恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

2016年11月

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君のことが好きだっていう話! (16)


「うっそ、ねぇ何て書いた? 何て書いたの? どうしよう、何書いたらいい?」
「何書いたら…て、自分の願い事でしょ。いや、てか、願い事がないなら、無理して書かなくてもいいんじゃない?」
「なくはないけどー…」
「え、じゃあそれ書けば?」

 ボソボソと答えた和衣に、祐介は至極まっとうなことを言う。
 それは、和衣も分かっていることだ。分かっているけれど、何だか気恥ずかしくて、今まで書けずにいるというのに。

「ねぇ、これ、飾ってきていい?」
「えっ祐介、見捨てないで!」
「見捨てない。でも書き終わったのにここにいると邪魔になるから」

 そう言われると、祐介を止める術はない。短冊を書くため、テーブルが開くのを待っている人がたくさんいるのだ。祐介の言うとおり、書き終わったのに留まっていては、邪魔になる。
 というか、そもそも、和衣がさっさと短冊を書けばいいだけの話だ。

「すぐ書くから! 先に帰んないでね!」
「先には帰んないよ」

 祐介は苦笑するが、和衣は本気で念を押していた。いや、祐介が先に帰るわけがないのは分かっているが、これが睦月だったら、ここまで言わないと絶対に先に帰るから、その癖が出てしまった。
 祐介が行き、和衣は慌てて短冊に向き直った。先ほど人の短冊を見たおかげで、いろいろ迷い悩んでしまったけれど、やはり和衣の願いは1つしかない。それを素直に書こう。

(でも…、祐介の名前、そのまま書いちゃったら、さすがにまずいよね…? 『彼』て書く? イニシャル?)

 すぐ書くと言っておきながら、やはり和衣だけあって、すぐに書くなんてことは出来ず、再び頭を悩ましている。

(やっぱ『彼』て書いたって、願い事叶えてくれる人も、誰のことか分かんないもんね、分かりやすいように、イニシャルのほうがいいよね!)

 願い事を叶えてくれるのが『人』なのかという点はさておき、和衣は名案を思い付いたとばかりにペンを取った。これも別に、和衣が思い付いたわけではない。先ほど見ていた短冊の中に、イニシャルで書いてあるものがあったので、真似しただけだ。

(祐介と、ずっと一緒にいられますように…………和衣)

 祐介と和衣の名前のところはイニシャルにして、和衣は短冊を書き上げる。



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君のことが好きだっていう話! (17)


(ふむ…………よし)

 完成した短冊を眺め、和衣は満足そうに頷いた。
 後は笹に飾るだけだが、祐介はもうすでに飾りに行ってしまった。こういうのは一緒に飾るのも楽しいのに…とは思うが、悪いのはモタモタしていた和衣だし、飾るときに願い事を祐介に見られるのも恥ずかしいから、別々でいっか、と思う。

「ちょっと待ってて、今飾るから」

 和衣はようやくテーブルを離れ、笹へと向かう。
 祐介は笹から少し離れたところに立っていて、もう短冊を飾り終えているようだったが、帰らずにちゃんと待っていてくれた(念を押さなければ帰ってしまうのは、やはり睦月くらいなのだ)。

 笹の周りは、短冊を飾る人だけでなく、七夕飾りを見ようという人たちもいるから、大変混雑している。人の隙間を縫って笹の前に来ると、なるべく上のほうに短冊を飾ろうと、和衣は背伸びをして、うんと手を伸ばした。
 人が集まる場所に飾る以上、誰かに見られるのは仕方ないが、人の短冊を手に取ってまでしてジロジロと眺め回したり、一緒に来ている人と短冊に書いてあることをネタに話したりしている人の姿を見ると、さすがにそこまでじっくりと見られたくない…と思う。
 中には、人の短冊をスマホのカメラで写真に撮っている人までいるのだ。ああいう人は、単に自分のスマホの中に保存しておくだけでなく、ネットにアップするタイプかもしれない。自分の短冊が、そんな餌食にされたら大変だ。

「…よしっ」

 和衣も、人並み外れて背が高いわけでもないから、誰にも見られないくらいに高い位置に飾れたわけではないけれど、ネットでネタにしたがるような人が、簡単に写真に撮れるような位置でもないと思う。
 …いや、そういうことが好きな人は、ちょっとくらいの高さなんて気にしないかもしれない。あからさまに、『人の短冊に書かれていることを写真に撮っています』と周囲にバレバレでも、やりそうだ。

