恋三昧

【18禁】 BL小説取り扱い中。苦手なかた、「BL」という言葉に聞き覚えのないかた、18歳未満のかたはご遠慮ください。

1. 気持ちイイコト、しようよ


「いーしだくーん、かーえーろ!」

 教室の入り口、教科書なんか殆ど入っていないカバンを抱えて、小学生のような口調で声を上げたのは、隣のクラスの幼馴染み、水瀬。
 その声にギョッとして、石田は慌てて席を立った。

「水瀬、声デカイから!」
「だって石田遅いんだもん」

 遅いとは言っても、ホームルームが終わる時間はどのクラスも大体一緒で、その後、石田が特別ダラダラしていたわけでもなく。
 はっきり言って、石田が遅いなんてことは、少しもないのだけれど。

「帰り、マック寄ってこーね、石田の奢りで」
「…はい」

 ニッコリと、けれど有無を言わせない笑顔でそう言う水瀬に、石田は素直に頷くしかない。
 その相変わらずの光景に、クラスメイトたちは苦笑いをしているが、昔からのこのパワーバランスを、石田は高校に入ってからも覆すことが出来ないでいた。



*****

「あ、水瀬、英語の小テスト、どうだった?」
「むぐ?」

 約束どおり(というか、一方的な水瀬の決定により)、石田の奢りのハンバーガーを頬張っていた水瀬は、向かいの席でシェイクを飲んでいた石田の言葉に、キョトンとした顔で視線を向けた。

「え、水瀬のクラス、なかったの? 英語の小テスト」
「……あった」

 クラスは違うが、どちらのクラスの英語も、栗原が受け持っている。今日の授業で小テストを受けた石田は、英語が死ぬほど苦手な幼馴染みをつい気に掛け、何となく聞いてみたのだ。
 だが、『どうだった?』という問いは明らかに愚問で、水瀬の表情を見れば、その結果は聞くまでもないことだった。

「あぅー…英語嫌い、栗原嫌い…」
「お前の英語嫌いは栗原のせいじゃねぇだろ。大体、補習まで受けたのに、何でそんななんだよ」
「…………。ほ、しゅー…」

 石田の発した『補習』という言葉に、ピタリと水瀬の手が止まった。
 英語のテストだけ、あえなく赤点を取ってしまった水瀬は、休み返上で補習に参加したわけで。
 けれどその補習は、教室の中だけでは、終わらなかったわけで。

(栗原のヤツ…。でも、気持ち良かったし…。あぅ…)

 そんなつもりはないのに、水瀬は、あのとき自分を翻弄した栗原の手を思い出してしまった。
 指の感触。
 快感。
 ……顔が熱い。

「水瀬、どうした?」

 顔を赤らめ、急に黙り込んでしまった水瀬に、石田は眉を寄せる。
 目の前で手を振られ、ようやく水瀬はハッと我に返った。

「は、わ…何でもない…」

 自分の意志とは関係なく、熱くなってしまった体を冷ますように、水瀬は石田のシェイクを奪い取って、ゴクゴク飲み干した。

「ちょっ…」

 勝手にシェイクまで飲まれてしまった石田は、一瞬慌てたけれど、いつもの気ままな水瀬の行動と受け止め、深くは追求しなかった(こういうところが、いつまで経っても優位に立てない原因だということには、もちろん気が付きもせず)。

(ヤダな―…、俺、こんなとこで発情してるよ…。もぉヤダ…)

 快感に弱い、自分の体が憎い。
 別に誰かれ構わず抱かれたいわけではないが(もちろん女の子も大好きだし)、けれど、ちょっとタイプだなーなんて思った相手から誘われると、断り切れない自分がいて。

「…石田」
「ん?」
「今日ウチ来て。これから」
「何、英語の勉強する?」
「違ぇよ、バカ! ハゲ!」

 会話の流れ的に、石田の言い分は何も間違っていないはずなのに、なぜかひどい言葉で否定されてしまう。

「じゃあ何?」
「今日もウチ、誰もいないの。帰っても」
「うん」

 だから何? と、水瀬の言葉の意味を悟らない石田は、首を傾げている。
 水瀬は溜め息をついて、シェイクの入っていたカップを握り潰すと、石田に耳を貸すよう手招きする。

「え、何なの、水瀬」

 それでも素直に顔を近づけてくる石田。
 水瀬はその耳元に口を寄せて。

「帰って、気持ちイイこと、しよ?」

 たっぷりと甘みと艶を含んだ声で、そう囁いた。

Fortune Fate

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カテゴリー:高校生男子
テーマ:自作BL小説  ジャンル:小説・文学

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