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2008.09.07 (Sun)

28. ベクトルの先。 (中編)

「貴久、待って!!」

 この声も。
 この呼び方も。

 俺は振り返らずに、足を止めた。

「ちょっと待ってよ!」
「……何? どうした?」

 飽くまで、普通に。
 普通に問い掛ける。

「いや、あの……何か…」

 哲也は困ったように、俯いてしまった。

「その…途中まで、一緒に帰らない?」
「…………え? あ、うん」

 意外ともいえる哲也の言葉に驚きつつ、よく分からないまま俺は承諾してしまっていた。

「仕事……どう?」

 一緒に帰ろうと言ってきたくせに、哲也は何も言わずに隣を歩いてるだけだから、何とはなしに聞いてみた。

「え? あ、うん…何とか。新しくデザインした服、置かしてもらったり」
「順調なんだ。良かったな」
「……うん」
「ん?」
「うん、順調」

 俺のほうを向いた哲也が、少し笑った。

「貴久、は…?」
「え? あぁ、うん、相変わらずだよ?」
「そう…」

 何となく、会話がぎこちない。続かない。
 そりゃそうだ。
 だって俺たちは…。

「、哲也?」

 隣を歩いてた哲也が急に立ち止まったんで、何かと思って俺も足を止める。

「どうした?」
「あ…俺、こっちだから…」

 哲也が指差すのは、俺が帰るのとは別方向の路地。
 じゃあな、て言って別れればいいのに、きっと哲也もそれを分かってるのに、でも互いに何も言えずに立ち尽くす。

 向こうに……この向こうの先に、哲也の新しい生活があって、いつもの帰り道の先に、相変わらずな俺の生活がある。
 歩き出せばもう、2度と交わらない道かもしれないけれど。

「じゃあ」
「……ん、」

「………………」
「………………」

「…………じゃ…」
「…………」

 2人とも、動き出せなくて。
 周りの景色が、ゆっくりなのか、素早くなのか、ただ流れていって。

「じゃあ、な」
「ぅん…」

 吹っ切るように、哲也に背を向けて。
 ゆっくりと、歩き出す。
 いつもの、帰り道。自分の家に向かって。



「貴久っ!!」





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テーマ : 自作BL小説 ジャンル : 小説・文学

09:51  |  アスファルトで溺死。  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

「貴久っ!!」


……。

……………。●´∀`●ホェ〜vvv



あぁ〜〜〜〜〜〜〜気になる〜〜〜
うずうずうずうず…。哲たん、頑張れ!!!
貴久たんの素っ気なくしてるフリが愛おしい…
ね、哲たん(なんで話しかけてんの…)v-238


あ、絵文字、かわいぃですか!?ありがとうございますvvv
でも哲たんのが断然可愛ぃんですッッッ(。・ω・。)ノ♡ テヘ
Setsura |  2008.09.07(日) 14:44 |  URL |  【コメント編集】

■>Setsuraさん

 貴久タン、焦らしてるのか、ホントにホントの天然なのか……もはや私にも分かりかねております!!!
 当初はかっこいい男を目指して書いていたのに、すっかりかわいい男ですよ。

 (。・ω・。)ノ♡ テヘ

 うぅん、やっぱかわいいっす!!!

 コメント有り難うございました!!
如月久美子 |  2008.09.07(日) 22:43 |  URL |  【コメント編集】

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