(もっと高いところのほうが…)

 心配になって、短冊を飾り直そうとも思ったけれど、和衣の身長からして、これ以上高いところに飾るのは、やはり無理だ。それに、自分の短冊を飾り直すとはいえ、周りには、他人のものを勝手に外そうとしているように見えるかもしれないし…。

(うむ、これでいいのだ)

 これで間違いなかったのだと、和衣は自分に言い聞かせた。



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君のことが好きだっていう話! (18)


(…あ、)

 短冊を書くにも大層な時間を費やし、飾るとなっても時間が掛かり……いい加減、祐介が待ちくたびれているかもしれないから、急いで戻ろうとしたのだけれど、ふと1つの短冊に目が入り、足が止まった。
 和衣と同じように、名前はイニシャルで書かれている。しかし、別にそこに共感して、気になったわけではない。イニシャルを用いている短冊なら、他にもある。
 そうでなくて。
 内容が、和衣と同じように、ずっと一緒にいたい、というものだったから気になったわけではなくて――――いや、そうじゃなくて。

 何が言いたいかというと。

(この字、祐介の字に似てる…)

 だからこそ、目に入ってしまったのだ。
 良縁や恋人との仲の願う短冊は多い。和衣だって書いた。それ以外の内容の短冊もたくさん飾ってあって、でもその中からこの短冊を見つけてしまった。

(いや…、うん、祐介の……だよね)

 イニシャルも一致している。字だって、今までに何度となく見ているから、間違いようがない。短冊の色も、さっきチラッと見えたものと同じだ。
 つまりこれは、この和衣が見つけてしまった短冊は、祐介が書いたものだ。

(あ…、ぅ…)

 和衣は、ぶわっと顔が熱くなった。面と向かって言われたわけではないが、祐介が和衣と同じように、こんなふうに思っていてくれたのだと知って、嬉しくないはずがない。
 嬉しいのと同時に、照れくささも湧いてくる。だって、そんな、照れるに決まってる…。

「うっ、うっ」

 和衣は、赤くなっているであろう頬を、両手でぺしぺしと叩いた。周りの人に変だと思われるかもしれない、と気遣う余裕はない。

(あ、あ、でも祐介、ゴメン…)

 ぺしぺしした後は、拳でグリグリと頬を撫で繰り回す。隣の女の人が訝しげに、チラリと和衣を見たけれど、それどころではなかった。
 偶然とはいえ、和衣は、祐介の書いた短冊を見てしまった。でもそれは仕方がない、みんなに見られる場所に飾られている以上、誰にも見られないままでいられるはずがないのだ。
 でも、それでも、和衣は申し訳なく思ってしまう。だって和衣は、祐介が、短冊を和衣に見られたくないと思っていたことを知っているのだ。なのに、見てしまったから。



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君のことが好きだっていう話! (19)


 …こんなこと、気にするほどのことではない。
 人の短冊を見たからといって、何か罪になるわけでもないし、祐介が見られたくないと思っていたからといって、目に入ったのは偶然だ。見たことを黙ってさえいれば、祐介にばれることもない。気にすることなど、何もない。
 しかし、そう考えられないのが、そう行動できないのが、和衣なのだ。

「…祐介、」
「書けた?」

 トボトボと近付いてくる和衣に、祐介が視線を向けた。
 1人で誰かを待っている場合、いや、そうでなくても、ちょっとした時間の隙間を見つけてはスマホをいじっているのが現代人だが、祐介は手ぶらだった。
 もしかしたら、ずっといじっていたけれど、あまりにも和衣が来ないから、それすらも飽きてしまったのかもしれないが。

