、和衣は驚いて振り返った。
 先ほどまで祐介が短冊を書いていた場所では、すでに他の人が短冊を書いている。



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