「和衣? 何、どうしたの? 何か暗くない? まさか短冊が書けなくて、諦めてきたとか?」
「んーん、書いた…」
「じゃあよかったじゃん」
「そうなんだけど…」

 歯切れの悪い和衣に、祐介は苛立つというよりは、不思議そうな顔をしている。
 和衣は少し迷ったけれど、思い切って口を開いた。

「ゴメン! 祐介!」
「…は?」

 和衣の突然の謝罪に、当然ながら祐介はポカンとして、首を傾けた。祐介にしてみれば、当然の反応だ。和衣に謝られるようなことをされた覚えがない。
 全然まったく大したことではないが、もし今和衣が祐介に謝ることとして思い付くのは、和衣が短冊を書くのに手間取って、祐介を待たせたことくらいだ。
 しかし、和衣の優柔不断は今に始まったことではないし、待ったとはいえ10分くらいだ。そんな申し訳なさそうな顔で、手まで合わせて謝るようなことでは、決してない。

「いや、ゴメン、何が?」

 祐介のほうも、別に謝る必要などなかったのだが、つい謝罪が口を突いてしまう。

「あ…あのー…、たまたまなんだけどね、」
「ぅん?」
「たまたま、その…、祐介の書いた短冊見つけちゃって、見ちゃった、ゴメン!」
「え、」

 最初和衣はモジモジと口籠っていたが、決心したのか両手を合わせたまま、早口でそう言って頭を下げた。



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君のことが好きだっていう話! (20)


 たまたま見つけたという和衣の言葉に嘘はない。和衣が七夕飾りのところにいつまでもいたのは、決して祐介の書いた短冊を探していたからではなく、本当に書くのに時間が掛かったからで、さらには飾る場所にも頭を悩ませていたからだ。

 祐介も、和衣の言葉を疑うつもりはない。和衣の性格からして、そんなにうまく嘘がつけるわけがないことは、よく分かっている。
 というか、本当は祐介の短冊をわざわざ探して見たのだとすれば、『たまたま見つけた』などと言わなくても、見たこと自体を黙っていればいいだけのことだ。

「てか、あの…、頭上げて?」

 今の和衣は、偶然とはいえ、祐介の短冊を見てしまった罪悪感でいっぱいで気付いていないかもしれないが、ここはプラネタリウムの前で、人が大勢行き交っているのだ。
 こんなところで、そんな真剣な調子で謝られても。
 いや、和衣にとっては大事かもしれないが、事は、和衣が祐介の短冊を見たというだけのことだ。

「別に、その…、いいから、そんなことくらい」
「でも…、ヤダったでしょ? ゴメンね」
「ヤダ、ていうか……恥ずかしいだけで…」

 和衣はおずおずと頭を上げたが、まだ手は合わせたままだ。余程申し訳ないと思っているようだ。偶然祐介の短冊を見ただけでこの調子なのだ、絶対に探してまで見たわけではないだろう。
 というか、祐介にしたら、短冊を見られたことが嫌だというよりは、単にものすごく恥ずかしいだけだ。和衣に短冊を見られたと知った時点からずっと、耳が熱い。顔だって絶対に赤いに決まっている。

「ゴメンね、祐介」
「いや、いいって、もう」

 わざとではなかったわけだし、いや、たとえわざとだったとしても、そこまで謝るようなことではない。
 いや、たとえわざと見たんだとしても、もう気にしなくていいから、すぐさま短冊のことを忘れてほしい。和衣がずっと気にして、短冊のことを覚えていられると、こっちも恥ずかしい。

「…お詫びに、俺の短冊も見る?」
「は?」
「祐介も俺の書いたの見れば、おあいこでしょ?」
「何そのおあいこの条件…。いいよ別に。見られるの、恥ずかしいんでしょ?」
「でもぉ」

 もういい、と言っているのに、1度気にし出すと止まらないのが和衣だ。妙な和衣理論を繰り広げている。
 そりゃ祐介だって、和衣が短冊に何と書いたか気にならないわけではないが、言うまでもなく和衣は、短冊を人に見られるのを恥ずかしがっているのだ。それを2人で見た日には、お互い照れまくることは間違いない。
 それをわざわざ引き返してまで、見に行こうとは思わない。



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君のことが好きだっていう話! (21)


「いいの? 祐介」
「何が?」
「ホントに見なくてもいい?」
「何、見せたいの?」

 見られるのを恥ずかしがっていたはずが、いつの間にか祐介に見せたいような雰囲気になっている。
 さすがにちょっと笑ったら、和衣は顔を赤くして、祐介の腕を叩いた。

「じゃあ見せない!」
「そうなの? せっかくだから見に行こうよ、和衣の書いたの」
「ダメー。人に見られないように、すごい高いところに付けたし」
「マジで? 俺、そこまで考えてなかったな」

 予想どおり、やはり和衣は短冊を飾る場所も、相当悩んだらしい。和衣らしくて微笑ましい。

「何笑ってんの! もう行こっ」
「はいはい」

 顔を赤くしたまま、和衣は祐介の腕を掴んで歩き出す。祐介は大人しくそれに従ったが、数歩も行かないうちに和衣は足を止め、クルリと振り返った。

「何?」
「お…俺だって、祐介とずっと一緒にいたいんだからねっ」

 祐介の耳元に顔を近づけてそれだけ言うと、和衣はさっさと歩き出した。
 後ろから見ても分かるくらい、和衣の耳が赤い。いや、それは祐介も同じだ。さっき以上に顔が熱い。

「和衣」
「なっ何、」
「今度は本物の星、見に行こっか」
「ッ…」

 先を行く和衣に追い付き、声を掛ける。
 和衣は赤い顔のまま、口をパクパクさせていたが、結局声が出なかったのか、黙ったままコクコクと何度も頷いた。

 今度は本物の星に、2人の願いをかけよう。



*END*



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 タイトルは明日からでした。
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今夜も眠れない僕たち (1)


 いつの間にか暑さが和らいだと思ったら、街はすっかり秋の景色で、夜の空気は冷たい。時折吹く風に首を竦めながら、亮はバイトからの帰り道を急いだ。
 いつものことだが、寮の集合玄関を入っても、意外と建物内は静かだ。
 寮と言っても、堅苦しい規則のあるものではなく、自分の大学の学生に安価に貸し出しているだけの建物なのだが、隣の部屋や外の廊下に音が漏れやすいのをみんな自覚しているせいか、変に部屋で騒ぐ者はいないのだ。

「ただい…」
「とりっくおあとりーーーーと!!」
「…はい?」

 …騒ぐ者は『いない』ではなく、騒ぐ者は『少ない』の間違いだった。
 亮は、今開けたばかりの自分の部屋のドアを、そのまま何事もなかったように閉めたかったけれど、玄関先、目の前にいる恋人の満面の笑みを見るとそうも出来ず、ただ立ち尽くすしかなかった。

「亮、とりっくあとりーと」
「え? うん」

 一応の突っ込みをした後は何も言わない亮に向かって、睦月はもう1度繰り返した。
 亮の反応が悪かったせいか、第一声に比べて、だいぶテンションが下がっている。

「………………」
「えっと…」
「…て言ったら、お菓子貰える、て聞いたんだけど」
「あぁ、ハロウィン」

 発音はかなり怪しかったが、確かに睦月は今、『trick or treat』と言っていた。
 10月に入ってから、街中のディスプレイはどこを見てもハロウィン一色だったから、ハロウィンに関しての時間感覚がすっかり失われていたが、なるほど、今日はハロウィンだった。

「亮、お菓子」

 睦月が両手をずいと亮のほうに差し出してくる。
 本気でお菓子をねだっている。

「ないんだけど」
「は?」
「え、いや、ゴメン」

 今日がハロウィンということも忘れていたし、まさか本気で睦月にお菓子をねだられるとも思っていなかったから、何の用意もしていなかった。
 大体それは子ども相手のことだろう、と思うのだが、お菓子がないと言われたときの睦月の険しい表情と言ったら…!


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今夜も眠れない僕たち (2)


「えー……と、じゃあ、代わりにいたずらしていいよ?」
「ぅ?」
「え? ハロウィンでしょ? 『お菓子くれなきゃ、いたずらするぞ』て」
「何それ」

 自分から始めたくせに、亮の言葉に睦月はキョトンとしている。
 この顔は、本気で分かっていないときのヤツだ。

「ちょっと待って、むっちゃん。1回中入ろっか、寒いし」

 話が噛み合うまでここで話し続けていたら、上着を着ている亮はともかく、部屋着1枚の睦月は絶対に風邪を引きそうだから、亮は睦月を回れ右させて、その背中を押して中に入った。
 テーブルの上に、魔女が被るみたいな黒い三角帽子が載っている。せっかく用意したのに、何で被らなかったのか気になるところではあったが、話がややこしくなるので、ひとまずは置いておこう。

「はろうぃん? 亮、はろうぃん? かぼちゃのヤツでしょ? はろうぃんて」
「かぼちゃの、て…」

 亮に背中を押されながら、睦月が首を仰け反らせて亮の顔を見る。
 …どうしてわざわざそういう体勢のツラいことをするかな。

 それにしても、『かぼちゃのヤツ』て…。
 いや、睦月の言わんとすることは分かる。『かぼちゃのヤツ』とは、ジャック・オ・ランタンのことだろう。確かにジャック・オ・ランタンはハロウィンの顔ともいえるが、別にハロウィンはかぼちゃの祭りではない。
 というか、ジャック・オ・ランタンが頭に浮かんでいる時点で、睦月もハロウィンのことは何となく分かっているようなのに、どうして『trick or treat』が分からないんだろう…。

「むっちゃん、誰にそのお菓子の話聞いたの?」

 先ほど睦月が、お菓子が貰えると聞いた、と言っていたことを思い出す。
 誰かが睦月に入れ知恵したに違いない。まぁ、大体想像は付くが。

「愛菜ちゃんと眞織ちゃん」
「だろうな」
「今日とりっくあとりーとて亮にゆったら、お菓子貰えるよー、て」

 やっぱり…。
 そこは亮の想像したとおりなので特に驚かないが、あまりにも説明を省略しすぎだ。いくら何でもひどすぎる。
 …いや、愛菜と眞織は、もっとハロウィンについて詳しく話をしたけれど、睦月が都合のいいところしか覚えていないのかもしれない。そのほうが正しい見解だろう。



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今夜も眠れない僕たち (3)


「でも亮、お菓子くんなかった…」
「ゴメンゴメン! ハロウィンだって忘れてたんだって」

 これがクリスマスだったら、いくら街中が1か月もクリスマス一色でも、時間感覚をなくして、今日がクリスマスだということを忘れはしないが、さすがにハロウィンはそこまで恋人同士のイベントという感覚がないから、うっかりしていたのだ。
 しかも、ハロウィンを忘れていたくらいで、睦月がこんなに機嫌を損ねるとも思っていなかったから、余計に。

(…いや、ハロウィンを忘れた、ていうことより、お菓子がないことか…)

 多分睦月は、ハロウィンとかどうでもいいに違いない。仮装なんて絶対にやらないだろうし。
 ハロウィンに関係なく、お菓子が貰えたらご機嫌なのであって、勝手に貰えると思い込んでいたお菓子が貰えなかったから、勝手に拗ねているのである。

「つか、むっちゃんだって俺にお菓子なんか用意してないでしょ?」

 ハロウィンの認識自体が危うい睦月が、今日のために亮にお菓子なんか用意しているはずがない。
 甘いものが好きではない亮にしたら、お菓子なんてどうでもいいけれど、これでおあいこだと言い訳は通る。

「フフン」
「え?」

 しかし睦月は、にんまりと笑って、亮を見返した。

「これ!」

 魔女の帽子を手に取ると、睦月はそれをズイッと亮の目の前に突き付けた。
 …………。ゴメン、意味がちょっと分からない。

「この帽子ねー、眞織ちゃんに貰ったんだけどねー」
「う、うん」

 三角帽子を抱えた睦月は、ものすごい上機嫌だ。ものすごい笑顔だ。亮が帰って来たときに、『とりっくおあとりーと!』と飛び出して来たときくらいの、満面の笑みだ。
 一体何事かと、亮は少したじろぐ。

「中にお菓子が入っているのですっ!」
「ぶはっ」

 くるっと帽子を引っ繰り返して、その内側を亮のほうに向けた睦月は、スーパーご機嫌に、お菓子が詰まった帽子の中を見せてくれた。
 ちょうどあれだ、サンタクロースのブーツの中にお菓子が詰まっているみたいな。



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今夜も眠れない僕たち (4)


「すっごいでしょ!」
「いや、すごいけど……すごいけれども! あっはっはっはっ」

 睦月があまりに得意そうな顔で言うから、笑いが込み上げて来て止まらなくなる。

「ほらね、俺はちゃんとお菓子用意したんだよ! 亮のために!」
「眞織がくれたんだろ?」
「亮、欲しいー? 欲しいー? ねぇ欲しいー?」

 お菓子大好きで、それを人にあげちゃうとか絶対に嫌なはずなのに、それでもそんなことを言って来るのは、別にハロウィンだからというわけでもなく、恋人である亮のことが好きだから特別にあげようという気持ちになったわけでもなく、単に亮のことを羨ましがらせたいからに他ならない。
 もちろん甘いものなど好きではない亮は、全然まったく羨ましくはないのだが。

「いいよ、いらないって。むっちゃん、食べな――――うわっ、ッ、あっぶね」
「キャハハハ」

 しつこく詰め寄って来る睦月に、後ろも見ずに後退っていたら、部屋の端まで追いやられて、亮はそのままベッドに引っ繰り返ってしまった。
 仰向けに倒れ込んだのがベッドの上だったので、ケガはしなかったけれど、安いベッドだ、ふんわりと柔らかく包み込んでくれるわけではなく、ドタンとうるさい音が響いた。
 しかし睦月はそんなこと気にもせず、亮の上に跨って笑い転げている。

「ちょ…危ねぇって、何してんの」
「いたずら。にひ。お菓子くれない亮には、いたずらしまーっす」

 つい先ほどまで、『trick or treat』が何なのかも分からず言っていたくせに、亮が言ったことをちゃっかり覚えていたらしく、今さらそんなことを言って来る。

「は? 何する……ギャアッ」

 『何する気?』と亮が聞き終えるより先、睦月は、シャキーン! と効果音でも付きそうなポーズを決めたかと思うと、素早く亮の脇腹を擽り出した。

「ちょっむっちゃやめっ」
「きゃはははっ」

 ジタバタする亮に馬乗りになって、睦月は何とも楽しげに亮を擽っている。
 こういうときの睦月のしつこさと言ったらないから、いくら亮がやめろと言ったって聞かないだろう。腕ずくでやめさせる以外に、方法はない。

「やめろって、睦月」
「にゃう」

 睦月の両腕を掴んで押さえ付けると、亮はそのまま睦月を抱きすくめた。



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今夜も眠れない僕たち (5)


「やぁ~、亮離してよぉ!」
「イダダダ」

 腕を封じられ、睦月は今度は足をバタつかせる。
 今に始まったことではないけれど、本当に睦月は一時でもジッとしていられない子だ。

「もーギブ! お願い、やめて!」
「えー?」
「いやもうマジで!」
「もぉ!」

 亮の本気の懇願が伝わったのか、睦月は頬を膨らませつつも、大人しくなった。

「あんまうるさくしたら、怒られるじゃん」
「亮が静かにしてればいー」

 声を上げた亮が悪いんであって、飽くまでも自分のせいではないと主張する睦月に苦笑するしかない。まぁ、これが睦月だ。
 言葉尻の続きのまま、イーッとしながら睦月が顔を近付けてくる。

「むっちゃん、そんな顔しないでよ」
「最初からこの顔ー。…てか、」

 亮の腕の中、睦月が少し身じろいだ。

「…亮、離してよ」
「何で?」
「何で、て…。だって、そんな…、もういいじゃん」

 問われて睦月は、もそもそと返事をした。
 亮が睦月を抱き締めたのは、いたずらを仕掛けてくる睦月の動きを封じ込めるためだったわけで、睦月がやめたんだから、亮だってもうやめてもいいはずだと言いたいのだろう。
 それは分かっていたけれど、分からない振りで、亮はわざと聞き返した。

「もういい、て何が?」
「だからー」

 睦月は困ったように眉を下げた。いくら睦月でも、恋人が抱き締めているのを、離せとは言いづらいだろう。

「…何これ」

 ふて腐れたような声色でそう言って、睦月はプイと横を向いた。
 せっかく持ち直した機嫌をまた降下させてしまったかと思ったが、しかし、相手は睦月だ。本気で機嫌を悪くしたのなら、こんなふうに大人しくしているはずがない。
 ということは、これは、照れからくる居心地悪さによるものに違いない。



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今夜も眠れない僕たち (6)


 こういう場合、下手にちょっかいを出すと逆効果なので、亮は静かに睦月を抱き締めている。
 亮がこうして抱き締めている分には、大人しくしていてくれるわけだし――――どうせならもうちょっとイチャイチャしたいところだけれど、という下心は、今日のところはこのまま隠しておくに越したことはないようだ。

 しかし、そうだとしても、ずっとこの体勢でいるのもツラい…と、亮が弱気なことを考え始めたのは、それから5分ほどしてからだ。
 ベッドの上に寝てはいるが、ベッドの正しい向きとは90度ずれているせいで足がベッドの下に落ちている体勢だし、相変わらず上に睦月を乗せたままだ。
 寝るにしても寝られないし、本当に一体どうしたものか…。

「むっちゃん、むっちゃーん、そろそろ…」

 『降りて』と続けようとして、いや、やはり『起きて』と言ったほうがいいだろうか、とそんな考えが頭に浮かんだせいで、亮の言葉は途切れてしまった。
 先ほど、亮に腕を解いてほしそうにしていた睦月に、気付かないふりで流したくせに、今さら亮のほうから退いてほしそうには言えないだろう。

「むっちゃ…」

 いや、でも、お風呂にも行かなきゃだし、睦月も寝るなら自分のベッドでゆっくり寝たいだろうから……なんて言い訳を頭の中で巡らせながら、再び睦月に声を掛けようとして、亮はまたも言葉を途切れさせた。
 睦月がしっかりと目を閉じている。
 いや、目を閉じていたっていいんだけれど、その「すーすー」という吐息は、どう考えても寝息だろう。

 …うん、睦月は寝ている。

 亮は、『早っ!』と突っ込みはしなかった。
 睦月は、目を閉じたら3秒どころか、1秒でだって眠ることの出来る持ち主だ。こんな状態で5分も目を瞑っていたら、そりゃ寝る。間違いなく寝る。

「はぁ…」

 こうなったら、睦月がちょっとのことでは起きないことも、亮はよく知っている。睦月の寝起きの悪さは、何も、朝ばかりに発揮されるわけではないのだ。
 仕方がない、この状態でも何とか起き上がって、睦月をベッドまで運ぶしかない。それか、何とか体の向きだけでも変えて、ベッドに真っ直ぐになろう。亮は帰って来たままの格好だが、睦月と一緒のベッドで寝るのも悪くない。

「よっ、ッ、」

 亮は腹筋に力を入れて上体を起こそうとしたが、なぜかうまくいかない。
 もちろん、亮の腹筋の鍛え方が甘いせいだと言えなくはないが、今の場合、それだけが原因でないことは確かだ。間違いない。



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今夜も眠れない僕たち (7)


「むっちゃーん?」

 亮は睦月の顔を覗き込んでみるが、睦月はまだ目を瞑ったままだ。
 だが、もう堪え切れずに、その口元に笑みが浮かんでいる。

「もしもーし、睦月さーん?」

 ツンツンと睦月の脇腹をつつくと、分かりやすく睦月の体がピクンとした。それでもまだ、狸寝入りを決め込むつもりか。いや、決め込むつもりなのだろう、亮を起き上がらせまいと、まだ足に力を入れている。
 そう、亮が体を起こせなかったのは、彼の腹筋のせいばかりではない、睦月がそうさせまいと踏ん張って、体重を掛けたからなのだ。

「むっちゃーん」
「きひひっ」

 何度目か名前を呼んだら、ようやく睦月が目を開けた。

「ホントにもう…、どんだけいたずらすれば気が済むの」
「んーとねぇ」

 別に亮は、睦月がどのくらいいたずらをしたら気が済むのかを、本気で聞きたかったわけではない、嫌味で言ったのだ。
 しかし、残念ながら睦月にそれは伝わらず、『どのくらい』を真面目に考え込んでしまった。いや、睦月のことだから、ちゃんと意味を理解したうえで、わざと考える素振りをしたのかもしれないが。

「むっちゃん…」
「まーだまだだよっ」

 睦月が亮の腕を解いたと思った次の瞬間にはもう、睦月はうんと伸び上って亮の顔の位置にやって来て、ちゅっとかわいらしく亮の唇を奪っていた。

「むっちゃ…」
「ひひ、まだいたずらするもんっ」

 そう言って睦月は、それこそいたずらっぽく笑う。
 そんな睦月は、なるほど、こんないたずらだったらいくらされても悪くはないか…なんて、亮が不埒なことを頭に過らせているなど、知る由もないのだろう。



*END*



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